pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
応接室にユーリらを通し、全員に飲み物が行き渡ったところで、レイヴンが切り出す。
「ずいぶん普通の生活してるのねえ…」
「少し安心しました。あの様な別れ方だったので…ソフィア先生」
知人に向ける穏やかな視線を向けつつそう呼ぶエステルに対して、トリウィアは気まずそうに苦笑する。
「ヴェスペリアから聞いているみたいね」
「ザウデでアレクセイの呼びかけに反応したであろう?」
「そん時の表情見ればさすがに分かるわよ。長い付き合いなんだし」
デュークとレイヴンの言葉を聞き、ザウデの時点でバレていたことを知り、トリウィアは誤魔化すように顎を軽く掻いた。
「やはり、貴女はソフィアさんでしたか」
「正しくは、ソフィア・ディノイアの身体を間借りしていた者」
「俺たちが知っているソフィアってことだろう? 異世界から魂だけが来たとか、その魂がトリウィアだったとか、それ全部含めてな」
「……参ったね…」
ユーリに複雑な笑みを向けつつ
「……元の姿に戻れないの?」
「カロル君、これが私の元の姿なの。時間をかけてエアルから元の状態に再構築した。まあ…ソフィアの身体のデータは採取してあるから、構築はできると思うけど… 」
そう言いトリウィアは、懐から一つの珠を取り出す。
「それは…テムザでナギーグの訓練に使うものかしら?」
「古代の情報の記録媒体。ナギーグで万物を読み取る訓練に転用されていたのには驚いたね」
ジュディスに軽く見せた後、トリウィアは再び懐に戻した。
「……まさか身体だけ作って、亡骸ってことで大将に送り付ける気じゃないわよね?」
「そんなことはしないよ、ダミュロン。君たちに持って帰ってもらうかと思っているけど…」
「しれっと引くようなことを口にしたわね…」
「大丈夫よリタちゃん。上手い具合に私がオーマを倒したけど、相打ちだったという記憶を君たちに植え付けるから」
「実際起きていない記憶を植え付けられるのは、流石に嫌だわ」
「でもジュディスちゃん、そうしないとまたここへ来ようとするでしょう? 兄様も遺体があったほうが踏ん切りがつくし、ソフィアの身体は家族に返すのが筋とは思うわけで…」
全く話が噛み合っていないことに大きなため息を吐き、隊長首席に近い低い声でレイヴンは口を開く。
「そういう意味ではない! 妹の死が確定したら、閣下は間違いなく狂う」
追憶の迷い道で見た、ソフィアが居なければ辿ったかもしれない世界。アレクセイは立場も能力も有るだけに狂気に走ると厄介だと再認識したわけだが、同じことが発生する可能性が高いと、レイヴンは危惧していた。
そしてレイヴン自身もキャナリも、アレクセイを嗜める気力を喪うことは、容易く予想することはできた。
「普通にアンタが帰ればいいだけの話だろう?」
「それが無理だからお帰り願おうとしている」
「ボクたちだって手伝えるよ! 全部解決して、一緒に地上に帰ろうよ!」
「現状維持では、未来へ禍根を残すことになります。僕らはそれを解決するために来たのです」
カロルとフレンはそう訴えるも、トリウィアは首を左右に振る。
「この件は私が責任を持たなければならない」
「何故です?」
「エステリーゼ様。これは私の身内の問題で…」
その言葉を聞き、エステルはテムザで得た情報を思い出す。
「…テムザで伝わっていた話で、勇者と賢者の子の話がありました。もしかして…」
「その伝承のとおりですよ。オーマは私とヴェスペリアの子」
「ええっ⁈ 本当にあのオーマは子供なの⁈」
驚き思わず疑問を口にするカロル。
「見た目が全然似てなくない?」
「霊薬アムリタを延命薬に転用した副作用で、ああなったらしい」
「つまりだ…子育てに失敗したケジメをつけたいってことか…」
「端的に言うとそうなる。当時は子育てという概念自体知らなかったからね…」
「は⁈」
言葉に意味が理解できず、ユーリは思わず聞き返す。
「私やヴェスペリアはちょっと特殊で、子供時代がなかった。だから当時は子育て自体が分からなかったから、致し方なく人族の部下に任せたのがいけなかった。その結果…」
気が重いらしく、一度深いため息を吐いてからトリウィアは話を再開する。
「色々と吹き込まれて、傲慢で人至上主義に育ってしまった…
全ての竜を統べしもの、人を統べしクリティア族の長との間に2子あり。兄たる勇者ヴェスペリア、妹たる賢者トリウィアなり。
混然たる世界を治めんがため、勇者と賢者の間に盟主が産み落とされる。名はオーマ。盟主オーマは人々の君主と成りて、多くの子を成し、満月の子の祖となる。
「竜……
テムザで知った自分のルーツ。それが裏付けされ、エステルは少し考えこんだ後、トリウィアに尋ねる。
「その…何故
「気候変動が起きて、人族が全滅しそうになってね。信仰していた
そもそも、気候変動は
「しばらくして〈偉大なるもの〉をはじめ、一定の知識のある
「オーマと人が交わって生まれたのが『満月の子』か?」
「そう言うこと。で、
「……古代ゲライオス文明には、貴女は関与していなかった」
