本編とは全く関係ないお話だよ。
とある暖かい春の日。
いつものように仕事を片付けていた先生に連絡が来た。
なんと、ソラが相談したいことがあるとの事だ。
彼女が人を頼るのは珍しい。
そう思いつつも先生は彼女が働いているコンビニであるエンジェル24へと足を向ける。
……まあ、シャーレの一階に位置するのでいつも見ているのだけれど。
「ん〜おいし〜……あっ、先生!」
"あれ、イズミ?"
コンビニの店内にはソラの他に何故かイズミが居た。
缶飲料を美味しそうに飲んでいるが、見慣れないラベルが貼られていた。
『ぷにゅにゅん[オレンジ味]』
はて、こんな商品があっただろうか?
少なくとも先生の記憶にはないし、他のコンビニでも見た事がない。
初めて見る物だ。
シンプルなオレンジ色の缶にラベルが付いているだけ。
見た目はかなり地味である。
商品としては如何なものだろうか?
「その……先生、相談なのですが」
"ソラ、何かな?"
「私には全然心当たりがないんですけど……発注した記憶のない缶が沢山届いてて」
えっ、何それ怖い。
普通に怪異の仕業かもしれないと一瞬思ってしまった。
"えっと……それって、今イズミが飲んでいるやつ?"
「はい。私も一本だけ飲みました。オレンジ味でとても美味しいのですが……しゅわしゅわします」
ソラは嬉しそうではあるが、ちょっと涙目だった。
初めて炭酸を飲んだのなら納得のいく表情をしている。
だが、口には合ったらしく、まだ飲みたそうに見える。
しかし、炭酸飲料だったのか。
通りで、イズミがわざわざ缶を振ってから飲み干しているわけだ。
空の缶が五本程置かれているけど、飲み過ぎではないだろうか。
「おかわり! 結局お代はいくらなのかな?」
「その、売り物じゃないというか……どうしましょう、先生?」
"……うーん"
美味しいと言っているのはあのイズミ。
彼女については付き合いがあって知っているが故に少し躊躇ってしまう。
しかし、ソラも飲んでいるのだから……
覚悟を決めて先生もソラに一言断ってから缶を開封してみた。
イズミに倣い缶を思い切り振ってから開けると、中から炭酸飲料特有の泡が吹き出してくる。
鼻腔をくすぐる柑橘類の香り……ラベルの通り、オレンジの匂いだ。
驚くことに、中身は液体ではなくゼリーだった。
昔にそんな物もあったような気もするなぁ。
最近は見なかったけどある所にはあるんだなぁ。
そんな懐かしい気持ちを抱きながら先生はそれを口に運ぶ。
口を付けると、思っていたよりは甘い味がした。
酸味と炭酸もあるが、それを上回る程ではなく上手く同居している。
一口分を飲み干せば爽やかな喉越しで中々癖になる味わいだ。
先生は普段あまりこういった物は買わないのだが、結構気に入ってしまった。
"思ってたよりも美味しいね"
「ね、でしょ先生! えへへ、先生なら分かると思ったよ〜」
店内の奥を見ると、まだまだ五百本以上はありそうだ。
仕入れ値0円で得た物を売っても構わないのだろうか。
こう、何らかの法律に引っ掛かったりしないだろうか。
ヴァルキューレの生徒に連絡した方が良いのかもしれないが……
「ん〜美味しい! 何本でもいけちゃうよ〜」
「えっと、アナタもう七本目ですよね。飲み過ぎじゃないですか!?」
……イズミが気に入ってるようだし、まあいいか。
毒とかは入っていないなら特に問題もないだろう。
一応、後日後遺症があるかどうか確認を取ってから販売しよう。
先生は常識的な値段より少しだけ安めの値段を提示する。
タダで仕入れた商品なのだからあまり高くしても心情的によろしくないだろう。
先生の提案に、ソラは助かったと言わんばかりの安堵の溜め息を吐いた。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
