カードゲーム世界でサイコロリ扱いされてるのだが??? 作:53860
お盆前になんとか投稿できました!
新しい攻殻機動隊、なんかレトロチックな感じが好きです。
でも押井版がいい?それはそう……。
「アタシのターン!ドロー!場のヤスとウィルを生贄に捧げ!極東連合特攻隊長!【KY・覇道走行のビル】を召喚するぜ!」
カンナさんの場のヤンキーたちは起立して深々と礼をすると、光となって消えた。そして巨大なトライクに乗った筋肉隆々のスキンヘッド男が現れた。
「コイツは召喚時に自分のELを500ポイント減らすことで、墓地の【KY】と名の付くAP800以下のアタッカーを3体まで蘇生できる!戻ってこい!【KY・女度胸のアイナ】!そして【KY・後輪走行のウィル】と【KY・出前走行のヤス】!」
スキンヘッドのヤンキー男が右手をかかげ振り下ろすと、場にヤンキーたちが勢ぞろいする。
はん!群れないと何もできない雑魚が!ヤクザと一緒だ。まったく、そんなんだから余所者に縄張りを奪われるんだよ。
とはいえ、AP4000のビルはかなりの強敵だ。武装カードマシマシでAP2300になったヒカリを倒せるアタッカーは他にいないけど、困ったものだ。
「それにしても相変わらず茶番が好きだね。所詮はカードなのに」
「これも愛の力だ!戦わせたなら、最後まで責任を負う!お前にはそれが欠けている!」
「そんなこと言うなら、レジィさんとズイさんがおかしくなった責任もとってよ」
「当たり前だ!アイツらが罪を償って真人間になるまで、アタシが愛を注いで支えるつもりだ!」
「もう手遅れだと思うけど……」
「それにアイツらだってなぁ!ベッドの上じゃ素直で可愛い子ネコちゃんなんだよ!」
うわ……そんなの聞きたくなかった。
私は白けた眼でカンナさんを見る。
「おしゃべりは終わりだ!ファイトシーン!【KY・覇道走行のビル】でヒカリを攻撃!極東連合魂!突撃ナックルだ!」
『AP4000……?マスター、さすがに無理じゃないかなぁ……』
「大丈夫。お前には【ガールズ・ファイトロッド】があるから、戦闘では破壊されない」
『死ななければ何されてもいいって意味じゃないよ!?』
「マスターである私が負けないんだからいいでしょ」
『そんなぁ!』
巨大なトライクが猛烈な勢いで突っ込んでくる。
『ひっ……マナぁ!』
ビルの拳がヒカリの腹にめり込んだ。小さな身体がくの字に折れ、そのまま後方へ吹き飛ばされる。地面を何度も跳ねた末に、ヒカリは血を吐いてうずくまった。
『かはっ……』
けれど、【ガールズ・ファイトロッド】の効果で破壊はされない。土まみれのヒカリは、震える腕で身体を起こそうとしている。
「へん!その筋肉モリモリマッチョマンのおっさん以外はヒカリを突破できないよーだ!べろべろばー!」
「ちっ……命拾いしたな。アタシはターンエンドだ」
「私のターン、ドロー」
引いたカードは【JKガールズ・闇夜のマナ】だった。
カードに描かれたマナは、傷だらけの幼馴染を見つめている。その瞳から光が消え、代わりに濁った闇が渦巻いていた。
『もうやめて。これ以上、ヒカリちゃんが傷つくの見てらんないよ』
『マナ……』
『だからマスター。私にヒカリちゃんを食べさせてください』
「……は?」
ごめん、なんて?いきなりサイコなプレイに私を巻き込まないでほしい。
刹那、耐えがたいほどの空腹感が流れ込んでくる。
ーー食べちゃいたい。たべちゃいたい。タベチャイタイ。
「ぐおおおお。やめろ!この根暗女が!主に立てつくつもりか!」
『今のマスターすっごく魔王っぽいよ。終盤に裏切られる瞬間だけど』
「うっさい!どうにかできないの!?この役立たず!アホ!」
『まだ何も言ってないのに!?マスターの中の黒い靄をカードに注いで!』
うぐぐ、こうだろうか?力を込めると手札の【闇夜のマナ】が黒く染まる。
そして王道な魔法少女のカードは、いつの間にか物騒で悪魔的なカードに変化していた。
「あー、そっか。新生マナは悪食なんだ」
『マナ?冗談だよね?私を、食べる?』
『うん。だってね。さっきからお腹がペコペコなの』
『だからっておかしいよ。私なにかした?悪い子だったかな?ぐうたらしてたのがよくなかったのかな?』
涙を浮かべたヒカリは、マナの足に縋っている。捨てられる直前のヒモみたいで、ちょっとだけざまぁ感があった。
『違うよ。ヒカリちゃんは何も悪くない』
マナはしゃがみ込むと、ヒカリの頬を両手で包んだ。
『優しくて、きらきらしてて、甘くて……世界で一番おいしい女の子だよ』
『褒められてる気がしないよぉ……』
マナはヒカリの涙を舌先で舐め取った。
『戦わなくていい。働かなくていい。私が全部やってあげるから』
『……え?本当に、何もしなくていいの?』
「そこで揺らぐなよ。寄生虫」
こいつ、食われる恐怖より労働から解放される方が魅力なのか?
