透き通った世界に鏡を通して   作:紙吹雪

11 / 30


他の生徒の立ち位置にいるif、書いてみると楽しいんですよねぇ……
だから皆も小説、書こう!




★★★ 七囚人 "災厄の狐"

 

 連鎖するように鳴り響く爆発音を背後に、子供は夜の街を疾走していた。

 子供を追い掛けるのはヴァルキューレの生徒達だね。

 何としても重犯罪者を捕まえようと躍起になっているみたい。

 

 人海戦術を使って逃げ回る子供を包囲しようとするけれど……

 

「その程度で、私が捕まるとでも?」

 

 何度も包囲自体は成功しているけれど、包囲の僅かな隙を突かれて逃走を許している。

 これはヴァルキューレ側の人数がそこまで多くないのも理由ではあるね。

 だけど、一番大きな要因は子供の身のこなし。

 

 まるでコミックに登場する忍者みたいなアクロバティックな動き。

 一部のヴァルキューレの生徒は大道芸でも見ているような気分になったみたい。

 でも、職務に忠実な彼女達はすぐにハッとしたんだ。

 

「くそっ、また逃げられた!」

「ビルの側面を平然と走って登りやがって……忍者かあいつは!?」

「いや、流石の奴もここまでだ。幸いな事に局長がこの場におられたのだから……って」

「……私の気の所為じゃなきゃ、局長もビルの壁を登ってないか!?」

 

 ビルの頂上から子供は街を見下ろした。

 どいつもこいつも……欲深さばかりの碌でもない奴等だと。

 心の底から失望した目をしているね。

 

 子供は色んな組織を転々としていた。

 昔の子供は相手の腹の底を見抜けないくらい純粋だった。

 だから何度も何度も良いように使われて捨てられて……そして今に至るんだ。

 大人を信じられなんかしないって。

 

 やがて、子供は裏切りにはそれに相応しい報復するようになった。

 勿論そんな事を繰り返していたら悪評ばかりが世間に広がるのは当然の帰結だよね。

 七囚人の一人として悪名を馳せるまで、そこまで時間はかからなかったんだ。

 

「……でも、あの人は」

 

 そんな子供にも信頼できる相手ができたみたい。

 

 あの人……先生なら。

 自分の夢を笑わずに居てくれる。

 自分の事を何者にも囚われず見つめてくれる。

 

「いいえ、それはまだ直接聞いておりませんでした」

 

 実のところ、子供がその相手を信頼すると決めた切っ掛けは一目惚れしたからなんだ。

 子供が牢から抜け出したその日に出会った。

 この人ならきっと自分の事も分かってくれると、確信めいた予感がしたんだ。

 

 今はちょっとした事情で追われているけれど、そんな事は子供にとっては大した問題ではなかったんだ。

 かつて自分を打倒したあの小隊も居ないのだから。

 子供にとっては警察学校の連中は容易い相手だね。

 

「あら、珍しく追手が居ますね……まあ、些事ですけど」

 

 子供は再び常人には不可能な跳躍でビルとビルの間を飛び移った。

 時間帯が夜だからか、その姿を見たのは比較的近くにいた局長くらいだろうね。

 満月を背景に宙を舞う子供のシルエットを。

 

「……さて、これからどうしましょうか。バレンタインはもう明日ですし」

 

 子供の目的は想い人……先生に贈り物をする事みたい。

 この都市にはそう言う習慣があるんだね。

 でも、先生と二人きりの時に渡したいとまで考えると困ってしまった。

 

「先生の隣には、他の生徒がいっぱいいます……」

 

 邪魔者共を排除するにはどのような陽動が必要なのか。

 考えに考え……結論に至った。

 

「私の偽者を大量に用意しましょう。苛烈に、華麗に、見る者を釘付けにしてしまうように」

 

 分身の術……とまで考えた子供は、急激に冷めたような溜め息を吐いたんだ。

 寂しさや悔しさも混ざった一息は凄く重たくて。

 

「そんな馬鹿らしい夢なんて……今更思い返しても恥でしかないでしょうに」

 

 現在身に付けた体術も、子供が恥だと思っていた夢の影響なのにね。

 どれだけ蔑ろにしていても夢があったから今がある事に変わらないから。

 子供にとっては煩わしい過去でしかなくても、過去を完全に捨て去る事は難しいんだ。

 

「しかし、先生と二人きりになれるなら……いくらでも利用しましょうか」

 

 

 

 こうして、バレンタインデー当日に子供は大きな事件を起こしたんだ。

 ヴァルキューレの装備を奪って利用して。

 高度なジャミングまでできたのは、子供の今までの経験の賜物だね。

 あの疎ましい奴等の命令を聞いた日々も少しは役に立ったみたい。

 

「先生……どうか、受け取ってください♡」

 

 子供は仮面を外し、用意したチョコレートを渡したけど……相手は苦々しい表情を浮かべているね。

 何せ、周辺にとんでもない被害を出しているし。

 このまま正直に受け取るには子供のやった事は規模が大きくなり過ぎたんだ。

 

「そんな……先生に嫌われたら、私、は……」

 

 子供は大粒の涙を流しながら崩れ落ちそうになった。

 心が絶望に染まりそうになり……

 けれど、続く言葉で何とか持ち直したみたい。

 

「先生の……いえ、主人様と! 二人だけで交わした約束があればこのイズナ、ここでまた別れようとも耐えて見せます!」

 

 そろそろ二人だけの時間は終わりそうだね。

 辺りには子供の狙いに気が付いた人達が集まっている。

 子供は忌々しそうにそれらを見たけれど、何とか我慢したみたい。

 

「……主人様との約束ですから」

 

 最後に子供は先生に言葉をかけようとしたけれど。

 その言葉は結局口に出さなかったんだ。

 きっと、先生は肯定してくれるだろうけど……今となってはそこまで重要な事でもないだろうから。

 

 喉まで出かけた言葉を飲み込んで、子供は先生に別れを告げた。

 

 

 

「では、また近日お会いしましょう。私の主人様……♡」

 

 






元はセイアにこの役回りをやって貰う案もあったのですが、あの病弱さじゃ無理かなと思いイズナにその枠が回されましたとさ。
なお、イズナのモチーフとされている管狐は厳密にはキツネではなくイタチらしいです。
……まあ似たような種族なのでヨシ!

みんな大好きワカモの立ち位置になったイズナ(18)のお話でした。
執筆に当たってワカモの過去がイマイチ不明瞭なのが怖かったですが……
ミニストーリーでワカモらしき人物の話題が出て恐怖は薄れました。

口調はワカモっぽさもありながらイズナの面影も残す感じに。
これはイズナの元の性格の印象が強かったからですね。
どれだけ曇っても口調だけは明るいんじゃないかなぁと思いこんな形に。
まあ、ワカモも強烈な性格なので総合的にはトントンかな?



しかし、ワカモとカヨコは留年しているのかどうか……
前者も後者もどっちもあり得そうな感じなのがまた何とも。
マコトは多分留年はしてないんじゃないかな……ポンコツだけど。
いやでも、イブキの飛び級に合わせて敢えて留年した可能性はある……か……?

教えて生徒プロフィール網羅おじさん!

→クックック……大人しく公式からの情報を待ちなさい
→そういうこったぁ!

リンバスとブルアカのプレイ経験はありますか?

  • リンバスだけプレイしている
  • ブルアカだけプレイしている
  • 両方プレイしている
  • 両方プレイしたことがない
  • プロムンの過去作はプレイしたことがある
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。