『ガンダムSEEDのラウが幼少期に追放された先が、UNDERTALEに出てくるイビト山だったら…?』と言うコンセプトで書いております。
好評だったら続くかも…?
今回、いつも書いてる作品の息抜きとしてふと思いついたこのお話を書いてみることにしました。
もしこの作品を面白いと感じたら、僕が書いてる別のガンダムのSSも読んでみてください。
そちらもきっと気に入ってもらえると思います。
※ガンダムSEEDおよびUNDERTALE双方の大変大きなネタバレを含みます!
その二つをまだ全部視聴・プレイしていない方はぜひブラウザバックをお薦めします!
時は近未来。西暦という暦は人々の記憶から消え、代わりに「コズミック・イラ」と呼ばれる新しい暦が日常を支配していた。
この時代、人間の技術は驚くほど進歩していた——宇宙に浮かぶスペースコロニー群、通称PLANTこそがその証左と言えるだろう。
しかしその輝かしい進歩には影もある。
この時代、生命についての倫理の境界線を曖昧にしてしまう技術が一般に流布されていた。
イビト山——古くから"登った者は二度と戻らない山"として恐れられていたその場所に、ある金髪の少年がさ迷っていた。
彼の名はラウ。
ラウは普通の少年ではない。
とある資産家が、自身の実子が期待にそぐわないと失望した結果、莫大な財を用いて研究者を雇い違法に作り出したクローンだった。
『息子よりも優れた子供を、完璧な後継者を!』
しかし、ラウに課せられた運命は残酷だった。
誕生して10年ほどすると、彼が通常の人間とは異なり寿命が著しく短く、成長同様に老いるのも早いことが判明した。
その事実が発覚した途端、ラウは作った側の人間から一転して「失敗作」として見なされ、豪華な屋敷から遠く離れたこのイビト山に捨てられたのだ。
捨てられたその日から、ラウは生き残るために必死だった。
苔むした岩肌、足元を滑る冷たい霧、どこまでも続く荒れた道。
だが、彼の心の中には生への執着はあまりなかった。
いや、あるにはあったのだが、それ以上に、様々な問いが彼の脳内に渦巻いていた。
『なぜ自分は生まれたのか?』
『なぜこのような目に遭わなくてはいけないのか?』
『…どうして自分はまだ生きているのだ?』
作られた目的も失われ、放り出されたクローンとして、何のために生きるべきか彼にはわからなかった。
その日も、ラウは山を下りようと必死だった。
もしかすると、麓の村に辿り着けば、何か答えが見つかるかもしれない。
だが、疲労に朦朧としながら歩き続けるラウの足は、不意に足元の蔦に絡まれた。
「し、しまった!」
咄嗟に体を捻ろうとするも遅く、バランスを崩したラウはそのまま転がり落ちていった。
目の前には巨大な大穴が広がっていた。イビト山の山頂近くにぽっかりと空いたその穴は、まるで底知れぬ闇が待ち受けているかのようだった。ラウは叫び声も出せず、そのまま深淵へと転げ落ちていく。冷たい風が耳をつんざき、意識は徐々に遠のいていった。
——そして、彼は闇の中へと消えていった。
「♪〜」
その日、ナプスタブルークは鼻歌を歌いながら、ふわふわと遺跡の中を漂っていた。
彼は他のモンスターがあまり来ないこの遺跡の静けさを好んでおり、いとこたちと共に切り盛りしているカタツムリ牧場が休みの日には結構な頻度でここを訪れていた。
時折遊びにやってくる王子様とニンゲンの王女様ぐらいしかこの遺跡では見かけることがないし、彼らもナプスタブルークが独りになりたい時は尊重してくれていた。
「…確か…このあたりだったかナ…」
ナプスタブルークは以前その二人から、遺跡の中に唯一地上からの光が当たっている場所があることを聞いていた。
人間の王女様曰く、自分が地下に落ちてきた穴が遺跡の最奥部にある、とのことだった。
…最も、その時の王女様は苦虫を噛み潰したかのような顔をしていたが。
「…王女様…なんであんな顔、してたんダロ…」
疑問に思いながら、遺跡の奥へと進んでいく。
ニンゲンたちを足止めするためにかつて作られた、いくつもの古い仕掛けやパズルをすり抜けていくと、やがてその場所が見えてきた。
「…わァ…」
ナプスタブルークは、初めて目の当たりにする地上からの光に、思わず目を輝かせた。
彼はその太陽光で照らされている地面に草むらを確認すると、迷わずその上に仰向けに寝転んで、目を閉じた。
