pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
現状で入手できない物以外、他の5種の魔装具を手に入れたユーリ達。
ミムラから聞き出した場所へ向かうが、魔装具は反応せず、エステルが精霊に聞いても特に異常はなかった。
その時、デュークの持つ懐中時計…ソフィアに渡した婚約の証でザウデの一件の時に、知らないうちに返却されていたものが、突然光を帯びた。
デュークが懐中時計を取り出すと、光が消えると同時に空間の歪みが発生した。
ミムラの話に聞いていた「追憶の迷い路」の出入り口と考え、ユーリらは歪みに身を投じた。
追憶の迷い路。
ミムラの情報通り、旅をしてきた中で経験した場所が、少しセピア色がかった色で再現されていた。
そして過去に対峙してきた敵の数々が、一行の前に立ち塞がった。
「とばして行きますかっ!」
「良い感じじゃなあい」
そう言いつつも援護の矢を放つ
「…定期的に見てやったのか?」
「最初の一回だけよ。結局フレンちゃんにも指導したけど、そしたらあとは二人で稽古してたみたい。旦那も大将と一緒に、ジュディスちゃんと嬢ちゃんに稽古つけてくれたみたいね」
外皮が硬くレイヴンの矢で仕留めきれない魔物を、剣気を放って止めを刺した後、ため息混じりでデュークは答える。
「久々にアレクセイと手合わせした所を見つかって、強引に約束を取り付けられたのだ」
「流石の旦那も、かわい子ちゃんのお願いには弱いみたいね」
「断ろうものなら、二人の背後に居たもう一人のヘルメスの娘が魔法を放っていた。復興費用で厳しい中、更なる修繕費の捻出は厳しいと、アレクセイが判断したまでだ」
「……リタっちもヘルメスと一緒に、精霊魔法を幾つか開発していたみたいね」
デュークとレイヴンの会話が耳に入っていたらしく、カロルが近づいてきて不貞腐れつつ口を開く。
「皆んなずるいや…ボクだって騎士団の訓練を受けてみたかった」
「少年はドンから色々教えて貰ってたでしょうが」
「そりゃあそうだけどっ……と」
そう言いカロルは、魔導器に頼らない膂力で大剣を振り下ろすと、一撃で魔物を葬った。
一つの世界に、今まで倒してきた敵が現れる。そして最後に現れたのは、ダングレスト防衛戦で襲いかかってきた〈咬み裂くモノ〉であった。
それが3体。
しかしユーリたちは、それぞれ3人ずつに分かれて対応し、見事撃破することできた。
「あっけねぇの……」
「3体出てきた分、弱くなったんじゃないかしら?」
「ワン‼︎」
「そうかな……前戦った時より、攻撃の幅は大きかったようにも思うけど…」
以前に戦った事があるユーリら
「前戦った時より、術技の通りは良かったぜ」
「確かにそうね。
ユーリの言葉に考え込むリタの隣で、アレクセイが静かに口を開く。
「単純に扱う者の技量が上がったのであろう」
「多分大将の言う通りね。随分と鍛錬してきたから」
「
レイヴンに続いてそう言うデュークの言葉を聞き、少し考えてからエステルが徐に口を開いた。
「エアルであろうとマナであろうと、星からの恩恵で得られるエネルギーとの付き合い方として、それが理想の姿でしょうね」
そう言うエステルの言葉に、ユーリらは深く同意するのであった。
§
〈咬み裂くモノ〉を撃破して空間を超えた先に辿り着いたのは、空に浮かぶ城であった。
城の外の探索は不可能であったが、城自体が途轍もなく大きく、城内は入り組んでいて複雑な構造をしていた。
「もしかして、前にちょっとみたタルカロンじゃねえか?」
空に浮かぶ島ほどの大きさの城で連想し、ユーリが呟くようにそう言う。
「あの星喰みに食べられちゃった古代兵器?」
「でも、見る限りではお城のように見えます」
「タルカロンは兵器に改造されたが、元は居住用の設備だったと、エルシフル…オリジンから聞いたことがある」
デュークの言葉を裏付けるように、ユーリらは居住区らしき場所に辿り着いていた。
「ざっと確認したけど、魔物は居ないみたいね」
「ワウ!」
レイヴンの言葉に同意するラピードの声を聞き、ユーリは少し警戒を緩めた。
「人も居ないのに、水も照明も、設備は使えるみたい」
「不思議ね…奥に厨房もあるから、食事を作りましょうか?」
