ピピピピ…
「んぅ…?ふぇ?」
怜菓はパソコンの前でうつ伏せの状態から上半身を起こす。
どうやらゲーム中に眠ってしまったようだ。
「あぁ…朝か…」
そのゲーム画面にはリザルト画面が映っていて
満月
6キル
0キルアシスト
金斗
1キル
1キルアシスト
怜菓
1キル
2キルアシスト
と表示されていた。
「うわ…最悪…配信中に寝ちゃった…?ってあれ?配信始めてたっけ?」
んー!と伸びをして時計を見る。
「ん?げ!?仕事遅刻する!!!!」
急いで怜菓は着替えをして家を飛び出した。
職場に着いた怜菓は急いで着替え、準備をする。
朝礼を終えて勤務するがゲームでの寝落ちが災いして仕事中にも関わらずぼんやりした頭で作業をしている。
「んぅ…」
「おーい、怜菓さん?大丈夫?」
さすがに怜菓の様子がおかしいと気付いた社員が怜菓に声を掛けた。
「あ、すみません、ちょっと寝不足で…」
「無理なら今日は早退したら?今の所多忙でも無いし…」
仕事先の先輩社員から心配され、帰っても大丈夫なら…と社員の言葉に甘えて帰る事にした。
◇◆◇◆◇◆
「ただいまー…あー…気分が乗らない…」
通勤に使っていたバッグをそのまま床に投げ置いて怜菓はベッドに飛び込む。
「…今日、気分転換に配信しよ」
そう思い、準備を始めるのだった。
夜になって配信の準備を始める。
動画サイトを開き、Xにリンク先を貼るとすぐに視聴者数の数が増え始める。
「皆おかえりー。今日もお疲れ様ー」
怜菓の声にリスナーも
『今日もおつかれー』
『あれ?予告無かったけどゲリラ配信?』
『怜菓おつかれー』
と十人十色の反応をしていた。
様々な話題に話す怜菓。
すると今朝あった事を思い出した。
「あ、そういえばみんな聞いてよ。私今日変な夢見ちゃってさー。私がリスナーとAPEXでチャンピオン目指す夢だったんだよ」
自分の夢の話をし始める。
『姫プで?』
『怜菓すぐ死にそう…』
『キルレが酷くなりそう…』
「ねぇみんな酷くない!?」
リスナーの反応に笑う中、"満月"と"金斗"というリスナーのコメントに怜菓が反応する。
『ん?その夢俺も見たぞ?』
『あれ?満月さんも?俺も見たんだけど…w』
「……え?2人とも私と同じ夢を見たの?」
3人のやり取りに他のリスナーは
『仲良しかw』
『何?怜菓逆ハーレム状態の夢?』
『逆ハーレムにしちゃ殺伐とし過ぎてる気がwwww』
と3人をからかい始める。
だがまた気になるコメントをしたリスナーが現れる。
『御三方、もしかして変なメールのリンク開かなかった?』
『…開いた…な…』
『あー、多分開いちゃったな…』
「え?あー、多分…」
リスナーがコメントを続ける。
『なんか今世界中で変なメールが来てて話題みたい。確かAPEXのお試しフィールドに招待するってメールみたいなんだけど、当のAPEXの運営は無関係を主張してるみたいなんだよね。けど1つ奇妙な事があって、そのメールの送り主は分かってんだけどその本人───昏睡状態なんだよね…』
そのコメントに怜菓は、え…?と反応する。
そう、怜菓もAPEXと思わしき所からメールが来ていたのは気付いていてそれを開いていたのだ。
急にゾワッと寒気が来た怜菓は会話もそこそこに配信を終わらせて入浴の準備を始めた。
◇◆◇◆◇◆
「…APEXを騙る偽物の運営…か…」
配信が終わったパソコンの前で腕を組む満月。
試しに…とGoogleで「APEX 昏睡事件」と検索する。
するとタイムリーな項目が幾つも表示される。
APEXの運営側は今起こっている事件と自分達は全く関係無い。とその関与を否定している。
そのリスナーが言っていたように送り主の居場所などは特定班なる者が突き止めていたが昏睡状態で送る事は出来ないようだった。
意識だけを乗っ取って、勝ち残った者だけを元の世界に返す───そんな事が本当にあるのか?
ただの夢だったのではないか?と危惧する。
だが夢と捉えるにも満月は違和感があった。
トリガーを引いた感触
撃たれた時の痛み
そしてそれを鮮明に覚えている自分
どうしてもこれらを含めると夢と片付けるのには難しい。
それと満月はあのゲームそのものにも違和感があった。
まずメールの送り主。
そのメールの送り主はちゃんとしたアドレスを使っていた。
だがAPEXの表記がおかしいのだ。
Aは逆さまにした"∀"
Pは左右反転にした"q"
Eも左右反転にした"ヨ"
Xは文字の形が似た"✕"
この4つで【∀qヨ✕】という文字にして、何となく【APEX】と読めるようにしている。
最初は時期的にハロウィンにちなんで遊び心を付け足したのかと思っていた。
だが今思うと───作品の名前自体そんな風に扱うか?