「…心地いいネ…」
次の休みにはいとこたちも誘って寝転んでみようか、と考えていたその時だった。
一瞬、地上からの光が遮られた気がした。
何かと思ってナプスタブルークが目を開けると、ドサリ、と大きな音を立てて何かが落ちてきた。
「!?!?」
驚きのあまり、声にならない叫びを上げて飛び上がったナプスタブルーク。
しかし彼は落ちてきたものをみると、さらに驚愕した。
ニンゲンだった。
確かに、王女様とは全く違った様相——髪の毛の色が茶色ではなく金色——ではあったが、何度かニンゲンの王女様と会った事のあるナプスタブルークには、それが一発でニンゲンだと気づいた。
…そして、そのニンゲンが大きな怪我をしていることにも。
「…アワワワ、どうしよう、ゴーストだから持ち上げられないヤ…」
そうして、ナプスタブルークは助けを呼びに戻った。
そのニンゲンの指が動きつつあったことに、気付かぬまま。
「…う…うう…」
彼が次に目覚めたのは、草むらの上。
朦朧としている視界の中、自分が落ちてきた穴から陽が差し込んでいるのが見えた。
仰向けに倒れ込んでいたことに気づいたラウは、痛む体に鞭打って起き上がる。
周りを見渡した彼の目は、少しずつ暗闇に慣れていく。
すると、目の前、洞窟の続く先に奇妙なものを発見した。
彼はそれを確かめるために、時折よろけながらも少しずつ前進していく。
やがて彼はそれの前にたどり着くと、それを見上げる。
(…門?なんでこんな洞窟に、こんなものが?…)
何かの遺跡だろうか、と呟きながら彼はその門を通る。
…否、通ろうとしたところで、その場に膝から崩れる。
彼は後頭部に、ふと生暖かい感触を覚える。
触ってみると、彼の手は真っ赤に染まっていた。
(そうか、ここに落ちた時に怪我を…)
(ひょっとして…自分はもう、死んでいて…この門は、地獄への入り口なんじゃない…か…)
そう考えたのを最後に、彼は再び意識を失った。
イビト山の地下の遺跡の奥深く、二つの小さな影が遺跡を駆け抜けていた。
キャラとアズリエル、このモンスターたちの地下王国の王女と王子であった。
彼らは慌てた様子のナプスタブルークから、ニンゲンが落ちてきたと聞いていた。
「アズ、待って!あまり急がない方がいい!」
「でもキャラ、ナプスタブルーク君の話が正しければ、怪我をしているんだよ?助けなきゃ!」
キャラは周囲を警戒するように周りを見渡しながら足を止めたが、アズリエルは彼女の声に耳を貸さず、前へと進み続けた。
アズリエルの声は真剣だった。
危険の可能性よりも、誰かを救うことへの強い思いが彼の行動を突き動かしていた。
(…でも、その人間がモンスターに対して敵対的だったらどうするのよ…)
キャラは少し迷いながらもついていく。
内心、彼女には不安があった。
アズリエルの優しさと純粋さが、彼自身を危険にさらすのではないかという懸念である。
落ちてきた人間が友好的とは限らない。
コーディネイター技術——生まれてくる前の段階で遺伝子改造を施す技術——の開発・一般公開以降、コーディネイターとナチュラル——遺伝子改造を受けずに生まれてきた者たち——の間の人種間差別であんな酷いことになっている地上から来た人間が、ろくな奴であるはずがない、そうキャラは自嘲混じりに考えていた。
二人はやがて、草むらの中で横たわる金髪の少年を見つけた。
彼の体は泥と血で覆われ、まるで生きているのかどうかもわからないほど無防備な姿だった。
「見て!あそこにいる!」
「アズ、気をつけて…!」
アズリエルは驚きと興奮が入り混じった声をあげ、すぐにラウの元へ駆け寄る。
キャラは警告するが、彼は気にせず少年の体に手を伸ばし、その傷を見て眉をひそめた。
「ひどい怪我だ…早く手当てしないと。」
アズリエルは決意したように手をかざし、暖かな緑色光を彼に送り込んだ。
彼の心は純粋な優しさで溢れ、その光はラウの傷を少しずつ癒していく。
キャラはそんなアズリエルの姿を見つめながら、複雑な感情を抱いていた。
(あの子は誰なの?ただの人間…じゃないかもしれない。なにしろ、この山に登るってことは…きっと…)
彼女の胸の中で、見知らぬ人間への不安が静かに広がっていた。
「…大丈夫だよ、もうすぐ良くなるから。」
「…アズ、本当にいいの?そんなことをして…」
