TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



望郷の墓所(中ボスもラスボスも味方です)

 

 景色の暗転に続いて酷い目眩に襲われ、ユーリは思わず膝を着く。

「ワンっ!」

 ラピードの鳴き声を聞いて意識を保つユーリ。そしてラピードに袖を引っ張られ、ユーリは頭を左右に振って周囲を確認した。

 

 ボンヤリと橙色の光照魔導器(ルクスブラスティア)が光る小部屋。

「ここは…」

 やがて目が闇に慣れ、ユーリの周辺に倒れ伏した仲間の姿を見つけた。

「ユーリ?」

 隣に居たエステルが上半身を起こす。

「エステル、無事か⁈」

「私は…でもみんなが……」

 声に反応を見せない仲間の周囲に、光の粒子が絶え間なく床から浮かび上がっていた。

「この光…エアル?」

「高濃度エアルが原因か? だったら…」

 ユーリは複製宙の戒典(レプリカ・デインノモス)の力を放ち、小部屋のエアルを払った。

「大丈夫か?」

 声をかけると皆はようやく反応を見せてくれた。

「…助かったわ…ここはエアルの濃度が高くて…」

 何とか起き上がったジュディスが答える。

「ガキんちょ、大丈夫⁈」

「うう……まだクラクラする」

「子供の方がエアルの影響を受けやすいから、エステルかユーリの側に…」

 リタがカロルにそう言った直後、何かを見つけたラピードが奥へと駆けていく。

「ウワウっ‼︎」

「どうしたラピード……」

 その先には、レイヴン(ダミュロン)イエガー(ステル)が倒れ伏していた。エアルを払ったはずだが、2人は起きる気配がない。

「「レイヴン⁈」」

「「イエガー様っ‼︎」」

 エステルとカロルがレイヴンに、ゴーシュとドロワットがイエガーに駆けつけ起こそうとしたその時。

 

 パキン

 

 何かが割れる音がして、騎士服の前あわせの隙間から、色石の粉がサラサラ落ちてきた。

 それを見たジュディスの顔色が変わった。

魔核(コア)の欠片…」

 胸元にある魔核(コア)と言うと思い当たるのはただ一つ。それに思い至ったリタは、血相を変えてレイヴンの騎士服の胸元を開いた。

 そこには…

「何よ…これ……」

「おい、リタ! レイヴンは無事か⁈」

「無事も何も…魔導器(ブラスティア)は壊れてるけど…これって、胸の皮膚の上に貼り付けてるだけよ!」

 そう言いリタは、半ば怒りながらレイヴンの胸から剥がした平べったい魔導器を皆に見せた。

「え……でもミムラは心臓魔導器(カデスブラスティア)って…」

「こんな紛い物で騙すなんてっ‼︎ あー腹立つっ‼︎」

 リタはイエガーの方も確認するが、レイヴンと同様の魔導器が、胸に皮膚に貼り付けてあるだけであった。

 それを見たゴーシュとドロワットは安堵した様子で、目を潤ませていた。リタも目を潤ませたが、それを周りに見られるのは恥ずかしいからか、いつも以上に荒れた様子を見せる。

「心配して損したっ‼︎ 第一、心臓の代わりをする魔導器(ブラスティア)なんて見た事も聞いたこともないわよっ」

偽物(イミテーション)にしては凝っているわ…でも、何のために?」

「ん……」

 リタとジュディスの声に反応するように、レイヴンに口から声が漏れ出た。

「レイヴン? 」

 名を呼ばれて意識がハッキリしてきたらしく、レイヴンの瞼が動きゆっくり開いて翠の目がぼんやりと周囲を見た。

「………」

 そしてエステルの姿を認めるや否や、驚き起き上がった。

「……え…嬢ちゃん⁈ リタっちに少年⁈ ジュディスちゃんに青年にフレンちゃん、ワンコまで…っつーかここどこよ⁈」

「…なんですか、うるさい……ゴーシュにドロワット?」

 ほぼ同時に起き上がり、レイヴンとイエガーは見合った形で違いの姿が見えた。

「…って、ステル⁈ お前、その服…」

「ダミュロン⁈ え…何で私たちは騎士服姿なのですか?」

 カロルらが居てレイヴンと呼ばれた。

 近くにゴーシュとドロワットが居る。

 にも関わらず、騎士団の橙色の騎士服を纏っている現状に、レイヴン(ダミュロン)イエガー(ステル)は混乱しているらしく、互いの本来の名を呼び合い、さらに混乱状態に拍車がかかっている様子であった。

