透き通った世界に鏡を通して   作:紙吹雪

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今回はキヴォトスの色欲大罪ことハナコの視点です。
毎度視点が変わってしまい読みにくいかもしれませんごめんなさい。
ブルアカってカルメンフィルターを通すと魅力的な子が多くて……はい。
スバル? ああ勿論刺さったし引いたし天井だったよ




ハナコ視点 『私の大切な居場所』

 

 

 補習授業部の合宿は思いの外楽しくて。

 こんな幸せな時間がずっと続けばいいのにと、考えてしまう時があります。

 

 私に大切な友人ができるなんて思わなかったから。

 だからこそ、余計に失いたくないと感じてしまうのかもしれませんね。

 既に諦めかけていたのに思いがけず巡り会えた、裏表無く話せる友人ですから。

 

 ヒフミちゃんも、コハルちゃんも、アズサちゃんも……そして、先生も。

 全員、かけがえのない存在になりました。

 決して失いたくない私の居場所。

 

 以前までの私なら信じられなかったでしょうね。

 

 私にとって、ここは……トリニティ総合学園はまさに監獄でしかありませんでした。

 表面的にはお淑やかな顔をしていながら、その実嘘と欺瞞に満ちている場所。

 何処も注意深く見てみれば己の欲望にしか目のない人達ばかり。

 

 トリニティの偉い人達が私にかける言葉は全て私の為の言葉ではなくて。

 自分達の利益だけしか見据えずに、私の才能だけを自在に使うことを強いていました。

 私の望みなんて二の次で……

 

 

 

 だから、私はこの学園を去りたいと望んでいました。

 

 

 

 この場所に居たところで、私には無意味ですから。

 虚しさだけが募っていくくらいなら……いっそ、目を背けて逃げればいい。

 それくらいしか、私に取れる手段はありませんでした。

 

 今回の追試試験でわざと落第点を取れば近いうちに叶う。

 何の疑問もなくそう思っていました。

 ですが……現実はそうも行かなかったらしくて。

 

 ヒフミちゃんと先生から聞いた言葉に、私は思わず目を瞑りました。

 この補習授業部が作られた真の目的。

 シャーレの権限を利用した仕組み。

 そして……全員が合格しなければ、落第になること。

 

 少し考えれば誰が何の為にこんな事を企てたのかは分かりました。

 ティーパーティーの現ホスト、桐藤ナギサ。

 エデン条約の為に不安要素を取り除く。

 政治に長けた彼女ならやりかねないでしょうね。

 

 ……人を信じられないのはお互い様でしょうか。

 今はもう、違いますが。

 

 ヒフミちゃんにも、今後の試験は最低限迷惑をかけないようにすると約束しました。

 本当の事を知ってしまったからには……流石に、今のままでは顔負けができません。

 いえ、真摯に頑張っている皆の姿を見た時点でそう思わなければいけませんでした。

 

 そこに嘘なんて……ある筈がないのに。

 

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 

 

 この合宿中、振り返ってみれば色々なことがありましたね。

 

 合宿の開始当日では校舎を掃除して。

 突然の雨で洗濯物が濡れた日は、皆で水着パーティーを開きました。

 ふふ、その後は夜の街へと繰り出したりもしましたね。

 ハスミさんと会ったり、ゲヘナの人を捕まえようとしたり。

 

 どれも私にとっては大切な思い出です。

 

 

 そして、補習授業部の第二次特別学力試験。

 

 私達の目的であった試験は、黒い手の介入により全員が試験を受けられなかったという結末となりました。

 そもそも開催場所も滅茶苦茶でしたけれどね。

 ゲヘナの方が協力してくださらなければ、辿り着くことすらままならなかったでしょう。

 

 コハルちゃんは心が折れかけて、ヒフミちゃんも困り果てていて。

 アズサちゃんも難しい顔をしていて、先生も苦しそうに顔を歪めていました。

 この状況をどうにかしなければ……皆が退学となってしまいますから。

 

 

 

 ——気になるのは、やはりアズサちゃんですね。

 

 

 

 彼女について、まだ分かっていないことがあります。

 夜な夜な寝室を抜け出して「誰か」と会話をしているのを私は知っています。

 密談の相手について、内に秘めた目的について……知らなければならないでしょう。

 

 しかし、私からそれを聞いてしまうのは憚られました。

 私は自分で思っているよりも、臆病なのかもしれませんね。

 この補習授業部という我々の関係を崩したくないと感じてしまっている。

 手放したくないんです……この居場所を。

 

 ですから、ずっと聞き出せずに居たんです。

 第三次特別学力試験の前日になっても。

 

 でも、アズサちゃんは自分から事情を話してくれました。

 

 彼女は自分はアリウスの出身だと……そう語りました。

 ここでその名前が出てきたのは流石に驚きました。

 現在も実在しているのは初耳でしたし。

 

 そして、その目的についても包み隠さずに話してくれました。

 

