pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
「兄様は……そのままの兄様でいてくださいね」
追憶の迷宮で見た悪夢…いや、辿った可能性のある別の世界を知った上で、解読されたソフィアの日記と遺された手紙を読み直し、アレクセイは漸くソフィアの言葉の真意がようやく理解できた気がした。
別の可能性の世界。
その世界のアレクセイは、腐敗した帝国を糺そうとするが、魔窟である評議会の貴族たちによって心を壊され、暴走した末に大罪人の烙印を押された。さらに彼を狂気に追い込んだ輩の手によって、死後も徹底的に存在を貶められた。
アレクセイの暴走を止めたユーリやフレンたちもまた、その権力欲と我欲の魔物に妨害し続けられ、最悪とも言えるヴェスペリアが見た世界では終焉に追い込まれたらしい。
星喰みの脅威から世界を救うには、
しかしソフィアは、
それ故にカクターフらの暴走を一番残念に思ったのは、ソフィアであろうと予想することは容易に想像できた。
脅威と判定した者自体を切り捨てるアレクセイには、思いつきもしない方法であった。ソフィアの働きにより、逆恨みによる敵が増えるどころか、アレクセイへの協力者が増えたのは事実であった。
見えない所でソフィアは、アレクセイを支え続けてくれた。家の中の取り回し、騎士団への人材提供。ソフィアは評議会の貴族に対して煽りや牽制をしてはいたが、その後の埋め合わせや救済措置の準備は万端で、それらを提示するアレクセイの評判を上げる一助となっていた。何よりソフィアが先に動くことで、アレクセイが“制裁”ではなく逆に“抑え”に回ることができていた。
「あれは色々と考えすぎる上に背負いすぎる」
「ソフィアさんのことですか?」
呟きに対して尋ねたナイレンに、アレクセイは肯く。
「それにしても、閣下は加わるかと思ったのですが…」
ナイレンが話題にしているのは、オーマとスパイラルドラコと対峙する選抜メンバーについてであった。
ヴェスペリアは
分けられた
ヴェスペリアの指輪を使い、ザウデ地下の望郷の墓所を攻略し、オーマとスパイラルドラコに対処することとなり、補給の関係からも精鋭少人数が良いという結論となった。
そして、満月の子のエステルと
ラピードとクリントの決勝ではラピードが勝利した。ジュディスとキャナリの決勝では、土属性の術技が得意なキャナリでは現状不利で、ジュディスが勝利した。そしてリタとナディアの決勝では、闇の精霊魔法まで習得したリタが勝利した。このように大体は各ブロックでの勝者が選抜されたが、一部例外があった。
ダミュロンとアレクセイの決勝では、アレクセイが勝利。しかし治癒魔法の有無が重視され、現状ではアレクセイの光、氷属性は使用できない一方で、無、風属性の治癒術が使えるダミュロンが選抜された。そもそも騎士団長が帝都を離れることは困難な事はアレクセイは重々承知していた上、ダミュロンが想定以上の強さを見せたことから身を引く決断をした。
カロルとステルの決勝ではステルが勝利した。しかしダミュロンが選抜されたため、同一部隊のツートップが共に選抜されるのは憚れること、カロルの水属性の治癒術は現状では貴重であることから、カロルが選抜された。
ユーリとフレンの決勝では、接戦の末にユーリが勝利した。しかし、確定しているエステルの護衛として、騎士団からダミュロン一人と言うのは少ないと言う理由から、フレンもまた選抜メンバーに加わった。
「
「冷静さを欠いていると言う指摘を受け入れなかったキャナリも、選抜戦でどうにか納得はしてくれたからな」
選抜戦でジュディスに敗れたのは、使える術技が制限されていただけではなく、
「…そしてそれは私も例外ではない。……おそらく私では説得できまい」
別の可能性の世界。