「浴室や寝室があるみたいです。一度休みをとるのはどうでしょうか?」
リタの言葉を受けたジュディスとエステルの意見に、反論の声は出なかった。
誰が食事を作るかと言う時、意外にもアレクセイが手を上げた。
「自炊は久しぶりだな。どれ、食事は私が…」
「ぬぁあああっ!」
「おっさん?」
「どうしたのだ、ダミュロン?」
「そ、その……そう! 向こうに見た事がない装置があって、大将に見て欲しいんだけど…」
「ん? そうか? ではそれを確認するとしよう」
そう言いレイヴンが指した方へアレクセイは姿を消す。それを見たデュークは少し眉を顰めてレイヴンを問い詰める。
「食事当番は平等にすべきでは…」
「旦那は忘れたの⁈あの人に任せたら、全部が砂糖まみれになんのよ! そんなの俺様、耐えられるわけないでしょうがっ!」
「俺はありだと思うぜ」
「青年は黙ってちょーだいっ! ったく…フレンちゃんとキャナリがいないからと、油断してて危なかったわあ…」
「ん? そうなのか?」
何でもかんでも真っ赤かな食事にする幼馴染はともかく、キャナリについてはユーリは初耳だった。
「…彼女の場合、料理ができる以前に厨房が壊滅するからさ…」
そう言いレイヴンは遠い目をした。
結局夕食はカロルとジュディスが作る事になり、迷宮の中とはいえ一行は穏やかな食事を楽しんだ。
そして男女別の部屋に分かれて、寝心地の良いベッドで仮眠を摂ることになった。
§
追憶の迷い路。
セピア色の世界を進み行き着いた先のあったのは、空に浮かぶ巨大な城。
忌まわしき古代の最終兵器、古代塔市タルカロンであった。
しかしこの場に再現されているのはデュークが知っている姿とは全く異なり、兵器に改造される前の在りし日の絢爛な居住空間が広がっていた。
魔物の気配もないこと、宿泊設備も完備されていたことから、この地で一行は休むことになった。
その夜、デュークは夢を見た。
それは、今まで時間のループと考えていた、他の時間の分岐の世界…
大事な者を奪われて…
「何故エルシフルを殺した!」
「キャナリ小隊で生き残ったのは君だけだ…」
「閣下、出られません! 助けて下さい、閣下‼︎」
少しずつ狂い始め…
「死人か」
「ダミュロン・アトマイスもう死んだんですよ、騎士団長」
「帝国の未来が……私の…私の夢が………‼︎」
犯した罪を弾劾して…
「君の価値観だけで悪人全てを裁くつもりか」
「魔導器を壊した事は絶対許さない!」
「ドンもベリウスもあの野郎のために死んだってのか!」
絶望に沈んで…
「助けられると思ったのに、死なせてしまった……」
「さようなら……」
「でももう………ドンは居ないんだ……」
裏切られて…
「そんな! だってドンは……ねえレイヴン!」
「バッカやろうが!」
「帝国騎士団隊長首席、シュヴァーン・オルトレイン……参る」
仲間を見捨て…
「長くは保たない……早く脱出しろっ‼︎」
「レイヴン! レイヴンっ‼︎」
「バカよ……やっぱり仲間だったんじゃない…」
死の淵から拾い上げて…
「命が惜しかったわけじゃないはずなのに、なんでかこうなっちまった」
「あんたの命、
「勝手に死んじゃダメだからね。レイヴン!」
庇いあって…
「みんなを守るんだ。逃げるもんか‼︎」
「あたしら差し置いて何ができるっていうのよ‼︎」
「もう少し信じてみても良いんじゃないかしら?」
希望を見出し…
「たとえどんな結果になろうと僕はそれが最善だと信じる」
「戻ってこい! エステル‼︎」
「私はまだ、人として生きていたい!」
全てを乗り越え結び直した仲間との絆…
「私、ユーリと旅が出来て良かったです」
「魔導器じゃなくても信じられるものがあるってわかったから」
「みんなで罰を受けて、全部やり直そうって思ったんだ」
「おかしな人たちね……でも……そういうの嫌いじゃないわ」
「おまえさんたちと会えて良かったと思うよ」
「オレたちは互いに手の届かないところがある」
「だから僕たちはひとりではない」
そしてユーリたちは、星喰みを叩く代償として全人類の命を奪おうとした、デューク自身を止めてくれた。
奇跡が起きて、星喰みは精霊に転化して、世界は精霊で満たされるようになった。
しかしその先の未来が潰えたのを、デュークは見てしまった。
