透き通った世界に鏡を通して   作:紙吹雪

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第六回ヴァルプルギス。
人格とE.G.O.の三種を50連で全部引いてしまいました。
その後、アナウンサー欲しくてさらに250連回しました。
アナウンサーは出ませんでした。



これを「過ぎたる欲は身を滅ぼす」と呼びます(憤怒完全共鳴)



もう少しで望みに手が届くと思ったんだが…
クソッ…お前のせいだな、管理人!
もはやこの狂気しか残されていないというのに…くっ、これすらも…!




あ、310連目でちゃんとアナウンサーを引きましたよ(吐血)
気にするなよ、次はきっといいことだらけさ。




向き合う自分:久田イズナの場合

 

 

 シャーレに戻った先生と忍術研究部の三人。

 そこで改めて入手した鏡を使う予定である。

 ミチルとツクヨは緊張した面持ちでイズナを見守っていた。

 

「本当にこれでいつものイズナに戻るんだよね?」

「ほ、本当に良かったです……」

「うんうん、折角入ってくれた部員が減ったら悲しいもんね!」

 

 そんな話をするのをイズナはただ黙って見ていた。

 今のイズナにとっては二人とも赤の他人でしかない。

 会った事もない奴を気にしないのは当然ではあるだろう。

 

「……」

 

"イズナ、何か言いたいことがあるのかな"

 

 でも、それにしては視線が意味あり気な気がして。

 先生は思わず問いを投げかけた。

 何か心残りでもあるのか、と。

 

「別に……この世界の私がどんな人だったのかは、もう大体予想が付くので」

 

 心なしか寂しそうにそう言ったイズナは静かに手鏡の布を取った。

 これ以上この場に居たくない。

 そんな風に思っているように先生には感じた。

 

 今日、長くない時間しか彼女と話せなかったがそれでも何となく分かる。

 雰囲気はワカモに見紛う程にそっくりだけれど、本質まではそこまで変わっていない。

 ワカモと同じように……自らが守るべき生徒だ。

 忍者に憧れていた、心優しくも現実を直視してしまった少女。

 

 そんな彼女に……先生は声をかけた。

 

"イズナ。これは私の予想だけどね"

 

「……?」

 

"今のイズナにも……きっと納得の行く結果になると思うな"

 

「そう、ですか。不思議な事に、主人様にそう言われると、本当にそうだと信じたくなりますね」

 

 ややギクシャクとしながらも、イズナはそう言って笑みを浮かべた。

 何か思い残しがあるのは明白だった。

 そんな雰囲気を感じたのは先生だけではない。

 

「……あ、あの。ちょっといい?」

 

 ミチルが恐る恐るながらもイズナに声をかけた。

 

 先生以外に対しては関心が薄い彼女。

 当然の如く、返答は冷たい一瞥だった。

 

「何です?」

「そ、その……今、目の前にいるイズナがどんな人生を送って来てどんな考えをしてるのかは分からないけどさ……」

 

 一呼吸置いてミチルは続ける。

 

「本当は七囚人を見てこんな事言ったら駄目なのかもしれないけど……凄く、格好良いと思ったの!!」

「……はい?」

「言動も行動も全部、私の憧れていた忍者みたいで……偶にクナイを弄んだりしてたのも」

 

 ミチルの目には輝きが宿っていた。

 自分の好きな事を語っている時の特有な煌めき。

 かつてイズナが失ってしまった光であり……心の何処かで求めているもの。

 

「全部……完全じゃないけど、本当に夢見た忍者みたいだったの。あはは、お別れする前に伝えられてよかった……よ……」

 

 満足そうに笑ったミチルを見て、イズナは静かに目を閉じた。

 何を考えているのかは……分からない。

 ただ、ミチルの言葉を否定したりはしなかった。

 

 なお、当のミチルは話している内にまたイズナが怖くなったのか言葉尻が萎んでいた。

 

「わ、私も……本物の忍者を見た事があるわけじゃないんですけど、今日のイズナ……さんは忍者らしさがあって、その、うまく言葉にはできないんですけど、凄かったです……!」

 

 たどたどしい言葉遣いだったけど、ツクヨもミチルと同じ気持ちだった。

 二人の目には今のイズナが格好良い姿に映った……と。

 このイズナにとっては不本意かもしれないけれど。

 