マナが私の方を見た。なんだよ、早く召喚しろって言いたいのか。まったくアホムラといいマスター使いの荒い雑魚カードどもだ。
「私は場の【JKガールズ・雷撃のヒカリ】を墓地に送ることで、【GHQ(ジェノサイド・ホロウ・クイーン)暴食のダークネスガール・マナ】を特別召喚する!愛する者を喰らう魔女よ、満たされぬ闇夜を覆い隠せ!」
闇が弾けた。
そこに立っていたのは、幼馴染とともに戦う可憐な魔法少女ではない。
漆黒のドレスは腰から下が引き裂かれていて、その隙間では無数の牙がうごめいている。裾から滴る黒い粘液が地面に触れるたびに、ジュッと煙が上がった。
背中には飢えた獣の舌にも似た無数の触手が、羽根のように生えていた。唾液の糸を引きながら伸び縮みし、目の前のヒカリを味見するように、その頬や首筋を舐め回している。
力なく座り込んだヒカリは、恐る恐るマナを見上げた。
『マナとずっと一緒にいられる?』
『うん。誰にも渡さない。ずっと一緒だよ』
『そっか……。じゃあ、痛くしないでね』
『それは無理』
『……あれぇ!?』
マナがヒカリを抱き締めた。
怯える幼馴染を慰める優しい抱擁に見える。けど、ヒカリの背中に回された両腕は、獲物を逃がさないための枷みたいに強く締まっていった。
『ま、マナ?ちょっと苦し……』
ヒカリの言葉が途切れた。
マナの口が耳元まで裂けていた。闇よりも黒い口内から何本もの細長い舌が飛び出し、ヒカリの腕と脚に絡みつく。
『ひっ……!やっぱり待って!心の準備が……』
ヒカリが身をよじるたび、舌に並んだ細かな突起が肌を削った。皮膚が剥がれ、白い太腿に赤い筋が何本も走る。
『いただきます』
ヒカリの身体が、頭から巨大な口へ引きずり込まれていく。
ばきり。ごきり。
骨の砕ける音がした。口に収まりきらない肩や腰が噛み砕かれ、白いドレスが赤く染まった。チェーンソーを握っていた腕が最後まで外に残り、助けを求めるように宙を掻く。
『マナ!痛い!痛いよぉ!』
ヒカリの悲鳴を聞きながら、マナはお気に入りの曲に聴き入るように目を細めた。
ごくり。
喉が大きく膨らみ、ゆっくりと下へ落ちていく。
今度は吐き出さない。だって、やっと一緒になったんだから。
『ああ……やっと満たされた』
マナは膨らんだ腹を両腕で抱き、うっとりと目を細めた。
腹の奥から、くぐもった声が聞こえる。
『マナぁ……狭いし、暗いよぉ……』
『大丈夫。私がずっとそばにいるから』
『いや、っていうか外に出し……』
マナは思いっきり自分の腹を殴った。ヒカリは沈黙している。気絶したのか、それとも消化されてしまったのか、わからない。ただ、マナが幸せそうだった。
『やった。これで誰もヒカリちゃんに手出しできない』
『キショいんだよ、このイカれ女!』
「幼馴染を食べるとか普通に引くわ」
ホムラの罵倒、マスターである私の言葉なんか、意に介していない。コイツの方がよっぽどサイコロリだろ。
まぁ、いいや。相変わらずAP500の雑魚だけど、効果は強くなったから許してやる。
「自分のアタッカー1体を墓地に送ったことで、【GHQ・暴食のダークネスガール・マナ】の効果を発動!相手の場のアタッカー1体を破壊してELに1000ポイントのダメージを与える!」
「なんだとッ!?」
「さらに、ヒカリが墓地に送られたことで効果発動!【KY・後輪走行のウィル】を墓地に送り、カンナさんのELを500ポイント減らす!」
マナの触手がヤンキーどもの頭領に襲い掛かる。
巨大なトライクが真っ二つに裂ける。ビルの上半身が宙を舞い、大量の血と臓物を撒き散らした。
