没タイトル名
『友人を死なせた罪を背負って自らを悪と既定し、』
「シャーレの先生、ですか?」
「うん。噂を聞く限りだと力になってくれるかな〜って」
噂に聞くシャーレの先生。
その人になら任せられるのかな。
嘘と悪意が交差するこの場所でも……ありのままの自分で居られる人なら。
こんな私でも救ってくれるかもしれない。
そんな淡い期待を込めて、私はナギちゃんに先生を推薦した。
この学園で純粋な気持ちで居られる人なんて居ないのかもしれない。
私は今に至ってようやく『純粋』という言葉が恥だらけであると知ってしまったから。
嘘で塗りたくられた私を誰かに笑って欲しい。
道化師のように愉快な役割を演じれば、少しはこの罪悪感も薄れるかも。
ああ、でも。
本当は分かってるの。
目に映る全てが私を責め立てているような感覚。
罪悪感が波のように絶えなく襲い来る。
なんてことのないように見えるいつもの場所。
その筈なのによく観察すれば……寂寥感が押し寄せる。
失った物は取り戻せないから。
お茶会をするのにも適したテーブル。
ホストの趣味嗜好が如実に現れた紅茶とお茶菓子。
それにしてはやや多めに感じる量。
空虚に感じる味覚。
少しだけ静かになった会議。
聞こえなくなった鳥の声。
数多くの私に向けて放たれた皮肉の言葉。
もう聞くことの無い難解な言い回し。
外から見える楽しげな風景。
私がいたかもしれない登下校。
普通に親しい友人と会話ができる幸せ。
私が失ってしまった日常。
良くなる兆しの見えない関係性。
修復のできない亀裂。
巻き戻せない時間。
密かに進められる計画。
澄まし顔の生徒とヘラヘラと笑う生徒だけがいる空間。
本音を表に出せない臆病な卑怯者同士。
他人を信じることのできずにお互いを馬鹿だと思い込んでいる。
誰も指摘してくれない歪な関係性。
そして、私が考えずにはいられない人。
ここにいるべき筈の子。
小難しい話し方しかできない、病弱で皮肉屋な友人。
もう話すこともないかけがえのない人。
私が抱いているのは、本当に期待なのかな。
期待したって悪い方向に行くだけだって知っちゃった癖に。
それなら、何故先生を呼ぼうとしたのかな。
「確かに、噂に聞く先生ならば……」
小さな頃から人を揶揄うのは嫌いじゃなかった。
相手の反応を見て楽しんでいる自分も居たのを否定するつもりはないんだ。
流石に本気で怒らせたりしたなら反省もするけどね。
でも、ナギちゃんが怒っている顔も嫌いじゃないのは内緒だよ?
堅いお話ばっかり聞くのはそんなに好きじゃないかな。
楽しい事の方がやっぱり良いに決まってるし。
まあ、最近のナギちゃんはそうでもなさそうだけど……不思議だね☆
昔はあんなにお転婆だったのにね。
セイアちゃんも意外と腕白な一面もあるしね、あはは!
