TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



御剣の階梯(ゲーム内はリタへの負担大きすぎる)

 

 アイフリードとサイファーはダングレストの守りを固めるため残ってくれると言い、ユーリらは王都へ向かう事になった。

 フレンをユーリと同行させて先行させることにし、キャナリは本隊の騎士たちと共にヘラクレスで帝都に向かうことになった。

 ユーリらがバウルが運ぶ船に乗り込んだその時、ジュディスの通信魔導器にヘルメスから連絡が入った。

 

 ペルレスト。

 カプワ・ノール近くにある、親衛隊長のナイレンの出身でもある地方都市。次期皇帝候補のヨーデルが身を寄せていた場所でもある。

 少し前にファリハイドから移ったヘルメスは実験施設に篭っているらしく、リタとジュディスが迎えに行くこととなった。ユーリと残りのメンバーは、一足先に戻って情報収集に努めていた守備隊長のユルギスから帝都の現状を聞いた。

「ユルギス隊長、帝都の結界が無くなったと聞きましたが」

「それは間違いない。それどころか帝都の内部は高濃度のエアルが溢れかえっている状態と言う話だ」

「ヨーデル殿下は?」

「殿下はペルレストを出立し、帝都を急襲して奪還。その後に結界システムの異常を察知した後、速やかにエルカバルゼへ後退した」

「帝都の住人は?」

 下町の住民を心配しているのか、一段低い声でユーリが尋ねる。

「元々反乱で大多数の住民が避難していた。ヒスーム隊とシュヴァーン隊の誘導で、下町の者を含めて全てエルカバルゼに避難済みだ」

「そうか……」

「ユーリ、良かったね」

「はっ! しぶとい奴らばっかだから、そこまで心配してなかったぜ」

 そう言いつつもユーリは、厳しい表情から一気に緩めた。

「キャナリ中隊長、ファリハイドのゲアモン隊長、ギルドユニオンとも連携を取って情報収集に当たっている。帝都内は高濃度エアルの影響と結界が消えたことが原因で、凶暴化した魔物が闊歩しているとの話だ」

「どうやって分かった?」

「親衛隊のエルヴィンからの報告だ。城内にはエアルが侵入してこないらしい。捕縛した者達の監視と警備のため、エルヴィンは帝都に残っている」

「キャナリ中隊長から聞きましたが、帝都の結界魔導器の制御システムは城にあるらしいですね」

「つまり、城内に入れば何とかなるってわけか」

「でもユーリ。そこまで魔物が溢れてるんでしょう? それに高濃度のエアルをどうにかしないと…」

 カロルがそう言った時、ラピードが耳を立てて立ち上がる。

 それを半ば合図にユーリらがいる会議室の扉が開き、リタとジュディスがヘルメスを連れて入室した。

「外まで話し声が漏れてたけど…高濃度のエアル、何とかなるわ」

「それは本当かい、リタ?」

 聞き返すフレンに答えるように、ヘルメスは抱えていた細長い物を包んでいた布を取り払った。

 そこには魔核が取り付けられた一振りの剣の姿があった。

「これは?」

複製宙の戒典(レプリカ・デインノモス)。父とリタが研究を続けていた『リゾマータの公式』の術式を刻み込んだ剣よ」

宙の戒典(デインノモス)の複製品か⁈」

 驚き声を上げたのはユルギスであった。

宙の戒典(デインノモス)って…皇位継承の証ですか?」

 いち早くその言葉に反応したのはフレンであった。

「その通り。ちゃんと許可を得た上で解析して、そして作られた複製品だ。エアルの乱れを鎮めるために手段として」

「エアルを鎮める? ってことは、もしかして!」

 ヘルメスの言葉に希望を見出したカロル。その言葉にリタは肯いた。

「これで高濃度のエアルから身を守れる。エステルを助けに帝都へ乗り込めるわ!」

 

 帝都ザーフィアス。

 エアルの光が舞う中、結界が無くなり侵入して凶暴化した魔物を葬りつつ帝都の街中を進み、ユーリらは王城へ入った。

 城内には親衛隊のエルヴィンだけではなく、イエガーの目撃情報を掴み、帝都がエアルで覆われる前に来たと言うゴーシュとドロワットも居た。エルヴィンの話によると、城内には侵入者は確認されていないが、一箇所だけ確認できていない場所があった。

