pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
「何か気掛かりなことがあるのでしょうか?」
デュークの隣にいる、副帝の地位についたエステリーゼことエステルが尋ねる。
「いや……このような場に慣れておらぬ故…」
そう言うデュークの低い声は、周りで歓声が響いている中でも通りが良く、エステルの隣に座る、帝位を継いだヨーデルにも聞こえているようであった。
「確かに、帝都での騎士団演習場とは全く異なりますからね」
デュークやエステルらが居るのは、闘技場ギルドの
今ここで、帝国とギルドユニオンが共同開催する形で、ヨーデルが皇帝になってから初めての御前試合が行われていた。
騎士やギルド員に関わらず、貴族の私兵も居ることから、参加者は千人を超えていた。そこで一度に7箇所の舞台で、ブロックごとに試合が行われていた。各ブロックで一度に20人程度を戦わせるバトルロワイヤル方式を10回実施し、各回で残った一人ずつをトーナメント戦で戦わせると言う形を取っていた。
「それにしても……よく開催できましたね」
感心した様子でそう言うエステルに対して、軽く頬を掻きつつヨーデルは答える。
「
脅威度が高い魔物も、闘技場で戦わせる相手として使用していた。しかしそれは街に結界があり、魔物を閉じ込め大人しくさせる多様な魔導器が使えることが前提でできたこと。それができなくなったことから、各種対応策が必要となり、大幅な施設改修が必要となったのだ。加えて…
「代替品があるとは言え、今までの
「その通りです。そしてどの組織でも抱えている戦闘員たちの、今現在の実力を確認する機会が必要でした。それは帝国もギルドも変わりありません」
ヨーデルの代わりにデュークの言葉に答えるのは、皇族の護衛である親衛隊長のナイレンであった。
「確かに多くの人が求めていた機会であることは分かります。しかし、評議会の貴族たちを説得できたヨーデルの手腕も、素晴らしいと思います」
「そうでも無いですよ、エステリーゼ。貴族たちも私兵を抱えてますし、その練度に不安を覚えてしまえば、どうにか改善したいと思うのは当然のことじゃ無いですか」
ヨーデルが戴冠式の時に用いた「祈りの剣ラグクエリオン」に視線を向けつつ、ナイレンが口を開く。
「……その剣を回収するための地下大空洞探索、
「死亡者が居なかったからいいじゃ無いですか。アレクセイとダミュロンたちを同行させて、本当に良かったです」
そう言い腹黒さを見せない爽やかな笑顔をヨーデルは見せた。
「まあ、そう言うわけでどの組織においても、出自や所属に関わらず、優秀な戦士をスカウトしたいと言うのは一致した意見です。このような大会は、まさにうってつけと言うわけですよ」
「出自や所属はともかく……種族も関わらないと言うのは…」
そう言うナイレンの視線の先で、1匹の隻眼の元軍用犬…ラピードが奮闘していた。
ラピードの相手は、魔物討伐を専門とするギルド、魔狩りの剣の首領であるクリント。
クリントはバトルアーツを決めようとするが、機動性はラピードの方が上であった。
「ウワゥゥゥっ‼︎」
僅差で天狼迅牙の方が先に放たれ、クリントの刃が振り下ろされたのは、ラピードが宙に舞い上がった直後であった。クリントが地面に沈んだ大剣を構え直す前に、ラピードの回転斬りが決まった。
対人戦中心に作り替えられた闘技場。審判が戦闘不能かを判定する事に加えて、設置された舞台から落ちる、闘技場で用意された試合用武器が破損するなど、新たな敗北条件がルールに加えられた。
クリントは場外へ落ちる事は避けられたが、試合用の大剣は真っ二つに折れた。
ブロック優勝が決まり、ラピードは勝利の遠吠えを響かせた。
「ラピード!」
