pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
バウルでフレンとキャナリ達を送り終えた後、ユーリらはダングレストに着いた。
広い海上でヘラクレスを見つけることはできず、当初の予定通りダングレストで待ち受けることとなった。
しかしギルドユニオンの筆頭で、ダングレストを守る
その原因は、ドン・ホワイトホースが意識を取り戻さないこと、ドンの娘婿である若首領がカプワ・トリムの防衛戦で死亡したこと、同行していたドンの実娘で若首領の妻の安否も不明であること、
「せめてレイヴンがいてくれりゃあ…」
「だから、そのおっさんが捕まってんだよ。それ助けに行くから、その間ぐらい街守れってんのが分からねえのかよ⁈」
「お前が帝国にレイヴンを売ったんじゃねえのか? ギルド潰そうとする帝国の手先なんじゃねえのか⁈」
「おい止めろ! この人たちの連れは、ドンの命を救ってくれたんだぞ‼︎」
「だが肝心のドンは目覚めねえし右腕も失った。治癒魔法に手ぇ抜いたからじゃねえのか⁈」
「……付き合ってられねえな。世界が終わるまで勝手にやってろ」
全く話が通じないギルド連中に呆れて、ユーリはその場から立ち去ろうとしたが、カロルはその場から動かなかった。
「我らの剣は自由のため。我らの盾は友のため。我らの命は皆のため」
身体を震わせつつもカロルは、ギルドユニオンの誓約の言葉を口にする。一度口を開けば、もう身体の震えは無かった。
「仲間に助けて貰えばいい。仲間を守れば応えてくれる。ドンがボクに言ったんだ」
「このガキ、何を言って…」
「ボクはひとりじゃなんにもできないけど、仲間がいてくれる。仲間が支えてくれるからなんだって出来る! 今だってちゃんと支えてくれてる‼︎ 何でユニオンがそれじゃ駄目なのさ⁈ ギルドは互いに支え合うもので、それがギルドユニオンなんでしょう⁈」
そう言いカロルが見据える先に、目を見開いたハリーの姿があった。
「ユニオンがしっかりしなきゃ、誰がこの街守るんだよ…仲間内でやりやって自滅ってのはやめてくれよ。全っ然笑えねぇから」
そう言い残し、ユーリらはギルドユニオン本部の建物を後にした。
「どうだった?」
「話にならんから放っておくことにした」
「ほんとバカばっか…街が滅ぶかどうかの瀬戸際なのに…」
ジュディスにそう答えるユーリの言葉を聞き、リタは眉間に皺を寄せた。
「ボクの言葉…少しは伝わったかな?」
「さあな。時間は惜しいし、ここから先ダングレストを守れるかどうかは、ギルドユニオンに任せるしか無い。それに俺たちの作戦がうまくいけば、街は守れるだろう?」
「うん…そうだね」
ユーリらが考えた作戦は、騎士団が布陣している間にヘラクレスへ侵入して動力を完全に止めて動かないようにし、同時にエステルとレイヴンを見つけて救出すると言う、一石二鳥を狙う作戦であった。
見張りをしていたラピードは、ヘラクレスが停止したのを確認後にユーリらの元へ知らせに戻った。そして騎士らに見つからないルートでラピードに案内してもらい、ユーリらはヘラクレスまで辿り着いた。
大半の戦力は布陣しているらしく、ヘラクレスの中は必要最小限の人員しかいない様子であった。できるだけ戦闘を避け、ラピードにエステルの持ち物を嗅がせて匂いを辿らせ、ヘラクレスの中を捜索させたが…
「動力室……ここでエステルの匂いは途切れているのか?」
ラピードが肯くのを確認後、ユーリらは動力室に一斉に入り、操作していた騎士を昏倒させて拘束した。
「エステル居ないじゃない!」
「どう言うこと?」
「まるでここで消えたみたいね」
「とにかく、移動要塞が使えないようにするわ」
そう言いリタは操作盤を起動させ、慣れた手つきで操作する。程なく、動力の可動音は収まった。
「これで、ちょっとやちょっとじゃ動かないはず…」
「かなり戦力は削げたと思うが、これからどうする?」
「レイヴンを捜してみようよ」
カロルの提案で、ラピードにレイヴンの持ち物の匂いを辿らせ、今度は制御室にたどり着いた。そして…
「エステルもおっさんも居ないじゃない!」
「ユーリと闘いたいっていう、ちょっと可笑しな人は居たけどね」
ジュディスの言葉を聞き、ユーリは盛大に顔を顰めた。
制御室に居たのは、倒れ伏した騎士たちと、ユーリとフレンに敗れた事を切っ掛けに腕を魔導器に改造した、戦闘狂のザギであった。
ユーリに執着していたため戦うしかなかったが、戦闘の途中で腕の魔導器が暴走して、ザギは撤退していった。
その後、周辺を探ってみたのだが、レイヴンもエステルも見つける事ができなかった。