 ナギサさんのヘイローの破壊、ですか。

 アリウスがトリニティを憎んでいるのは分かっていましたが、それ程とは。

 歴史の中に埋もれていたとは思えないくらい。

 

 それだけを聞けば、アズサちゃんはトリニティに害をなす者ですね。

 『トリニティの裏切り者』と自分から名乗ってるくらいです。

 本当なら即座に取り押さえられて然るべしなのでしょう。

 ですが、アズサちゃんはこうして計画を私達に伝えた。

 

 ……アズサちゃんがこうして話してくださったのですから。

 私もしっかり話すべきでしょうね。

 この期に及んで「誰か」の話としてしまいましたけど。

 

 

 

 これで、秘密を隠しているのは()()()()ですね。

 

 

 

「ふふっ……でしたら、次は先生の番ではないでしょうか?」

 

 私がそう言うと、先生は驚いた様子で私のことを見ました。

 大人なだけあってそれなりに感情を隠すのが上手い方でしたが……

 それなりの間一緒に過ごして来ましたので。

 少しは分かっているつもりです。

 

 先生が言うにはその鏡に関する噂は紛れもない真実で。

 原因は不明ですが、生徒に出会うとその生徒が異なる可能性の辿った世界を覗くことができる。

 ここではない異なる世界の技術である、と。

 真剣な口調でそうおっしゃいました。

 

 どうも、先生の持っている端末から窓口になっているみたいで……

 失踪した生徒会長が残した物だとお聞きしましたが、分からないことが多過ぎますね。

 不思議な技術が使われている、くらいの認識でしょうか。

 情報が少な過ぎて、考えても分からないことしか分かりませんね。

 

 先生がずっと悩んでいるように見えたのはこれが原因のようです。

 勝手に生徒の内面を覗き見ているようで気が引ける、と。

 あら……だからそんなに気不味そうに話していたのですね。

 

「も、もしかして、私のことも……!? い、いくら先生でもエッチなのは駄目! 死刑!」

 

"だ、大丈夫! そういう所は見てないから!"

 

 コハルちゃんはいつも通りですね。

 騒がしくなっていく様子を見ていると安心します。

 ……そう言う意味では日常の象徴とも言えるかもしれませんね。

 

 ふふ、コハルちゃんは否定しそうですけどね。

 私にとっては彼女と過ごす時間の全てが愛おしいものです。

 きっと、心の奥ではコハルちゃんも同じ気持ちでしょう。

 

「本当でしょうね!?」

「あうぅ……」

「あらあら、コハルちゃんったら……」

 

 生徒に対しては誠実である先生は、素直に誰の可能性を覗き見たのかを白状しました。

 私とコハルちゃんですね。

 ヒフミちゃんとアズサちゃんは見ていないそうです。

 ふむ……二人がそうなのは何か理由があるのでしょうか?

 

"私が見たそのコハルはトリニティ自警団に所属してたね。何と言うか……声が凄く大きくて元気いっぱいだったよ"

 

「うーん……それは何と言うか、今とあんまり変わっていないのではないのでしょうか?」

「そ、それはあんたがえっちな発言を繰り返すからでしょ!?」

 

 ふふ、別の世界のコハルちゃんも元気そうで良かったです。

 たとえ可能性の世界であっても、友達には元気で居て欲しいですから。

 ヒフミちゃんやアズサちゃんも同じ気持ちでしょう。

 

 しかし、先生は会話には入らずに悩ましい表情をしていて。

 

 憂いの込められた視線は真っ直ぐに私へと向けられています。

 そのような表情をなされる理由は……ああ。

 鏡という物は、そういう事なのですね。

 

 知る機会が無いにも関わらずに得られる知識。

 鏡の向こうの世界を覗く事によってかかる精神的な負荷。

 心に深い傷を与えてしまいかねないような危険な代物。

 これを最初に開発した人がどんな気持ちだったにしろ……ここにあるのはそういう技術なのですね。

 

 私は薄く目を閉じ、静かに先生が話し掛けてくれるのを待ちました。

 

"……ハナコ"

 

「はい、何でしょうか?」

 

 私の耳元に囁くような小さな声で先生は問いかけました。

 他の生徒には聞こえないように、という配慮でしょう。

 優しい先生らしいです。

 

 ……ちょっぴりくすぐったくて少し恥ずかしいですね。

 

 

 

"一つだけ聞くよ。ハナコは……この学園が嫌い?"

