TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

88 / 100
 
 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



魔装具(裏ボス戦は何回かの全滅覚悟だよね)

 

 デズエール大陸付近の島。

 古い遺跡の跡と思われる石の残骸に向けて、ユーリの持つ剣…魔装具アビシオンから白い光が放たれた。

 それが収まるや否や岩の一部が崩れ、槍…魔装具ザリチェが姿を現した。

 さらに奥へ進むとエアルクレーネが存在し、使えなくなったはずのソーサラーリングの形状が変化した。

 そしてマナを発射できるようになったソーサラーリングを使い、ユーリらはレレウィーゼ古仙洞で剣の魔装具メリクリウス、クオイの森で斧の魔装具グラシャラボラス、ケーブ・モック大森林で弓の魔装具ネビリムを次々に回収した。

 

 順調に魔装具を回収できたのは、ミムラの知識のお陰であった。

 

 アレクセイが聞き取った情報を分析した所、ミムラが前世に居た異世界では、[コンピュータRPG]と言う、仮想世界を画面に投影し、小説や物語の世界を実体験に近い形で楽しむ娯楽が存在しているという話であった。その仮想世界は色々な世界を模した[ゲーム]があり、その一つにこの世界を模した物が存在していたと言う。ミムラはその知識を元に、ユーリらが知らない情報を知っているという事であった。

 それを知っていたユーリらは、ヴェスペリアとの邂逅後、情報を集めるためにミムラとの面会を願った。

 星喰みの一件後、ソフィアが残した[日本語]のメモの翻訳作業に従事することを恩赦の条件として、ミムラはソフィアが作業場として使っていたディノイア邸の離れを生活空間として与えられ、そこで軟禁生活を送っていた。

 

 面会に来たユーリらの話を聞き、ミムラは[ゲーム]の情報を話し始めた。

「[エクストラダンジョン]と言うのがあって、それは全部で3つあるわ」

 3つのうち一つは、騎士団長直属部(シュヴァーン)隊のダミュロン(レイヴン)ら最精鋭をアレクセイが引き連れて攻略済み。宙の戒典(デインノモス)の代わりに、「祈りの剣ラグクエリオン」を回収して、ヨーデルの即位式の剣として使用する事となったためであった。

 残り2つの内の一つこそが、アレクセイとデュークが閉じ込められていた、ザウデの地下にある「望郷の墓所」であった。

「そこの最奥に『十六夜の庭』があって、最凶の敵が控えているわ。古の満月の子の長である『オーマ』、そして古の始祖の隷長(エンテレケイア)の盟主である『スパイラルドラコ』」

「話の感じだと、ソフィアが再封印したの白い化け物が、オーマってことか」

「十六夜の庭に行けばいいのでしょうか?」

「十六夜の庭へ行ってオーマとスパイラルドラコと会うためには、魔装具全て揃えて、宙の戒典(デインノモス)で本来の姿に覚醒させなければいけないわ」

 そう言いミムラは手に入る4つの魔装具の入手方法を紙に記して、ユーリに渡した。

「他の4つ魔装具と宙の戒典(デインノモス)について、何か情報はないか?」

「クーデターの時、フィアレンは宙の戒典(デインノモス)を持ってタルカロンへ向かったわ。そして魔装具の内2つは星喰みに喰われたタルカロン、残り2つは現状では入れない望郷の墓所にあるから、どうしようもないわ。でも…」

 そこで言葉を切り、ミムラは何を思い出すように一度目を閉じて、再び開いたのちに続きの言葉を紡いだ。

「おそらくフィアレン…ヴェスペリアが既に入手済みでしょうね」

「どちらにせよ、ヴェスペリアを探さねえといけねえわけか」

「……本当にオーマとスパイラルドラコと戦うの?」

「どうにかしないと、ソフィアを取り戻せないでしょうが」

 カロルに対してそう言うレイヴンに対して、眉を顰めつつミムラは言う。

「正直お勧めしないわ」

「どう言うことですか?」

「その最凶の敵って言うのはね……初回ではとてもじゃないけど攻略出来ない敵なの。何度も何度も全滅してコツを掴んで、それでようやく倒せる相手だったわ」

 エステルの問いに説明するミムラの話は、おそらく[ゲーム]と言うもので彼女が体験した内容であるとユーリは認識した。[ゲーム]では死んだとしてもやり直せるらしく、それで何度も試した上で辛勝したと言う相手だそうだ。

 しかし…

「でもここは、何度もやり直せる世界じゃない。現実だから全滅すればそれで終了。そうでしょう? 恥ずかしいけど…ソフィアに指摘されて認識出来たんだけどね…彼女がなんであそこまで用意周到だったかも理解できたわ。現実だから、一回でも失敗したらアウトなんですもの…」

