pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
「どういう事だ⁈」
ユーリがアレクセイの胸ぐらを掴み、壁に押しつけた。
「ユーリ、落ち着いてください‼︎」
突然の暴挙に皆が驚き静止する中で、いち早くエステルが慌てて止めに入り、ユーリは漸くアレクセイを解放した。
「…この傍聴席ならば、会議での私の声は聞こえたはずだが?」
「ああ、聞こえたさ…ザウデでの捜索活動を打ち切るっていうのは、どういう理由だ」
「ウィチルからの説明通り、ザウデの機能は安定している。ゲアモンとユルギス、ソムラスからの報告、カロル君が届けてくれたドン・ホワイトホースとナッツからの書状においても、街を星喰みが襲ったという事例はない。ならば、これ以上手を加えずに現状維持することが…」
「ソフィアはどうする?」
鋭い紫水晶の視線を真正面から受け止めるも、アレクセイの緋色の瞳は揺るがない。
「…捕縛したミムラの供述から、ソフィアは人質を盾に巻き込まれたと言う見解だ。主犯のカクターフとフィアレンの死亡は状況的に確定、グラナダは遺体の一部分が回収された。クーデターの一件は終息した」
「そうじゃ…ねえだろう…」
「王城、帝都の復興。どちらも人手が足りていない。さらに星喰み対策のため、帝国とギルドで協力体制を整える必要がある。無駄な人員を割くわけにはいかん」
「無駄な人員かよ…アンタの妹じゃねえのか⁈」
一瞬アレクセイの目が見開く。
暫しの静寂の後、アレクセイは静かに口を開いた。
「……あの時、止めてくれた事に感謝している。下手をすれば全滅する恐れもあった」
アレクセイの言葉を聞き、ユーリは崩れるザウデの台座から逃げた時を思い出す。あの時、逃げるのではなくソフィアの元へ行こうとしたのは…
そしてそれを止めたのは…
「私は…優先順位を誤ってはならぬ立場である事を、いついかなる時も忘れてはならぬのだからな」
ユーリは何も言葉を返せなかった。
「まー確かに、今日の話を聞く限りじゃ、海を捜しても無駄みたいだしね」
「やっぱり
「でしょうね。障壁の解除を妨害する命令式はザウデの
リタとジュディスの会話を聞き、皆は一斉に視線を向ける。
「何?」
視線を感じ、訝しげにリタはユーリの方を向いた。
「……ダミーって、何だ?」
「ご丁寧に本人がいるように見せかけていた、ソフィアの生体人形よ」
ナギーグでエアルの流れを見ればわかると、ジュディスはそう言い微笑む。
「ちょっと待て…だったらソフィアは…」
「ザウデで時間稼ぎしてくれてるんじゃ無い?」
「
「無事…なのか⁈」
「何とも言えないわね。ミムラの話が本当なら、分離させる方法は見つかってないらしいし…どっちにしても、どうにかするにはザウデを止めないといけないけど…」
「その前に星喰みをどうにかする必要がある」
リタの言葉を引き継ぐアレクセイの声は、心なしか明るさが伴っていた。
「それも急がないといけないわ。多分ザウデはそこまで保たないし、今の状態でザウデが破壊されれば一緒に…」
その時、扉にノックが響き渡る。
エステルが入室を許可すると、先ほどの会議会場に居た橙色の騎士服姿の
「団長閣下はこちらに?」
「ヘルメスさんが話をしたいって」
「私はここだが、如何した?」
アレクセイが応えると、二人の奥からヘルメスが姿を現す。
「アレクセイ様、お話しが…ジュディスとリタもこっちだったか。ちょうどいい」
塔市タルカロンの浮上でアスピオへの被害が懸念されたが、山の崩壊と同時に不可視の障壁が街を覆うドーム状に展開され、奇跡的に無事であった。ソフィアが過去にアスピオを訪れていた時に、
障壁が何時まで保つか分からないことから、アスピオにある資料や機械を、取り敢えずハルルの街まで移動させているという話であった。そしてファリハイドから戻ったヘルメスは、自宅の必要な物を持ち出して帝都へ移り、
