pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始から25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
ファリハイド。
帝都が所在するイリキア大陸が擁する諸都市の中でも、指折りの歴史を誇る街。帝国の高貴な家系の多くが、その命脈を持つ都市。
長い歴史を誇り治安の良い街であるファリハイドで、貴族の一員として必要な知識と能力を習得するとされている貴族教育交流会が、行われる予定となっていた。
街から街の移動が困難なため、貴族間の繋がりが希薄になりがちであるこの世界。加えて結界に守られている街に引きこもっていることから、当然のことながら婚姻は同一の街の者同士で行われることが多い。特に世帯数が少ない地方都市の貴族では近親婚が多くなり、過去のある時期に大量に貴族の家が途絶えた。それに続いて急激な人口減が起き、幾つかの街が滅ぶ事態となった。
その反省からできた措置が、貴族教育交流会であった。
貴族が動けば、その従者や護衛も動く。赴いた別の街の先で婚姻を結ぶことも多く、そうやって地方都市では、定期的に街外の人を入れる努力をしていた。
因みに、帝都ではそのような試みが行われることはない。地方の若い貴族は、一時所属を含めて帝国騎士団に入ることが多い。その騎士団本部がある以上、帝都外から人の流入が途絶えることはなかったからでもある。
貴族教育交流会の表向きの理由は、成人に達していない若い貴族令息令嬢が一定以上の教育水準を得ること、そして将来の社交を見据えた交友目的となっている。学問や武術を学ぶ機会も設けてあるが、社交術を学ぶための茶会や夜会以外の参加率は悪く、優雅に遊び呆けることが一般的であった。
そんな貴族教育交流会に参加するため、ソフィアは今ファリハイドに来ていた。
「貴族教育交流会か…[乙女ゲー]要素が出てきたように思えるのは、気のせいかな……」
この世界には[乙女ゲー]など存在しない。そんな語彙が口から出たソフィア・ディノイア、彼女はこれから起きる様々な悲劇回避を目指す、異世界からの転生者であった。
享年11歳で亡くなったソフィアの身体に異世界からの魂が入って、成り替わる形で異世界転生を果たした。
これから先で立て続けに発生する悲劇の回避を目指したソフィアは、2年をかけて
やがて安全確認を終えた船舶の
没落していた貴族が再興する兆しを見せた結果、他家の貴族からの目が厳しくなってしまった。
ディノイア家の屋敷には、元々古代文明に興味を持っていたアレクセイが集めた古文書が多数あり、ソフィアが研究に加わってからは、
また、廉価版
現状を打破するには、廉価版
そこでアレクセイは、
ディノイア家の地位の向上については、
そして兄アレクセイは、ソフィアに貴族教育交流会へ参加するように勧めたのであった。
「お疲れですか、ソフィアお嬢様」
回想していたソフィアに話しかけてきたのは、自身付きの侍女であった。同性で家の中で一番年が近いことから、成り替わってから友人のいないソフィアにとって、ある意味一番気安く接する事ができる人物でもあった。
「大丈夫よ。アレクセイ兄様、今頃は釣り書きに埋もれているかな…と思っていただけ」
「何とかしていますよ。少なくとも、廉価版
「……半壊まで至ってない」
「では1/3破壊」
「……魔力の入れ加減を誤ったことは認める」
「まあ、お嬢様を拐かそうと狙っていた狼藉者が、それに巻き込まれて撃退できたのは良かったのですが」
「そういえば……そんな事があったような…」
「……忘れていたのですか?」
「一方的な書状送り、待ち伏せ、押し入り、不法侵入……それが立て続けに起きていた中では、埋没するでしょう?」
不愉快な出来事が色々ありすぎて、細かいところはソフィアは忘却するようにしていた。
「何はともあれ、帝都を離れている間は優雅に過ごしたいものね」
貴族教育交流会は始まるのは一カ月後、それまでの間、使用人たちは仮の住まいである貸別荘の整備に勤しんでいる。
ソフィアもまた、地下室を自身の作業場として整備を進めていた。当分は
屋敷の部屋を何度か破損させた前科があるため、アレクセイは対魔強化がされた地下室付きの別荘を借りてくれた訳だが…騎士団関係の仕事で差し押さえたとか何やら曰く付きの物件らしい。何故地下室が頑丈なのか、何故外側にしか鍵が無かったのか(内鍵に取り替え済み)、壁や床にある染みを荷物で隠し、格安で借りたと言うこの別荘の闇深そうな事情について、ソフィアは全力で見ない振りをした。
「今日は久しぶりに狩りに行けるかな。最近、付きまといが多くて、狩りにも行けなかったから…」
「帝都からファリハイドへの道中で、魔物を狩っていたのでは?」
「あれは自衛で、素材目的ではないからね…」
狩りの準備を始めるソフィアを半目で見つつ、侍女がため息混じりに呟く。
「言っておきますが、狩りも研究も一般的な貴族令嬢の優雅な日々とはかけ離れていると思いますが…」
「兄様も同じようなものでしょう?」
「研究と鍛錬に勤しむアレクセイ様は、騎士の鑑です」
「それならば私は淑女の鑑」
「辞書で『淑女』の項目を調べて、百回ほど複写したらいかがでしょうか?」
しれっとそう言う侍女に、隊長就任時のアレクセイの姿絵の模写を渡す。それを恭しく受け取った後、キリッとした表情で侍女は口を開く。
「ソフィアお嬢様は淑女の鑑です!」
「…本当にいい性格してる……」
「アレクセイ様の姿絵を持ち歩いているお嬢様も、どうかと思うのですが」
「家の使用人のやる気を引き出すのに効果覿面だからつい……」
いずれは騎士団でアレクセイに憧れる騎士たち相手にも、融通を利かせるアイテムとして使おうと、ソフィアは兄アレクセイ縁の品々を、今からコツコツ集めようと決心したのであった。
ファリハイドは小説「虚空の仮面」で出てくる、人魔戦争の時に滅ぼされた都市の一つです。人名も小説から取ってきましたが、貴族教育交流会は捏造となっています…
人が行き来しない中では、近親交配が進んで最終的に街が滅ぶんじゃないかと言う疑問があったわけですね。それの解消と4人の主人公の内の1人を出すために作ったストーリーでもあります。
小説「虚空の仮面」を読んだ事がある人は、ある程度お察しかもしれませんが…