「……そうですか」

 

 それだけ言うとイズナは窓際まで歩いて立ち止まった。

 硝子に映る表情は複雑で、それでいて単純なようで……

 黙ったまま、俯いたまま手鏡を覗いた。

 

 先生はイズナのそんな姿を眺めていた。

 彼女の夢や願いを応援したい。

 だからこの後も……しばらくは見守らないと。

 

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 

 

 水面と空の境界が曖昧になる空間。

 そこにイズナと先生は立っていた。

 片方のイズナ……先生がよく知っている方は不思議そうにキョロキョロと辺りを見回している。

 困惑がくっきりと浮かんだ彼女は先生を見つけるとホッと表情を緩ませた。

 

「あっ、主殿! その、ここは何処ですか!? さっきまでシャーレに居たのに……」

 

"その前に確認したいんだけど、イズナはどのくらい記憶がハッキリしてる?"

 

「え? そう、ですね……はい、ブラックマーケットに行ったのも覚えて、います。それに……先程までの感情も、朧気ですが……」

 

 イズナの言葉を受け、先生は無言で頷いた。

 アルの時と殆ど同じだ。

 同じではない点を挙げるとすれば、それは……

 

"此処が何処かを説明するのは私にも難しいんだけど……それよりも、先にしなくちゃいけない事があるんだよね"

 

 先生は無言で佇むもう一人のイズナ……災厄の狐としての可能性を歩んだ彼女の方を向いた。

 既に狐のお面を被っておりその表情は窺えない。

 しかし、明らかに友好的な様子ではなかった。

 

 

 

 何故なら……先生の近くにいる方のイズナに銃口を向けていたから。

 

 

 

「貴女は、別の世界の私……ですね」

「……」

「な、何でそんなに戦うつもりなんですか?」

「……」

 

 先生をチラリと一瞥し、仮面を被ったイズナは静かに語り出した。

 

「忘れた夢をもう一度。そんな馬鹿馬鹿しい文句を聞いて鏡を頂きましたが……まさか、先生も一緒とは思いませんでした」

 

 仮面を着けているので表情は見えない。

 悲し気な口調だけど怒りの籠った声色、そして何よりも感じるのは……苦しみ。

 夢へ至らなかった足掻き。

 別の世界の自分への妬み、僻み……

 

「構えなさい。貴女が夢を見ていたいと言うのなら……その希望を、願望が作り出す強さを。私の目の前で示しなさい」

 

 向けられた殺気が、イズナと先生の真芯を捉えた。

 それだけで骨まで凍てついてしまいそうな錯覚……

 災厄の狐の可能性を歩んだイズナの本気。

 

 彼女はその培った戦闘技術の全てをもってして、溢れ返る程の憎しみをぶつけようとしていた。

 

"イズナ、それは君が本当に望んでいる事なのかい?"

 

「……先生に嫌われてしまいますね、きっと。それでもやらずにはいられないなんて……先生と出会った日の私に言っても信じて貰えないでしょう」

 

 そう言いながら仮面を被ったイズナはもう一人のイズナと向かい合う。

 どうか、手出しせずに見守っていて欲しい。

 そう願っているようだった。

 

「主殿……」

 

"時にはぶつかり合う事も必要だろうから……行っておいで、二人とも"

 

 先生は戦えない。

 指示を出す事はできるけど、きっと今は必要じゃないから。

 そして、心の底から信じている。

 

 悪意が蔓延り善意の失われた世界だったとしても。

 次への期待をしているから、どちらのイズナも根は本当に良い子だと知っているから。

 確かな輝きを……夢や希望を胸に秘めているのを見せてくれたから。

 だから快く信じ任せられる。

 

 この行き場を失った怒りに任せた戦闘でも。

 先生の心は揺るがなかった。

 二人への信頼がそうさせていた。

 

"行っておいで。大丈夫、不味くなったら私が何とかするから"

 

「……はい! 行って来ます、主殿!」

 

 いつものように元気よく、それでいて少しだけ緊張の混じった返事をして……

 

 

 

 イズナは駆ける。

 さながら仕える主人に命を賜った忍者の如く。

 

 

 

「……フッ!」

 