「戻ってる?」

「みたいね」

 揉みくちゃにされているレイヴンとイエガーの2人を見て、ユーリとジュディスは互いに見合って、安堵の息を吐いた。

 

 仲間が持ってきてくれた羽織と燕尾服へと、レイヴンとイエガーはそれぞれ着替え、ようやく一行は落ち着きを取り戻した。

「おっさんたちが操られていたのは、この魔導器(ブラスティア)が原因で間違いないわね」

 レイヴンとイエガーに付けられていた魔導器を片手に、リタは説明する。

「周囲のエアル濃度が特定の変動パターンになった場合、闇属性の魔術が対象の魔核(コア)に直接働きかけて、魔導器が自壊するように仕掛けられていたみたい」

「つまりここ来て、俺やエステルがエアルを払ったら、2人は正気になるように仕込んでいたと言うことか…」

「とにかく、ダミュロン隊長とステル副隊長が戻ってきたんだ。ここを脱出して古代兵器の復活を阻止しなければ…」

「そのためにはここを出ないといけないけど…ここはどこかしら?」

「ザウデの地下、『望郷の墓』らしい」

 これまでの説明を受けつつ、エステルとリタに体調確認されていたレイヴンが、ジュディスの問いに答える。

「大丈夫か、おっさん?」

「何とかね…操られてた時の記憶、ボンヤリだけど思い出してきたわ…おっさんやらかしたみたいね」

「そんな……ユーリから聞きました。レイヴンは私を庇って…」

「護れなきゃ騎士失格よー…まあ、これから挽回させてもらうけどね」

 そう言いレイヴンは武醒魔導器(ボーディブラスティア)に廉価版 通信魔導器(コールブラスティア)を接続して起動して、テキストを空中に表示させ、すごい勢いでスクロールさせて確認して行った。

「レイヴン、それは?」

「ソフィアからの通信記録。彼女、おっさんが捕まってから周囲の会話を拾って、定期的に通信魔導器に送ってたんよ」

「それって…ソフィアさんはレイヴンに情報を流していたって事?」

「そう見せかけて偽情報の可能性が…」

「いや、今回の事件はソフィアが乗り気じゃ無いのは確かよ。彼女が本気なら、こんな簡単に合流できるはずがない」

 そしてレイヴンは、いくつかの文章を拾い読みをしていく。

「…古文書で座標を確認して…海に沈んでる時からザウデの一部の機能を復旧させて拠点にしていたみたいね」

「カクターフらか?」

「ソフィアがね。多分失踪した半年前の最初の方だろう。そして彼女が最初に協力してたのはフィアレンだったが、カクターフも関与してから動きが取れなくなったようね」

「そう…ですか」

 カクターフらの動きはソフィアにとって不本意だった可能性がわかり、フレンは安堵の息を吐いた。

「ここはザウデの中なんですか?」

「そそ。ザウデの地下で、地上とは独立したシステムらしいよ。区画ごとでエアル濃度が変えれるから、濃度を上げて囚人を動けなくして、牢獄に転用してるわけね」

「それって、エステルが一緒だったら意味なくない?」

複製宙の戒典(レプリカ・デインノモス)があっても無意味だわ」

 少なくとも宙の戒典(デインノモス)の複製や機能について、最初期に携わっていたソフィアは当然知っている。

 情報の断片を繋ぎ合わせて考えると、ソフィアは間接的にレイヴンとイエガーをユーリらに返したという見方もできた。

 そして…

「アレクセイの大将とデュークの旦那は、ここに閉じ込めているらしいね」

 

 ここまでくると流石に皆は理解した。

 囚われているアレクセイとデュークを、ユーリらに救出させようとしている事を…

 

