pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
ザウデ不落宮。
海上のど真ん中に聳え立つ、大きな指輪のような建築物。遮蔽物がない海上を抜ける必要があるが、狙い撃ちされる危険が大きいため、どう進入するかユーリたちは考えていた。
その時、
「……ユーリ。バウルを通じてベリウスから連絡があったわ。隙を作るから侵入しろって」
「ジュディ、俺たちがザウデに侵入するって、知らせたのか?」
「ええ。何か情報を知っているのか聞いたのだけど…ただ『ヒトも始祖の隷長も触れるな』って警告を受けただけ…動かしてはいけない物みたいね」
「わざわざ出張ってきたと言うことは、復活させるのは相当ヤバい代物ってことか…」
「上と反対側に意識が入っているから、こっちから低空で近づけばいいんじゃない」
「へえー突っ込むんだと思ったけど、ちゃんと見て考えてるのね」
「…相変わらずリタは大雑把だよね…」
小声のつぶやきであったが聞こえていたらしく、リタはカロルの頭を本の角で軽く叩いた。
「カロル先生の案を採用。行けるか?」
ユーリの声に応えるように、バウルは少し低めの声で鳴いた。
「『当たり前のことを訊くな』って、ちょっとご機嫌斜めよ」
「そりゃあ悪かったな。頼むぜ‼︎」
バウルは水面スレスレの低空を高速で飛び、ザウデ不落宮へと向かった。
ザウデ不落宮の中は水音が絶えない幻想的な空間となっていた。
石畳の脇を囲むように上から海水の水幕が流れ落ちる場所。水を嫌がるラピードを宥めつつ、一行は先へ進んでいく。
そして奥中央、石舞台の間に3人の人影が居た。
中央にミムラがいて、上機嫌な様子だったが、ユーリらが連れてきたのがゴーシュとドロワットしか居ないことに気づき、あからさまに気落ちした表情を見せた。
「キャナリが居なくて残念ね。せっかく見せつけたかったのに」
そう言い横にずれると、橙色の騎士服を纏った男が2人姿を現した。
「ダミュロン隊長…」
「ステル副隊長⁈」
ユーリとフレンにとって見覚えのある、
特にダミュロンの別の面であるレイヴンを知っているユーリらにとって、背筋を伸ばした厳格な気配や、墨色の髪を下ろして片目を隠し表情が読めない姿は、大袈裟な表情を見せ飄々としたギルドユニオンの幹部とは全く異なる様子で、その豹変ぶりに驚くしかなかった。
「本当に帝国騎士だったんだ…」
「しかも隊長格」
「私、気付かなかった…」
「人は変わるものよね…」
カロルとリタは目を丸くし、エステルとジュディスは感心したように言葉を溢した。
それはゴーシュとドロワットも同様らしく、濃鼠色の前髪を下ろして緩やかに左右に分け、穏やかで物静かな雰囲気を纏う、上司の見慣れない騎士姿に驚き動きを止めていた。
「イエガー様⁈」
「本当にシュヴァーン隊のステル副隊長が、彼女らの言う『イエガー』だったんだね」
「おっさんと同じように、ギルドにも籍があったってわけだな」
少々驚くフレンを脇に、シュヴァーン隊の諜報機関としての性質を知っているユーリは納得する。
「私の持つ記憶では、『ダミュロン隊長』とか『ステル副隊長』と言うより、『シュヴァーン隊長』と『イエガー』の方が馴染みがあるけど…まあ2人は私が知っている流れと大分変わってしまったし、結局のところ本人だしどうでもいいわあ」
「その『記憶』や『流れ』と言うのは…『テンセイシャ』だから知っているのですか?」
エステルの言葉を聞き、ミムラは不快そうに眉を顰める。
「アレクサンダーが漏らしたわね…本当に、あの愚弟は…」
「否定しなかったな。お前らの目的は一体何なんだ⁈」
「そうね。カクターフらは古代兵器を手に入れて、揺るがない権力を得ることが目的みたいだけど、ソフィアとフィアレンは違うみたい。でも、詳しくは知らないわ」
「貴女の目的とはまた別ってことですか?」
「そうね。まあ、私の目的はもう叶ったんだけどね」
「この2人を、私だけの騎士にする」
ミムラの言葉の意味が分からず、ユーリらは言葉を失う。いち早く復帰したカロルが静かに尋ねる。
「えっと…どう言うこと?」
「そのままの意味。イエガー様のシュヴァーン隊の隊服ヴァージョンだなんて、[SSRもの]だわ‼︎」
「何言ってるか、さっぱり分からないわ」
「私もリタに同感ね。それに…さっきからおじさまたちの様子、何か変よ」
ジュディスの言うとおり、レイヴンとイエガーは先ほどから一言も声を発せず、表情を変えることもない。2人に似せた精巧な人形と言われてもおかしく無い様子に、ユーリは不気味さを感じる。
「本当は自然体の2人がいいのだけど…ソフィアが色々手を出して、キャナリが生きているじゃない? 今更キャナリが死んでも、私が知ってる2人になる訳じゃないって気づいてね」
ミムラの言葉を聞き、ユーリはある可能性に至り、胃の腑が急速に冷える感触を覚えた。
「…だからレイヴン達を操ってるのか?」
「そう言うこと」
「2人を元に戻すんだ!」
珍しくフレンも怒りを顕にし、剣の柄を握る手がギチギチと鳴っていた。
「えー…それは無理よ。だって、どう戻すかなんて私も知らないもの…あ、
「