「そう言うことになる。その後、星喰みに繋がるに至って対処不能になって、泣きついてくる形で私たちの幽閉が解かれたのだけどね」
「何つーか…今も昔も、上や下がやらかした後始末ばっかやってんのね…」
「こればかりは仕方がない。オーマについては自身の無知から蒔いた種だ。時間はたっぷりあるから、関係修復に努めて…」
「だから心配ないから地上に戻れ。そう言いたいんだろう」
トリウィアの言葉を途中で浚い、ユーリが紫水晶の視線を向けた。
「聞きたい事がある。『スパイラルドラコ』が居ると聞いた」
「そうそう。その存在を無視して、流石に帰れんのよね」
デュークとレイヴンも地上に戻ることに納得できていない様子で、トリウィアは苦笑する。
「あー…ミムラは[エクストラダンジョン]で知っていたね…それも私に任せて欲しい」
「何故ですか?」
「スパイラルドラコとは
「……過去形なのね」
「スパイラルドラコ自体は既に亡くなっている。ここにあるのは、その死体を改造して作った兵器」
古代ゲライオス文明の終期。
星喰みを撃破すべく立ち上がったが失敗し、星喰みを倒す研究の礎となる為にスパイラルドラコは己自身を捧げた。
スパイラルドラコでの事態解決に失敗し、幽閉から解放されたヴェスペリアとトリウィアを中心に解析したことで、リゾマータの公式が導き出された。そして、スパイラルドラコの
「持っている
誰が生き残り、ザウデで命を散らすか…
その選別で大いに揉めたという。
適格者は責務を理解し貧乏くじであると認識していることから、どちらでも良いと言う考えである一方で、不適格者は目先の利益しか見えないことから、生き残りの枠に固執した。
「この頃は、ヴェスペリア派とオーマ派に分裂していた。オーマ派は残存するには不適格な者が大半を占めていたのもあって、自身らの生存もかかっている事から、星喰みの元である
空中都市タルカロンの改造もその一つという話である。
「その人類間の争いの最中に、スパイラルドラコの素体をオーマ派に奪われてね。
「やりたい放題だね…」
「危機が迫っているのに争うなんて…とても悲しいです」
「下手すりゃ俺らの時も同じことが起きてもおかしくなかったぜ。同じ轍を踏まないように、色々と根回ししたんだろう」
そう尋ねるユーリを微笑で応えるトリウィア。
「私もヴェスペリアも自身は万能と驕って、人を育てなかった弊害を思い知ったからね…まあ、最終的には側近と共にオーマを軟禁するに至った。そしてスパイラルドラコは、ここよりさらに下層に封印した」
「…酷な言い方だけど、そん時に処刑とかできなかったの?」
「当時のオーマに対抗できたのは私かヴェスペリアだったのだけど、星の結界システムの発動に備えて、無駄なエネルギーが使用できない状況でね…我が子を手に掛けられないって考えられなかった時点で、まあ親失格だったと今なら思う」
そしてオーマの封印に伴い、トリウィアとヴェスペリアは、それぞれザウデ不落宮と凛々の明星の制御装置となるため、立て続けに命を失ったという。
星喰みについて後世に伝えること。
星喰みを打破する研究を続けること。
魔導器の管理は一極化せずに複数の一族で分散管理すること。
婚姻は不可だが
それらの指示を、地上に残る予定の選抜した満月の子に伝えたが、果たされなかった。
「地上に残った奴らが無視したのか?」
「ここに残されていた資料を見る限りだと、側近以外のオーマ派も封印されるか、ザウデで命を捧げる予定だったのだが…選抜した残留者の立場を乗っ取ったみたいで…」
「つまり、地上に残って統治する筈だった者たちが諮られ地下に封印され、奸計を働いた一族が皇帝になったというわけだな」
眉間に皺を寄せつつ言ったデュークの言葉を、トリウィアは肯いた。
少なからずショックを受けたエステルを支えつつ、リタはトリウィアを睨め付けた。
「言っとくけど、そいつらとエステルは、全くの別人よ!」
「分かっている。むしろエステルやデュークが彼らの子孫と考えると、当時の選別は烏滸がましい行為だったと思っているくらいだ」
そう言いデュークに向けて苦笑するトリウィア。そんな彼女に対して、レイヴンはウィンクを見せつつ口を開く。
「過ぎたことだしいいんじゃないの。何だかんだで世界は上手く回ってんだし」
「それにそこまで持ち出されたら、僕たちは皆、星喰みを産んだ人間の子孫になります」
そう言いフレンは、エステルに向けて表情を和らげてそう言った。
「話を元に戻すけど、スパイラルドラコは、稼働するエネルギーがない状態で封印されている」
「直近の危険性は無いと言いたいのか?」
「デュークの言うとおりだけど…実際これからどうしたものか頭を悩ませている」
「倒せないの?」
「倒すも何も既に死んでいる相手よ。再生機能が付与されているから、時間が経てば復活してしまう」
「で、アンタが地下から離れられないのは、その監視もあるからってことだな」
「そういうこと。実質、今の状態に戻った私は余程のことがない限りは死なないし、寿命がある他の誰かに任せられないでしょう?」
だから地上には戻らない。