 

 

 

 それは、私にとってはどうしても答え難い問いでした。

 

 

 

 ……色々と詭弁を弄した所で結論は変わらないでしょうね。

 言いたい事を全て言ってしまうととても長くなっちゃいそうで。

 ですが隠し事は無しだと、先程自分でそう言ってしまいましたね。

 だから私は率直に答える事にしました。

 

 さっきから恥ずかしくて仕方がないですが……

 それでも私は胸を張って言いたかったんです。

 だって——

 

 

 

 

 

 

 ——この気持ちには、嘘を吐きたくなかったから。

 

 

 

 

 

 

「まだ好き、とは言えませんが……悪くない場所もあるんだって、最近ようやく思えるようになりました。先生や、ヒフミちゃん達のお陰です」

 

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 

 

 少しだけ悩んだ先生は、私が居る鏡の世界について見た事や聞いた事を話してくれました。

 先生から聞いた世界の私の話には、現在の私達を取り囲む状況に関連する情報も含まれていたのです。

 

 

 

 そう……本当の『トリニティの裏切り者』の正体について。

 

 

 

 まあ、皆の話を聞いて行けばおおよそ予想は付いていましたが。

 それでも答え合わせができたので、決して無駄ではありませんでした。

 やはり……あの人がそうなのですね。

 

 先生が見せてくれた異なる可能性を生きた『浦和ハナコ』。

 考えてみれば、確かに私がその道を歩むのもあり得ないわけではないでしょう。

 実際、似たようなことを全く考えなかったわけではありませんから。

 そう言う意味では共感する所もありますし。

 

 ですが、心地の良い場所ができたのは他でもないこの世界に生きる私ですから。

 日常の中で見つけたこの奇跡を大切にしていれば良い……それだけの話です。

 鏡が見せる世界は、あくまで自らの可能性なのですから。

 

 ……と、それで片付けてしまえたら良かったのですが。

 それでも、考えずにはいられませんね。

 これも人の性なのかも。

 

 あの世界の私は、味方が一人も居なくなったとしてもトリニティを取ってみせるつもりなのでしょう。

 たとえ望みを在学中に叶えられなかったとしても……少しでも学園がより良くなるように。

 その願いは真摯なものに違いはありません。

 

 ……今の私には眩しく見えてしまいそうです。

 私も、もし叶うのならそのようなトリニティを見てみたいと思います。

 そんな楽園のような場所が、本当に実現するのならですが。

 

 

 

 『不可能な証明』

 

 

 

 ふと、セイアちゃんの言葉が脳裏を過ぎました。

 これは最初から不可能で無駄な行為かもしれません。

 結果的には何の成果も得られずに虚しさだけが募るかもしれません。

 

 ですが……それと同時に、アズサちゃんの言葉も思い浮かびます。

 

 

 

 『全てが無駄だったとしても、それは諦める理由にはならない』

 

 

 

 ……今はやるべき事をやりましょうか。

 私達の立つ瀬を守らないといけませんから。

 そして、それは私達が愛する日常を守る為でもあります。

 

 愛しい友人達の為になら、私は幾らでも力が湧いてきます。

 快く信じ任せられる相手がいるのは……こんなにも頼りになるのですね。

 ふふ、初めての感覚ですね。

 

 思い出したくもない過去を振り払えたような心地でした。

 過去は消えませんが……未来はこれから作ることができますからね。

 ですので、今の補習授業部の雰囲気はとても気に入っているんです。

 私が……思う存分息を吸っていられる居場所だから。

 

 絶対に手放したくありません。

 私達が愛するこの日常を。

 ようやくできた私の居場所を。

 

 その為なら、私はいくらでも知恵を絞って全力を尽くしましょう。

 

 ナギサさんの疑心暗鬼は彼女に全ての非があるわけではないでしょう。

 今までにしてやられた妨害工作の分も水に流します。

 恨みを重ねたとして……きっと、その後に待っているのは地獄のような日々。

 それも、抜け出す事のできない奈落の穴の中に閉じ込められるのも同然の。

 

 トリニティでは陰湿なやり口が繰り返されて来ました。

 私なんかではその全容を把握できないくらいに。

 この学園が生まれた時からずっと……長い間、積もり切った感情。

 それらの清算をいつか為さねばならないのでしょうね。

 

 何処かで断ち切らないといけない……私も、頭では理解していますよ。

 

 

 

 

 

 

 ですが、私の友達を悩ませた上に傷付けたのは……そう簡単には許せなさそうです。

 

 ねぇ、悪い子猫ちゃん?

 

 

 

 

 

 

「ヒフミちゃんが貴方にとって本当に大切な方であるのなら……ずっと握りしめていられるように、手元に残しておくものではありませんか?」

 

 






ハナコにとって補習授業部はマジ切だよ!

「……私・大・居」

もう〜そう略すんじゃないってば〜

ハナコの人格ストーリーは後日ちゃんと投稿予定です。

※原作と全く同じ流れなのでサクッとカットされますが、この後無事にナギサの脳は破壊されました。
やはりナギサはクローマーだった……?


リンバスとブルアカのプレイ経験はありますか?

  • リンバスだけプレイしている
  • ブルアカだけプレイしている
  • 両方プレイしている
  • 両方プレイしたことがない
  • プロムンの過去作はプレイしたことがある
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