舞台を降りてきたラピードに駆け寄り、エステルは両手を掲げて抱きしめようとした。しかしラピードはいつもの如くスルーして、元の飼い主であったナイレンの元へと歩み寄った。
ナイレンにすり寄るラピードの姿を見て、デュークはどことなく既視感を覚えていた。
「ナイレン……その犬は?」
「お、流石に見覚えがあるか? お前の知っているランバードの孫に当たるんだよ。ラピードは」
ランバードという名前。
デュークの後継人であったレギンは何頭かの軍用犬を飼っていた。子犬が生まれた折、居合わせていたデュークがその内の一匹に名付けことがあった。それが「ランバード」という名前であった。
「レギン殿下の魔物討伐隊が壊滅した折、皆死んでしまったと思っていたが…そうか、生き残りがいたのか」
「偶々だ。ランバードのカミさんが俺の飼い犬でな。いつ良い仲になったが知らんが、落とし胤を残してくれてなあ。その子がランバードJr.で、ラピードはさらにその子供だ」
ナイレンに促される事なく、ラピードはデュークの方へ歩み寄る。そしてデュークに一通り頭を撫でられた後、ラピードはデュークの足元で丸まってるように座った。
「本当にデュークは、動物に好かれやすいのですね…私もラピードともっと仲良くなりたいです…」
羨ましそうにそして残念そうに、エステルがそう言う。
「愛玩物に対する感情を向けるのは、戦士に対して失礼であろう? まずはそれを改めた方がいい」
「そんなっ‼︎ ちゃんと戦闘では信頼して……でもモッフモフで…可愛いじゃないですか」
「エステリーゼ様。命の恩人を救うため、ザウデへの探索隊の枠を取るべく必死な訳で…もう少しコイツのプライドを汲んでくれませんか?」
自身の気持ちを代弁してくれたナイレンに礼を言うように、ラピードは短く吠えた。
「命の恩人?」
「ん……ああ。コイツ片目が見えないだろう?この傷を負った時、診察して治療してくれたのがソフィアさんだよ」
初めて聞く話でデュークは驚き目を見開く。
「そうでしたね…私を庇ってくれて……動揺して上手く力を使いこなせなかった私の代わりに、ソフィア先生が…」
ラピードが軍用犬の訓練を受けつつ王城にいた頃の話。故意かどうかは不明だが、エステルが重傷を負いかねない事故があった。その時身を持って庇ったのがラピードであった。
一命を取り留めるも、ラピードは片目を失った。
自身の代わりに傷つくことを恐れ、エステルは飼うことを断念した結果、ラピードはユーリに引き取られたのであった。
ラピードは強くなった。先ほどの試合でも明らかであり、それ以前の旅でエステルはラピードの力量はよく知っていた。
「ワフ」
自身の足元をふわふした物が何度か叩いた。それがいつの間にかそばに居た、ラピードの尾であることにエステルは気づいた。
「ラピード?」
「気にするな…と言っているところですか?」
「ヨーデル陛下の想像で概ね合ってるかと」
ヨーデルとナイレンの言葉を聞き、嬉しさのあまりエステルは抱きつこうとする。
「フッ……」
エステルの腕からスルリと抜け、ラピードは自身の相棒であるユーリが居る舞台へと移動していった。
人数が多いことから、各ブロック優勝を出す形で、今回の大会は行われていた。
この大会は、表向きはヨーデル殿下の御前試合で、騎士団とギルドユニオンの親善試合であるが、その実はソフィア救出とオーマへの対処を目的とした、ザウデ探索隊の選抜戦であった。
全ての事情を知っている極一部だが、ザウデ探索隊の枠を目指す者たちは、鬼気迫る勢いで戦いを勝ち抜いていった。
「ヴァイオレントペイン‼︎」
リタが放つ闇魔法の槍を避けつつ、ナディアはマナを込めて剣気を複数放つ。
「魔神連牙斬っ‼︎」
「ファイヤーボール‼︎」
詠唱破棄ながらも、綿密な術式を構築したリタは、10近くの火球を解き放つ。相手の剣気と相殺して尚、まだ火球が残存してナディアに襲いかかる。