 ワカモの持つ短銃に少しだけ似通った、けれど原型はイズナの持つ物と同じ武器。

 違いは本当に些細で、遠くからでも見れば一発で分かる部分。

 銃の先に銃剣……正確には短刀が取り付けてある事だ。

 

 仮面のイズナは走りながら銃弾を放つ。

 激しく動きながらだと言うのに狙いはかなり精密だ。

 もう一人のイズナの銃を持つ手に銃弾は向かっていた。

 

「えいっ!」

 

 それをイズナはクナイで叩き切る。

 避けるよりも動きのロスの少ない最小限の行動で効率良く攻撃を捌いた。

 並の技量で為せる技ではない。

 

 この時点で他の生徒と比べても頭角を現しつつあるが……

 

「っ!?」

 

 イズナがクナイを使った時。

 仮面のイズナは既に次の一手を打っていた。

 それは両眼を狙ったクナイの投擲。

 奇しくも二人の使ったクナイは全く同じ。

 

「っ、なんの!」

 

 咄嗟に手に持っているクナイで叩き落とした……が。

 その際、ほんの一瞬だけイズナの視界は塞がった。

 本当に僅かな隙……コンマ一秒程度の盲目。

 

 その空白に、目の前にいた筈の仮面のイズナの姿が消えていた。

 

「ど、何処に行きました!?」

 

 霞のように消えた相手を慌ててキョロキョロと探す。

 しかしまるで見つける事ができない。

 離れた場所で見守っていた先生ですらも仮面のイズナを見失っていた。

 

「(一体何処から……っ!)」

 

 いつ来ても対応できるようにイズナは構える。

 時は十秒、二十秒と過ぎるが未だに動きはない。

 先生もその様子を固唾を飲んで見守っていた。

 

「流石は私。咄嗟の対応力にはそこそこ優れていますが……まだまだですね」

 

"い、イズナ?"

 

 仮面のイズナが現れたのは……先生の背後。

 丁度構えているイズナから見えない位置だった。

 こんなに近くに居たのに、声が聞こえるまで気配すら気付かなかった。

 

 隠密能力だけなら……同じ可能性を歩んだワカモすら超えている。

 

「あの子が……昔の私と変わらないのはもう確認できました。この時点で既に主人様もいらっしゃるのなら、もう憂いなど微塵もない筈です。それなのに……どうしてここまで心が乱れるのでしょうか」

 

"イズナ……"

 

 仮面を被っているのに隠せない程の憂鬱。

 心の奥深くまで潜り込み……根まで沈んで満ち、そして急激に殺到する。

 病で人が倒れるように、あっという間に心を蝕む恐怖になるだろう。

 

「どうしても妬ましいんです。夢を純粋に見ていられる私が存在するのが……どんなに惨めで格好悪くても止めることができないんです」

 

"多少不恰好でもいいんだよ。それを抱えたままの方が、よっぽど不健康とも言えるだろうし"

 

「……でも、主人様には嫌われてしまいました」

 

"嫌うわけないよ"

 

 先生のその言葉に、俯いていた仮面のイズナが前を向いた。

 何かを期待するかのように。

 

"生徒が前に向かって歩けるように、支え続けるのが私の役目であり義務だから。嫌いになんてなれるわけがない"

 

「ふふっ……先生は初めて会った日からずっと……懇願していた理想の人で、それはどの世界でも変わらないのですね」

 

 きっと、全ての先生は生徒に対して真摯であるだろうと。

 

「……私にも何か一声をくださいませんか?」

 

"ん、そうだなぁ……いつも、心から願ってるよ。イズナが行きたい方向へ向かえる事。だから、行っておいで"

 

「はい……行って参ります」

 

 仮面のイズナは先生を背にまだキョロキョロしていたイズナへとクナイを投擲した。

 放たれたクナイはヒョイと首を傾けたイズナの髪を掠り、カランと音を立てて落ちる。

 イズナは仮面を着けた自らの立ち位置を見て唖然とした。

 

「あ、主殿の所に居たんですか!?」

「私が真に主人様を狙う刺客だったのなら……既にその身柄を確保しています。ハッキリ言って、未熟にも程があります」

「うっ……」

 

 ぐうの音も出ないのか、イズナは黙り込んでしゅんとしてしまった。

 耳が垂れ下がって尻尾もシナシナしている。

 

