pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
温かな光を感じ、ユーリの意識が浮上する。
「大丈夫ですか、ユーリ?」
「エステル……」
ユーリが起き上がり周囲を見るとと、レイヴンが他の仲間たちにライフボトルを飲ませている姿が見えた。
「……ソフィアが去ってどれだけ経った?」
「おそらくそこまで経っていません。事前にレイヴンが、私にリバースドールを持たせてくれたのです」
「おっさん、いつの間にそんな物を…」
「ソフィアさんが持たせてくれていた
「ったく……何処までがあの人の手のひらの上なんだ? 気にいらねえなあ…」
「ユーリ」
そう言い座っているユーリに手を差し出してきたのは、ひと足先に回復したフレンであった。苦笑しつつその手を借りて起き上がると、ちょうど皆の回復も終わっていた。
その時、外から地鳴りのような音が響き渡った。
「な…何⁈」
「まさか古代兵器が復活したのでは?」
「……急ぐぞ!」
ユーリの声に頷き、一行は転移術式に乗った。
ザウデ不落宮の最上階。
指輪の宝石の台座あたりの位置で、眼下の遥か下に見える海の水面の距離に、カロルは思わず足が竦んでしまった。
巨大な
そして目を閉ざし、少し俯いた状態でその中央に座しているのは…
「ソフィア…」
その名をレイヴンは口にする。
それを半ば合図に駆け寄ろうとするが、ユーリらは見えない壁に阻まれてしまう。
「はい。ストップ」
壁の反対側の位置に姿を現したのは、ミムラであった。
「おい、てめえ……この壁を消せ」
「それは無理よ。それ、ソフィアの仕業ですもの。あ、さっきみたいに力技じゃ難しいかもよ。システムと同期化したソフィアが定期的に張り直しているから」
ユーリに対して、涼しい顔でそう言うミムラ。
「同期化? ソフィア先生は一体…」
「んー…なんでもザウデを精神で直に操作しているらしいのよ。そうでもしないと、全機能を掌握できないみたいで…」
「……ザウデと一体化しているってところかしら?」
「そう。いま、作戦の最終段階で色々と加減できないから、ちょっとそれが終わるまで待って貰えないかしら」
エステルとジュディスの言葉にそう答え、ミムラが身体をずらしたその奥、深緑の騎士服を纏った男が見える。
「グラダナ…」
左右から
「地下の人質を始末しろとか喚いて煩いと思ってたら、あっという間に拘束されちゃったわ。だから、大人しくそちら側に居てね。ああ、操作しているのはソフィアだから、私に何かしても無駄よ」
「…防衛の
ソフィアに一番近い
その時、空中に画面が映し出される。
画面に映し出されていたのは、イキリア大陸の北方、アスピオの北部にある世界最高峰のアステフィルス。その一部が崩壊したらしく、未だ土埃が舞っている。
その奥で高度を上げ、尖塔が姿を現していた。
次の瞬間、塔の画面の隣に別の画面が投影される。そこには、帝国評議会の帽子と服を身に纏った老人の姿があった。
「カクターフ…」
映し出された人物を見て、フレンが呟く。
続いて、レイヴン、ユーリ、ジュディスが持っている
「な…何⁈」
「ザウデを中心に、
「ソフィアの仕業ね…
リタの言葉を補足する様に、レイヴンは続ける。
「しかし、なぜこのようなことを…」
フレンが疑問を口にするのと同時に、ザウデに映し出されたカクターフが口を開き、その内容が
『テルカ・リュミレースに住む民よ! 私は帝国評議会議長、カクターフ公爵である』
それを横目に「始まった」とミムラは呟く。
