TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



オーマ(悪人が謀り善人を封印したと邪推)

 

 突如、応接室の扉が激しく叩かれる。

 トリウィアが扉を開くと、十六夜の幽虚街の住民が慌てた様子で話しかけてきた。

 古代語訛りの言葉が時折聞こえる中、話の内容を聞いてトリウィアは何かしらの指示を出す。躊躇い拒否をする様子を見せるも、トリウィアの説得を聞き入れたのか、深く頭を下げて慌ててその場から立ち去った。

「どうした?」

「君たちが侵入してきたことがオーマにバレてしまったようだ。私が作った逆結界を破ろうとしているらしい」

「え⁈」

「君たちが転移術式陣の封印を解いてくれたから、それを使って地上へ避難するように住民に伝えた」

 そこまで言ったのち、トリウィアは大きなため息を吐く。

「君らも地上に帰って欲しいのだけど…」

「断固拒否だな」

「だったら、スパイラルドラコの方を頼みたい。完全復活と言ってもガス欠状態だから抑えられる可能性が高い。迅速に精霊化して欲しい」

 トリウィアは吹っ切れた顔であっさりと、ユーリらに助力を求めた。

「アンタはどうする?」

「一緒に行かないのか?」

「オーマを抑えて時間稼ぎしないとね。ここの住民が逃げるにも、貴方達がスパイラルドラコの元へ向かうにも、時間が必要でしょう?」

 レイヴンとデュークの問いに笑みを浮かべつつ、トリウィアは答える。

「この中で一番時間稼ぎができるのは、私だけでしょう?」

「しかし………」

「一番避けるべきは、オーマがエアルなりマナなりを与えて、スパイラルドラコにエネルギーを充填させてしまうこと」

 直後、館の奥から爆音が聞こえた。

「下の階層への転移術式陣は応接間と反対側の扉奥。急いで行って!」

 そう言い残しトリウィアは振り返る事なく、館の奥へと姿を消した。

 

 下の階層へ続く転移術式陣に着いたその時、時の精霊クロノスが姿を現して協力を申し出た。

 魔装具とヴェスペリアの指輪を持っているのなら、望郷の墓所の同一階層内の転移が可能と言う話で、時間短縮のためにユーリらは転移をお願いした。

 覇王層、禽獣層、亡者層、冥底層の各階層の番人を倒すのみで、ユーリらは奥へと進んでいく。

 

 そして最下層に着いたユーリらの目の前に、3つの頭、2つの尾を持つ巨体が部屋中央に蹲っていた。

「魔装具を向ければいいのか?」

 ユーリの言葉を切っ掛けに、各々が持参していた魔装具をスパイラルドラコに向けて掲げる。すると魔装具を纏っていた光がスパイラルドラコに向けて吸い込まれていった。

 そして最後に宙の戒典(デインノモス)から魔核(コア)が離れ、スパイラルドラコの体内に入り込むと、その瞳がゆっくりと開いた。

「相手に不足はねえ…!」

「腕がなるわね!」

「ヴェスペリアの指輪は温存して! コイツを精霊化するエアルが足んなくなるから!」

 リタの言葉に肯き、攻撃を仕掛けようとしたその時であった。

 

 ユーリらの前に立ち塞がるように、何者かが転移魔法でスパイラルドラコの前に降り立った。

「その方ら、我が民にあらず。何処より来たか⁈」

 下半身と背に背負う羽様の大きな掌。白き身体は人を逸脱した存在。

「ほう……その力感じるぞ…見覚えなき満月の子」

 目と思われる紅玉をエステルに向け、その者は静かに言葉を続ける。

「地上より来たと言うことは、忌まわしき彼奴等の血筋に連なるものか……ああ、そうであった! 千年の門開きしとき、相見えた者達か‼︎」

 自身を凝視され、驚きつつもエステルがその名を呼ぶ。

「オーマ⁈」

「我が名を知るか? そう、我こそがオーマ! 人間達の王たる満月の子。その力で世界を統べていた。その方の祖先が裏切り、地の底へ閉じ込めるまではな‼︎」

「……ソフィアさんが時間稼ぎしているはずじゃなかったの?」

「想定外の事態なんじゃない、これって…」

 ボソボソと話すカロルとレイヴンを無視し、オーマは尚も独白を続ける。

「千年の長き日、一人アムリタで生きながらえていたのも、復讐を果たさんがため! このような姿になりはしたが、引き換えに得た力、他の者の追従を許さぬものとなり得た。我が母といえども…抵抗する術もなかったわ!」

 その言葉を聞きユーリらは凍りついた。

「母? ソフィア…いやトリウィアのことか? あの人をどうした⁈」

「はははははははは‼︎ ここに居るであろう?」

 そう言いオーマは背を向ける。

 背の羽根様に広がる巨大な手の一つが何かを握るように閉じていた。意味有り気に巨大な手を開いた直後…

 

 ずるり

 

 女性の腕がオーマの背の掌に埋め込まれている。

「っ⁈」

 そして程なく腕は、掌の中へ引き摺り込まれてしまった。

 