“使命を成すためならば自身が犠牲になってもいい”から“大義のためならば自身が汚名を被るのも厭わない”と至ったことが、道を踏み外した一番の原因であるとアレクセイは自己分析していた。
亡くしたものは戻らない。
取り戻せないものができた時点で、償いなきれるものではない。復元したところで傷つけた事実は変わらない。手段を選ばない自身の行為の果てに生み出された悲哀や怨嗟を被ることが、自身の罪を償いであると陶酔するのは、道化そのものであった。
「魂が変わったと言うが、独りでやろうとする自己犠牲精神は誰に似たのやら…」
言葉とは裏腹に、それ故に成り替わりであろうがソフィアを妹として愛しく、そして遣る瀬無く思っていた。
「自分を大事にしない者は、真の意味で他者を大事にできないとは、よく言ったものだな。悲劇をばら撒く行為は被害者だけではなく、その行為をした自身を見て傷つく者も生み出す。その行為を止められなかったのならば尚のこと…」
自己犠牲に走る者。
止め切れなかった者。
別の可能性の世界、狂ったアレクセイや同族殺しをしたエルシフルが前者であり、ダミュロンとデュークが後者であった。そしてデュークもダミュロンも、遺された者の責務を背負い生きていく事になった。
「ソフィアが前者である以上、私では下手をすれば背を押すことになりかねない」
「だから身を引いたのですか?」
「そういうことになるな。私より、彼らの方が最適だろう」
責務の重さと絶望の深さゆえに道を踏み外したデュークとダミュロンを、正しい道に引き戻してくれた
「それに万が一を考えれば、主力を全て投入するわけにはいかんだろう?」
オーマやスパイラルドラコが地上に開放された時に備えて、アレクセイは移動要塞ヘラクレスの整備を急がせていた。全盛期に及ばない能力では、気休めにしかならないだろうが、少しでも万全を期す必要があった。
§
ザウデ不落宮。
ヴェスペリアの言うとおり、デュークの持つ懐中時計と魔装具、
それを利用し、ユーリらは望郷の墓所に立ち入った。1年ぶりに来た場所を見渡し、ユーリが口を開く。
「ちゃんと来れたな。そう言えば、リタとエステルは石板を見ていたが、何か書いてあったのか?」
「ええ。ここが満月の子の墓だと言う内容だったわ」
「墓⁈」
リタの言葉に驚き聞き返すカロル。
「確か、ザウデは満月の子の命で動いているんだったよな」
「ザウデは星喰みに対応するためのものだった。つまり…ここはそのために死んだ満月の子のお墓と言うわけね」
レイヴンの言葉を聞き、ユーリは壁面をよく見ると、墓であることに気づいた。その全てに祈りを捧げる勢いのエステルを止め、ユーリらは先へと進む。
蒼天層、今生層、覇王層、禽獣層、亡者層、冥底層。ミムラから聞いた知識では、全6階層から成ると言う話であった。そして各層の最深階である11階に、番人が存在していると言うことであった。
「番人を倒せば、今生層へ進むための転移魔法陣が出るらしいな」
「つまり、最低でも各層の番人を倒す必要があるということだね」
「つまり、最低6回は強敵と戦えると言うことになるのかしらね」
「…何か楽しそうだね…ユーリもフレンもジュディスも」
そう言い戦闘狂の仲間たちに、カロルはため息を吐いた。
ミムラの言うとおり徘徊している魔物は強く、通常の攻撃は通用しにくかった。
温存目的でヴェスペリアの指輪は使用せずに対処したが、思った以上に何とかなった。確かに攻撃力は不足していたが、技量は向上していてフェイタルストライクを決めることが多く、次々と撃破して蒼天層の地下11階に辿り着いた。そこで、各階を貫くように吹き抜けの中心に聳える像の全体像が把握でき、
仕掛けが無いかと先へ進もうとしたリタを、レイヴンはやんわりと押し留める。ここまで戦い続きであったことから、レイヴンの提案に従って、一度休憩を入れることになった。
