TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

90 / 100
 
 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



消えた悲劇(レイヴンの人生が超ハードモード)

 

 飛び起きたユーリは周囲を見渡し、やけに煩い心音を落ち着かせようとする。

「ここは……そうか、追憶の迷い路の中だったか…」

 冷や汗が止まらない。

 長い髪を掻きむしり、先ほど見た悪夢を追い出そうとする。

「いやだぁあああっ‼︎」

 その時、叫び声と共にカロルが飛び起きた。

「カロル⁈」

 焦点が合っていない眼から、絶えることなく涙を流すカロルに驚き、ユーリはベッドから降りて近くに寄った。

「おい、大丈夫か。カロル」

「ゆう……り? 良かった……ユーリ…生きてた」

 そう言いユーリにしがみつくカロル。珍しくラピードも起きていて、弱々しげに鳴いてユーリの足元に擦り寄ってきた。

 

 突然、部屋の照明が灯った。

 デュークも上半身を起こして、呆然と自身の両手を見ている。

「起きたみたいだな…飲み物はいるか?」

 そう言い部屋に入ってきたのは、蒸留酒、ホットミルク、蜂蜜壺が載ったトレイを持ったアレクセイだった。

「アンタ…何故?」

「私が一番最初に起きた。皆も魘されているようだったので、飲み物を準備しただけのこと」

 そう言いアレクセイは、ユーリとカロル、ラピードにホットミルク、デュークに蒸留酒を手渡す。そしてユーリは蜂蜜を大量にミルクに入れて口に付けた。

 

 部屋にノックが響き渡る。

 ユーリが対応に出ると、エステルたち女性陣全員が、皆一様に憔悴した様子でそこに居た。

「エステル…もしかして悪夢を見たのか?」

「っ⁈ もしかしてユーリたちもですか?」

 ただ事ではないと、ユーリはエステルたちを部屋に入れる。

 その時、まだ起きていないレイヴンが激しく魘されて、そして半ば暴れるように飛び起きた。

「レイヴン⁈」

「う………ぁあ………」

 誰も目を合わす事なく、ただ頭を抱えているレイヴンに、アレクセイは持参した蒸留酒をカップに注いで手渡した。

「飲め」

「………アレクセイ…様?」

 勧められた酒を何口か飲み、深めの息を吐き出して漸くレイヴンは落ち着きを取り戻す。その間も自身の左胸を摩り何かを確認する様は、ユーリの心を掻き乱させた。

「レイヴンいいか? 実は……さっき俺は妙にリアルな悪夢を見た」

「………悪夢?」

「ああ。その夢でレイヴンは……魔導器(ブラスティア)の心臓だった」

 ユーリの言葉を聞き、レイヴンの肩がビクっと大きく揺れた。そして息を呑む周囲の皆の反応から、皆が同じ類いの悪夢を見た事を互いに察する事ができた。

「……………青年……その……」

「言わなくていい。その反応で大体わかった」

 ユーリに静止されるも、レイヴンの口から夢の内容が落ちてくる。

「………戦争でキャナリらが死んで…俺も死んだはずが心臓魔導器(カデスブラスティア)で生き返させられ…大将が俺を使ってドンを自刃に追い込んで…大将も絶望の中で死んで…星喰みを解決して自分の意思で色々と立て直そうとした矢先に青年らに逝かれて……おっさん流石にしんどいわ…」

 そう乾いた笑いをするレイヴン。

 アレクセイは緋色の瞳を揺らし、少し眉間に皺を寄せる。

「ダミュロン…私は……」

 アレクセイのその表情と声色は、取り繕えないほどの自己嫌悪に陥っているのだとレイヴン(ダミュロン)は知っていた。

「閣下。夢の話でしょう? 貴方ではない。そうでしょう?」

 きちんと自身と目を合わせてくれるアレクセイの態度に、安堵したように笑みを浮かべ、レイヴンは幾分かいつもと同じ調子に戻っていた。

 

「ヴゥウウ…ワンワンワン‼︎」

 突然ラピードがベランダの方を向き、激しく吠え始めた。

「どうした、ラピード?」

「……流石に鋭いね…」

 ラピードが吠える先、何もないはずの空間が歪み、一人の男が姿を現す。

「ヴェスペリア⁈」

「やっぱここに居やがったのか」

 ユーリの厳しい視線を受け流し、ヴェスペリアは顎に手を添える。

「誰が来たのかと様子を見に来たが…」

 そう言うヴェスペリアの視線は、デュークの懐で止まった。

「ああ、その懐中時計。バンタレイ家に引き継がれていたのか…」

 何かしらのエネルギーの動きが見えるらしく、服越しでも、思わず押さえたデュークの手越しでも、その存在はわかるようであった。

「それは私とトリウィアとの婚姻の証。星喰みの時の実験で作った、私達二人のマナの複合結晶化を動力源に仕込まれているんだよ」

 その話を聞きデュークは絶句する。

 懐中時計を渡した時、ソフィアにトリウィアの面影が過ったことは、見間違いではなかったと今更ながら認識した。

「遅くはなったが、ようこそ我が城タルカロンへ。まだ武装化されていない時代のものだから、ゆっくりできたんじゃないかな?」

「悪夢見せられちゃあ、堪らんけどね…」

 軽口が言えるほど回復したレイヴンを見て、ユーリは少し安堵する。

 一方その言葉を聞いたヴェスペリアは、思い出したように言った。

「私が見てきた消えた未来を、君たちはそれぞれの立場で、精神世界で追体験してしまったようだね」

「消えた未来?」

「刻を遡って消えた未来。どうにか結末を変えようと、色々と足掻いた世界」

「人魔戦争…だったか? それが起きた世界か?」

 夢での記憶を引っ張り出して、ユーリが言う。

 

