pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
「
エステルの提案に真っ先に同意したのはリタであった。
「そうよ! エステルも私も居るし可能だわ!」
「それも考えたけど、そのためには
「難しいのですか?」
フレンの問いに、トリウィアは首を左右に振る。
「君たちが持ってきているから問題ない」
「魔装具と
ジュディスの言葉に肯いた後、トリウィアは眉間に皺を寄せる。
「問題は、完全版のスパイラルドラコを一度無力化しないといけないこと」
ソフィアの予想では、[ゲーム]の[アンノウン]クラスであった。
「取り敢えず一度倒せばいいってことだろう? それはおいおい考えるとしてだな、アンタに聞きたいことがあるんだ」
そう言い、相手を射すくめるような視線を、ユーリはトリウィアに向けた。
「アンタは、どう生きたい?」
「……私がどう生きたいかって事? それは先ほどから言うように…」
「それは『やるべき事』だろう。義務とか責任とか取っ払って、アンタが『やりたい事』は何なんだ?」
貴方自身の幸せ、一度は真剣に考えな
それは誰しもが持っている権利なんだから
過去にジリに言われた言葉がトリウィアの脳裏に過ぎる。
しかし……
「生きていると…辛いこともあるけど…楽しいことも、嬉しいこともある。それを受け取るのが申し訳なくて辛くてね…」
「それはどう言う事ですか?」
「それを受け取るべき者は『ソフィア・ディノイア』だから。私は…彼女の死体に寄生して動かして、彼女の人生を乗っ取っているに過ぎない」
ユーリらを地上へ戻すために突き放したいのか、遠慮のないその表現にエステルは息を呑む。それは裏を返せば、生きていること自体に罪の意識を感じていた証左なのだから…
「目的を果たすためだったら…まあそこは腹を括れる。でも、それを果たしたら? それ以上は…まして自身の幸せを望むのは、彼女に申し訳が立たない」
正直に話さなければユーリたちが折れる事は無いと感じたからか分からないが、今まで溢したことがない本音が、次々と零れ落ちた。
「結局自分がどうしたいかじゃねえのか?」
「本来のソフィアの意見も必要な訳で…」
「居ないやつの意見をどうやって訊くんだ? あんた自身で決断できないだけじゃねえか」
痛いところを突かれ、トリウィアは苦笑いをする。しかしそんな彼女を、なぜか周囲の者は痛々しい表情で見ていた。
「その…私…自分の存在が世界に害悪とわかって…でも、ユーリたちは訊いてくれました。私がどうしたいのかと。そして、私の願いを叶えて、世界を救ってくれました」
声を震わせながらも、エステルは必死に言葉を紡ぐ。
「貴女がどうしたいかを考えて下さい。私たちが、それを叶えるため全力を尽くします。貴女を支えます」
「エステリーゼ様。仮にも皇族である貴女が、そのような軽率な言葉は…」
「私たち皆の良い未来を繋げるため尽くしてくれた貴女に対して、最大限の配慮をする事は為政者として当然の事です」
エステルのその言葉、その目…
別の可能性の世界。
自身が回避しようとした世界を知っている事に、トリウィアは気づいた。
「………情報源はミムラかな?」
「フィアレンが皆に教えてくれました。私たちが辿ったかもしれない未来を…」
フィアレン…ヴェスペリアは「不可抗力」と言っていたが、おそらく彼自身の意思で見せてくれたのだとエステルは考えていた。ソフィアがどれだけ多くを救ってくれたかを…
「どれだけの可能性を、どれだけの希望を、どれだけの生命を、貴女が拾い上げてくれたのか、私たちは知っています」
「私は布石を置いたに過ぎない。それを活かしたのは貴方たち自身の成果だ」
「その布石が無ければ、今ここに居る私たちが享受している幸福のほとんどは、零れ落ちていたことでしょう。だから改めて礼を言わせてください」
エステルは深く頭を下げる。
「私たちを救ってくださり、ありがとうございました」
エステルからの礼を受けソフィアは息を呑む。
全ての悲劇を回避する。
叶えることはできたであろうか?
異世界に居た前世でゲームをやり込んでいた時、それができたら良いなと思った。
いつ、どこで、どのような手を打てばいいか…考えてみて思ったのは、統治に必要な政治的視点が不足していること。
そのような視点を持ったこと、そのゲームにだけ具体的な解決法を考えるに至る自身を不思議に思ってはいたが、さらに遡った過去世の“トリウィア”の存在で判明した。
前世。それより前の過去世。
その両者の望みが合致した結果、導かれた異世界転生と言う奇跡。
「…礼も何も……それが私の望みでもあったから…」
聞こえた願いと自身の願いが合致した。
それ故に結ばれた約定…
約定?