「まさか…」

「我が母トリウィアは、我の糧となった」

「うそ………」

 先ほどの腕はトリウィアの腕で、それが取り込まれた瞬間であったことに気づく。

 エステルは口を押さえて崩れ落ちそうになり、フレンが慌てて支える。その側に寄るカロルの顔は蒼白で、リタもジュディスに支えられて漸く立っている様子であった。

「てめえ‼︎」

「ヴワゥ!」

 オーマに斬りかかろうとするユーリを、ラピードが裾を噛んで押し留める。それで少し冷静さを取り戻すも、煮えくり変える怒りを隠すことなく睨むユーリの視線を、オーマは受け流す。

「霊薬アムリタは此奴の聖核(アパティア)の一部。身の内に宿しているソレを介した同化など容易なこと」

「はいはい。彼女の優しさに付け込んだって、ところかねえ?」

 口調と裏腹に冷たい視線を向け、レイヴンは変形弓を弓形状に変えて構える。

「我は力を蓄え続けた一方で…この此奴は千年もの間、力を放出し続けていた。故に、どちらが吸収されるかは自明の理と言えよう」

「地下に閉じ込められた被害者アピールして実質は、親に守ってもらってブクブク肥えていたって訳か」

「黙れっ! 此奴だろうが誰であろうが、我が苦しみを理解することなどできぬわっ‼︎ 同胞の恨みをこの身に背負った!」

「その同胞と言うのは、実質は貴方を利用して破滅に追い込んだ人たちではないですか?」

 フレンの言葉を聞き、オーマは一瞬眼を開き眼を歪めた。

「……この痴れ者が…トリウィアと同じことを申すと言うのか? ただの人間までもが、かくも増長するとは…真の主は誰か示す必要があるようだな…」

「敬われる言動をすれば、人は自ずと頭を下げる。力で示すなどとは、己が自身に品性と能力が無いと公言することと同義だ。それを改めさせずに増長させていたこと自体が、取り巻きの輩がお前を力を利用していたという証左であろう」

 珍しく饒舌に正論を叩きつける様子から、デュークもまた怒り心頭であることが読み取れた。それを見て逆にエステルは冷静さを取り戻し、静かに口を開いた。

「辛く…なかったのですか?」

「エステル?」

 脈絡のない言葉に驚き間に入ろうとしたリタを、ジュディスがそっと止める。その間にもフレンの助けで立ち上がったエステルは、オーマを労るような視線を向けた。

「自分に付き従う人たちが、目の前に居ない相手への恨み憎しみを、長い間ずっと言い続ける。そんな姿を見続けて、苦しくはなかったのですか?」

「………黙れ…」

「復讐を果たして欲しいと請われて、怒りと憎しみを背負わされて…独りぼっちになるまで生き続けて…そんなの……辛いじゃないですか…それを強要するなんて酷すぎます! そんな人は仲間ではありませんっ‼︎」

 最後の方は声を震わせ、エステルは痛ましげに視線を落とした。

「……我は独りきり…いや…最初からそうであったと言うのか…」

 エステルの言葉は…同じ満月の子からの言葉は、僅かながらもオーマに届いたらしい。

「我が庇護を求める者に加護を…しかし我に苦行を強要した彼奴らは…我が加護を得ることだけが、目的でしか無かったと申すのか⁈」

「オーマ……」

「王として望まれたのではないのか? ならば何故我は生まれた⁈ 人とも始祖の隷長(エンテレケイア)とも違う我は⁈」

 千年の長い年月の果てに理解した真実は、オーマに深い絶望を突きつけた。

 そしてオーマは…

「ふふ…ふはははははは……もう良い…もう良いわっ‼︎ 世界が︎我の存在を拒絶すると言うのであれば、この世界で生み出した最強の力で、全てを滅ぼしてくれる‼︎」

「そんなっ! 違います‼︎ 世界は貴方を受け入れていますっ‼︎ そんなことをしても、貴方は…」

「獣よ! この身を喰らえ! 我が力をも糧となし、世界を焼き尽くせ‼︎」

 エステルの言葉を無視し、オーマはスパイラルドラコに触れ、自身の身体を構成するエアルを解放する。

「やめて、オーマ‼︎」

 エステルの叫びも虚しく、オーマの姿はスパイラルドラコに溶け込み消え去った。

 

 そして…

 

 気がつくとユーリらは地上に戻っていた。

「どうなってるの⁈」

「私ら含めて、アイツの魔法で地上に転移したのよ」

 カロルの疑問に答えつつ、リタは頭上に視線を向けた。ユーリも眼を向けると、スパイラルドラコが上空を舞い、ザウデを去るように方向転換した。

「ジュディス、バウルは⁈」

「ザウデにいた満月の子をミョルゾに送ったって連絡が来たわ。今こっちに向かって…」

 直後、振り返り様にスパイラルドラコは中央頭部からレーザーを放った。レーザーはザウデの頂上部の「台座」を支える左右の柱を貫通するように同時に薙ぎ払い、台座は崩壊しつつ落下し始めた。

「台座が!」

「間に合わねえっ‼︎」

 その時、周囲のマナが光を帯びて集まってくる。その中心に居るのは、素早く術式を組み上げたレイヴンであった。

「怒れ! 吼えろ! 螺旋の将軍‼︎ ハヴォックゲイルっ‼︎」

 

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