 星喰みを生み出した魔導器(ブラスティア)の監視する役目が、独占する権力と変化し、始祖の隷長(エンテレケイア)との約定を忘却した皇帝と帝国貴族。

 腐敗した帝国を是正すべく、新たな魔導器(ブラスティア)を求めたアレクセイの要請で、ヘルメスが高出力魔導器(ブラスティア)を発明した事が切っ掛けに、始祖の隷長(エンテレケイア)と人が争う「人魔戦争」が勃発。始祖の隷長(エンテレケイア)が騎士団を壊滅させ街を滅ぼし、その同族を鎮めたデュークの友である始祖の隷長(エンテレケイア)の盟主…エルシフルが帝国に謀られて命を落とした。

 人に絶望したデュークが宙の戒典(デインノモス)を奪い去り、評議会に腹心を殺された騎士団長アレクセイは狂気に沈み、被害が軽微だった帝国評議会は私利私欲に走った。手段を選ばなくなったアレクセイは力を求め、ギルドユニオンのドンを謀殺し、非意図的に星喰みを防いでいた結界を破壊してしまった末に絶望の中で死亡。

 前準備無しに人々は、魔導器(ブラスティア)を捨てる決断に迫られ、星喰みを撃破した。

 

 しかし…

 

「帝国騎士団とギルドユニオンはトップが交代して弱体化する一方で、帝国評議会はほぼ無傷で実質一強となった。魔導器(ブラスティア)の代替技術も貴族らが独占し始めた矢先に、オーマとスパイラルドラコが復活した。帝国評議会の腐れ貴族はオーマらを担ぎ上げて身の保身を図り、その強大な力を利用して民から搾取し始めた」

「……そして利用されていると知り、怒り狂ったオーマとスパイラルドラコは、人類を滅亡しようと動いた」

 不快感をあらわにしつつ、デュークが悪夢の最後を語った。

「ここまで上手くいったのだ…オーマやスパイラルドラコが出てきて、全てひっくり返される訳にはいかない」

 そう言うフィアレンは、苦々しい笑みを浮かべていた。

「だからザウデの封印はそのままにしたい。そう言うことか?」

「その通りだ」

「生憎俺たちは、それを簡単に受け入れられることはできねえな」

「……今の説明を聞いてもか?」

 そう言いヴェスペリアは、深いため息を吐く。

「聞いてはっきりした。オーマとスパイラルドラコを、どうにかすれば良いだけの話だってことがな。残りの魔装具を俺たちに譲ってくれないか?」

「ミムラから聞いたが、宙の戒典(デインノモス)も返してもらおう」

 ユーリとアレクセイの言葉を吟味するように、ヴェスペリアは顎に手を当てる。

「…ミムラから……ね。なるほど」

 そう言いヴェルペリアは、朱色の目を細めた。

「その懐中時計の導きがあれば、魔装具の力を正しく導けるだろう。だが……少なくとも君たちが生きている間は、平穏に過ごせるはずだ。なぜ今、わざわざ困難を引き受けようとする?」

「貴方もミムラと同じ事を訊くのですね…でもソフィア先生が居ない時点で、平穏とはいえません」

「ボクたちはただ、ソフィアさんも一緒に居る未来が欲しいんだよ。まだ恩返しもしてないのに…」

「あいつは昔から、散々苦労してきたんだ。その結末がこれじゃあ、あまりにもやるせ無いぜ」

「ウワウっ! バウっ!!」

「……『トリウィアを犠牲にしたままでいいのか?』と言いたいのか?」

「それにさあ、未来に問題を先送りにするっていうのは、1000年前にアンタらがやったのと同じよね?」

「急に星喰みを押しつけられて、私たち結構困ったのよ。また繰り返すのは、馬鹿げているでしょう?」

「人は忘却するだろうな。星喰みの件の時のように。そしてその未来が今より発展しているとは限らん」

「星喰みの件も、おそらく貴殿らの居た時代の方が、もっと多くの対応策を模索できたのではないか?」

「……痛いところを突いてくるな…確かに皆をまとめきれなかったのが最大の要因だが…弁解の余地はないな。現に君たちは成し遂げたのだから。それに……」

「それに?」

魔導器(ブラスティア)無しでここまで来れた技量は、私の想定を超えていた…」

 深い息を吐き、全てから解放されたような笑みをヴェスペリアは浮かべた。

 

 ヴェスペリアは4つの魔装具…剣、刀、鎖、短剣を、自身の周囲に出現させる。そして右手に宙の戒典(デインノモス)を出現させた。

「マスター⁈」

 驚き声を上げつつ、クロノスが姿を現す。

「クロノス。私は彼らに賭けたいと思う」

「しかし……」

「もう時間の逆行はできない。そうだったな? ならば潮時だろう…彼らに協力してくれないか?」

「……御意」

 押し黙るように承諾の意を示すクロノスを一瞥し、ヴェスペリアは宙の戒典(デインノモス)の力を解放する。

「覚醒した魔装具の全て、宙の戒典(デインノモス)、そして私の全ての力を渡そう。だから……」

 

 トリウィアを頼む

 

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