女性恐怖症の提督   作:針葉樹

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女性恐怖症なのに鎮守府勤務にさせられた男の話


本編
提督と戦い


横須賀鎮守府(ここ)に来てから一週間。

日頃執務室に籠り切りの為、艦娘達に会う頻度は少なくできているが、流石に報告書などの受け取りなどがあるため関りをゼロには出来なかった。

艦娘達は私が執務室に籠っていることに疑いを持っている事だろう。

今日の昼頃も執務室前が少々騒がしかった。盗聴でもしようとしているのだろうか。

やはり艦娘だらけの鎮守府内では俺は邪魔者なのだろう。

私は生き残るために彼女たちに信頼されなければならない。

そのためにもまずは私が利のある人間であると思ってもらわなければ。

 

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一月が経った。

艦娘達の監視?は更に加速しているように思う。

報告書を持ってくる艦娘は私の内心を知ろうとしている。

今日も食堂で共に食事をとらないかと誘われた。

冗談じゃない。艦娘達に監視されながら食事をとり、その中で談笑という名目の元、私に尋問したいに決まっている。

なぜそこまで警戒されるのは分からない。

作戦指揮も失敗した記憶はない……が、やはり日頃執務室に籠っている影響なのだろうか。

現状では私への不信感が増すばかりだ。

……やはり彼女達との関わりを増やし、交流を持たねばならないのだろうか。

明日、彼女らの誘いに乗ってみるのもいいのかもしれない。

 

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失敗した。

昨日彼女らの誘いを一度受け、食堂に向かったが、想定外だった。

艦娘達の中で食事だけならと思ったが、ダメだった。

食事中に唐突な吐き気に襲われ、目眩で倒れそうになった。

即座に食事を中断し自室に戻ったため、最悪は防げたが、艦娘達の不信感が増したに違いない。

私への信頼どころかその信頼を消し去ったしまった。

明日以降、俺の立場が危うくなるだろう。

どう生き残ればよいのだろうか。

 

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二月が経った。

あの事件以降、艦娘達の監視は落ち着いてきているように見える。

少なくとも食事に誘われることはなくなった。

しかし以前よりも疑うような視線を向け来ているように思う。

やはり不信感が増したのだろう。

だが、まだ彼女らが抱いているのは不信であり、疑念だ。

まだ疑念は確信になっていないし、不信は敵対になっていない。

だからまだ、まだ立て直せるはずだ。

関係修復を急がなくては。

 

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半年が経った。

艦娘達との関係は何とかではあるが、維持できている。

このままであれば私が前線を離れるころまで生き残れるに違いない。

近々大規模作戦もあるし、西表島まで奪還できれば日本全土奪還という功績が得れる。

その功績があれば俺はこんな女性だらけの鎮守府から抜け出せる。

あと、少しで……

そのためにもまずは作戦概要説明の為にも一度、彼女らの前で話さなければ……

上原対人術秘伝のポーカーフェイスが通用するといいのだが。

 

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作戦は無事成功した。

艦娘達にはそれなりの報酬を取らせる旨を通達したら、何故か頭をなでろと言われた。

子供だしそんなものかと思ったが、ハグしろとまで言われれば流石に警戒せざるを得なかった。

恐らく、その状況を撮影し『横須賀鎮守府提督が褒章という名目で艦娘達にセクハラを!』というような記事に仕立て上げ、私の事を社会的に抹殺するに違いない。

そこまで考え至った私はその要求を断り、代わりにカタログと金一封を渡しておいた。

彼女らは不服そうな目線を向けてきたが、やはり私が罠に掛からなかったのが原因だろう。

だが、今回の事は警戒すべき要因だ。

今まで不信、疑念だった彼女たちが行動に移行したのだ。私を排除するという行動に。

何か、対策を打たねば。

 

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艦娘寮や食堂などの内部環境に手を加え、生活水準を向上させてみた所、中々に好評だったようだ。

少なくとも以前のように何かしら身体的接触が必要な要求をしてくる頻度は確実に低下している。

しかし行動の低下と比例して私と話そうとする頻度は再度加速した。

恐らく確信が疑念に戻った為だろう。できればこのまま疑念を払拭したいところだ。

しかし以前の事もある。彼女らと共に行動するのは出来る限り避けた方が良いだろうが、最近は彼女達を見ても吐き気を覚える程度で済んでいる。会話も以前よりは問題なく可能だ。

一対一ならばではあるが。

明日、実行に移そう。

 

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最初の一手として嘆願書を整理するたびにあった「司令官へのインタビュー及びその記事の作成・頒布許可」というものを通した。

申請者の艦娘、青葉からは「え!いいんですか!?本当に!?あの司令官が……」などと言われた。

少なくとも私のイメージとして、こういったプライベートが関わるようなものは断られると思っていたようだ。

まぁ、間違いではないのだが。

私は艦娘達と業務上のこと以外は極力話さないようにしていた。

私は彼女達……女性と楽しく談笑できないし、むしろ不快感を与える可能性が高かったためだ。

しかし、インタビューという形式であれば、身体的接触もなく、恐らくではあるが一対一であるものと思われる。

いや、一対一にする。そのためにも青葉には場所のセッティングはこちらで指定させてもらった。

『横須賀鎮守府提督、インタビューを口実に艦娘を連れ込む!』みたいな記事が出回らないよう、室内ではなく屋外を指定した。

青葉はその後、礼を言って執務室を後にしたので、今のうちに薬を用意しておく。

胃薬、頭痛薬、吐き気止めや鎮痛剤、解熱剤。正直全部使うとは思わないが、最悪の場合には使用する必要があるやもしれぬ。

それぞれを個別の袋に入れておいた。

 