リタが疑問を口にしたのを見て、ミムラは口を弧にして笑った。
「2人とも、
ミムラの指示に従い、レイヴンとイエガーは騎士服の前開きを緩め、左胸を露わにした。そこには…
樹木様の銀縁で囲われた、赤く脈動するように輝く
「……なに…これ……
「
声を震わし発せられたリタとジュディスの言葉に、ミムラは拍手と共に「正解」だと称賛した。
「
「……もしかして心臓を…」
悲鳴に近いエステルの言葉を聞き、カロルはレイヴン達の身に起きたことを理解し、顔を真っ青にして得物を落としそうになった。
「こっちの方が確実に操れるって聞いたし、何より[私が知っている]完璧な2人の姿になったわ‼︎」
全く悪意が無い声と表情。
やっていることは生身の人間を使った人形遊び。
服を変えるに飽き足らず
「てめえ……ふざけやがって‼︎」
自身の仲間にやっている所業に対し、ユーリは怒りで震え剣を落としそうになる。行動に移るのが遅れたユーリを尻目に、ゴーシュとドロワットが飛び出す。
「お前っ‼︎ 先ほどから聞いていればっ‼︎」
「イエガー様っ‼︎」
しかしミムラはレイヴンとイエガーの背後へと移動し、2人の刃はイエガーによって阻まれ、手加減なく横へ吹き飛ばされた。
「でもね…そろそろ飽きちゃって、折角だから最高のショーを見たいと思ったわけ」
ミムラの声に反応し、レイヴンは真紅の長剣を鞘から引き抜き、イエガーは鎌から銃に変形させてユーリらに向けて構えた。
「操られて仲間と闘うって、胸熱展開じゃなあい?」
「……演劇とかの話の中だけにしとけよな」
「私にとって[この世界]と貴方たちは、正にそう言う存在よ。せっかく生まれ変わったんだから楽しまないと…」
「『生まれ変わって』……もしかして『テンセイシャ』って…」
「この世界の小説でもよくある設定でしょう? 生まれ変わって、前の人生の記憶を持っている者…『転生者』のこと。私たちはさらに特別。違う世界、異世界の記憶があるんですもの」
エステルの言葉を肯定し、半ば謳うようにミムラは語る。
「私が前に居た世界にはね…この世界で言う演劇や小説みたいな娯楽で、[テイルズオブヴェスペリア]と言う物語があってね…まさにこの世界のことが描かれているの。つまり、私たちはこの世界の『本来の姿』を知っている。過去も未来も…」
自身の持つ知識が絶対。
ユーリらを娯楽対象と言い切り、人格も人権も無視した所業を楽しげに行うミムラに対して、全く違う生き物のような気持ち悪さをユーリは感じた。
「その記憶で俺たちのことを知っていると言いたいんだな。で、その妄想通りにするのがお前の目的か⁈」
「ん〜私はただこの世界で楽しみたいだけよ。多分、それをしようとしているのが、フィアレンとソフィアね」
「なに⁈」
「はいはい。前方注意〜」
ユーリに向かってレイヴンの連続の剣技が繰り出される。辛うじて受け止めて捌くが、重い剣撃に押されて、ユーリはミムラとの距離を一気に離された。
「じゃあモニター越しで観戦するから、頑張ってね」
そう言い残し、ミムラは転移魔導器で姿を消す。
直後、レイヴンが放った風の上位魔法テンペストがユーリらに向かって解き放たれた。
エステルのレジストで軽減されるも、小さくは無いダメージを受ける。回復のためにエステルはハートレスサークルを詠唱し始めるが、レイヴンのウィンドカッターで妨害された。
カロルがエステルの回復に向かう中、レイヴンが別の魔法の詠唱に入るのをみて、ユーリとフレンが攻撃を仕掛けようとするが、イエガーが連射で牽制する。隙を縫ってラピードが攻撃するも、レイヴンの術発動の方が早く、エアスラストで吹き飛ばされた。そして術発動直後にレイヴンは距離を詰め、剣を振り下ろし放った重い一撃で、ユーリとフレンをまとめて吹き飛ばした。
一方で皆の時間稼ぎの間にリタが組み上げた上級魔法は、援護していたジュディス諸共リタをイエガーが薙ぎ払って妨害され、不発に終わってしまう。追撃しようとするイエガーにゴーシュとドロワットが躊躇いながらも攻撃を仕掛けるが、レイヴンのアリーヴェデルチで花弁と共に吹き飛ばされた。
こちらは操られていると知っているから、本気で闘う事は難しい。
相手は操られているから、手加減なく本気の殺意を向けてきた。
レイヴンが剣を振う時はイエガーの銃弾が援護し、レイヴンが魔法の詠唱中はイエガーが鎌を振るって時間を稼ぐ。ダメージを与えても、レイヴンの風属性の治癒魔法が素早く癒やして振り出しに戻る。
エステルやフレンの治癒魔法は妨害され、カロルの回復では間に合わず、少しずつユーリらのダメージが蓄積されていった。
その時、若葉色に輝く
そこに居たのは…
「ミムラ⁈」
再び姿を現したミムラは、ユーリらが戦っている事を介す事なく、両手に持っていたもの…
「星輝きて、珊瑚萌え、この海の安寧を知る」
すると
「何だ?」
「転移術式⁈」
リタが術式の正体を言い当てるや否や、術式は作動し、ユーリらはその場から姿を消したのであった。
「戦う姿、目の保養だったわ〜。うん。これで悔いなし! あとはヨロシク」
無人となった石舞台にミムラはそう言い軽く手を振った。
誤字の指摘、ありがとうございました