女性恐怖症の提督   作:針葉樹

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五月が終わってた……


旧友と心

「ようこそ、私の鎮守府へ」

 

扉を開き、中へ入ると女の声でそう言われた。

言葉を発した主は部屋に置かれた机の先、こちらと相対する位置に座っており、いつものような薄っぺらいにこやかな表情と、まったく笑っていない瞳をしていた。

声は音圧を下げており、優しさを感じるような声色をしている。

体形はやせ型、身長は150と低い。胸は控えめで髪型は黒髪黒目のセミロングで、前髪は斜めに切り揃えてあり、片目が隠れている。

よく見ると目元には隈があり、ここでもまともに休んでいないことがうかがえる。

 

「……相変わらずだな、海野」

 

彼女の名は海野水月(あまのみづき)、この舞鶴鎮守府の提督を務めている。

学校時代では成績は上位一桁台とかなりの努力家。

ただ努力をしすぎて自身をないがしろにする癖があり、いつも目死んでいる。はっきり言ってみていて不安になるタイプの奴だ。

ちなみに、俺の女性恐怖症という弱点を知っており、それを脅迫の材料にし色々やらせてくる奴だ。

 

「上原、何だ君か」

 

入ってきたのが俺だと気づくと、先ほどの作り笑顔から、いつものにくたらしい笑顔に変わり、声のトーンも上がっている。うざい。

 

「なんだとはなんだ、事前に通達したじゃないか」

 

「それはそうだけど、横須賀から舞鶴までって結構距離あるじゃないか、それに今日の仕事だってある。だからついたとしても今日の夜だと思ったのに」

 

「仕事なんて一日二日俺が居なくても問題ないようにしてあるさ。それにこういう話し合いは早く済ませた方が良いだろ?」

 

「全く、だからといってもそんな急がなくていいだろうに。なんだい?僕のことが好きとかそういう事なのかい?」

 

「そんなわけないだろ」

 

お前、俺の秘密知ってるだろ。

なのにおれが女に対して好意的感情持つわけないだろ。

特お前みたいな人の弱み握ってキャッキャする奴に。

 

「それにしてもお前は変わらんな。半年もこの鎮守府に居て仕事漬けだったというのに」

 

先程も死んだ目をしていたし、ここでも俺以外には弱みを見せていないのか。

全く、よくそんなんで半年も生きれたな。いや、俺も人のこと言えないか。よく考えたら俺はアレルギー物質の海に半年間いたようなものだしな、それよりはマシか。

 

「そうだね、僕はあの時から変わってないね。君は……違うみたいだけど」

 

水月はそういいながら、こちらを見つめてにやにやしてくる。

うざい

 

「以前と違って僕に対する恐怖心がかなり薄れているようだ。流石に女性しかいない鎮守府という環境下では、君も女性に対する耐性を持てたのかな?それとも僕だけなのかな?僕的には後者であると嬉しいのだが……そこのところどうだい?」

 

「……その二択であるならば前者だろうな」

 

そこは嘘でも僕だけだって言ってくれてもいいのに、と頬を膨らませ抗議してくる水月。

お前嘘ついてもすぐわかるじゃん。

 

「ちなみに上原君はここ半年間、横須賀に居て何か面白いことはあった?」

 

面白いこと、何を基準として面白いかによるが、少なくとも俺としては地獄でしかなかったな。

拷問(食堂で食事)はされるし尋問(インタビュー)はされるし、最後には襲撃されたしな……

こいつからしたら全部面白いことだろうが。

 

「いや何もなかったよ」

 

「本当に?」

 

「もちろ「 本 当 に ? 」

 

「………さて、今回の伊豆諸島奪還計画だが」

 

「あ、あからさまに逸らした!なんだよ、話してくれてもいいじゃないかー!もー!」

 

子供か!「もー!」なんて言っていい年齢じゃないだろあんた。

大学生とかですらだいぶぎりぎりだというのに、あんたもう20代後半だろ。

いい加減自分の年齢を考えてものを言ったらどうなんだ。

 

「あー!今絶対失礼なこと考えてたでしょ!」

 

そういいながら俺に近づいてくる水月。

いや近づくんじゃねぇ!俺の持病が発動するだろうが!いや、パッシブだからすでに発動しているが。

 

「近い、離れろ。じゃないと吐くぞ」

 

「おっと、いくら君のでもこの服が汚れるのは良くないな。失敬失敬」

 

その言い方だと、今の服じゃなければ俺が吐いても問題ないとかいう意味か?