そんな彼の要件は、星喰みへの対応についてであった。
ミムラの言う「転生者の知識」について検証したところ、
問題は、星喰みを精霊に転化させると言うこと。おそらく色々奇跡が組み合わさった博打に近い事象だったと考えられるが、実現できれば一番効果が高いらしい。
「星喰み対策はこの方針で行きたいのですが、博打ではなく勝率を上げる必要があります」
「だが、情報が不足していると」
「はい。ソフィアはその研究をしていたのですが…彼女から託されているのは大筋のプランだけで…」
「それで、ソフィアの研究記録が読みたいと…」
そこで言葉を切って、アレクセイは眉間に皺を寄せて難しい表情をする。
「…確かに屋敷にそれらしいものはあるのだが…暗号で書かれていて読めぬのだ」
「暗号? ギルドで使ってるものか? 閣下、自分に見せていただきたいのですが…」
「これと同じ種類の暗号なのだが」
そう言いアレクセイが懐から取り出しダミュロンに差し出したのは、シンプルな装飾がされた日記帳らしい冊子であった。
「これは?」
「屋敷のソフィアの部屋で見つけた。中を見てくれたまえ」
アレクセイに促され、冊子を開くダミュロン。予想していたものとは全く異なるものだったらしく、ダミュロンは厳しい顔になった。
「どう見ても違うな……いや……待てよ」
しかし何か思い至ったらしく、ダミュロンは顎に当てていた手を一つ叩く。
「ユウマンジュで見た模様の絵に似ている」
「じゃあ、ユウマンジュのギルド員なら分かるのか?」
「いや…興味本位で読めるかって聞いたことあるんよ。そしたら『ユウマンジュ』って書かれてるって伝わってるとかで…読めるってわけでは無いみたいね」
ユーリが話しかけたからか、ダミュロンと言うよりレイヴンの口調で答える。
「療養中に解読を試みたのだが…この絵記号らしきものだけでも200種類以上あって、規則性を見出しきれずに難航しているのだ…」
「絵文字っていうより、マークか記号じゃない? って言うか、この段落だけでも20種類以上ない?」
「やたら線だらけの角ばった記号と、落書きみたいな曲がった線。何でそんな暗号で書いてんの?」
「わざわざ暗号に書き換えた様な感じじゃないわよね」
「急いで書いたり、崩した字がありますし、普段使いの書き方の様ですね」
皆で頭を寄せて、日記帳らしい冊子の中を見るが、誰も解読することはできない。
その時、何かを思い出した様にエステルがぽつりと呟く。
「以前に使っていた言語…とか?」
「エステル?」
「ミムラが言っていました。彼女とそしてソフィアは異世界から転生したと…」
「つまり…異世界の文字?」
§
「これを読んでみてくれないか?」
貴族牢の面会室、アレクセイはミムラに例の冊子を適当なページを開いた状態で渡した。
「えーっと…[今日は引き続きエアルとマナの転換に関する文献を確認した。複数のマナ理論に関する書籍と論文から、マナに近い内容の研究の概要は、エルカバルゼの名家が受け継ぐ古文書にある可能性が高い]」
「すまぬ、何を言っているか殆ど分からぬのだが…」
アレクセイに止められ、ミムラはハッと気づいた。
「え……ああ! そうか! [日本語]⁈」
「ニホンゴ?」
「前世で使っていた言語で…ああ、もしかしてソフィアの書いた文章ですか?」
「答える義務はない」
「適当な事言ってねえだろうな?」
「こっちから情報とって、それらしい内容を言うのは詐欺師の常套手段だし…」
ユーリに続いて、護衛兼見張りのダミュロンが口を挟む。
「…エアル還元術式解析…ザウデの研究所の一件の少し前にやっていたんだ。同時期にキャナリはイエガー様と結婚したのねぇ」
少しページを捲って呟くミムラの言葉の内容が、事象の時間列と合致している事に気づき、アレクセイはミムラへと視線を戻す。
