pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
デュークはフレンと2人で下町の噴水跡まで移動した。
「で、私に何の話だ?」
「話と言いますか…相談したい事があるのです。実は…5年ほどを目処にアレクセイ閣下は、騎士団長の職を退くと言っておられます」
「後任を受けるか、迷っているのか?」
デュークに単刀直入に言われ、フレンは一瞬言葉に詰まった。
「…先ほどの試合を見て思いました。自分などより、ダミュロン隊長首席の方が余程相応しいのではないかと。もしくは、キャナリ副団長が継いだ方が良いのでは…」
「2人がお前を推薦したと聞く」
「しかし、私はまだ未熟です」
「お前は、騎士団長になりたくないのか?」
悩みの根幹とも言える問いを掛けられ一瞬竦むも、フレンは蒼の瞳をデュークの紅の瞳にしっかりと向けた。
「いえ……アレクセイ閣下が目指す理想はまだまだ遠いです。正しい者が安心して暮らせる世界を作るため、そのために自身が動くためには理想的な立場である事は承知しています。ただ…自分にはまだ早い」
「ならば、いつならば良いのだ?」
「それは…せめて15年後にでも…」
「それだけあればアレクセイは理想を成し遂げるだろう。彼が創り出した物に、お前はそのまま便乗するつもりか?」
「いえ! そんなつもりは…」
フレンの煮え切らない態度に心は騒めく。精神的乱れを悟られないように静かに息を吐き、デュークは徐に口を開く。
「……好機というものは、一度きりしか訪れる事はない。それを掴み損ね、その恩恵を受けられなかった故に、護りたいものを失うことがある。その時、お前は後悔しないと言えるのか?」
「それは……」
「ならば、与えられた猶予期間で何とかするしかない。自身が成長するなり、他の方法を探すなり…」
「他の方法?」
その時、フレンを呼ぶユーリの声が聞こえる。
親友であり、道は違えど同じ未来を創ろうと志す同志であり…
そしてユーリの隣にいるダミュロン。その姿が視界に入ったことが切っ掛けで、世界救済の旅で仲間となった人々の姿が、フレンに脳裏に浮かんだ。
「そう…ですね。僕の手に余るならば、周りを頼ることにします」
そう言い騎士礼をしたのち、フレンはユーリの元へと駆け寄った。
フレンの父ファイナスは、己が手に余る事態を一人で何とかしようと奮闘し、その末に命を落とした。その二の舞になることは避けられそうだと彼の背を目を細めて見つめた後、デュークは鋭い視線を噴水の裏手に向けた。
「何か用か?」
「いえいえ。寧ろ貴方が私に用があるんじゃないですか?」
噴水裏から姿を現したのは、以前にソフィアの依頼で
「ふふん♪ 情報通のボクに聞きたいことは…」
「ソフィアの同胞と言っていたが、お前も異世界転生者か?」
勿体ぶった態度をぶった斬られ、ワンダー記者はあからさまにいじけた態度を見せる。
「話の腰を圧し折るのもラスボス級…本人の口から言わせてよね! ミムラから話は聞いてるみたいだけど、そうだよ」
「お前は、時間がループしていることを知っているのか?」
デュークの口から思わぬ話題が出て、ワンダー記者は意味深な笑みを浮かべる。
「……そう思う根拠を聞いていい?」
「ソフィアが生存していたのは今回が初めて。ミムラの動きも同様だ。異世界転生者は今回の時間で初めてと思っていたが…フィアレンはループの途中からキャナリの義兄におさまっていた。今思えばフィアレンは時間のループの度に、何かしら自発的に異なる行動を起こしていた」
「ループが起きるごとに色々試していたから、ループごとの行動が異なっていた。その自発的な行動は、ループを知っているからできたこと。そう言いたいんだね」
「周囲の要因によるものではなく、自発的に行動を変える。それをやったのはお前も同様だ。ユーリから聞いたお前が授けたというログ、あれはループの途中から装着していた。そうだろう?」