「まるで、突然消えちゃたみたいだね」
そう言うカロルの言葉に、ユーリは何かが引っ掛かった。そう、それはエステルを攫ったミムラと会った時に…
その時、突然ラピードが耳を立てて、外に向かって激しく吠え始めた。
「どうした、ラピード」
ラピードの視線の先を見ると、土煙を立てて魔物の集団がこちらへ移動している様子が確認できた。
「ちょ…な、何が起きてるの⁈」
「これは…ダングレストに向かってる?」
ジュディスの指摘の通り、魔物らが向かう方向にはダングレストの街がある。
「こいつを動かして魔物を蹴散らせないのか⁈」
「私1人では動力自体の再起動は無理よ!」
巨大な置物と化したヘラクレスを他所に、魔物の軍団を引き連れた〈咬み裂くモノ〉は、何かに引き寄せられるようにダングレストへと進んでいった。
ダングレストを呑み込まんと蠢き数を増やす魔物の群れを前に、徴集された混成部隊の隊長の1人が、キュモールに話しかける。
「キュモール隊長…」
「副団長」
「…キュモール副団長…その…このまま見殺しにして良いのでしょうか?」
「何を言っている? 下民どころか、穢らわしい破落戸の集団じゃないか」
そもそも、カルボクラムの
「魔物が掃除してくれるなら、それに越したことはないだろう?」
その言葉に頷く一部の者もいたが、ほとんどの者は不快感を抱いた。
十数年前ならいざ知らず、
アレクセイの改革の結果、人々を救いたいと志して騎士になった者が、いつしか騎士団の多数派に転じていたのだ。
「キュモール副団長っ‼︎ 」
突然キュモール隊の隊員が1人、息を切らせて駆けつけてきた。
「何事だ、騒々しい」
「騎士の集団がこちらに向かって…」
「ようやく援軍が来たか」
「いえ…それが……騎士服の色から察するにユルギス隊とソムラス隊かと…」
「はっ‼︎
「それが……ヨーデル殿下の勅書を持って……それも評議会の承認を受けた…」
「何⁈」
その時、気高い騎士が戦いの場に降り立った。
「フレン・シーフォ⁈」
水色の隊服と純白の鎧を纏い、翼のようなマントを靡かせて駆け付けたフレンは、高らかに公文書を掲げた。
「キュモール! 帝都はヨーデル殿下の手で奪還された。王城内の反乱分子は全て捕えた。キュモール家の貴族位および評議会議員資格は剥奪! 国家反逆罪としての逮捕状が、ヨーデル殿下の名の下に出ている! おとなしく投降しろ‼︎」
フレンの宣言を受けて、キュモールが率いる騎士達が騒ぎ始める。
「狼狽えるな! 姉上達が最強の古代兵器を得るまで、時間を稼げば問題ない! 魔物に乗じてダングレストを占拠…」
最後まで言葉を言う前にキュモールは、橙色の騎士服を纏った騎士…アデコールとボッコスに制圧された。
「大人しく縄につくであーる‼︎」
「無駄な抵抗は止めるのだッ‼︎」
不意打ちで2人がかりで組み伏せられるキュモール。ただただ静観する周囲の小隊長らに対してキュモールは怒鳴りつける。
「お前ら何故止めない⁈」
「止めるも何も、我が部下に捕えるように命じたのはこの私ですが」
そう言い冷ややかな視線を向けたのは、シュヴァーン隊のルブラン小隊長であった。
「僕は副団長だぞっ‼︎ 誰か! 命令違反をしたこいつらを捕えろっ‼︎」
「フレン殿の言葉が聞こえませんでしたか? 何故反逆者である貴方の命令に従う必要があるのでしょうか? アレクサンダー・キュモール」
尊称の「フォン」を付けずに名を呼ぶルブラン。
「そもそも我らシュヴァーン隊は、 ダミュロン・アトマイス隊長首席の命に従うのみ」
「まあ、ウチの隊長は不在が多いので、隊長の命令がなくとも自主的に動けるようになってるんですけどね」
「騎士として恥じぬ行動をしろ。それに沿っていれば、後でフォローしてくれますし」
「本当にいい上司ですよ。ダミュロン隊長首席は」
「貴様らっ! シュヴァーン隊の…」
いつに間にかキュモールの周囲を固めていたのはシュヴァーン隊の小隊長たちで、伝令に来たキュモール隊の騎士もあっさり捕まっていた。
そしてキュモールが拘束された事を皮切りに、混成部隊を中心とした8割が離反する。
「キュモール隊の騎士は全て捕えろっ‼︎」
「反逆の意思がない者は武器を捨てろ!」
「歯向かうなら容赦はしない‼︎」
続いて旧フレン隊ことソディア隊、途中で合流して同行したユルギス隊とソムラス隊もまた、キュモールに賛同する騎士達を拘束していった。
ユーリらの作戦の連絡を受けてるフレンは、ヘラクレスに頼らず、騎士達自身の手で戦わないといけないと理解していた。拘束したキュモールを始めとした叛逆者の見張りに一部を残し、大半の騎士達はフレンの前に整列した。