「さらに、マナを特殊召喚するために墓地へ送ったアタッカーに装着されていた武装カードを、すべてマナに装着する!」
マナの手には、ハラワタチェーンソーとファイトロッドが握られていた。
ぺろりと柄の部分を舐めた。きっとヒカリの味を感じているのだろう。ホント気持ち悪いヤツだ。
「お前は……やっぱり悪魔なのか!?自分のカードをそんな醜くなっても平然としていられるなんて……どうかしてるぞ!?」
「私からしたら町中の女を食ってるカンナさんも悪食だと思うけどな」
「アタシは愛に飢えている娘たちに真心を届けているだけだ!」
「きれいごとで誤魔化すの上手だね。ヤンキーのくせに」
カンナさんは唇を噛みしめている。残りELはわずか100ポイント。
さて、アイナはAP1100、ヒカリの武装カードで強化されたマナはAP2300。
悔しいねぇ。この攻撃でオーバーキルだ。
「【GHQ・暴食のダークネスガール・マナ】で【KY・女度胸のアイナ】を攻撃!根暗ヤンデレ触手!」
「うおおおおおお!」
迫りくる無数の触手の口がアイナを食い散らかす。その衝撃でカンナさんも吹き飛ばされた。
ヤンキー少女を引きちぎり臓物を貪った触手は、まだ空腹を満たせていないのか、カンナさんをも呑もうとする。だが、バトルユニットの安全ブザーが鳴ると、一瞬で消滅した。
「畜生……お前を正気に戻すつもりが……また負けちまった」
『いやいや、これがマスターの平常運行でしょ』
「ふん。さぁ、裏社会の情報、全部吐いてもらおうかな」
すると、カンナさんは最近の傾奇町の騒動を語り出した。
「海外ギャングなら、もう壊滅した。赤髪のガキが一人で潰して回ってる」
「赤髪のバトル狂……それってショウタのこと?」
「トーナメントのガキだよな?あぁ、そいつがボスから闇のカードを奪ったらしい」
悪を倒すという意味では主人公っぽいけど、一人で外国人ギャングを潰して回るなんて、やり口が蛮族だな。
「なぁんだ。ライバルがいなくなったなら、ヤクジュの組も復活できるじゃん。心配して損した」
「いや……結局、警察とのツテも、組員も、シノギも失いつつある家政宝傾組が厳しいのは変わらねぇ。団根法の影響もあって、今のままじゃマズイ」
『ねぇねぇ。クソガキが持ってる闇のカードをヤクジュちゃんに渡すのはどう?』
「は?なんで?」
『だって威厳がないから見向きもされないんでしょ?強力かつ象徴的なカードがあれば解決できるんじゃないの?』
なるほど。たしかにアホらしい単純なアイデアだけど、面白い。
「その闇のカードを使えば、ヤクジュは影響力を回復できるかな?」
「……たしかに今の裏社会じゃ、強いカードを持つ組が主導権を握る。海外ギャングの躍進を支えた1枚なら、離反した連中を呼び戻す旗印になるかもしれねぇ」
それによく考えたら、あんな熱血バカが闇のカードを持つなんて宝の持ち腐れだ。スマートかつセクシーな私が有効活用してやろう。
「よし、決めた。ショウタをボコボコにしてカードを強奪しよう」
そして、それを使って大切な幼馴染を救うんだ。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
カクヨムで新作を全5話投稿しました。今回は珍しく脚本形式です。
『ギルドの鑑定士、反社エルフに飼われてしまいました泣』
https://kakuyomu.jp/works/2912051605304084498
モンスター狂いの鑑定士が、反社エルフの飼い犬へ転落するまでを描いたコメディです。
本作とはまた違ったイカれ女たちの話になっています。
感想などいただけると、今後の参考になってとってもありがたいです。