新発売の商品というのは、意外と目に付きやすいもので。
「ん? 何だろこれ……ふーん、オレンジ味ね。面白そうだし、一つ買おうかな」
「あ、お買い上げありがとうございます」
あまり人の来ないコンビニでも売れ行きは悪くなかった。
「失礼、ここに新しい美食があるとお聞きしましたが」
「い、いらっしゃいませ……」
「ふふ、オレンジ味でしたか。イズミの言っていたのはこれですね」
それに、コンビニ側ではなく客側の口コミが思っていたよりも広まったらしい。
「んー……お、これかな」
「多分それじゃない? 全く、カズサったらこんな美味しそうな物を一人で味わって!」
「初めて買ったって言ってたから、そんなつもりじゃなかったんじゃないかな……?」
それどころか、モモトークを始めとしたSNSでも話題になったようで。
「偶にはエナジードリンクじゃない奴を飲めばと言われても……私、立派なカフェイン中毒なのに……」
「……その、此方をお買い求めでしょうか?」
様々な学園の生徒がその噂を聞いてやって来るようになった。
「今日は臨時収入があるから廃棄弁当以外も安い物なら買えそうだが……どうする?」
「あー、そう言えばなんか話題のやつがあったよね。ほら、オレンジ味の……」
「……そうですね。偶にはちょっとくらいの贅沢があっても良いかもしれません」
「此方でしょうか、お客様?」
実際に味は確かなのだから、当然と言えば当然かもしれない。
「これがあの子達がハマってる物ね……折角だし、私も買おうかしら」
「……(あれ、この人って確かゲヘナのお偉いさんですよね?)」
数百本程度の在庫があったそれはあっと言う間に捌かれ。
「……何っ、売り切れだと!?」
「も、申し訳御座いません」
「くっ、このマコト様が直々に足を運んだのに……!」
「そう言って聞かなくて向かうのが遅れたからではないでしょうか」
「イロハ先輩……もうないの?」
「ごめんなさいねイブキ、ほら、代わりにプリンを買いましょうね」
「わーい、イロハ先輩大好き!」
「なっ……!? ずるいぞイロハ!」
無事に、謎の商品は完売になったのであった。
めでたしめでたし。
「……この炭酸飲料。ちょっと、気になるわね。少し調査してみようかしら」
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「……先生、この商品についてご存知でしょうか?」
"あれ、ヒマリが何でそれを持ってるの?"
特異現象捜査部の部室にて。
既に春なのに暖房が全開となっている場所で、先生とヒマリは話を交わしていた。
「実は、リオが持ってきたのですよ。私もヴェリタスの後輩達が飲んでいるのは知っていましたが」
"美味しいよね"
「ええ、まあ。こう言った食品は廃れて久しいかと思っていたのですが……と、そこは本題ではなくてですね」
そこで、ヒマリは本題に入る。
今日わざわざ先生を呼び出した理由を語る為に。
「やはり、先生は知っていましたか。あのコンビニはシャーレがある建物にありますから、やはりと思っていましたが」
そこからヒマリは先生にいくつかの質問を投げかけた。
それに正直に答えた後、ヒマリは難しい顔で缶を見つめた。
「この商品……正式名称を『ぷにゅにゅん[オレンジ味]』ですが。話を聞いた限り、これも『都市』から来た物である可能性が高いです」
"え?"
その言葉に、激しい嫌な予感が背筋を走った。
嫌な汗がたらりと頬を流れる。
「リオの提言なので根拠までもは聞いていませんが……とにかく、原材料を調べる必要があります」
ヒマリはそう言うと缶を開封する。
んー、んー!