 何者かによって扉が封印されたその場所は、謁見の間であった。そして結界魔導器(シルトブラスティア)の本体がある「御剣の階梯」は、唯一その謁見の間から行くことが可能であった。

 

 引き続き警備を続けるエルヴィンを残し、ゴーシュとドロワットを連れてユーリらは、謁見の間へ向かう。

 そして複製宙の戒典(レプリカ・デインノモス)で扉の封印を解いて中に入ると、ミムラがただ1人で玉座の側に立っていた。

「お前…情報にあったイエガー様と一緒にいた女!」

「イエガー様はどこですのん?」

 ミムラの姿を見るや否や、ゴーシュとドロワットは、剣を引き抜き躍り出た。

「別の場所へ移したわ。アレクセイも、レイヴンも、デュークも、最愛のイエガー様も…」

「居場所はてめえから吐かせればいいって話だな‼︎」

 そう言いユーリは複製宙の戒典を掲げてミムラへ走り寄る。しかし、見えない壁で阻まれてしまった。

「な⁈」

「ふふっ…すごいでしょう? 満月の子とオリジナルの宙の戒典(デインノモス)で作った多重結界よ。オリジナルならいざ知らず、複製品だったら解除にコツがいるわ」

「このヤロウ…」

「貸して! 私がやる‼︎」

 リタが複製宙の戒典を床に置きつつ、結界の術式との同期作業を行なって次々と解除していく。

「人質を使ってまで、ソフィアに何をやらせようとしている?」

「彼らを捕えているのは、人質目的だけじゃないわ。デュークはその複製品でも遜色なく扱えるから厄介だし、アレクセイとレイヴン、イエガー様は指揮系統を混乱させるため。本当はキャナリも押さえたかったけど…ソフィアだけじゃなくてフィアレンもゴネたから、不確実な方法しか取れなかったわ。それが原因で、ダングレストを落とせなかったのは想定外」

 そこて言葉を止め、ミムラは嫉妬で狂った笑みを向けた。

「確実に息の根を止めたかったわ」

「っ⁈」

「まあいいわ。目的は達成できたから」

 解除すべき結界はあと一つという所で、ミムラの足元から、光が浮かび上がってきた。

「待て! エステルたちを返せっ‼︎」

「ダメに決まってるでしょう? あ、お姫様は返してあげる。御剣の階梯の一番上、ガリスタ博士と一緒に居るわ」

 リタが解除を終えたと同時に、ミムラは姿を消す。

 その直後、地面の揺れを感じた。

「な…何⁈」

「確認は後回しだ! またエステル拐われちまう前に行くぞ‼︎」

 揺れへの動揺をすぐさま立て直し、ユーリらは御剣の階梯への階段を登って行った。

 

 登った先では、紫の半透明の球と化した複数から成る術式を前に、長い金髪で眼鏡を掛けた男が、多数の制御盤を出現させてキーを打ち込んでいた。

 紫の光の球に閉じ込められているのは…

「エステル‼︎」

「おい! エステルを離せっ‼︎」

 カロルとユーリの言葉に気づき、眼鏡の男…ガリスタが憔悴した顔で振り向いた。

「そんな事はどうでもいいっ! ミムラ様は…宙の戒典(デインノモス)がなければ制御が…」

 直後、エステルから衝撃波が放たれ、ガリスタはユーリ達の方へ吹き飛ばされる。

「うぅぁああああぁあっ‼︎」

 エステルは頭を抱え、その直後に紫の球はひび割れ弾け飛んだ。

 術式から解放され地面に降り立つも、エステルの目は何も映さず、ユーリらが名を呼ぶも何も反応を見せなかった。

「だ…ダメだ……制御不能…」

「ちょっと、どう言うことよ⁈」

「こ…古代兵器の復活に…莫大なエアルが必要で……結界魔導器(シルトブラスティア)のエアルを使った」

 そう言いガリスタが指差した先、遠く離れた海のど真ん中に、青く輝く石を戴く輪が見える。随分遠くにある筈だが形状まで見えることから、実物はかなりの大きさと予測できた。