ソフィアの身体で異世界転生の折。
交わした約定は、一体誰と?
「あの約定は……」
お願いします
魂亡き私の身体を差し上げます
私の残りの人生を捧げます
だから……だから……
「…あの約定は、ソフィア・ディノイアの願いだったのか…」
ぽつりとトリウィアが溢した言葉をユーリは拾い上げる。
「どんな願いだったんだ?」
「願いは2つ。多くの人が笑って過ごせる世界。アレクセイ・ディノイアの幸福」
「約定ってことは対価があったわけよね?」
「対価は……ソフィア・ディノイアの魂亡き身体と残りの人生」
ジュディスの問いに答えつつ、トリウィアはようやく理解する。
トリウィアがソフィアとして生きていることは、事故でも過失でも無く、命尽きたソフィア・ディノイアが望み、遺された身体を譲った結果と言うことを…
「対価を受け取っている以上、約定を果たす必要があります。そのためにはどの選択が良いのか、貴女なら分かるのではないですか?」
「…………」
「アレクセイの大将、取り憑かれたように仕事ばっかで過労気味なんよ。後処理を済ませたら団長職を退いて、ザウデの研究をするためにね…」
それは全てソフィアを救うためであることは、誰の目から見ても明らかであった。そしてアレクセイは、目的を達成するまでは研究し続けるであろう。あるいは彼自身の命が尽きるまで…
故に答えなど決まっている。
しかし…
「自分の過去世の失態の処理をしている私には、過分な見返りだと思う」
「相手も必死に考え抜いた上での報酬なんでしょうが。大人しく受けとりなさいよ」
「いいのだろうか…好意や喜楽を感じても…」
「喜ばせようと色々しているのに、何も感じないなんて言われたら流石に悲しいわ」
「しかし…ここでも色々と失敗したわけで…」
「失敗しない人は居ないって教えてくれたよね。それを教えてくれた恩人が幸せだったら、ボクは嬉しいよ」
「私の不手際で身内を亡くしたというのに、君は優しすぎる」
「そう思うんだったら、これ以上身内を亡くして哀しむ人、増やしちゃいけないでしょうが」
「兄様に恋人か婚約者が居れば良かったのにね…私が言うことじゃないかもしれないけど」
「誰であろうと他者の代わりには成れない。同じように、他者が自身の代わりに成ることなど不可能だ。違うか?」
「………」
「僕を始めとして、貴女に恩義を感じ、慕っている人達は大勢います」
フレンの言葉に同意するように、ラピードが足元に歩み寄って、長い尾で軽く足を一撫でして、ユーリの所へ戻っていった。
「その人達が笑って過ごせる世界はただ一つ。貴女もその世界に入って共に笑うことです。それが私たちの望み」
「……エステリーゼ様」
「もう一度訊く。アンタはどう生きたい? アンタが『やりたい事』は何だ?」
そう尋ねるユーリの紫水晶の瞳が、ソフィアを真面に貫いた。
「ユウマンジュで長期逗留したい」
ぽつりと言葉を発したのを皮切りに、ポロポロと願望がこぼれ落ちる。
「あそこは地熱発電ができるはずだし…その研究して釣りして料理して肴にしてお酒飲んで過ごしたい」
「研究とお酒が友達って噂…本当だったのね」
「バウルについて生物学的にじっくりと、か…研究してみたい」
「……今、『解剖』って言い掛けてたかしら?」
「酒造所に出資して、最高級ウィスキー造って、ドンやアイフリードに自慢したい」
「何年がかりでどんだけお金出すつもりなの?」
「犬ゾリレース場作って賭けレースを企画するから継続収入は問題なし。ラピードも出ると宣伝すれば良い感じに…」
「勝手にラピードを巻き込むんじゃねえよ…」
「ヴワンっ!」
「兄様とダミュロンの嫁探しして、子供できたら構いまくりたい。それより先にキャナリの子供たちに構いまくって『優しいお姉さん』枠に収まりたい」
「年齢的に『お姉さん』は厳しいでしょうが…第一、大将や俺様の嫁って…」
「それと……デュークと誠実に向き合いたいと思っている」
「………そうか」
数々の願望は、トリウィアとかソフィアとか、そういう枠組みを越えた、ユーリ達がよく知っている一人の人物の願望であった。
「ジュディスちゃんに嫌われたくないから、流石にバウルのことは諦めるけどね」
「ラピードの事も除外してくれ」
「おっさんも博愛主義のままがいいんだけど」