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想定外だった。

まさかただのインタビューだというのに非番の艦娘達がわざわざ寮から出てきてまで様子を見に来るとは。それもあれほどの数……

青葉だけならばごまかせたかもしれないが、あれだけの人数の前で薬の服用をごまかすことは出来なかったので、花粉症だと偽って服用した。

インタビュー自体は恙無く進んだ。途中から年齢や経歴、彼女の有無を聞かれたが……まさか彼女がいた場合それを人質に取るつもりでもあったのだろうか。

だがそういうのって普通家族では?まぁ、私の家族は旅行中に深海棲艦が発生したために未だにイギリスから帰ってこれない。決して通信ができないわけではないが、航空機の生産数も激減し、特に燃料の問題があるせいで民間人の移送などは後回しになっているのが現状だ。

まぁこの話は置いといて、インタビューは成功したと思っておこう。

これで疑念を払拭出来れば上々だが、流石に無理だろう。他にも手を尽くさねば。

 

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何があった。

今朝、本日司令部から届いた報告書・指令書を持ってきた艦娘……磯風が「司令、疲れなどは残っていないか?良ければこの磯風が朝食を用意しよう」と言ってきた。さすがに女性の手料理はまだ抵抗が強く、丁重に断ったが、演習の報告書を持ってきてくれた朝潮も磯風同様に私の身を案じる発言をしていた。

これは何だ。何があった?

この前のインタビューの記事が原因かと思い青葉に記事をもらったが、割と普通……なぜか「現在独り身!」という文字が中央に大きな字で書かれていたが、恐らく普通なのだろう。

ではなぜ今になって私の身を……

ま、まさか、これはあれか!?死刑囚が最後の日に望むものを食べれるのと同じで、最後くらい優しくしておくかてきな!?

だとしたら最悪どころではない!

何故だ!何故排除することが確定したのだ!?

クソ……クソッ!

どれもこれもあの爺がこんな場所に私を着任させたせいだ!

恨むぜぇ佐原海上幕僚長ッ!

だが、諦めはしない、まだ私……俺はあの爺を殴れていない!

どこかの独裁者は42回も暗殺を企てられたのに生き残ってたし、不可能ではない。

俺は死んでなるものか。

 

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あの日から一週間がたった。

私はあの後自室を捨て、生活空間を執務室に移した。

自室は三階にあり、窓からの逃走が危険だったためだ。

流石に私が執務室に引きこもっているのはバレているようで、大淀は今日なんか「提督は最近自室に戻っておられぬようですが、しっかりと休めていますか?」と言ってきた。

彼女の事だ。下手な嘘では見抜かれる。だからこそ、次の大規模作戦関連の仕事の処理で自室で休んでいる余裕がないと言っておいた。大規模作戦が近いのは事実だし、今回は横須賀鎮守府主導ということになっており、その仕事量が膨大なのも彼女なら理解しているだろうし、嘘だとはばれないはずだ。

だが彼女の思慮深さを甘く見ていた。嘘だと見抜いたわけではないだろうが、まさか秘書艦制度を採り入れ仕事の効率化を具申してくるとは。

しかし想定内だ。なぜなら目安箱の中に100%の割合で毎回秘書艦制度を取り入れてほしいと来ていたからだ!

皆さんは日頃命のやり取りをしている。私はその皆さんを支える職務。そのためその職務である私が皆さんに支えられるわけにはいかない的なことを言っておいた。

それ以降は大淀も強く入ってこなかったので、一応は納得してくれたのだろう。

 

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私は負けた。

今朝、執務室の前がやたらうるさいなと思いながら執務を開始したら間もなく艦娘達が室内に入り込んできた。

ついに強硬策に出たかと思いすぐに懐からスタンガンを取り出そうとしたが、彼女たちの瞬発力をなめていた。

私が懐に手を入れると同時に彼女らは私に触れた。

そう”触れた”のだ。いくら女性との一対一での会話で慣れようとも心の奥底に根付いた恐怖だけは消えない。

すぐに俺の体は彼女たちの”手の感触”に反応し、吐き気、目眩、高熱、頭痛を引き起こした。

そして、私は倒れた




上原の女性恐怖症は通常のそれとは違い最早アレルギー、それも極度のアレルギーに匹敵します。その上彼は精神的にも女性を恐れているので、触れられるだけでその箇所に発疹が走り、吐き気、目眩、頭痛、血圧上昇、体温上昇、呼吸の不安定化が巻き起こります。
頭をなでるなどは白手袋をしている為、可能。

どうでもいい話。
上原は横須賀鎮守府に来てから多くの薬を携帯し、貯蔵しており、総額30万円分あるらしい。

次回は艦娘視点から見た上原。
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