TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始から25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



とある終幕後(あくまで最悪な可能性の一つ)

 

 我はある者の身体を乗っ取り存在していた。

 その名はフィアレン。

 

 乗っ取った者の記憶を浚うと、くだらない貴族の腰巾着で、くだらない報復に失敗して命を落としたことが分かった。

 この者の腕に仕込まれている、我が魂の欠片が、別の者の心臓の代わりを果たしている我が欠片と共鳴した故に、我はこの地に舞い戻ったと漸く理解できた。

 

 やがて、我が残した罪の精算を果たす者たちが現れ、我は安堵する。

 その者は偶発的とは言え、星を壊そうと暴走していた始祖の隷長の成れの果てを、新たな存在へと生まれ変わらせて、亡びの瀬戸際にあった星を救った。

 

 しかし星を亡びに追い込んだ者どもは、危機が去っても相変わらずあり続けた。その業を責められることもなく…

 その星の寄生虫とも言える下衆を抑えていた者は、皮肉にも罪の清算の過程において、星を救った者の刃に倒れていた。利己的な下衆は、星の救世主に対して敬意を抱くことなく、相変わらず世界の為政者の座にしがみついていた。

 

 そして世界は終焉を迎える。

 

 我が我であった時に生み出した者、その能力を駆使して我が魂の根源の守護に着きし者、その力を借りて幾度と刻を逆行する。

 やがてこの身体を当初から貰い受けるに至り、見守るでは足らず介入すれど、滅びの運命を変えることはできなかった。

 

 社会を変える。

 古の罪を償う。

 

 分かっていたはず。

 自身だけで全てを解決するには、あまりにも無力である事を。

 

 だから……

 

 我が半身。

 我が妹。

 

 賢者たる満月の子(トリウィア)よ。

 どうか今一度力を貸してくれぬか?

 

 §

 

 四方を海に囲まれ、風化しつつある廃墟。

 所々に落ちている光を失った魔核(コア)の欠片。その一際大きな欠片に座す一人の男が居た。

 

 程なく男は魔核(コア)から降りて、待ち人を迎え入れた。

 息絶え絶えに、何かに導かれるようにこの地にたどり着いた男。一つの名を捨て去り、二つの名を持つその男は、上着は破れて焦げて元の形状を留めておらず、どす黒く染められているため、宵色の羽織か夕陽色の騎士服かの判別すらできない状態であった。

「フィア……レン⁈」

 自身を出迎えた男を見て、墨色の髪を振り乱した奥から見せる翠の瞳を見開き、驚愕しつつその名を呼ぶ。

「それはこの身体の個体名だね。カクターフの腰巾着で、帝国騎士団本部を吹き飛ばし、アレクセイに片腕を斬り落とされ、君に命を奪われた者ではない」

 そう言い、翠の瞳の男に埋め込まれた心臓魔導器(カディスブラスティア)…彼が致命傷を複数負いながらも、命を繋げてこの地に誘導した要因を静かに指差した。

「私の聖核(アパティア)の一部は、この腕と君の心臓に使われた」

 そう言い男は、魔導器義手を掲げて赤色の魔核(コア)を見せる。その魔核(コア)は一際輝き、それと共鳴するように男の心臓魔導器(カディスブラスティア)もまた鼓動の如く輝きを増した。

「この身体の持ち主が命を落とした時…君の心臓魔導器(カディスブラスティア)からの攻撃が原因で、異なる世界に居た私の魂は呼び戻されたのだが…静観を決め込んでいたのは悪手だったようだ」

 そこで言葉を止め、義手を下ろし溜め息を吐く。

魔導器(ブラスティア)は無く、精霊術も未熟な中では、我が親、我が子の相手は難しかったようだな…」

「オーマの事を知って……」

 激しく咳き込み倒れ込んだ男。彼の翠の瞳を見つめつつ、義手の男は口を開く。

「ザウデの地下から復活し、ゴミ貴族どもが虎の威を借る狐の如く利用して他者から搾取し、利用されたと激怒して全てを滅ぼそうと暴れているヤツのことであろう…」

「…俺は……どうすればよかった…」 

 そう呟く言葉は正に、今この場に居る二人の共通認識であった。

「こうなってしまっては、介入するしかないが…そのためには力を取り戻す必要がある。我が聖核(アパティア)の大半が在る凛々の明星へ跳ぶには、君の心臓魔導器(カディスブラスティア)魔核(コア)が必要だ」

「……条件がある。皆を……助けてくれ」

「……“俺たち”ではなく“皆を”か。無理だ。お前しか生き残っていない。だが…」

 何を思いついたのか暫し思案した後、光が消えかけている翠の瞳を見据えて言葉を繋げる。

「時間を逆行すればあるいは…」

「時間の……逆行? ……代償は?」

「これまで成した事、得られた経験、繋いだ縁は全て無くなる。期待した未来どころか、より悪い未来が齎される可能性もある。それでも良いか?」

「皆の未来が繋がる可能性があるなら…」

 最後の「頼む」は声にならず、半ば吐息であったが、男の最後の言葉の意味は充分伝わっていた。

 

「マスターも人がいいですね」

 全ての原点である出来事に思いを馳せている中、背後から聞こえた声に振り向いた。

「何度も時間を逆行せずとも…」

「それに付き合うお前も大概だ」

「精霊として新たな生を与えたくれた恩には足りません」

「相当の無茶をしてくれたと思うぞ。結界システムの1000年維持と言う命令も大概だが、再契約後に時間を逆行しろ、成りすましではなく最初からフィアレンとして生を受けるようにしろ…」

「挙げ句の果てにトリウィア様の魂を呼び戻したこと…ですか? まああなた方が居た世界とは、細々と魂の行き来はありましたし、そこまで大変ではありませんでしたが…」

 そこで言葉を切り、少し眉を顰めて言葉を続ける。

「確かに私には、もう時間を逆行する力は残っていません」

「その必要はない」

 窓の外から見える星空と遥か下に見える美しき星、それを一瞥した後、眼鏡を外しつつその場の大半を占める朱色に光る聖核(アパティア)に触れた。

 

「それでは、フィナーレと行こう」

 

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