ナディアは氷魔法で相殺しようとするが、それが今現在使用できない属性であることを思い出し、反応が遅れた。
「しまっ……くっ……」
ナディアは場外へと吹き飛ばされ、リタがブロック優勝した。
「如月!」
跳躍から空中で軌道を変え、ジュディスはキャナリに膝蹴りを喰らわそうとする。
「金剛‼︎」
後ろに飛び下がり攻撃を避け、そのままマナを込めた矢を地面に穿つキャナリ。地面が割れて飛び散る石礫を、ジュディスは空中でヒラリと後方にジャンプして避ける。
「月光・烏‼︎」
そのまま炎を纏わせた武器を、ジュディスは投げつけた。
キャナリは防御魔法をと考えたが、光属性の魔法は使えないことを思い出す。即座に作戦を切り替え、弓を剣へと変形させようとするが、今使っているのは試合用の弓で家宝の変形弓ではなかった。
キャナリがそれに気づいたのは、弓が焼け落ちた後であった。武器が壊れたため、試合続行不能でジュディスの勝利となった。
「リタとジュディスは勝ったみたいだね」
そう言いエステルの近くに来たのはカロルであった。世界救済の英雄の一人であることから、ナイレンはカロルを貴賓席に招き入れた。
「エステル…ごめん、ボクは一緒に行けない」
「え?」
「はは…負けちゃったよ……決勝まで頑張ったんだけど、イエガー…じゃなかった。ステルさん、すんごく強かった」
「怪我はありませんか?」
「大丈夫大丈夫。ボク、治癒術使えるからさ」
そこで言葉を切り、カロルは悔しそうに俯いた。
「ソフィアさんに…ボクはボクの力でここまで来たって、見せたかったな…」
「おいおい、優勝じゃないからって選抜から外れるとは限んねえぞ」
そう言いカロルの背後から声を掛けてきたのはユーリであった。同時に励ますようにラピードがカロルの手を舐める。
「おっさんとアレクセイの試合、アレクセイが勝ったがレイヴンが選抜されたぜ」
「え⁈ どうして…」
「アレクセイ閣下は騎士団長だ。立場上、おいそれと帝都を離れるわけにはいかないだろう。そして僕はユーリと決勝戦で戦ったけど、僕らは2人とも選抜されたよ」
「言っとくが、勝ったのはオレだからな」
「通算だったら、僕の方が勝ち越してるよ」
そのまま言い合いになりそうなユーリとフレンの間に割って入り、カロルが尋ねる。
「え…ちょっと待って! 優勝者が選抜されるんじゃないの?」
「あくまで参考にするだけだと、アレクセイは言っていました」
ヨーデルの言葉を聞き、フレンも肯定するように肯く。
「僕が選抜されたのは、エステリーゼ様の護衛騎士がダミュロン隊長首席だけでは心許ないと言うのが理由だしね」
「え……ステルさんも居るんじゃ…」
「ステル副隊長との試合、君は負けたと言え善戦した。それが決定的になったんだよ」
「じゃあ……ステルさんの代わりにボクが⁈」
「
「ワフっ」
ユーリにそう言われ、ラピードがその言葉を肯定する様子を見て、カロルは何度も目を瞬かせる。やがて実感が追いつき満面の笑みを浮かべる。
「うんっ‼︎ そうだね…ボクがいなきゃ……か。へへっ……ありがとう。ユーリ」
「よかったですね。カロル」
「うん! ボク、頑張るよ‼︎」
エステルにそう答えるカロルを見て、デュークは尋ねる。
「一つ訊きたい。お前はザウデでオーマを目撃したはずだ。凶悪さを感じ取れなかったわけがあるまい。なぜ対峙することを望むのだ?」
ザウデで見たオーマの異形の姿を思い出したのか、カロルの表情が強張る。
「正直凄く怖いよ……でもこのまま何もせずに、ソフィアさんに何も言えずに別れるなんて…そんなのは嫌なんだ」
俯きつつそう呟くように言う。しかし次の瞬間、顔を上げたカロルの鳶色の目は、決心を固めた静かな光を灯していた。
「それにユーリやジュディス、ラピードが居れば大丈夫だって信じているし、ソフィアさんの事はドンにも頼まれたんだ。みんなの信頼を裏切りたくない。ボクは