先ほど変わらないといったのは間違いだった。だいぶキモくなってるわお前。

まぁいい。おかげで話はそらせたみたいだし。

 

「で、横須賀で何があったの?」

 

こい、こいつぅぅぅうう!!!

マジでこいつほんま最悪なんだけど!

話したくないってことがわからないのか!わからないんだろうなぁ!

 

「冗談だよ。どうやら君はこの話はしたくないみたいだし。また今度聞くことにするよ」

 

冗談、冗談か、よかった。

だが聞かないという考えはないようだ。どうせなら聞かないでくれよ……。

 

「あぁ……まぁ、そうしてくれ。それより今回の作戦について説明するぞ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「という作戦だ。異論はあるか?」

 

「なるほどね、随分とめんどくさいことをするようだけど、効果は見込めるのかい?」

 

「勿論だ。事前に同様の戦術を試したことがあるが、しっかりと効果的であることを確認してある」

 

「ふーん、まじめだねぇ。で、この作戦のために舞鶴から伊勢型と最上型を借りたいと?」

 

「あぁ、如何せんこの作戦を横須賀単独でやるには航戦と航巡が足りん」

 

「そっかそっかー、あの海路君が僕に力を貸してほしいんだ~。勿論僕に何かあるんだろ?僕の利子は高いぜ?」

 

物をねだりだしたとたん今日一番の笑顔になりやがった。

まぁもちろん用意しているが。

 

「はいこれ。ブラジル産のコーヒー豆だ」

 

「ふぉぉお!ここここんなものどうやっててて!今の日本では手に入らないと思っていたのに!ありがとうございます」

 

相変わらずちょろいなコイツ。利子が高いとは一体……

 

「さて、これで対価は貰ったし、ちゃんと協力しようじゃないか。ところで貸すのは本当に伊勢型と最上型だけでいいのかい?君の作戦を聞いた限りだと君は最低でも四艦隊、場合によっては5艦隊も指示を出すことになると思うが」

 

「だからだよ。指揮系統の二分は、混乱を招きかねないからな」

 

「そうか。まぁせいぜい倒れないように頑張ってくれたまえ」

 

よし、これで今日の予定は終わりだな。早く鎮守府に帰るとするか。

そう思い椅子から立ち、退室しようとすると

 

ガシッ

 

腕をつかまれた。嫌な予感がする。

そう思いながら後ろを振り向くと水月ががっつりと俺の腕をつかんでいた。

 

「もしかして帰ろうとしてる?」

 

「あぁ、そりゃあ早く帰らなきゃ横須賀につく頃には朝になっちまうしな」

 

「なら泊っていけばいいよ」

 

は!?泊っていけと!?

こんな女だらけの鎮守府で、自室もないし部屋も用意してないでしょ!

 

「部屋なら僕の部屋を貸そう」

 

いやいや仮に部屋があったとしても鎮守府に連絡しないとだめだし、それに明日も仕事があるのに

 

「連絡ならさっきしておいたよ。それに先ほど、一日二日いなくとも問題ないようにしている、と言ってませんでしたか?」

 

いや、それでもなんか、こう、倫理的に問題が……

というかさっきから俺の心読んでない?

 

「いやいや、流石に人の心までは読めないよ。僕は超能力者じゃないし」

 

「読んでるじゃねぇか!」

 

「まぁまぁ、そんなことは置いといて。どうする?泊っていくかい?それともまだ何か問題があるのかい?それに聞いた話では最上に鎮守府を案内してもらう約束をしているそうじゃないか」

 

「ど、どこでその話を……」

 

「このまま帰ったら最上、悲しんじゃうだろうな~」

 

こ、この女、確実に人の良心に攻撃を加えてきやがる……!