「結婚式の内輪での贈り物で、キャナリからクロカンブッシュを要望されて試作した。大量のシューを焼いて疲れたので、翌朝にキャラメルソースで積み上げようとしたが、夜中にシューを兄に食べ尽くされた上に、あまり甘くないと文句を言われた。シューが上手く焼けたからデュークへの差し入れにする予定だったが、中止にするしかなかった。それから、お祝いは別のものにした方がよさそうだ」
「…妹の作った物を盗み食いかよ…」
呆れてそう言うユーリの隣、同じく立ち会いのデュークと記録を取っているキャナリからの視線が、心なしかアレクセイは痛く感じる。思い当たる出来事らしい。
「先日、キャナリの結婚式で泣いた時のフォローをしてくれたダミュロンへ、その時の御礼で行きつけバーでお酒を奢った。酔って看板に語りかけるのは良いが、水路に落ちるのはやめて欲しかった」
「だー‼︎ ストップ! ストップっ‼︎」
「……きちんと内容を読んでいるのは分かった」
一つ咳払いをし、アレクセイは緋色の眼をミムラを見据えた。
「そのニホンゴで書かれた文章の解読に協力をしてくれないか? 見返りとして減刑も考慮しよう」
諸所の手続きの上で、ミムラを連れてアレクセイの屋敷、ディノイア邸へとユーリらもまた同行した。
ソフィアの研究メモや資料が置かれているのは、彼女が研究室に使っていた離れであった。
「ざっと読んでみましたが、ソフィアの日記で間違いないですねぇ。その日にやった研究の概要が中心で、所々が通常の日記みたいです」
向かう途中の馬車の中で、ソフィアの日記を読んだミムラがそう言った。
日記から日付と研究内容をまとめ、日付を元に膨大な研究ノートから必要な情報を抜粋するのが効果的と考えた。日記の内容と過去の出来事を照らし合わせた結果、表記が年/月/日と判明した。そして、研究メモやノートを日付順に並べて整理する人員と、解読した日記の内容を記録する人員に別れて作業を進める。
この後の研究内容の解読もまた、引き続きミムラの協力が必要なことを考え、ユーリは思わず尋ねる。
「なあ、その言語を俺らに教えることはできないのか?」
「それはちょっと難しいですねぇ」
ミムラの即答に驚きつつも、エステルは尋ねる。
「難しいとは具体的にどのくらいですか?」
「そうですねぇ。まず文字の種類が4パターンあって」
「4パターン?」
「この世界に似た文字の[アルファベット]が26文字、他に発音を示した文字が2パターンあってそれが各47文字」
「…何で複数パターンあるんだよ」
「さあ? ま、それは置いといて、あとは意味を示した文字があって、これが5〜10万文字」
「……は?」
想像を絶する桁数が出てきて、思わず全員が作業の手を止めてミムラを見る。
「[漢字]と言う文字で、よく使うのが2千文字くらい。ただ、一つの字で複数の読み方があるし、字の組み合わせで意味が変わったりします」
そこでミムラは日記を皆に見せて、一つの単語を指差す。
「例えばこの文字、右側の一字では『手』、隣の文字と合わせると[手法]つまり『方法』になるんですよねぇ」
「それどうやって見分けるのよ!」
「語彙を2万種類くらい覚えれば何とかなるって、聞いたことがあるわ。それから…」
別の文字を複数示して、ミムラは説明を続ける。
「同じ意味を別の表現で書くこともあって…例えば[照]、[明]、[光]、[灯]。ここに書かれている場合でしたら、全部が『照明』の意味になりますかね」
「……それはどうやって認識する?」
「前後の文章からの判別ですねぇ。あと、記載も横書きと縦書きがあって、横書きはこの世界と同じですが、縦書きは上から下で右から左に読み進めるもので…」
「おいおい…どうやって見極めんだよ…」
「んー…感覚というかぁ…慣れ?」
ミムラの言葉を聞き、ユーリらは当初の予定通りに事を進めるしかないと改めて感じた。