珍しく素直に話したことに対してか、考察が素晴らしいと思ったからか、どちらかわからないがワンダー記者は、賞賛の拍手をデュークに送った。
「へぇー…人間に興味がない世捨て人と思ってたけど、よく見ているもんだね。そう、ボクは君が話題にしている事象を経験している。しかし…」
そこで言葉を切り、ワンダー記者は明後日の方を見る。
「うーん…そうだね。もう一人をちゃんと加えた上で話そうか」
「と言うことだ。ダミュロン」
デュークにも促され、 ダミュロンがワンダー記者の視線の先の茂みから姿を現した。
「旦那はともかく、お前に気づかれちゃうって、流石にちょっとショックだわ…」
そう言いつつも、出るタイミングを見計らっていただけで、そこまで気配を消していた訳でないことは、デュークも承知していた。
「まあ…
「へえ……ダミュロン隊長もそう言う認識?」
「最初は夢見が悪いだけかと思ってたんだけんど…とっ捕まった時にソフィアに教えてもらって、納得したわけなんだわ」
「へえーソフィアさんも『時間のループ』と言う認識な訳ねえ…」
「ソフィアの情報源はフィアレンという話だ」
「フィアレンが? 彼の場合は固定観念からかなあ…」
ダミュロンの言葉を聞き、やや大袈裟な手振りでワンダー記者は両腕を前に組んだ。
「ずいぶん含みのある言い方じゃないの」
「ボクの認識ではちょっと違ってるんだ」
「違う?」
「そう。時間のループが起きているんじゃなくて、時間の分岐が起きてるだけだって、そう考えてるんだよね」
「時間の分岐?」
「そう。デュークさんたちの考えだと、ボクは複数前の時間のループから存在しているって認識だけど、ボクの主観からするとちょっと違うんだよね」
そう言いワンダー記者は、ニヤリと笑みを深める。
「過去に経験したと言うより、別世界のボクの可能性を覗き見してる感じなんだよね…だから、この世界のボクが経験していることは、今現在進行形の唯一ただ一回のみってわけ。まあそこんとこの感覚は、ソフィアさんやミムラさんには分からないかも。何せ異世界転生者の魂である彼女らが存在するのはこの世界だけだから、比較対象が無いからねえ」
「しかし、フィアレンは時間がループしていると言う認識なのだろう?」
「うーん…伝え聞く所によると、フィアレンが時間の逆行を命令して、それを実行しているのは別の存在なんだよね。命令に近い結果が出る実行可能な事象を、その何者かは引き起こしているんじゃないかな?」
「時間の逆行が起きている訳ではないのか?」
「実行可能なのは、通常の時間の流れで自然発生する事象に限られるというのがボクの仮説。時間軸から分岐を発生させること、他の分岐の情報を感知する辺りが妥当かな。フィアレンの目的は『多くの者にとって幸せな未来を繋げること』。失敗した分岐の情報収集と分析をして、それを活かして色々介入して、どこかの分岐が未来につながればいいだけの話だからね」
これはあくまでもワンダー記者の推論でしかない。
真偽を確かめるには、フィアレンの命令を実行していた何者かを突き止める必要があるが、フィアレン亡き後では見つけるのは困難であろう。
だがワンダー記者の考察は、デュークとダミュロンにとって、救いにも感じる内容であった。自身らにとって過去と認識している事象は以前の時間のループではなく、別世界の事象であると理解できたからであった。それが事実であれば、それらの世界で犯した罪は、別世界に居る自身らに類似した存在が引き起こしたことになる。
それはつまり……
「つまり、別の可能性の世界でキミらは色々とやらかしているけど、それは君らがやったことではない。選ばなかった可能性の一つで、反省材料の一つでしかないんじゃないの?」
「っ⁈」
「おおっと……人の心を暴くのはマナー違反だね。お詫びにとっておきの詳細情報を教えてあげる」
そう言いワンダー記者は、2人に色々と話してくれた。
彼らが居た異世界では、[コンピュータRPG]と言う、仮想世界を投影し、小説や物語の世界を実体験に近い形で楽しむ娯楽が存在している事。
