アニメで言うCパート的な話なので短めです。
全ての処理をやっと終わらせ、しばらく泊めさせて貰ったゲーム開発部の部室を後にする。
名残惜しそうにするモモイやミドリ、アリスとユズを宥めて先生はシャーレへと帰って行く。
それは事件が起こってから三日目、夕方時の事だった。
月明かりだけが僅かな光を照らしている暗い夜。
人気のない道に差し掛かり、流石の先生も足を止めた。
キヴォトスの治安は先生が来てからはある程度改善されたものの、未だに安全とは言い難い。
どれだけ対策を講じても問題は決して無くなりはしない。
毎日何処かで問題が起きているのがキヴォトスだから。
ましてや……今はかなり疲れている。
シャーレの権限を持ってしても、いや持っているからこその仕事量があったからだ。
ミレニアムにも多少の後処理は任せたけれど、それでも先生の負担は大きかった。
学園内部だけの問題ではあったものの、原因が不明でよく分かっていないものだからだ。
特異な現象を調査するチームでもあれば良いのだが……
今はとにかく帰って休みたい。
流石の先生でもこれ以上の仕事は今日はもう勘弁して欲しい気分だった。
……近道ではあるが、別の道を通ろう。
そう決めて踵を返したその時である。
暗闇からぬるりとそれは現れた。
「おや、ここをお通りにならないのですか?」
"……黒服"
「ククッ、覚えて頂いて光栄ですよ」
真っ暗な場所から真っ黒な人がでてきた。
それも、疲れている時に会いたくない相手が。
気配を察せられなかったし、目を凝らしても全然見えなかった。
今からでも会わなかったことにして、無視してしまおうか。
少し悩んだけれど……流石にそれはやめておいた。
嫌いな相手とはいえ、話しかけられたのに無視をするのは社会人としては失格だし。
「どうしても貴方と少し話がしたくて、こうしてお待ちしておりました。お疲れなのは承知の上で、お付き合い願いますか?」
……何故、ここに居るのだろうか。
待てよ、まさか……?
"今回の件、何か関わっているの?"
「私は、関わっていませんね。ですが、私の同志が少々。夜の散歩に付き合ってくれるのなら、詳しくお話致しますよ」
そう言って手を差し出してくる。
手を取るわけがないのは、黒服も知っているだろうに。
しかし、分からないことだらけなのも事実だ。
ここは……思惑に乗ってみるのも悪い選択ではないだろう。
手は取らないけど。
"……分かった、いいよ。でも、寒いからなるべく手短にね"
「ククッ、そう手間は取らせません」
表情の変化がイマイチ分からない黒服。
しかし、先生には何処か上機嫌だと感じた。
あまり関わりたくないのが本音だが……
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「お付き合いくださりありがとうございます。何から話すべきでしょうか……まず、あの薬指スチューデントへ援助したのは私の同志です」
"同志……"
「仲間、とも……まあ、言えるでしょうか。それぞれお互いが目指す場所は異なりますが、方向性が似ているので協力し合う仲ですよ。ああ、因みに今回の件は私とは無関係です。報告自体は受けていましたので、こうしてあなたに会いに来ましたが」
"ふーん"
「おや、冷たいですね。まあ当然ですか」
心外だ、と言い出さないだけマシだろうか。
相容れないのは間違いないが……敵意は本当に無いようだ。
別に嬉しくはないが、気に入られているのは確からしい。
「あの鏡……いえ、正確には『硝子』という呼び方が正しいらしいですね」
"違いがあるの?"
「勿論。『硝子』は無作為に可能性の世界を見せるものだそうで……私も詳しく調べたかったのですが、断念しました」
"何故、断念したの?"
「同志に盗られた……と言うよりは、諦めた方が良いかと思いました。我々も知らない未知の技術には興味が惹かれましたが……その技術の生まれた世界が危険過ぎましたので」
……黒服が、危険と断言する?
あまり良い世界ではないのは薄々察してはいたが、そこまでなのだろうか。
あのユウカに後で詳しく聞いてみれば分かるかもしれない。
「忠告はしたのですが、彼女は止まりませんでした。面倒な事態にならなければいいのですが……それともう一つ。かの『都市』からこの世界に入り込んだ技術がまだあります。其方も扱いを間違えれば危険極まりない物でした」
"それを何故、私に教えるんだ?"