「これで最後です。もし、まだ夢を目指すつもりがあるのなら……来なさい」

 

 仮面のイズナは銃剣を取り外し、その切先をイズナに向けた。

 真意を測りかねていたイズナだったが……やがて。

 ハッとしたようにイズナもそれに倣った。

 

 この行動は見覚えがあった。

 いや、思い返してみれば。

 

「挨拶前のアンブッシュ……あれは、忍者モノの小説であった台詞ですね!」

「……」

「今のイズナにはその記憶はありませんが、貴女には辛い事があったんだと思います。それでも……やっぱり、忘れられてないんだと思います」

「さっさと構えなさい」

 

 嬉しそうな声色に対する仮面のイズナの返答は短い言葉。

 だけど、ほんの少し……僅かな声色の中に異なる感情が混じっていた。

 怒りや侮蔑ではない、ほんの少しの羞恥心が。

 

 イズナも先生も、薄らとだがそれを理解した。

 

 きっと、埋まっていただけだったんだろう。

 夢も希望も……ふと気が付けば、またその胸に宿っている。

 憧れがそう簡単に捨てられるわけがなかったから。

 

 今もそうだ。

 

 これから行われるのはたった一合の斬り結びであり、刹那の攻防。

 すれ違い様に繰り広げられる闘い。

 一瞬で決まる勝負。

 

 これもまた……イズナの知っている忍者の漫画であったものだ。

 

「シャーレの先生……主殿に仕える忍、久田イズナ……夢から目を背けた世界の私にもう一度輝きを見せる為、参ります!」

 

 全身全霊を込めた、今彼女が出せる全力の走り。

 車よりも素早い加速でイズナは走り出す。

 夢を見ていたいから……その希望を伝えたいんだ、と。

 

「"災厄の狐" 久田イズナ……未だに甘い世界に浸る私に喝を入れんが為、参りましょう」

 

 仮面の奥の双眸が真紅色に怪しく煌めいた。

 イズナと同じ……いや、それ以上の加速を持って走り出す。

 その夢がどのくらいの強いのか確かめたい、と。

 

 

 

 二人が走り出して僅か2秒間の駆け引き。

 

 1秒目。

 二人の持つ刃物が数度ぶつかり合い、火花が散る。

 

 1秒とコンマ3秒目。

 お互いに真打ちの一撃を繰り出した。

 

 1秒とコンマ5秒目。

 全力で腕を振り抜いて、走って勢いのまますれ違う。

 

 そして2秒目。

 背中を向けあったまま暫く動かない。

 先生の目には当然攻防は全く見えなかった。

 

"……!"

 

 仮面を付けていない方のイズナが膝を付いた。

 一見何処にも怪我なんてしていないのに、イズナは攻撃を受けたかのように倒れ伏した。

 イズナ本人すら、何をされたのか理解が及ばなかった。

 

 

 

 これが、本気になった"災厄の狐"の本気……!

 

 

 

「うっ……」

「防御がまだ疎かですね。その程度の実力で先生を守るなど烏滸がましい」

 

 そう語る仮面のイズナの口調は……先程までよりもずっと穏やかで。

 

「……ですが」

 

 まるでこの瞬間を待っていたかのように……仮面が割れた。

 イズナの想いを乗せた一撃はどうやらちゃんと届いたようだ。

 だから、こんなにも穏やかな声色なのだろう——

 

 

 

 

 

「このくらいできるのであれば、見守る価値はありそうですね」

 

 仮面が外れたイズナは心の底から嬉しそうに、そう言って笑った。

 

 






夢が終わらない。
心に刻まれている限り、どんなに隠れていても側にある。
病が心と身体を蝕んだとしても変えられない……
憧れは終わらないんだよ。
理想とは……渇望とは……そういうものだから。







次回、ミレニアムでの事件。
それが終われば次の章に移ります。
今度はやや大きめの規模の話になる予定。
因みに作者のミレニアムに限定した好きな生徒はユウカです。
ヒマリやリオも好きですけどね〜

リンバスとブルアカのプレイ経験はありますか?

  • リンバスだけプレイしている
  • ブルアカだけプレイしている
  • 両方プレイしている
  • 両方プレイしたことがない
  • プロムンの過去作はプレイしたことがある
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