と思えてしまう。
その上本来ならあるであろう運営側のメールアドレスだったり、問合せ用のアドレスが1番下に来るのが一切無く、あったのはただの変なURLのみだったからだ。
そして次にキャラクター。
3人が参加したあのゲームの世界のキャラクターは何処か特徴にズレがあった。
自分の使っていたパスファインダーは本来自分の胴体に顔文字が表示される仕組みだがそれが無かった。
金斗の使っていたコースティックも黄色いベストが無かった。
怜菓の使っていたホライゾンには胴体にあるはずの黄緑色の装甲が無かった。
更には対戦時にも気付いたがそれぞれが違うキャラクターの能力を使えていたのだ。
ベースはAPEXその物ではあるが本来のAPEXではない。
つまり自分達はその偽物のゲームの殺し合いに巻き込まれた可能性がある。
もう1つ、満月はある事に気付く。
それは送り主がいるという事だ。
例え意識があのゲームの世界に行ってもメール自体をこの世界への交信手段として使えている。
送り主はいる。
その世界は元の世界のある物とは一部違っている。
帰る方法がある。
満月はこれら3つを総合して、たった1つだけその状況と似通った事例を知っていた。
「…"きさらぎ駅"と似たようなものか?」
きさらぎ駅────今から20年前の2004年に遡る、実際にあった怪奇現象だ。
当時"はすみ"と呼ばれる女性から警察に連絡があり「知らない駅に着いてしまい、帰れなくなった」と救助を求めていた。
警察が駅名を聞くとその駅名は"きさらぎ駅"というらしいが現実世界でその様な駅名は存在せず、警察もからかっていると思っていた。
インターネットで書き込みもしていたようだが突如としてその書き込みが途絶え、その7年後の2011年に"はすみ"は元の世界に帰還した。
という話だ。
仮にそのメールに対象の人物の意識だけを引き込む作用があったとして、その電脳世界の中でそのメールをSOSの手段として送っていたとしたら?
「考え過ぎか…」
満月はフゥ…と息を付き、パソコンを閉じた。
◇◆◇◆◇◆
「…」
風呂から上がった怜菓だが気分は晴れていなかった。
本当に自分がそんな事に巻き込まれていたら?と思うと気が気では無かったのだ。
「今日は早く寝よう…」
怜菓はすぐに自室に戻り、ベッドに横になると毛布を取って包まり、目を閉じて何時間か経つと怜菓はすっかり寝息を立てていた────
ピッ────
フオオオォォォオオン────
何も触って無いのにパソコンの電源が付いて暗い部屋を弱く照らし、冷却ファンが回り始める。
画面が付くと自動的にメールの受信画面が開いた。
【∀pヨXからのお知らせ】
ステージクリアおめでとうござイますすす!
今回のステージha以下がだったたたでしょう化?
昏回だけで終わ留のは少々ものた里内と判断死、けけけっか、また御症他イをしたいと重い、メールをおく理ま死た。
模しモ興味があり増したらメールにてててお街しておリ升。
変な文字化けをしたメールが画面に映る。
そして再び別のメールが開かれる。
【助けて】
助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて
ブツッ────!!!!
その悲鳴のような助けを求めるメールは誰にも見せまいというようにメール自体も消え、パソコンもまた独りでに電源が落ちたのだった─────
という訳でこれにて初のファンノベルは完結とさせて頂きます。
初めて私が観ている配信者を主人公とした小説でしたが、あまり活躍を見いだせてなかったかな?というのが心残りです…w
まぁ最後の方で活躍はさせましたがw
それと今作ではプロットの練習も兼ねてこの小説は執筆していたのですが今まで脳内の映像のみで執筆を続けていた私としては、後半はもうプロット上の構成を確認せずに書いていたのでプロット作りはもう辞めて今まで通りにやる事にしましたw
今回のストーリーについての解説等はご本人が読んでる事も配慮して活動報告のページにて記載させて頂きますので宜しかったらそちらもご覧下さい。
という事で本日をもちまして初のオリジナルファンノベル∀qヨ✕~想いを乗せた弾丸~は完結とさせて頂きます。
ここまでご覧になった読者の皆様、最後まで本当にありがとうございました。
まだまだ執筆活動は続けますので別作品でまたお会いしましょう!
それでは(・ω・)ノ