「私はそっちには一切関わっていませんので。隠す理由はありませんが、わざわざ貴方に伝える理由は……そうですね」
そこで一拍黒服は間を置いてから話し出した。
とっておきの手品を披露するかのような楽しげな口調で。
「貴方があれらを目にした時、どのような反応をするのか……とても気になるからですね。ククッ」
"……期待に添えるかどうかは分からないよ"
やはりあまり理解できなかった。
黒服のした話がではなく、黒服の思考そのものが。
先生は心の中で重いため息を吐いた。
「あの『硝子』の技術にしたって残酷なものです。今回の件を見ればわかるでしょう? 人格を被せてしまえば元の人格は消えてしまいかねない。これはあくまで私の予想ですが、おそらく動物などにも被せることができる筈。使い方次第ではとてつもない可能性が秘められているかもしれません」
それは先生も今回の件で思い知った。
他人を犠牲にするのを厭わないし、血が飛び交うくらいは見慣れている。
あのユウカも……異様に暴力には慣れていた。
少なくとも、死に関してはキヴォトスよりも余程身近な世界なのだろう。
そんな世界で生まれた技術だとしても。
先生は信じたかった。
"……本当にそうかな?"
「と、言いますと?」
先生はミレニアムのエンジニア部に所属している生徒達を思い浮かべる。
あの子達は何か新しいものを開発する時はいつも楽しそうにしている。
勿論、技術とは真剣に向き合っている。
時折おもちゃみたいな変な物を作ったりもする。
でも……彼女達が作る全ての物に、それは込められていた。
どんなに残酷で悲しい世界でも。
嘆きたくなるような辛い場所だったとしても。
良くも悪くも……人間は変わらない筈だ。
未知を見つける人の心には、必ず秘められている。
"技術を開発した人に悪意があったとは思わないよ。だって、どんな技術にもそれぞれの浪漫が込められているからね"
「……浪漫、ですか」
あまり耳馴染みがなかった言葉だったのか、黒服は言葉を詰まらせた。
だけど、それは一瞬だけ。
すぐにはしゃぐ子供のように高揚した声を上げた。
「なるほど、なるほど。悪くないですね、浪漫」
"えっと、そう?"
「ククッ……やはりあなたは面白い方だ」
上機嫌になった黒服は立ち止まる。
そのまますぐに踵を返し、離れて行く。
どうやらこの解答に満足してくれたらしい。
別に満足させるつもりで言ってはいないけれど。
「では、またお会いしましょう」
"……あんまり会いたくはないかな"
「いえ、そう遠くない日に他のゲマトリアには会うことになるでしょう。その時に貴方が取る選択を……見守らせて頂きましょう。先生のスタンスを変える気はないのでしょう?」
"うん"
生徒の為に、大人の自分が責任を取る。
どんなに世界が悪意に塗れていたとしても決して諦めない。
全ての生徒が健やかであるように尽くし続ける。
理不尽な悪意は自分が跳ね除ける。
……たとえ自分の命が危険に晒されたとしても。
「最早先生のそれはエゴでしょう。利他的なのに、そう感じます」
"それは褒めてるの?"
嫌味だろうかと思って先生はそう聞いた。
すると、黒服はこう答えた。
「勿論、褒めています。貴方ならもしかして……ククッ」
そんな謎めいた言葉を残し、彼はすぐに闇夜へ紛れて見えなくなった。
黒服ヒロイン説がグレおじヒロイン説くらい浮上してしまった。
ヒナ辺りが嫉妬共鳴で黒服を血祭りにしそう。
待てよ、嫉妬共鳴と言う事はヒナは中指だった……?
ママしか勝たんと言って引き篭もってスナックを食べ漁る中指子方ヒナ……?
全然アリでは……!?
それはさておき、次回から新章エデン条約編が始まります。
実質的なミカ編なので一章と二章はサラッとだけ。
その間も恒常人格みたいなノリで人格ストーリーが挟まるかも。
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