 

「………わかった、わかりましたよ。俺の負けだ。泊っていくことにしよう」

 

「ヤタッ」

 

「ん?何か言ったか」

 

「いやいや、何も言っていないさ」

 

「そうか、気のせいか。まぁ泊るのはいいとしてだ。お前の普段使っている部屋は嫌だ。どこか別の部屋を用意してくれ」

 

「いいのかい?僕の部屋以外の場所で」

 

「あぁ。もちろんそうしー「艦娘寮の部屋しかないが」………

 

「お前の部屋で頼む……」

 

「うん♪手配しておくね」

 

はぁー、まさか打ち合わせに来たはずがこいつの部屋で一日過ごすことになるとは……最悪だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「少し……いや、かなり疲れたな」

 

あの後最上に工廠を案内してもらったり、伊勢・日向、最上、三隈と顔合わせをしたり………なぜか食堂で食事を取らされたり………水月、絶対わざとだろ。

あとは大淀をなだめるのにも苦労した……。

今日泊まる旨を伝えたら、まさかあんなに反発するとは。水月が俺に「なにしたん?」て、聞きたそうな目で見てきたが、俺もわかんねぇよ。

とにかく、そういう事があってとにかく今日は疲れた。

早く寝て、明日すぐにでも鎮守府に帰ろう。こんな鎮守府に長くいたくないし。

早く布団に入って………いや、ここアイツの部屋だからあいつのつかっている布団か、嫌だな。

仕方ない、床で寝るとしよう。冬とはいえ室内、空調も聞いているし一日くらい何とでもないだろう。

横になったら急に眠気が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりにかつての学友と話すことができた。

ここに来てから気の許せる相手が居なかったから、かなり楽しかった。

しかしそれにしても今日会った上原君は、以前あった時よりも変わっていた。

特に僕との会話の感じや、まとっている雰囲気が。

彼の女性恐怖症は今までの人生で蓄積されたもの。

高校の時に彼の症状を知ってから、何とか直そうと頑張ってきたがすべて無駄だった。

しかしたった半年鎮守府に居ただけであれほど変わるだろうか?

視線だって、前までは僕のことを敵対的な視線で見ていたというのに、今日はまるで友人と話すような、リラックスしたような友好的な視線に変わっていた。

何故だろうか?まぁ理由は考えるまでもなく鎮守府だろうな。

絶対に何かあったはずだ、今度探りを入れてみよう。

もしかしたら彼の女性恐怖症の完全克服になるかもしれないし、うまくいけば彼と……

 

「上原君。僕、頑張るよ」




どうも久しぶりです。
えー、前回投稿から約一ヵ月……
その間音沙汰無しと、はい。
誠に申し訳ありませんでしたッッ!
全部伊203や伊201が中々出なかったのが悪いんです!
まぁ実際はリアルが忙しかったのと、5回くらい書き直したせいです。
水月の性格は決まっていたんですが……しゃべり方や髪形、上原との関係性をどうするかを考えているうちにめちゃくちゃ遅くなりました。
ちなみに初期の水月の設定は


完璧主義
無骨
自己嫌悪
上原の女性恐怖症を知らない
上原とは友人関係
他者優先

みたいな設定でした。今とは大違いですね、TSしましたし。
ちな今は


完璧主義
誠実
自己嫌悪
上原の女性恐怖症を知っている
上原とは友人関係?
他者優先
上原に対し好意を抱いている。
上原に対しては天真爛漫
僕っ子
メカクレ

みたいな設定です。物語が進むにつれもしかしたら変更するかもしれませんが、今のところはこういう設定で行きます。

次回は……何書くんだろうね?
ただ投稿は7月以降になると思います。

どうでもいい話
水月の僕っ子要素は完全に作者の趣味。
ちな作者はZ1(レーベレヒト・マース)が癖に刺さって艦これ始めた人です。
本人曰く「僕っ子最高!時雨とか皐月とか最上とか初月とかもかわいいよね!え?松風とヴァリアント?持ってないから知らないです」とのこと。
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