あはは……はは……
本当はもう気付いている癖に。お友達の変化の切っ掛けは、貴女の行いが原因だって。
「そうですね。では、補習授業部の件についてはその人に頼むとしましょう」
……ああ、うん。
分かってるよ。
私が犯した罪は消えない。
目を逸らしたくても心が訴えてくる。
決して忘れてはならない、と。
この罪悪感はきっと何処までも追ってくる。
いくら外面を取り繕っても過去は消えたりはしない。
今に背を向けて、後ろだけしか見ることを許せない。
この感情に背いてしまえば……私は本当の意味で私でなくなってしまうから。
今のナギちゃんも見ていてあまり良い気分ではない。
私のように平静を装っていても長年の付き合いから分かる。
普段とは比べ物にならないくらい心に余裕が無いんだ。
今回の頼み事の内容から分かる。
ああ、そうだね。元を辿れば私が原因だよ。
ナギちゃんは私を裏切り者候補に入れなかった。
こんな幼馴染でも、私のことを信じているんだ。
誰かに信用されるような人間じゃない。
寧ろ、悪い子。
しかし私は演じている。
明るくてちょっと軽い感じの女の子を。
それがきっと……周囲の思う「聖園ミカ」だろうから。
他人の評価なんて気にしなくていいよ。君は君の思うがままに振る舞えばいいの
これが普通の私なの。
本当の私はきっともう醜悪になってしまっているから……
臭い物に蓋をするように、都合の悪い所は見なかったことにすれば。
せめて、私の心だけは楽になれるかもしれない。
いつまでも目を逸らしては居られないよ。一度こうして視界に入ったからにはね。
それも間違いじゃないと思う。
だけど……もう、何もかも遅いんだ。
私が望んだ方向には進めなかった。
どうしようもなく拗らせて、絡まって。
取り返しが付かなくなってしまって。
その後になって、ようやくその事に気が付くだなんて。
滑稽だよね。
「うんうん! あ、ところでさ」
「何でしょう?」
「……その、さ」
いっそ、ここで口にしてみようかな。
トリニティの裏切り者は私なんだって。
そうすれば、全てを手放して楽になれるかもしれない……
貴女の罪を告白したところで友人が帰って来るわけじゃないのに?
「……ぁ」
君が真実を告げたら……きっと友達は傷付いてしまうよ。それを君は望まないでしょう?
「そうかも、しれないけど……」
それに……君の望みは誰かに秘密を伝えたところで叶わないんじゃないかな。
「ミカさん? どうかされましたか?」
「……や、何でもないよ。ちょっと声を掛けてみただけ☆」
「はぁ? やけに今日はぼーっとしてますね。前々から思ってはいましたが、ミカさんはもう少し真面目に物事を取り組んで——」
声が聞こえる。
まるで太陽みたいな暖かさを感じさせる、この世のものとは思えないくらい美しい声。
それはまだ小さくて遠い……か細いもの。
でも、私にはこれ以上なく温もりに溢れているように感じられた。
声の主の目的は分からない。
だけど、どうやら私のことをよく知っているらしい。
よく分からなくて不気味に感じる筈のに、全くそんな風に感じない。
私の望み、か。
前には何かあったような気がするけれど……
もう、心の庭に埋めてしまった。
深くに隠しておいたものを忘れてしまえたらどれだけ良いだろうか。
こんな私が何かを望むことなんて、きっと烏滸がましいことでしかないのだから。
この暖かい声が何なのかは分からない。
幻聴かとも思ったけれど、それにしては妙にハッキリとしている。
そして、周りの人には聞こえていないらしい。
「(……少しずつ近付いてきてる)」
セイアちゃんが死んだと私が耳にした時から聞こえていた。
どれだけ言い訳しても……紛れもなく私の所為だった。
その罪悪感に押し潰れそうになったその時は、もっと途切れ途切れだったんだ。
日に日に大きくなっている声は、私に何を望んでいるんだろう……?
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「アリウス分校……本当にあったんだ」
初めて知った事実に私は驚きを隠せなかった。
トリニティに通う生徒の殆どが知らないであろう学校。
歴史に埋もれて忘れ去られた筈の存在。
そんな学校を私が知っているのは、曲がりなりにもティーパーティーの代表者の1人だったから。
でなければきっと知ろうともしなかっただろうね。
学業にそこまで専念しているわけでもないし。
ま、赤点を取らない程度の成績は維持してるけどね。
「アリウスと仲良く……できるかな?」
昔は仲良くしてたんだし、今更怨恨なんて残っているのかな?