騎士団もギルドユニオンも大きな被害を受けた一方で、帝国評議会は実質無傷であった。ヨーデルやフレンが奮闘し、ユーリやレイヴンが影で支えるも、帝国貴族の横暴を止めることは難しかった。
そしてザウデの封印が自然消滅し、オーマが地上に現れた。
帝国評議会はオーマに鞍替えして、ヨーデルはフレンに連れられ、レイヴンの手引きでダングレストに亡命し、世界は二つに割れた。しかしその均衡も、利用されていると気づき怒り狂ったオーマがスパイラルドラコを持ち出したことで、一年も経たないうちに崩壊した。
スパイラルドラコの隙を突いてオーマに攻撃するも、返り討ちにあい深傷を負ったデューク。
そうだ…このタイミングでいつも……
自身に伸ばされた手を感知し、デュークは素早く掴んだ。
「聞きたいことがある。クロノス」
追体験していた周囲の景色が消え、仄暗い空間に二人、デュークはクロノスと静かに対峙した。
「クロノス。時間の逆行を引き起こしてきたのか?」
前置きなしで質問してくるデュークに、クロノスは思わず苦笑してしまった。
「お前が経験してきた事は、時間の逆行でなかったら、なんだというのだ?」
「ある者が言っていた。時間の分岐を引き起こして、他の分岐で起きた事象の記憶を、誤認識しているのに過ぎないのではないかと」
デュークは既に確信を得ているような、鋭い紅の瞳をクロノスに向けた。
「……刻の逆行は起きている。そして、どこから吹き込まれたのか知らないが、その見立ても的を得ている」
「どちらか片方が真実ではないのか?」
「私の『時空逆行能力』は、指定した地点における別の可能性の未来への分岐を促すこと。そして各分岐で発生する事象を感知することだ」
「今ここに居る私は、他の分岐で起きた事象を体験したのではないと言う認識でいいのか?」
「この時空でやっていなければ未経験。この世界では現実に起きていないのだから、それは揺るぎない事実だ。『行動と経緯、そしてその結果』に関する情報を、複数パターン持っているに過ぎないのだよ。それは時間のループが起きた結果と同じ事象だ。時間の逆行が起きたと言っても過言ではないだろう」
時間のループ…実質は別の分岐された世界で、アレクセイが、 ダミュロンが、そしてデュークが引き起こした所業は、この世界における自身らとは無関係である。クロノスの言葉は、それを証明するものであった。
ワンダー記者の言う通り「反省材料の一つ」以外の何者でもなかったのだ。
デュークの裡にあった罪悪感が、少し軽くなったように感じた。
「なるほどな…それでは、今まで生まれた分岐は全て、悲劇的な未来しか約束されていないのか?」
「全てではないだろう。成功して末長く上手くいった分岐もおそらくある。ただ、私が干渉しているのは、上手くいかなかった世界だけという話だ」
それはそうであろう。
未来が潰えたから、別の分岐を作る必要があった。上手くいっていれば、ここまで分岐を作り続ける必要などない。
「当然上手くいって、世界の未来が繋がった可能性はある。だが…」
そこで言葉を止めるクロノスは、仄暗い笑みを浮かべて言葉を続ける。
「その世界では、お前は始祖の隷長ごっこに興じて、キャナリらは命を失い、アレクセイは逆賊として死体蹴りを受け、 ダミュロン…と言うかレイヴンは、命を削って贖罪のために生き続けることになる。元凶とも言える評議会の腐った貴族らは、何事もなかったように存在し続けているという状況でな」
「……より良い状況を経験してしまえば、然程羨ましく思えなくなるとは…結局私も欲深い人間でしかなかったと言うから訳か」
「今回、上手くいったからそう言えるだけだ。より悲劇的な結果となる可能性も、当然あったわけだからな」
クロノスは何度も分岐を作ってきた。
しかし分岐は無限には作れない。一定以上となった段階で、分岐した世界同士の集約をしたと言う。
「その弊害で、異なる世界間での矛盾の補正が入った。それが原因で、 ダミュロンは分岐の世界の認識ができなくなり、『夢』として認識するようになったようだ。加えて、ただ分岐を繰り返すだけでは、状況の変化のパターンが頭打ちになった。故に、異なる設定を織り込んで、更なる状況の変化を促した」