 そう言い、何とも言えない苦笑いをミムラは見せた。

「でもさ、宙の戒典(デインノモス)で覚醒できれば、魔装具は凄い武器になるんだよね。コレがあってボクらが力を合わせれば…」

「その魔装具は、スパイラルドラコから作られた物よ。だから相手には一切効かない…まあ、私も[ゲーム]でそれやらかして、全滅させちゃったけど…」

 ミムラの言葉を聞いて、カロルの表情は一気に萎んでいった。

 

 厳しい戦いになる可能性が高い。しかし魔導器(ブラスティア)が無くなってから1年以上、その間に身体を鍛えて技を磨き、マナを利用した術技もこなせるようになってきた。魔導器(ブラスティア)があった時期とは比較することはできないので、正直強くなっているか弱くなってしまったかは分からないが、それなりに戦えるはずだ。

「ヴェスペリアが何処に隠れているのか、知っているか?」

「可能性がある場所は知っているわ。でも……あのソフィアが『打つ手なし』って封印を選んだ相手なのよ。ソフィアは現状維持を望んでいると思う。そこをよく考えた上で…」

「封印ってことは、未来に解かれる可能性もあるんだよな?」

 だからこそユーリは、今のうちにケリをつけるべきだと考えていた。

「問題を先送りにして、忘れた頃に出てきてもらうのは勘弁だぜ。 星喰みの時のようにな」

 ユーリの言葉を聞き、項垂れていたカロルはハッとして顔を上げた。そして他の仲間たちも、覚悟を決めた様子であった。

 そんなユーリらを見たのち、ミムラはアレクセイに視線を向ける。彼もまた静かに覚悟を決めているようであった。

 

「第六大陸ユルゼレア、峻険なる山脈地帯の底。時間を遥かに超える男、長らく眠る」

「?」

「現実ではどうか分からないけど、[ゲーム]ではダングレストの北の山脈に空間の歪みがあったわ。その先にあるのが、もう一つのエクストラダンジョン『追憶の迷い路』」

 そう言いミムラは、壁に貼られている世界地図のある一点を指差した。

「持っている記憶から再現された場所を、ランダムに繋げた空間。フィアレンにも話したことがあるし、良い隠れ場所になると思うわ。それに…」

 地図から視線をユーリらに移し、ミムラは言葉を続けた。

「これまで遭遇してきた敵が、過去に戦った時より強くなって現れる。そこを攻略できる能力があるならば…オーマもスパイラルドラコも、なんとかなるかもしれないわ」

 

 §

 

 真昼の陽の光を彷彿させる金糸の髪。

 焔を切り取ったような朱色の瞳。

 

 時の精霊クロノスがユーリらと引き合わせた、凛々の明星の巨大な魔核(コア)から顕現した人物。

 勇者(ブレイブ)ヴェスペリア。

 それが死んだと思われていたフィアレン・フォン・エングリスの、真の正体であった。

 ヴェスペリアから聞かされたソフィアの正体。

 ソフィアより前の異世界の住人、それよりもさらに以前の過去世は遥か昔にこのテルカ・リュミレースに居たヴェスペリアの妹、満月の子と同一視されているが最も古い伝承では月の女神とされている者。

 賢者(セイジ)トリウィア。

 ザウデ不落宮の魔核はトリウィアが遺した聖核から造られたという。星喰みから世界を救った折、その魔核から出現したソフィアは、見知らぬ女性の姿であった。それこそが、彼女が転生を重ねる前の姿であり、この世界この時代に蘇った姿だったのだ。

 その報告を聞いた時、少し前に情報共有されていたテムザのクリティア族の村で見つかった伝承が、デュークの脳裏に過った。

 

 トリウィアの聖核の雫たる霊薬アムリタ、仮初の契約者を導くものなり。仮初の契約者、新たな霊薬を生みし糧となる。

 兄妹が帰還せしその日まで。

 

「帰還したトリウィアが、ソフィア様だった」

 黎明の残月(トリウィア・ミラージュ)の研究所の応接室。自身に会いにきたデュークにそう溢し、ヘルメスは深い溜息を吐いた。

「霊薬アムリタは、ザウデの魔核…トリウィアの聖核の欠片で間違いないでしょう」

 そう言いヘルメスは、それぞれの分析データを机の上に広げる。

「本来のソフィア様が亡くなった時、霊薬アムリタを飲まされた。それを介して、異世界にいたトリウィアの魂が呼び戻され、ソフィア様の身体に入った」

「それが我らのよく知る、ソフィアと言う訳だな」

 そう言うデュークの迷いのない目を見て、ヘルメスは安堵を含む苦笑を浮かべた。

 ヴェスペリアから明かされた真実に驚く中で、「俺たちがソフィアとして知っているヤツを解放する」と言い切ったのは、ユーリ・ローウェルであった。彼の言うとおり、10歳以前のソフィアを知らない二人にとって、成り替わり後の彼女がソフィア・ディノイアである事に変わりはなかった。