記録に僅かな名前を残すだけで、殆どの人から忘れられてる。
私としては正直特に何の感情も無いかな。
——もし向こうが望むんだったら和解できるかも。
そう思って発言したけれど、セイアちゃんもナギちゃんも反対しちゃった。
いつも通り呆れた風に露骨にため息を吐かれた。
これ見よがしに、私は君を馬鹿にしていると言わんばかりの表情で。
「君は本当に……はぁ、少しでも考慮したかのかい? 大体、君はいつも——」
ほんと、どうしていつも上手く行かないんだろうね。
散々と考えなしだってことを遠回しに非難してくるセイアちゃん。
素直に「君は馬鹿だね」と一言で済む内容の癖に。
なんで無駄に会話を引き伸ばすんだろうね。
話が長いって文句を言っても今度は全く別の方向から非難を飛ばしてくるだけ。
私はそれを知ってるからヤケになって会議を進めようとはしなかった。
元々そうなったらいいな、程度の提案だったしね。
まあ、勿論ムカつきはしたよ。
毎度のように難解な言い回しで色々言われてるし。
私だって傷付いちゃうもんね。
だから、ちょっとくらい痛い目に遭えばいいと思った。
いつも馬鹿にしてくるお返しくらいのつもりで。
そんなつもりは無かったの。
「白洲アズサ……転校の手続きは私がやっておくね☆」
ナギちゃんにもバレないようにアリウスの生徒をトリニティに転入させた。
白い髪の可愛らしい子だった。
「百合園セイアの居場所? えっとね——」
精々、病院送りになるとか、そんなところだと考えていた。
大事にはならないだろうと楽観していた。
考え無しだった私の所為で彼女にはもう会えない。
「死亡って……えっ……なん、で」
全ては私の責任だった。
この責任を押し付ける事はできない。
私が背負わなければならない罪。
裏切り者として私はこれからずっと生きて行く。
後戻りができないなら……せめて、やり切らなければならない。
エデン条約の締結を阻止し、手を組んだアリウスと共にゲヘナを潰す。
そうだ、そうしなければ私が犯した罪は無意味になってしまうから。
これから突き通した嘘と背負った罪を抱えたまま、私は前へと進む。
鈍くなった足で一歩ずつ。
歩む度に罪の意識が茨となって私の身体を傷付ける。
だけど、止まることは許されないの。
血が流れようが、痛くて動けないと嘆くことはできない。
私の所為で死んだ友達を思えば。
きっと彼女は私なんかよりも余程痛かっただろうから。
心が引き裂かれたとしても……私は紛れもない悪役だから。
悪役が途中で投げ出すなんて、あり得ないからね。
そこで物語を終わらせることはできないんだ。
「……私が、悪役なら」
物語には所謂お約束ってものがあるよね。
正義のヒーローが囚われたヒロインを助ける為に悪役を打ち倒す。
そんなよくある使い古された筋書きが。
物語は現実とは違うと言うけれど……私はそうでもないと思ってるんだ。
だって、
それなら慈悲の心にあふれた主人公が居ないと駄目だよね☆
居ないと何も始まらないし。
もしそう仮定したらさ……誰が主人公になるんだろう?
ふと考えてみて、すぐに答えが出た。
案外簡単な答えだったよね。
私のような奴でもすぐに分かっちゃうくらいには。
「ナギちゃんによると……ふーん、そこが補習授業部の合宿先ね」
ちょちょいと調べてあの人が居る場所を探し出した。
もう使われていない校舎の一つだね。
あの中には私が転入手続きをしたアズサちゃんも居る筈。
ちょっと気になるし、見に行ってみようかな。
ついでに色々と吹き込んじゃおっと。
ナギちゃんと一緒に疑心暗鬼になってもらえれば好都合だし。
それに、少しくらいこうして動かなくちゃ……
悪役として、失格じゃんね?
病んでいるミカはスバルとかと一緒で凄い魅力的ですよね。
ゲームでの性能の高さはきっと数多くの曇らせを経て手に入れたものなんですよ臨戦おじさんとかと同じで。
これは私からの祝福で、愛なのです。愛、愛ですよモエ……
私の心の中の仙人様もそうおっしゃっておられる。
勿論それはそれでこれはこれなので明るいミカも好きですが。
水着ミカ強過ぎん?
リンバスとブルアカのプレイ経験はありますか?
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リンバスだけプレイしている
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ブルアカだけプレイしている
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両方プレイしている
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両方プレイしたことがない
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プロムンの過去作はプレイしたことがある