特に術式のキーである心臓魔導器の保持者のダミュロンについては、出生の設定を変えた事もあると言う。中には偽りの身分であった「平民のシュヴァーン・オルトレイン」として、最初から生を受けた世界も試したと言う話であった。
今となっては友人と言える者を実験材料として扱っていることに不快感を覚えるも、それ以上にデュークには納得できないことがあった。
「この世界と縁もゆかりもない異世界人の転生者を入れ込んだのも、その一環だと言うのか?」
その異世界では、分岐したこの世界の一部が、創作物の世界感に盛り込まれていると言う。ある意味「この世界の未来」の一つを知っている者がかき回した事に対して、デュークは少なからず不快感を抱いていた。
「それもあるが…状況の打破のため、ヴェスペリア様と同様に、異世界に転生したトリウィア様を呼び戻すため」
満月の子の始祖の片割れ。
その生まれ変わりが揃えば、何かが起こるかもしれない。
呼び戻しに成功したが、ソフィアに成り替わったトリウィアは、過去世の満月の子としての能力は何一つ持ち合わせていなかった。
しかしトリウィアは…ソフィアは今まで培ってきた知識で、今までで最良と言える結果を齎したのであった。
「だが本人の被害は度外視だ。それについて私は、大いに不満がある」
皆が死んで一人生き残るより、己一人の犠牲で皆が助かる方が良いという考え。
皆が少しずつ傷ついても全員が助かるという考えを持つ今のデュークにとって、到底受け入れられなかった。
「何よりヴェスペリアは、私やアレクセイ、ダミュロンを盾に、ソフィアを追い込んだ」
「貴方方を人質にしていたのは、カクターフらであって…」
「ソフィアがカクターフを切る判断を下すように仕向けたのが真実であろう。そしてそれが、ヴェスペリアの目的だったのであろう?」
ソフィアは人の中で優先順位をつけるのを嫌がっていた。それでも極限では、愛する者を優先して、それを傷つける者を生贄にする判断をした。
ヴェスペリアがそう仕向けていたのは明白であった。
そしてソフィアが己が正義を捻じ曲げる結果となった。
「アレはトリウィアとして生きていた時からそうだった。何度生まれ変わろうがね……そこだけは変わっていて欲しかった。少しでも自身の幸せに固執するようになって欲しかった」
「マスター⁈」
デュークとクロノスの会話に割って入ってきたのは、ヴェスペリア当人であった。
ソフィアが拗れた原因を生み出した相手に、デュークは容赦ない冷たい視線を向ける。
「貴様らの手で軟禁せずに、他者と相談できる環境にいたのであれば、ソフィアは別の方法も見出せたのでは無いか?」
「……君らから離れたのはソフィア自身の意思。つまりソフィアは、敢えてそうしなかったと言える。オーマ封印の人柱になる事は、贖罪だと考えていたから」
「贖罪?」
「これ以上は私の口から言えないが、ソフィアがそう考えているのは間違いない」
そういうヴェスペリアの顔には、深い苦悩が浮かび上がっていた。
「一部の者に背負わせないと言う信念から、カクターフらを悪の枢軸に据え置き、死後も徹底的に貶めると言うなら、自身は永遠とも言えるオーマ封印に全てを捧げると。だが…未練ができたことで、相当悩んでいた」
「未練?」
「君らと共に生きた時間は、ソフィアに取ってかけがえのないものだった。当初は過去世の未練ゆえに、悲劇回避のためだけに動いていた。しかしいつの間にか、君らと過ごす日々を守る事が、ソフィアの行動理念になっていた」
それは思いもよらない言葉であった。
ソフィアは、デューク達と生きていく意思があったというのだ。
静止してしまったデュークの懐に向けて、ヴェスペリアは静かに指を指す。
「それが……懐中時計を見て、思い出してしまった」
「懐中時計?」
「バンタレイ家に受け継がれたソレは、私とトリウィア縁の品だ」
「っ‼︎」
「それだけではない。ザウデの機能が近い未来に停止してしまう事を知った。そして、霊薬アムリタを飲んだ自身が、ザウデを延命する前条件をクリアしている事、本来のソフィアからの成り替わりが原因で前提条件が得られた事も知ってしまった」
ヴェスペリアは哀しげに表情を歪める。
「全部繋がって納得してしまったんだろう。自身がここにいる理由を、そしてこれ以上は居てはならないと」