 

「解決すべき問題は二つ。一つ目はザウデの地下に出来た封印の解除方法。もう一つは、ソフィアが地下へ再封印した化け物…ミムラの情報ではオーマというらしいけど、それをどう対処するか。最悪の場合は古の始祖の隷長のスパイラルドラコも、どうにかしないといけない」

 そう言い応接室に入ってきたのは、ヘルメスの娘であるリタであった。

「封印の解除方法。それは魔装具を集める以外、今の所方法は無いわ」

 ザウデの封印を解くには、ユーリらが偶然見つけた魔装具を揃える必要があると言う。5つは回収できる見込みだが、残りの4つと魔装具の力を解放する宙の戒典(デインノモス)は、凛々の明星から姿を消したヴェスペリアが持っている可能性が高かった。

「ジュディスから連絡が来たのかい?」

「来たわよ。残念な知らせだけど」

「空間の歪みは見つからなかったようだね」

 追憶の迷い路。

 そこにヴェスペリアが潜んでいる可能性が高いのだが、ミムラが提供した情報で照らし合わせた場所で、入り口と見られる空間の歪みはまだ発見されていなかった。

「あのミムラって女、デマ教えたんじゃないでしょうね」

「どうだろうかね。空間の歪みの発生には、何かしらの条件が必要という事だろうね」

「パパの考えには同意するけど…その条件の手がかりが少ないのよ。可能性が高いのは魔装具? それともエステルの力?」

「魔装具は確実だろうね。ただ、全てを揃える事は不可能だね。満月の子の力で代用できればいいのだが…」

「一回エステルを連れて行って、調べた方が手っ取り早くていいわね!」

「リタにとって友だが、世間的には副帝殿下だ。ある程度確証がなければ、連れ出すのはやめた方がいいだろう。護衛もそれなりにつけなければ、いけないだろうからね」

「うーん…行き当たりばったりになるけど、魔装具を持って皆で行って、その場で試した方がいいかも…」

 そう言い頭を突き合わせて考える、天才科学者の親子。

 この世界では、自分が知る中で最も危うげなく、その後の混乱への対処を含めた準備を整えた上で、星喰みの脅威から星を守り切った。そして新たに浮上した問題も、この2人が揃っていれば、何かしらの打開策が見出せると、確信に近い希望を抱かずにはいられなかった。

 

 デュークが知っている別の可能性の世界では、ヘルメスは既に死に、リタは自分の父の正体を知らなかった。

 しかし自身の親友であるエステリーゼを救うため、天才だからと自身を鼓舞するように、リタは降りかかる問題の数々に対する対処法を、ただ一人で理論を組み上げ最適解を叩き出し続けた。

 挙げ句の果てに求められたのは、世界崩壊の危機を回避する方法。残り時間がない重圧が掛かる中で、失敗が許されない世界救済策を立案する事を、年若いリタは強要された。そして出来上がったのは、下手をすれば世界の全人類を敵に回す方法であったが、ユーリを筆頭としたリタの仲間たちは、覚悟の上で賛同の意を示した。

 リタを信じたユーリとエステリーゼは、全人類の命を引き換えに星喰みを撃破する事に固執していたデュークとの対話を望んだ。しかしそれを拒絶し、制限時間をさらに短縮させたのは、一人で背負い込み一人で結論付けた末に暴走したデューク自身であった。

 それ以前に、ヘルメスがいればリタ1人に負担が集中する事はなかっただろう。しかしデュークは、始祖の隷長(エンテレケイア)の怒りをただ一時的に鎮める生贄へとヘルメスを仕立て上げ、短すぎる猶予期間で足掻く彼に手を貸すこともなく見殺しにした。

 ヘルメスをもっと擁護すべきだった。人側の事情を理解してきちんと説明すべきだった。間を取り持つことができないなら教えなければ良かった。ヘルメスを会合に連れ出さずにテムザから連れ出して匿えば良かった。アレクセイと密に連絡取ってもっと早い段階で帝国を説得すべきだった。

 少し前まで罪悪感を抱くだけであったが、最近ではあの時にやるべきであった事が、具体的に挙げられるようになっていた。それは変化できる人の可能性の大きさと、自分自身も人であることを、デュークに再認識させていた。

 

『今の自分が嫌ならば、少しずつ改善すれば良いだけのこと』

 

『誰かが居なければ変わることなんてできません』

 

『今の貴方は独りではない。だから大丈夫』

 

 ソフィアと別れた夜、彼女が伝えてきた言葉の数々を浮かべながら、議論を続けるヘルメスとリタの邪魔にならないように、デュークはそっと部屋を後にした。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。