『我が名を聞き、皇帝を弑逆した者と認識する者が多かろう。だが、今一度で良い。我が言葉を聞いてほしい』
そしてカクターフが話し始めたのは、古代ゲライオス文明から一千年以上、帝国が隠し続けた「星喰み」の脅威が、今まさに迫っていることであった。
『星喰みは消えておらぬ。我らが祖先が、星全体に結界を張り隠し続けてきたのだ。その時間稼ぎをしている間に、本来であれば皇帝を筆頭に対策を考えるべきであった』
カクターフの言葉に対して、ユーリは不信を抱く。
「おいおい…星喰みは消えたんじゃなかったか?」
「消えてないわ。星から追い出して、結界を張っただけ」
そう答えるミムラに対して、ユーリは嫌悪と不審を織り交ぜた視線を向けた。
「嘘じゃないわよ。多分ミョルゾで見たと思うけど、『虚空へ消え去り』ってあったでしょう。まだ『倒した』訳じゃない」
「……アンタの言う事、信用できる訳ねえだろう?」
そう言いつつもユーリは、嫌な予感を拭いきれずにいた。
『代々の皇帝はそれを怠った! その解決策を秘める
次の瞬間、ザウデの巨大な
「っ⁈」
抜けた穴の奥に見え隠れする青黒く輝く光。それが蠢き脈動する無数の触手である事に気付き、ユーリは生理的嫌悪からの鳥肌を止める事は出来なかった。
『見えるだろうか? これこそ、古代ゲライオス文明を崩壊させた脅威の『星喰み』だ! 1,000年前、我らが祖先は愚かにも、この化け物である
カクターフの言葉を聞き、カロルは怒ったように反論する。
「な…何言ってんだよ! 星喰みは
「星喰みが生まれた原因は、
「それでエアルを調整していた
「過剰なエアルを吸収して変質した
カロルとフレン、そしてエステルに応えるミムラの言葉に、皆は絶句した。
「言ったでしょう。この世界の知識を持っているって。まだ信じられない? カクターフ公は信用してくれたけどねえ…」
「…てめえがカクターフに、その情報を流したのか?」
「正しい情報を伝えただけよ。情報の継ぎ接ぎで、随分と印象が変わるのねえ。本当に印象操作が巧いわあ」
他人事のようにそう言うミムラに、ユーリは睨みつけた。
『我もまた、先帝陛下と同じ祖父を持つ者。故にテルカ・リュミレースの管理者として、人類の守護者として、どのような手段を用いたとしても、その責務を果たす義務を負っている』
そこで言葉を切り、カクターフは今まで隠していた右手に持つ物…
『簒奪と言う謗りを受けるも、このテルカ・リュミレースを守護すると言う役目を果たすためならば、喜んで受けようではないか! 正義はいずれに在るか、この世界は理解している。故に皇帝の証である
「皇帝から借り受けていたデュークから奪っといて、なーに言ってんだか…」
「エアルを鎮めるため…でしたよね?」
「そそ。その前に解析するために、ソフィアが借りてたんだけどね」
フレンの言葉を肯定して、レイヴンは不可視の壁解除に勤しんでいるリタを見る。リタが解除するたびにソフィアが上書きをして、壁の解除を妨害し続けていた。リタと言えども操作盤を介した操作では、思考から直接操作しているソフィアに追いつく事は困難であった。
『受け継いだ力を持って、己が責務を果たそうではないか!』
次の瞬間、タルカロンが光を放ち、結界の隙間全てに向けて攻撃を放った。
周囲の雲を消し飛ばし、空の色すら塗り替える強烈な光。遅れて聞こえてきた空気が砕けんばかりの衝撃と音が、タルカロンの持つ武力の強大さを物語っていた。
『はははははっ! 見たか⁈ これぞ古代ゲライオス文明の最高峰!