「ミムラ様は『ザウデ不落宮』と呼んでいた。完全復活に成功したが、エアルの制御装置である満月の子が…」

「エステルは道具じゃねえ!」

「そうだ…道具として使えない…自力で制御できなくなり…結界魔導器のエネルギーを反転させたが、それでも制御できなかった。壊れた魔導器(ブラスティア)も同然…」

「エステルは魔導器(ブラスティア)じゃないわ! 人間よ‼︎」

「道具呼ばわりするのは止めろよな…元に戻す方法をとっとと教えろっ‼︎」

「壊れた魔導器(ブラスティア)は、破壊する以外に止める術はない! だが、これでは破壊することも困難…」

「てめぇ…いい加減にしろっ‼︎」

 その時、虚な目をしたエステルがこちらを向いた。

「うわぁあああ‼︎」

 ガリスタは脱兎の如く逃げ出した。

「おい待てっ!」

「あのメガネは私たちが追うわん」

「捕まえて元に戻す方法を聞き出す!」

 そう言いドロワットとゴーシュは、ガリスタを追って階段を駆け降りた。

「リタ、複製宙の戒典(レプリカ・デインノモス)でどうにかできないか⁈」

「…まずエステルを正気に戻さないと、こっちからの操作を受け付けてくれない!」

 

 その時、エステルの口が震えながらも言葉を紡いだ。

 

 コ ロ シ テ

 

 その意味を理解した途端、ユーリの中から怒りが噴出した。

「ワンっ!」

 ラピードの鳴き声で怒りから我に返り、ラピードが見せつけるように向けて来た荷袋にユーリは視線を向けた。荷袋の隙間から見える、エステルの髪と同じ桃色のそれは…

 その正体に気づくや否や、ユーリは荷袋からそれを取り出し、エステルの前に掲げた。

「エステル! これを見ろ‼︎」

 薄桃色の花を模った髪飾り。

 エステルがユーリに預けた彼女の母親の形見。

 ユーリが見せてきた母の形見に、エステルの視線が固定される。

「そ……れ…は……」

 エステルの目に微かながらも光が灯る。

「一体、お前は何やってんだよ!」

「わたし…イヤ……ダメ……止まらないっ‼︎ もう、もう…」

「……オレの目を見ろっ! エステルっ‼︎ こんなところで死ぬつもりかよ⁈ 死んでもいいのかっ‼︎」

「っ⁈」

 感情が消えていたエステルの天色の瞳から、ふつりと涙が溢れ出てきた。 

「エステル…」

「エステルっ!」

「エステルぅっ! しっかりしてっ‼︎」

「帰ってこい! エステルっ‼︎ お前はそのまま、道具として死ぬつもりか⁈」

「わた…わたしは……わたしはまだ人として生きていたいっ‼︎」

 皆に呼びかけに応えるように感情が溢れ、満月の子の力がエステルの心のままに放たれる。

 辺りを覆っていた高濃度エアルの靄が晴れ、歪に繋がっていた結界魔導器(シルトブラスティア)との接続が絶たれた。

 

 しかしその直後…

 

「うう……あぁああっ‼︎」

 満月の力を抑えるものが無くなった結果、術式が無数に構築され赤黒い球状となってエステルを閉じ込め、力が膨れ上がり暴走し始めた。

「エステルっ!」

「…うっ……ぐう……み…みんな……逃げて‼︎」

 力は暴走するも、カロルの呼びかけに答えるエステルを見て、ジュディスは一つ頷く。

「…意識はある! リタ、私がエアルの流れを読んでフォローするわ!」

複製宙の戒典(レプリカ・デインノモス)を!」

 リタの言葉に応えて、ユーリが複製宙の戒典の力を解放する。同時にジュディスがナギーグで読み解いた情報を転送し、リタは周辺に複数の操作盤を出現させた。

「繋がった! 待ってて、エステル‼︎」

 宙の戒典(デインノモス)の複製には、ヘルメスだけではなくリタも深く関与していた。ソフィアが数年がかりで解読したオリジナルの 宙の戒典(デインノモス)のデータは全てリタの頭に入っていた。そこでリゾマータの公式は単一のものではなく、複数の公式が複雑に絡み合った合成公式であることが判明。細部を理解するためには実証実験が必要であったが、旅の中でエステルの術式発動を観察し続けた結果、データは充分揃っていた。

 付け焼き刃の知識による突貫作業ではなく、積み重ねた確固たる知識と技術を基に命令式を組み立て、リタは術式を構築していった。

 

 そして…

 

 暴走した術式から解放されたエステルは、ユーリの胸に飛び込んだ。

 

「おかえり」

「……ただいま」

 

 エステルは涙を一粒溢した。

 

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