TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



罪と罰(叛逆罪でクズ貴族のお掃除)

 

 ユーリらの後詰という形で、エルカバルゼに居たヒスームと共にキャナリが帝都に入った。エアル濃度の平常化を確認するため、帝都の市街へとヒスームは向かい、キャナリは王城へと足を進めてフレンの出迎えを受けた。

 エステリーゼ姫の奪還に成功するも反乱勢力についてはミムラとガリスタ以外は城に居なかったこと、ガリスタのみが捕縛できたことをフレンは報告した。

「帝都の結界は? まだ復旧していないみたいだけど」

「まだ一部の結界機能がエステリーゼ様の能力制御に用いられておりまして…」

 大半の能力は複製宙の戒典(レプリカ・デインノモス)を用いて、エステルの能力同士の相殺で抑えるように制御機構を構築できていた。しかし、エステルが魔法や技を使う時に発生する余剰エアルの制御は、未だに帝都の結界機能の一部が転用されている状態であった。

「代替となる制御方法の確立を急いでいます」

「確か宙の戒典(デインノモス)はエアルの暴走を鎮める能力に特化していると聞いたけど、何とかなりそうなの?」

「オリジナルは誰でも使えるようにするために、エアルの鎮静化など発現できる方向性が固定化されているそうです。しかし複製宙の戒典は、刻まれている多数の術式を組み合わせることで、多様な機能が使えると言っていました」

「むしろオリジナルじゃ無い方が都合が良かった。加えて術式について理解した上で複製した者だからこそ、可能と言うわけね。それにしても…多数の術式を刻むのに耐えられる代物がよくあったわね…」

「実は…ヨーデル殿下の剣で…」

「え⁈ あのレアメタル製の⁈」

「はい。耐えられる素材が入手できなかったらしく…自身は剣を振うのは苦手だからと、ペルレストにいる時にヘルメス博士を呼び出して、下賜したそうです」

「…流石はヨーデル殿下と言ったところね。帝位に就く…までいかなくとも、次期皇帝としての承認は早々にしたい所ね。そのために一刻も早い帰城を実現させないといけないのだけど…」

「帝都の結界、明日までには何とかするって、リタは言ってたぜ」

 そう言い会話に入ってきたのは、ユーリであった。

「ウチの首領から伝言で、城の騎士待機室を使えるように準備したから、そこで今後について話し合いたいってさ」

「分かりました。ヒスーム隊と親衛隊に城下の魔物の掃討を指示してから向かいます。先に行って待っていて下さい」

 そう言いキャナリは、ヒスームとエルヴィンの所へ向かった。

 

 城内の騎士待機室。

 キャナリは準備を整えたカロルに礼を言って、席について紅茶に口をつけ、簡単な状況確認と情報共有を始める。

「エステリーゼ姫の奪還は叶いましたが…オリジナルの宙の戒典(デインノモス)はカクターフらが持っているのね…」

「キャナリ中隊長。その…ステル副隊長(イエガー)を探していたあの少女2人は?」

「ユーリと同じ立場、騎士団長直属部(シュヴァーン)隊の協力員よ。ステル直属のね」

「アイツらには助かったぜ。ガリスタまで手が回らなかったからな」

 ガリスタはゴーシュとドロワットに捕えられ、フレンの手で城の地下牢で尋問を受けていた。

「尋問はどうですか?」

「一通り終わりました。反乱勢力で残っているのは、カクターフ、グラナダ、フィアレン、ミムラ…」

「そしてソフィアと言うわけか」

「古代兵器を復活させるって言っても、たった5人でどうするつもりなんだろう…じゃなくて…なんでしょうか?」

「言葉に気を遣わなくて良いわよ、カロル君。話しにくいでしょう?」

 そうカロルに笑顔を向けたのち、キャナリは静かに口を開く。

「キュモールを始めとした反乱勢力の騎士、そして同調した貴族は全て反逆罪として捕縛済み。でも楽観視できないわ。ガリスタ・ルオドー博士ですら『ザウデ不落宮』の詳細は知らなかったし、どれほどの脅威か予想がつかない」

「とにかくザウデに乗り込んで、決着つければ万事解決だろう」

「…乗り込むつもりなの?」

「結界の復旧を終え次第、相手の準備が整う前に叩く方がいいかと」

「生憎こっちは少数なんでな。騎士団と違ってすぐ動ける」

 フレンの言葉を補うように、ユーリも言葉を続ける。

「それにまだ仲間が捕まったままだし、いい加減におっさん助けてやらねえと…」

「ドンやハリーに頼まれてるしね」

「アレクセイ騎士団長、ダミュロン隊長首席、ステル副隊長、そしてデューク前親衛隊長。未だに囚われたままなのは明らかです。一刻も早く救出しないと…」

「つまり、貴方方はザウデに先行して下さると言う認識でよろしいのでしょうか?」

 凛とした少年の声が聞こえ、キャナリとフレンは起立して騎士礼を取る。ユーリとカロルが二人の視線の先を向けると、ヨーデルの姿があった。

 

「ヨーデル殿下…結界は復旧しておりません。何故帝都に…」

 そう言いつつキャナリは非難めいた視線を、ヨーデルの斜め後ろに立つ親衛隊長のナイレンへと向けた。

「率先して帝都の安全性を知らしめる必要があると押し切られてな…まあ、次期皇帝への指名に至った上でのパフォーマンスだ」

「評議会はヨーデル殿下を認めたの?」

「避難先のエルカバルゼで開いた臨時会議でな。評議会に所属する貴族の多くが国家反逆罪で捕縛された上、帝都に住めなくなる原因を作った。市民らの怒りの矛先が完全に向く前に、保身に走った結果だな」