カクターフの言うとおり、結界の穴から覗かせていた星喰みの姿は消えていた。
『さて、脅威は消えた。帝都ザーフィアスの王城、その王座を明け渡して貰うとしよう。さもなくば…』
星喰みを消し去った矛を向ける。
言外にそう脅迫したその時であった。
「ここで問題です。タルカロンを使わずに、星全体を結界で守ると言う選択をした理由はなんでしょう?」
場違いなような軽い声で言い放つミムラ。
直後、タルカロン上部の結界が砕け、大穴から無数の光を帯びた触手が降りてきた。
「タルカロンでも、星喰みを倒せないからに決まってるでしょう? 相手はエアルを糧にする。エアルの攻撃は通用するはずないでしょう? だから違う手段じゃないとダメなんだよねえ」
その間にも禍々しい光を点滅させた触手は、タルカロンを絡め取り、呑み込み、外から押しつぶしつつ侵食していく。
直後、ザウデで映し出されていたカクターフの頭上から「ずしゃり」と何かが降り落ちてきた。
程なく何も映像は映らなくなり、言葉をなしていないカクターフの叫び声だけが聞こえ、やがてそれも消えていった。
「何が…起きた?」
ようやく口を開いたユーリに、ミムラは先ほどとは打って変わった安堵した笑みを浮かべる。
「星喰みは
ユーリらが凍りついた中、ミムラは淡々と説明していく。
「タルカロンを動かすのに、高出力魔導器を大量に使ったんだけど。大量のエアルを集積してから発動するわけだから、そりゃあ星喰みが集るに決まってるでしょう」
その間にも星喰みが群がるタルカロンを、地上から切り離すように結界が構築されていく。そのままタルカロンは空へと押し出され、やがてその姿も覆うように結界が再構築された。
残りは、星喰みの一部分が見えるも通り抜けられる大きさではない、一定間隔に空いた結界の穴だけであった。
「社会の寄生虫の処分は終わって作戦終了」
そう言ってミムラは軽く手を数回叩いた。
唖然としているユーリらの元に、ミムラは
「それじゃあ、バウルの所に送るわ。みんな固まって…」
一方的にそう言うミムラ。
いきなりの展開で混乱しつつも、ユーリは逃さないとミムラの腕を掴んだ。
「おいおいおい…どう言う事だ?」
「んー…詳しくは帝都で説明するわ。どうせ連行するんでしょう。一緒に行くから…」
「はい。貴方だけではなくソフィアさんも連行します」
一方的で言いたい事しか言わないミムラ。
彼女の言動に呑まれまいと、ユーリに続いてフレンも立ち直り、ユーリが掴む逆の腕を掴み、追及するような碧眼をミムラに向けた。
一方でミムラは、自身のペースに持って行けず、目に見えて狼狽し始める。
「あ……その…ソフィアは後から来るから…ほら、結界がややこしくて、今手が離せなくって」
「そんな言い訳通じる訳ないでしょうが! とっとと私たちをソフィアのところへ、連れて行きなさいよ‼︎」
イタチごっこの不可視の壁の解除にイライラしていたのか、
「え…その……ほら、見えない壁があって…」
「あら、それを今越えてきたわよね。それとも、まだ何か企んでいるのかしら?」
リタを援護するように、赤藤色の目を細めてジュディスが微笑む。
「作戦終了って言ったよね。じゃあ、もうソフィアさんはここに居なくても良いってことでしょう? 良い加減、皆んなで帰ろうよ」
「そして聞かせて欲しいのです。どうして、こんなことをしたのかを?」
カロルとエステルがそういう中、何かを気にするようにミムラはこちらとソフィア…いや、空中に浮いている巨大な
「……何を気にしてんの? アンタらが言う『転生者の知識』が関係してる?」
ミムラが時間経過と共に焦りを見せていると思い至り、レイヴンがそう尋ねると分かりやすようにミムラの肩が大きく跳ねた。
「何か知らんけど、早く撤退せにゃならんみたいね。俺様が説得すっから、ちょこっとソフィアの側まで連れてってくれないか?」