アズリエルはそう言いながら、目を閉じたままのラウに優しく語りかけた。
そんな自分の兄弟に、キャラは少し戸惑いながら問いかけた。
彼が人間を助けようとする気持ちは理解できる。
しかし、彼がそんなに簡単に手を差し伸べることが、将来この王国にどんな結果をもたらすか、それが気がかりだった。
「いいんだ、キャラ。僕たちは誰かを助けるためにここにいるんだろ?それに、この子を見捨てるなんてできないよ…。」
アズリエルの言葉は揺るぎないものだった。
彼は優しさそのものの存在であり、その純粋な心は他者を救うことに全力を注いでいた。
キャラはそれに対して何も言い返せなかったが、胸の中の不安は消えなかった。
彼が善意で行動しているのはわかっている。
それでも、彼のその優しさが、いつか取り返しのつかない危険を引き寄せるかもしれないという予感が、彼女を苦しめる。
「……早くこの子を病院に運んだほうがいいわよ。」
キャラは冷静な声を保ちながら、周囲を見渡す。
「彼が目を覚ます前に、母さんや父さんに電話で知らせておくわ。」
「うん、そうだね。でも彼が目を覚ましたら、僕たちが助けたことをちゃんと伝えないと。」
アズリエルはラウの体を抱え、優しく微笑んだ。
キャラは黙ったままアズリエルの横顔を見つめた。
彼のその優しさに対する不安、そして新たに現れた同族に対しての不信感が、彼女の胸の中で重くのしかかっていた。
(…ここは一体…?)
ラウは薄暗い部屋の中を見渡しながら、ぼんやりとした頭で考えていた。
落下の衝撃と負傷で、現実感が薄れていたのかもしれない。
部屋の隅には、小さな椅子があり、そこに何かの姿が見えた。
暗闇に目が慣れると、彼の目は思わず驚愕のあまり見開かれた。
何者かが、ラウの寝るベッドの近くの椅子に座りながら寝ていた。
その何者かは——オブラートに包んだ表現だとしても——見覚えのない顔つきをしていた。
ふわふわとした白い毛並み、そして小さな角のようなものが頭から生えている。
ラウはその姿をじっと見つめて、思わず身を震わせた。
(…何だ、この奇妙な生き物は…?)
過去の記憶が甦る。
自分が捨てられたこと、ここに落ちたこと、そしてあの暗い穴の中へ転げ落ちていく恐怖。
それらの全てが、まるで悪夢のように心に影を落としていた。
(やはりここは地獄なんだ…自分はとうとう、地獄に落ちたんだ…!)
ラウの胸に恐怖が広がる。
冷や汗が額から伝い、混乱と絶望が彼の頭を満たしていた。
その時、不意にその生き物が目を覚まし、彼に気づいた。
「…あ、目が覚めたんだね!」
優しい声で話しかけてきたのは、椅子に座っていたモンスターの少年、アズリエルだった。
彼の瞳は純粋な好奇心と安堵に輝いている。
「君、大丈夫?けっこう怪我をしてたんだよ。治すの、ちょっとだけ大変だったんだ。」
ラウはその優しげな表情に一瞬戸惑ったものの、すぐに顔を引き締めた。
これはただの幻想かもしれない。
だが、この生き物が話しかけてくること自体が、さらに彼の混乱を深めていた。
「…お前、何者だ…?ここは…一体どこなんだ?」
アズリエルは微笑みを浮かべ、ラウに答えた。
「ここは地下世界、モンスターたちが住んでいる場所なんだ。僕はアズリエル、君を見つけて手当てしたんだよ。」
その言葉を聞いても、ラウの疑念は消えなかった。
地上の人間世界から遠く離れた地獄のような場所…自分は地上に戻れないのかもしれないという考えが、彼を一層不安にさせた。
「…俺は…地獄に落ちたってことなのか?」
アズリエルは困惑しながらも、優しく首を振った。
「そんなことはないよ、ここは地獄じゃないよ。君は死んでもいない。ただ…ちょっと地上とは違う世界なんだ。怖がらないで、大丈夫だから。」
その優しい言葉に、ラウの胸の奥で微かに安堵の気持ちが芽生えたが、すぐにそれをかき消した。
今は何も信じられない、信じたくない。
ラウは再び横たわり、天井を見つめるようにして目を閉じた。
(本当にここは地獄ではないのか…?)
そう自分に問いかけながら、ラウの意識は再び闇に包まれていった。
後書き解説:
この世界ではラウが追放された・捨てられた先がイビト山で、その後すぐに地下世界に落ちてきたため、アル・ダ・フラガの屋敷に放火できていない。
また、アズリエル・キャラの二人がまだ存命の時代に落ちてきた。
好評だったら続くかも…?