それと同時に、ダングレストから武装したギルド員が次々と姿を現した。そしてその一部は、キュモール隊が仕掛けた魔物寄せを処理するために散開する。残った大集団の中央にいたハリーの顔はどこか吹っ切れた様子で、腹を括った静かな光を目に宿していた。
フレンは視線を向け檄を頼もうとするが、ユルギスとソムラスは示し合わせたように首を左右に振る。二人の隣にいる自身の副官だったソディアもまた、促すようにフレンに対して一つ頷いた。
腹を括ったようにフレンは手綱を操り、騎士達の前へと騎馬を進めた。
「騎士団諸君‼︎ 目の前には魔物の群れ、その背後には類を見ない強大な魔物が控えている」
「テメエら! どんだけ魔物が多かろうが強かろうが、俺らが街を護るしかねえんだ‼︎」
示し合わした訳ではないのに、ダングレストを前に集結する魔物集団を挟み、フレンとハリーがそれぞれ声を張り上げる。
「容易い相手だと言わない。逃げたくなるのも無理はない。しかし思い出して欲しい。僕らがなすべきことを! 僕らが護るべき者を!」
「街が蹂躙されたら、ドンが目ェ覚ました時に何と言う? どう落とし前つけるつもりだ⁈ ドンが守ってきた街を護れずどうする⁈」
騎士団とギルドが対峙し争う直前の檄に見えるが、両者が敵と見做すのは蠢く魔物の大集団であった。
「僕らは騎士だ! その剣で民を護る騎士だ! 護るべき民に帝国もギルドも関係ない!」
「危機に瀕して帝国に縋りつくのがギルドユニオンか⁈ テメエらで護るのが筋だろう⁈」
魔物を一瞥した後に振り向き、フレンは騎士達を、ハリーは傭兵達を見据えた。
「強制はしない。だけどもし志を同じくする者がいるなら、この一戦、共に戦おう!」
「怖気付いたヤツは引っ込んで街の出入り口を固めろ! 血の気の多いヤツは前に出ろ‼︎」
フレンは剣を引き抜き、ハリーはギルドユニオンの旗を掲げる。
「帝国騎士団、前進!」
「ヤロウ共! 力を見せつけてやれ‼︎」
地響きのような雄叫びを挙げ、橋付近に布陣していた騎士団の騎士達、ダングレストの前に集結していたギルドの戦闘員達は、囲い込むように魔物の群れに襲いかかった。
魔物寄せの処理は終えたらしく、魔物が新たに出現することはなかったが、〈咬み裂くモノ〉は完全にダングレストを標的と見据え、周辺の魔物達を統率し始めた。
やがて混戦となり、騎士団やギルドと言った所属の区別なく、互いが庇いあって魔物の数を減らしていく。ヘラクレスから出てきたユーリらが駆け付けたのは、ちょうどそんな時であった。
ユーリらの姿を確認するや否や、フレンとハリーは声を上げる。
「魔物の首領を撃つ! 道を作れっ‼︎」
「
2人の指示に従い、騎士団の騎士たちは、ギルドの戦闘員たちは、魔物の群れを一斉に左右へ押しやり、〈咬み裂くモノ〉へと至る道をこじ開けた。
「行くぜぇえ‼︎」
ラピードが先行して、魔神犬や瞬迅犬で撃ち漏らした魔物を狩り、ユーリを先頭にカロル、リタ、殿をジュディスが守り、〈咬み裂くモノ〉へと向かった。
そして攻撃範囲内に入るや否や、最近立て続けに起きた様々な事件に対する鬱憤を晴らすように、ユーリは鋭い剣技を放った。
「蒼破斬! 蒼破追蓮っ! 」
ユーリの攻撃を受けて硬直した〈咬み裂くモノ〉の背後へ、カロルは回り込む。
「臥龍アッパー! 魔王猛襲ライズ‼︎」
大剣での連続攻撃で高く打ち上げられた〈咬み裂くモノ〉に、ジュディスは空中で追いついた。
「天月旋! 月破墜迅脚っ‼︎」
空中でジュディスの連続攻撃を受け、落ちてきた〈咬み裂くモノ〉を、ユーリは凶暴な笑みを浮かべて待ち構えていた。
「まだまだぁっ! 飛燕猛襲牙‼︎ 」
拳で敵を浮かせた後、跳び上がり回し蹴りと斬撃を叩き込み、振り下ろしで地面に叩き落とした。そして着地したユーリがバックステップで下がると同時に、リタは上級魔法の術式を構築し終えていた。
「これで終わりよ! クリムゾンフレアっ‼︎」
極限まで高温に高めた炎球が頭上から押し潰すように解放されて、断末魔と共に〈咬み裂くモノ〉は燃やし尽くされ灰燼と化した。
ユーリらが〈咬み裂くモノ〉を撃破した途端、魔物らの動きが目に見えて混乱し始めた。
「殲滅しろっ‼︎」
「畳みかかれぇ‼︎」
そして負傷者を多数出すも、死者を出すことなく、全ての魔物の討伐に成功した。
騎士とギルド員が互いの健闘を讃えあい、勝利に喜ぶ姿を、ダングレストの空の茜色の光が照らしていた。
帝都崩壊辺りのフレンの見せ場を組み込みました。ハリーもゲームより三割り増しに漢気が上がっているのではないかと…
あと、ルブランと凸凹コンビの見せ場です。