「カクターフとか他の奴らもここに居るのか?」

「もう一つのエンシェントウェポン復活のため、フィアレンとカクターフはアブセンスね」

 ユーリの問いにイエガーが答えた。

「じゃあ、ここにはミムラとグラダナ、ソフィアだけか?」

「それと人型魔導器(ゴーレム)。古代文明のエクセレントクラスの高性能の代物ネ」

人型魔導器(ゴーレム)が居るから、騎士は要らないって事?」

「キュモールの野郎、ダングレストに攻めてきた時、あんだけの騎士を割く余裕がよくあるなと思ったが、そう言う訳か…」

 カロルに続いてそう言うユーリの言葉を聞き、レイヴンは何時もみたいに大袈裟な表情で驚きを見せて、カロルの頭を撫でる。

「にしても…ドンが倒れてて、おっさん居ない中、よくダングレストを守れたよねぇ」

「へへっ…みんな頑張ったんだよ! ハリーもフレンも、すごくカッコよかったんだ!」

「ギルドユニオンを守る判断をした帝国にも感謝だな」

「いえ…キュモールが率いていた騎士たちの多くが、ギルドの者も護る相手と判断しました。僕はそれに助けられただけです」

 騎士とギルド員の仲は、数十年前までは険悪なものであった。

 それが互いに庇い合う相手と認識できるようになったのは、ソフィアの長年に渡る地道な活動のお陰であることは、レイヴンがよく知っていた。

「とにかく、アレクセイ騎士団長とデューク元親衛隊長をお救いして、まずはここに居るクーデターの主犯を捕えましょう」

「…主犯にはソフィアも入るのか?」

 レイヴンは、どこか迷いのある視線をフレンに向けて尋ねた。

「ドン・ホワイトホースとヨーデル殿下との間で話はついています。ソフィア・ディノイアはギルドユニオンに身柄を引き渡すこと、その後 凛々の明星(ブレイブ・ヴェスペリア)に処断を一任すると」

 その言葉を聞き、レイヴンは驚き何度も瞬きをする。そしてカロルとユーリ、ジュディスに視線を向けると、3人とも悪戯が成功したような笑みを浮かべた。

「は……はは…おっさん居ない間に、やるじゃなあい…」

 そしてレイヴンは片目を瞑り、顎下に手を置いて茶目っけのある笑みを浮かべた。

「そう言うことなら、世話になったもん同士、迎えに行こうかね」

 

 小部屋から伸びて入り唯一に通路を渡ると、中央に吹き抜けの円形のフロアが複数層重なっている場所に着いた。

 吹き抜けに安置されている石像には、上から差し込まれた光が照らしている。複数の通路が見られた事から、ユーリらは手分けしてフロアの探索を始めた。

「なあ、レイヴンはソフィアとの付き合いは長いんだろう?」

 古代ゲライオス文字の石碑を見つけ、その解読に勤しむエステルとリタを横目に、ユーリは尋ねる。

「まーね…アレクセイの大将の次くらいに長いからねぇ。幼馴染で一時期婚約者候補でもあったわけだし…」

「え…婚約者候補⁈ ウソ⁈」

「私は…聞いたことがあります」

 解読を止めて驚き振り向くリタ、静かに頷くエステル、そしてレイヴンは2人を苦笑いしつつ受け流した。

魔導中継筐体(エアルコンテナ)とかの関係もあって、いわゆる『政治的な事情』ってヤツよ」

「そういう事情も知った上で、おっさんは長い付き合いをしてたんだろう? ソフィアは一体何を考えてる?」

 紫水晶の視線が射抜くも、レイヴンの翠の瞳はゆるりと受け流す。

「さあてね…彼女は思考がぶっ飛んでるから。でも、根本的な目的は変わっちゃいない」

「目的?」

「おそらく『皆で幸せになる』だろうかね」

 抽象的で意外な回答で、ユーリはすぐに返す言葉が思いつかなかった。

「……何だそれは?」

「そう思うでしょう? でも実際そう考えるとしっくりくるのよ。で、周りにも内緒でやるとなると……碌なことじゃないだろうね」

「大事件になるからか?」

「彼女が幸せにしたいって言う『みんな』には、ソフィア自身は勘定されてないんよ」

 