「そ…それはダメ! 離れないと危険…」
「危険? それはどう言う…」
「ああーもうっ‼︎ 後から来ればいいから、取り敢えず一旦ここから離れて…」
ユーリの問いに答えるのが面倒になったのか、ミムラは
その時ユーリらの背後から、ふらつきながらも二人の男が姿を現した。
「アレクセイ団長閣下⁈」
「デューク⁈」
名を呼ぶフレンとエステルに見向きもせず、二人は奥で座しているソフィアの姿に釘付けとなっていた。
「ソフィア⁈」
「今行くぞ…」
「待って、見えない壁が…」
暗にぶつかる事をミムラは指摘するも、デュークの手にはリタが放置していた
「ヤバ…」
ミムラがつぶやいた直後、デュークが障壁を切り裂いた。
それと同時に押し進み、アレクセイは進行妨害する
「ダメだって‼︎ でっかい
その時突然、ミムラの背後に人影が現れる。
「え⁈」
「貴様ら……俺たちを騙したな…」
「グラダナ⁈」
「…はは…ヒャハハハ‼︎ どうせ逆賊で死罪だ」
アレクセイ達の対応させるため
「やはり裏切りやがったな…貴様は許さぬ‼︎」
目の前で野望が潰され正気を失った目で、グラダナはミムラに向けて剣を振り下ろした。
「……きゃあ‼︎」
ミムラはアレクセイの方へ倒れ込む。しかしアレクセイが受け止めたミムラには傷はなく…
「……え⁈」
グラダナとの間に割って入った人影から、緋色の飛沫が羽のように飛び散る。血飛沫を上げたその者の名は…
「ソフィア……」
その名を呼ぶアレクセイの表情が憤怒に変わる。しかし彼が動く前に、グラダナは倒れそうになったソフィアの腕を掴み向かい合わせの態勢にして、彼女の胸を深く刺し貫いた。
「か……はっ…」
背から血に濡れた刃先を覗かせ、ソフィアは血を吐く。直後、ザウデが頂く巨大な
「…のヤロウっ‼︎」
その音で漸く事態の把握に追いつき、ユーリはいち早くソフィアの元へ駆け出した。
しかしその直前にソフィアがグラダナを突き飛ばし、反動でユーリらから離れるように背後へ下がる。
「ユーリ‼︎」
カロルの悲鳴に近い声を聞き、ユーリは頭上を見上げた。
正に魔核が落下しようとしているのに気づき、ユーリは呆然としているアレクセイの腕を引っ掴んで、横へ跳んだ。
一方で倒れ伏したグラダナの身体は、落ちてきた魔核に押しつぶされた。
ユーリらはソフィアと分断され、自重に従って
「ああっ! [ゲームのシナリオ]通りになっちゃった…だから早く逃げたいって言ったのに!」
「おい! お前はこれを知って…」
「そんなことより避難が先! ちゃんと話すから、早くみんなを集めて!
「皆って…ソフィアは……」
「ああっもうっ‼︎ ここで全滅する⁈ できるだけ助ける⁈ どっちなの⁈」
ミムラの声でユーリは状況を漸く呑み込んだ。そしてどうするべきかも…
「…皆、こっちへ集まれ‼︎ 脱出する!」
小回りがきくラピードが仲間を一箇所に誘導する一方で、呆然としているデュークを蹴り飛ばし、フラフラと先へ進もうとするアレクセイを体当たりで突き飛ばして、ユーリはミムラの側へ集合させた。
最後に
崩壊が落ち着いてからザウデで捜索が行われた。
激しく破損したグラダナの遺体は確認されたが、ソフィアの行方を掴むことはできなかった。
ゲームの最終戦の舞台であるタルカロンは元は、古代の支配者層の居住区で行政区でもあったのではないかと考えています。本作品では、最初は過剰なエアルを吸収して集積する、エアル調整機関だったという設定です。それを始祖の隷長を倒すために、莫大なエアルを地上から集積して放つ兵器に改変したという感じにしています。
ゲームの世界では、地上からエアルではなくてマナを集積するようにデュークが装置の術式を改変して、デュークは地上の人間の生命力を奪い尽くして、集めたマナを星喰みに向けて撃とうとしわたけですね。本作のカクターフたちは密造した大量の高出力魔導器を連結して、エネルギー源としたわけです。