「で、わざわざこのタイミングで休憩を入れるってことは、何か話したことがあるんじゃねえか?」
「……相変わらず青年は鋭いわね…」
そこで言葉を切り、レイヴンは懐から一つの手紙を取り出す。
「おい、それは…」
手紙を知っているらしいデュークが口を挟むが、レイヴンは首を左右に振った。
「これ、ソフィアからの最後の手紙。大将と旦那、キャナリと俺宛に、書かれたもの」
「……なぜそれを今わざわざ出すんだ?」
「どこまで本気でソフィアを救いたいかどうか、方針を決めておいた方が良いと思ってね」
そう言いレイヴンは翠の目を細める。
「オーマやらスパイラルドラコ対策も重要だが…ソフィアの説得が一番のポイント。皆と共に地上で生きたいと、ソフィアの思考を方向転換させなきゃいけないわけね」
「……他に方法はないから、選んだんじゃねえのか?」
「もちろんそれもあるし、それを盾にソフィアは俺様たちの説得に掛かるでしょうね」
「しかしそれ以上に、私たちと共に生きることに負い目を感じている」
デュークが続けて言った言葉を聞き、レイヴンは彼宛の手紙にも同様の内容が書かれていることがわかった。
これまで協力してくれた礼で始まり、異世界からの転生者である自身に関する説明では、“ソフィア・ディノイア”の人生を乗っ取ったことへの罪悪感を所々で読み取ることができた。
そしてこの世界に異世界の価値観を押し付けたことへの謝罪では、脅威の排除後は自身の軌跡を消しても構わないとまで記されており、自身の存在を消そうとしている節があった。
「とまあ……ここで退場することは、彼女の望みでもあるのよね。それを考えて上で、どうしたいか考えて欲しいのよね」
「どうしたいも何も、ソフィアを連れ戻すために来たんだろうが」
「彼女の意思を尊重するのか、彼女を連れ戻したいと言う己が欲望を優先させるか。どちらを選ぶかと言うことだ」
ユーリを嗜めるように、そう言うデュークは珍しく感情を表に出して苦い表情をしていた。
「違うな。相手が言う主張を俺らが納得するか、本音を引き摺り出して相手に見せつけるか。俺たちの選択肢はその2つだろう?」
ユーリの言葉に、デュークとレイヴンは虚を突かれたように目を見開いた。
「……やっぱり来たね…」
突如聞こえた聞き覚えのある声の方へ、ユーリは視線を向ける。例の戦士の石像の剣の近く、浮かび上がった転送術式から一人の人物が姿を現した。
ザウデの地下に封印を施したトリウィアであった。
エステルと同じ桃色の髪に新緑の瞳。その伶俐な視線をユーリらの身につける指輪に止めて、寂しげな笑みを浮かべる。
「その指輪…ヴェスペリアは…兄上は貴方方に託しましたか…」
「ああ。アンタを任された。この場所についてはミムラからも聞いたが、アンタがこの階層の番人か?」
「いいえ。以前にザウデの台座で壊された
その言葉を聞き、自分たちを台座から追い出そうとして、アレクセイに斬り伏せられた
トリウィアに招かれ蒼天層の次の層に降りると、外に出たのかと見誤るほど光が満ちた空間の出た。
光の元は頭上の天井にある月。
マナを凝集して月を模したものが、天井に浮かべてあると言う話であった。
その空間には魔物は居らず、代わりに桃色の髪、新緑の瞳の人が居た。そして皆一様にトリウィアに一礼し、足早に歩き去っていった。
「ここは?」
「十六夜の幽虚街」
「人が住んでいるんだね。グレンカレイの言った『楽園』なのかな?」
アイフリードの話を思い出しつつ、カロルが呟く。
「楽園ではなくて監禁場所。さっき会った満月の子を閉じ込めるための」
「え⁈」
「詳しく話すから、どうぞ中へ」
「いいのか?」
「納得しないと、地上に帰らないでしょう?」
「アンタを連れ帰らない限り、納得しねえけどな」
ユーリのその言葉に一瞬目を見開いた後、苦笑しつつトリウィアは館へと案内した。