 手分けして周囲を探っていたカロルとジュディスが戻り、階下へ繋がる道を見つけたと伝えた。続いてイエガーとゴーシュ、ドロワットも戻り、鍵がかかった部屋を見つけた知らせてくれた。

 

 最初に鍵にかかった部屋を調べる事になり、カロルが鍵開けをしようとするが…

「これ、鍵穴無いよ」

「でも、明らかに扉ですよね?」

「……ここに四角いマーク…もしかして『カードキー』かも。古文書で特定のカードを翳して開ける扉があったって記述を見たことがあるわ」

 周辺を調べていたリタがそう呟く。

「カード…ねえ…」

 レイヴンは武醒魔導器(ボーディブラスティア)に廉価版収納魔導器(チェストブラスティア)を接続し、収納からカードを取り出した。

「例えば…こんなとか?」

 そう言い取り出したカードを近づけると、あっさりと鍵は開いた。

「ちょっとぉ‼︎ 何でアンタが持ってるのよ」

「まーまー…中調べ……」

 食い下がるリタを押し留めたレイヴンであったが、途中で言葉を止めて様子を伺う。

「………バッド、フィーリングね」

「ちょいっとウチらだけで見てくるから、少し待っててちょうだい」

 そう言い残し、レイヴンとイエガーは中へと入る。ユーリとフレンも部屋の臭いに覚えがあった。それは酷い怪我人を収容した場所に近いもので…

 部屋奥からレイヴンの回復術の「ヒールウィンド」の詠唱が何度か聞こえた後、レイブンとイエガーはそれぞれ誰かを背負って部屋の外に出てきた。

 

 それはアレクセイとデュークであった。

 

 深傷を負って最小限に治療しかされていなかったらしく、しかも時間が経過していたことからレイヴンが使える風属性の治癒術の効きが悪かったそうだ。

「グミも食べれる状態じゃ無いし、トリートの効きも悪い…嬢ちゃん頼めるかい⁈」

「おっさん…実はエステル…」

「いえ…やらせて下さい」

 リタの言葉を遮りそう言うエステルの目は、何が何でも譲らないと言う強い意思が込められているとユーリは感じ、思わずため息を吐いた。

「…リタ。複製宙の戒典(レプリカ・デインノモス)で補助できるか?」

「できるわ。それに高濃度エアルに長時間晒されてるから、そこも診ないと」

「私も手伝うわ」

「お願い。ジュディス」

 カロルとイエガーらに見張りを頼む中、ユーリから受け取った複製宙の戒典をリタが操作をし、ジュディスがその補助をしつつ、エステルが治癒術で2人の怪我の治療をする。

 その様子を見ながら、レイヴンはフレンとユーリに尋ねる。

「嬢ちゃん…魔法使えないの?」

「術技の使用に制限が掛かってます。ザウデを復活させるため、帝都の結界に使われている膨大なエアルを操作させられて、力が暴走したんです」

「リタが複製宙の戒典で何とか制御できるようにしてるんだが、術技使いすぎるとまた暴走するって事で、制限が超えたら痛みが出るらしい」

「そうだったの…悪いことしちまったねえ…」

「いえ…閣下たちの治療は必要ですから。それとダミュロン隊長、扉の鍵は一体どこで…」

「知らない間に、騎士服のポケットに収納魔導器(チェストブラスティア)が入ってたのよ。各種回復アイテムと一緒にあったわ。他にも色々ありそうだけど、ひと段落ついたら確認してみるわ」

「ソフィアか?」

「それ以外考えられないな。従順しているように見せかけて、できるだけ被害を抑えようしてきたのだろう」

 深く思考を巡らせているからか、騎士隊長の時の真面目な口調でレイヴンは話す。

「フィアレンに協力していたと言う話ですが、その目的の詳細は?」

「それが分かれば苦労しないわよ…デュークやアレクセイから何か情報が聞けるかもだけど…あの状態じゃ無理そうね…」

 治療は終わったが、高濃度のエアルに曝露した影響が強く残っている様子であった。ドンの時も意識を取り戻すのに時間を要したことから、アレクセイもデュークも直ぐには目覚めないのは明白であった。

「二人がこんな状態で放置されていたとなると…やはりソフィアは動きが取れない状態に追い込まれている…か…」

 

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