しかし、彼女は病弱なので開かなかった。
「……」
"……"
しばらくの間、沈黙が訪れる。
ヒマリは無言で机の上にある器具を手に取って弄る。
すると、その器具は缶切りのような形状へと変化した。
そして変化した器具を使って缶をこじ開ける。
その一連の動作を先生は何も言わずに見守った。
大人なので黙っておいてあげる優しさと空気を読む能力があったのだ。
ヒマリは缶の中身をガラス製の容器に入れる。
そして、後ろの実験器具のような機械に容器をセットした。
正面にある端末部分をぽちぽちとタッチすると、機具は稼働音を発して動き出した。
彼女は何事もなかったかのように説明を続けた。
「この機械は物体の元の姿を移すことができるのですが……」
"す、凄い技術だね"
「何ですか先生、何か言いたいことでもあるんですか?」
ふるふると首を振って否定してもヒマリはぷんすこと怒ったままだった。
どうすりゃいいねん。
こうなったら、話題を逸らすしかないだろう。
"で、でも本当に凄い技術だね! 凄いよヒマリ!"
「……この機械の製作者は私ではないのですが」
逸らした先にも地雷があったらしい。
本当にどうしろと!?
先生は絶望した。
「……はぁ。まあ構いません。リオ曰く、この機械もどうやら都市の技術で作られた物らしいです。どちらにせよ、これを使えば原材料が分かるでしょう。これで普通の柑橘類が映ると良いのですが」
ヒマリのその言葉に先生は一も二もなく馬鹿みたいに頷いた。
そして、都市の機械という発言に首を傾げた。
そんな物がどうしてここに……?
「ですが、一つ問題がありまして。私では起動ができなかったのですよ」
"……それで、私を呼んだの?"
「本当に申し訳ありませんが、そう言う事です」
ヒマリは先生の持つ端末を見ながらそう言った。
生徒に求められたのなら、やるべき事は一つだ。
先生は迷いもなく端末の中にいる者へと話しかける。
"『A.R.O.N.A』、この機械を起動できる?"
『できます』
簡潔な返事と共に、機械の駆動音が響く。
流石は先生ですねと嬉しそうにする先生と褒められて満更でもない先生。
かくして、端末の画面に映った物は——
大型犬くらいのサイズのある 芋 虫 だった。
……は?
と言うことは、つまり。
アレの原材料は……目の前のコレってこと?
先生とヒマリは顔を合わせる。
お互いに、心は一致していた。
何も言葉を発さずとも通じ合えるくらいに。
先生は目を細くして小さく頷いた。
『この事は、二人の秘密だ』
ヒマリは無言で口元を全力で抑えながらゆっくりと頷いた。
彼女の足元にはいつの間にかゴミ箱が用意されている。
涙目の彼女はサッと視線を逸らした。
その先には部屋の入り口のドアがあった。
先生は持ち得る全てを活用して平静を装いながら帰路へつく。
背後から聞こえた水音には決して振り返らなかった。
今、一瞬でも気を抜けば……同じ結末を辿ってしまうだろうから。
「うーん……先生、どうしたんだろう。なんか普段と様子が違ったし……あれ、部長どうしたの? そんなゴミ箱を持って……と言うか、なんか酸っぱい匂いがするような……」
「【規制済み】〜〜〜〜……!!?」
「ぶ、部長……?」
その後、先生はシャーレの仕事部屋へ戻り2時間眠った……
そして……目を覚ましてからしばらくしてアレを飲んだ事を思い出し……吐いた……
ここは後書きのスペースだよ
リンクを押した人は微グロ要素が上にあるから間違えてスクロールしないようにね
と言うわけで突貫工事で作られたお話ですが、楽しんで貰えたら幸いです。
お勧めの楽しみ方としては推しの生徒が嘔吐する光景をこれを読めば想像し易くなるかなと
イブキだけは可哀想なので
やはり子供や動物が痛い目に遭うのは創作物の中でも可哀想ですものね。
追記
リンバスのエイプリルイベント見てきました。
この場で話せる感想としては、グレゴールとドンキが面白かったです。
リンバスとブルアカのプレイ経験はありますか?
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