「変わり身の速さは相変わらずね…」

 そう言いキャナリは自身が座っていた席をヨーデルに譲る。その裏でカロルは新たに2脚の椅子を隣の部屋から持ってきて、キャナリとナイレンに勧めた。

「で、俺たちはザウデに行っても良いってことだな?」

「どうせ止めても行くだろう? それにフレンの言うとおり、時間を与えるほど不利になる可能性が高いが、騎士団が向かうには時間がかかる。騎士の逮捕者も多いから、帝都の守り強化も含めて再編成が必要だからな」

「ナイレン隊長の意見は分かりました。キャナリ中隊長は?」

 ヨーデルに尋ねられ、キャナリは眉間に皺を寄せ暫し考えたのちに口を開く。

「本来は騎士団長直属部(シュヴァーン)隊が少人数で先行して情報収集するのですが…」

「それを担う諜報関係の指揮命令者(レイヴンとイエガー)が不在な上にアレクセイ団長閣下もいない状態で、新たな任務が遂行困難と言えますね」

「ユーリ・ローウェル君はシュヴァーン隊の協力員…諜報関係者ですので、ヨーデル殿下が代わりに依頼するのは不自然ではありません」

「評議会や他の騎士たちへの説明は問題ないと言うわけですね。分かりました。凛々の明星(ブレイブ・ヴェスペリア)にお願いします」

 そう言いヨーデルは立ち上がってカロルの方を向く。それを見たカロルもまた慌てて席を立ち、付け焼き刃だが見よう見まねで胸に手を当てた。

「よ…夜空に瞬く凛々の明星の名にかけて、お仕事お引き受けします」

 緊張で噛みそうになりながらも、カロルは仕事を引き受ける時の口上を告げることができた。

 

 ザウデ不落宮へ行くメンバーは、ユーリら凛々の明星(ブレイブ・ヴェスペリア)に一任された。リタは同行すると言っているが、エステルは能力制御の状態次第で判断することになった。さらに、ゴーシュとドロワット、そして騎士団からフレンが同行することになった。

 フレンではなくキャナリが同行する案もあったが、フレンでは残存兵力の指揮統率能力に不安があった。千名を超える騎士の運用は、アレクセイとダミュロン(レイヴン)、キャナリしかできない現状からも、キャナリは帝都に残る決断をした。

「本当にいいのですか?」

「帝都を、民を守るのが第一です。キチンとやらないと、皆に叱られてしまうわ」

「…普通に心配って言えばいいじゃないか…アンタの旦那も兄貴も友人も上司も…」

「ユーリ!」

 キャナリの心情を直接指摘し、救出対象者はともかく捕縛相手まで含めるユーリを嗜めるフレン。そんな二人を見て、キャナリは苦笑いを

「そうね……ありがとう。皆を頼みます…」

 笑みを浮かべるも、真剣な目をしつつキャナリはそう言った。

 

 キャナリとの話を終え、ユーリは仲間たちに、フレンは部下たちにところへ向かうため、共に王城の赤絨毯が敷かれた廊下を歩いていた。

「なあ、今でも思ってんのか?」

「……何が?」

「理由は手段を正当化しない。どんな事情があったとしても、罪は罪」

 ユーリの問いかけの真意がわかり、フレンは足を止める。

「あの時僕は…相当頭に血が昇っていた」

「まあ、俺も何が何だか分かんねえって、ムシャクシャしたな」

「……悪いのは法が守られないからであって、きちんと運用されれば、理不尽に虐げられることは無くなる……虐げられる者を護るために誰かが手を汚すことも…」

「フレン?」

「何かを護るためには、致し方なく何を傷つけることもある。止めるために悪人を傷つけた罪を、誰かを護ろうと心を砕いた者に背負わせるのではなく、社会全体に背負わせる。法律には、正義を為そうとする者が罪を負うの防ぐ側面もあるのだと、僕に教えてくれたのはソフィアさんだった…なのに何故…」

 一呼吸置いたのち、フレンは再び静かに口を開く。

「ユーリ…ある考えが過ぎったんだ…害悪でしかない者に大きな罪を犯すように仕向ければ、庇い立てする者すら罪に問えるほどの大罪をならば、誰にも邪魔されずに排除できるんじゃないかって…」

「……おい、もしかしてソフィアは⁈」

「…わからない……僕はソフィアさんを深く知っている訳ではないから…それでも…」

「罪は罪だろう」

「ユーリ?」

「どう言う罰を与えるかを考える時に、理由を加味すればいい。カロルが言ったこと、キャナリ中隊長が修正した方が良いと言った事は、そう言う意味じゃねえのか?」

「……僕は」

「お前は間違っちゃいねえよ。罪を無かった事にするのと、事情を考えて罰を減らすのは、全く意味が違う。まあ…俺もあの時初めて気づいたんだけどな」

 そう言うユーリに対して、フレンは複雑な表情を見せた。

「…僕より先にユーリが気づくなんて…納得いかないな」

「俺だって少しは成長しているんだぜ」

 そう言いユーリはフレンに左拳を向ける。

「ソフィアの今後は俺たちに任せろ」

「ああ。君とカロルなら信頼できる」

 ユーリの左拳に、フレンは軽く右拳を当てた。

 

 翌日、リタは帝都の結界を復旧する事に成功した。

 エステルの能力については、術技発動時は複製宙の戒典(レプリカ・デインノモス)の半径20m以内にいること、術技の使用制限を課すことで制御できるようにしていた。使用制限を超過した場合、緊急シグナルとして身体に痛みが出る。術技を使う必要性に駆られるザウデへの同行を、リタは止めようと説得しようとした。

 しかしエステルの意思が強いこと、リタ以外が「皆でフォローすればいい」と言う意見であったことから、予定通り全員で向かうことになった。

 

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