その仮想世界は色々な世界を模した[ゲーム]があり、その一つにこの世界を模した物が存在していた事。
そしてミムラとソフィアは、その[ゲーム]に関する知識を持っていたという話であった。
それらの情報は、持ち帰ってアレクセイと共に精査することとなった。しかしその情報が本当ならば、ミムラからまだまだ有益な情報が得られる可能性は高かった。
それは化け物の封印のために、ザウデ不落宮の地下へと姿を消した、ソフィアを救う手立てがある可能性を秘めていた。
「今までの中で一番有用な情報だったわ。あんがとさん」
「ちょっとダミュロン隊長! 今までだってボクはちゃんと仕事してきたでしょうが!」
「でもオタク、基本的に帝都から動いてくれないじゃん。はっきり言って、青年の方が仕事の消化率高いのよ」
「そう言われると身も蓋もないけど…」
そう言い派手な身振りで、ワンダー記者は項垂れるが、その表情を見る限りでは単なるじゃれ合いに近いもののようであった。
「最後に一つ聞いていいか? ソフィアは随分と知識が豊富であった。魔科学、魔導器学、生物学、医学、そして政治に経済…異世界転生者が居た世界では、そこまでの知識を持つ者が一般的だったのか?」
ソフィアに対して踏み込んだ内容を尋ねるデュークに驚きつつも、ワンダー記者は答える。
「そうだねえ…ボクらがいた国は高等教育を受けられた。誰でも平等に」
「時間の逆行や分岐やらを考察できるくらいの知識を、アンタは入手できていたってことだからねえ…」
「まあ誰もが皆、知識を有効活用しているわけじゃないよ。一方的に国から施される事に対して、有難さや恩恵は理解しにくいからね」
「……そうだな。価値や理由についての理解がないまま一方的に施しを受ければ、貰うことが当然と人は思うだろう」
そうやって一方的に施す政策をしていたのが、自身の父である故バンタレイ公爵であったと、デュークの胸中に苦い気持ちが広がった。
「そこんとこ、ソフィアさんはよく考えていたと思う。下町の人々への教育がそうだ。最初に生活水準を上げて、知識の有無で経済状況が変わることを実証したでしょう?」
「ああ。魔物素材の下取りや買い叩かれない知識を、最初に教えていたな」
ソフィアは下町に関わってきた経緯をよく知っているダミュロンは、過去を思い出すように肯いた。
「それが下町で教育が成功した理由。逼迫した生活を送っている親は、子供に勉強よりも仕事を強要する。少しでも稼ぎたいからね。だから経済的余裕を持たせて、知識があれば生きる上で有利になると親が理解した上で、子供への教育を開始した。そして教育を受けた者が一定数となった段階で、働ける場を提供した」
「騎士団でも事務方の募集をすることとなったし、黎明の残月の存在も大きいと」
「そういうこと」
「ソフィアの前世は為政者か?」
「いいや。医療系の補装具…人工の補助臓器の研究をしていたらしいよ。でも歴史好きと言っていたから、ボクらが居た世界の歴史の知識を元に考察して、この世界では何が最適解かを考えたんだろうね。正に『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ』と言う奴だね」
そして聖人は経験から悟る。
しかしそれ以上に、今の自身を形作ってくれた周囲の者たちへの感謝の気持ちを、デュークはより強く抱いたのであった。
「ちなみに為政者だったのはフィアレン。この世界で言う評議会の議員の秘書的な立ち位置かな」
「だからソフィアは医学や工学が得意だったわけね。ミムラやアンタは?」
「ミムラは翻訳業の傍ら言語学を学びつつ劇団員をやっていたらしいよ。ボクは今の仕事と変わらない感じかな?」
「新聞記者か? それとも諜報員か?」
「そこはご想像に任せるよ」
時間や逆行に関する設定はTOP、TOPのなりきりダンジョン(Xでは無くて最初期の物とその公式小説)、TOX2をベースにしています。