ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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グラブルERが面白くて草。
一時間だけリンクするつもりが、数時間経過しちゃってる。

 そんな訳で初投稿です。


物語138

 

 

 

 

「まさか、こんな事になるなんてね」

 

 眼下にて繰り広げられている殺し合い。ベルとアステリオスの【冒険(戦い)】を応援している民衆を前に神ヘルメスは複雑な心境を抱きながら苦笑いを浮かべる。

 

「ウラノスが必死に隠してきた異端児(ゼノス)。彼等を利用してベル君を一人前の英雄に仕立て上げようかなと画策したこともあったけど……まさか、前提から崩されていたとは」

 

 数年前からギルドの不可解な動きに着目していたヘルメスは、神特有の執拗な執着から異端児の存在を突き止め、人知れずベルに対する英雄への養分として計画を企てていた。

 

 しかし、そんな異端児達をまさかのヘスティア・ファミリアが保護、友好関係を築いていたと知った時は、もうこの件には関われない事をヘルメスは悟った。

 

 このままでは最後の英雄は誕生しない。下界の救済は成し遂げられないと、一時は沈んでいたヘルメスだが、結果的にベルの存在がオラリオで認められつつある事に、一抹の不満はあれど受け入れた。

 

「ヘルメス様、いい加減ベル・クラネルに執着するのは止めましょう。次は本当に送還()されますよ」

 

 後ろに控えている【万能者(ペルセウス)】ことアスフィ・アル・アンドロメダ。彼女は額に大量の大粒の汗を流しながら主神の態度にヒヤヒヤしていた。

 

 ヘスティア・ファミリアには24階層の食糧庫(パントリー)にて、全滅すらあり得た状況の中助けて貰った恩義がある。

 

 唯でさえその時の礼もマトモに返せていないのに、その恩のある派閥の眷族であるベル・クラネル(リトル・ルーキー)にちょっかいをかける主神に、アスフィは常日頃から胃痛を抱えていた。

 

 もし今回の件に関わりまたベル・クラネルにちょっかいを掛けようと思案しているのがバレたら、あの【静寂】に今度こそ主神ごと派閥は物理的に解体される。

 

 一歩間違えれば闇討ちだってされかねない状況。いや、今この瞬間だってどうなるか分からないのだ。

 

 いい加減ベル・クラネルに拘るのは止めろと必死に止めようとするアスフィだが、常日頃から飄々としているヘルメスはやはりニヘラと笑うだけだった。

 

「でもなぁ、ベル君のファンである俺としてはやはりお節介の一つや二つしてやるのも吝かでは無い訳で……」

 

「その要らぬお節介の所為で、片方の玉を失ったのもう忘れたのですか!?」

 

「ちょ、アスフィちゃん人のトラウマほじくり返すのヤメテ?」

 

 以前、18階層にて【静寂】によりヘルメスの大事な玉の一つは割れてしまい、現在のヘルメスは一星龍状態。

 

 元ヘラ・ファミリアの【静寂】にしては優しい罰の方だとアスフィは思う。ぶっちゃけ嘗ての最恐達(ヘラ・ファミリア)ならば、もっと恐ろしい目に会わせたこともできたのではないだろうか。

 

 そうはせず、物理的な痛みだけで済ませてくれたあの時の【静寂】は、やはり一人の人間の母親となった事で少しばかり丸くなったのだろう。

 

 であれば、そんな彼女の温情に背かない為にもベル・クラネルには必要最低限しか関わらず、ヘスティア・ファミリアとも同様に距離を置く、というのがヘルメス・ファミリアの総意であった。

 

 だというのに……。

 

「もう、帰りましょうヘルメス様! ベル・クラネルの事はヘスティア・ファミリアに一任しましょう! 私達が関わらずとも、彼は立派な英雄候補になれますよ!」

 

「英雄候補じゃダメなんだ! ベル君には下界を救う英雄、最後の英雄(ラスト・ヒーロー)になって貰わなきゃいけないんだい!!」

 

 本拠地に帰ろうと服の裾を掴むアスフィだが、推しの活躍を最後まで見守りたいヘルメスは屋根に齧り付いて抵抗する。

 

 そんな主神と眷族を灰の魔女が近くの物陰から見ている事を、二人は最後まで気付く事はなかった。

 

「………ヘラの奴を連れてくるか、一考の余地がありそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────記憶の奥底に眠るのは、遥か遠い古びた記録。ノイズにまみれたその中でアステリオスは一人の英雄と殺し合いをしていた。

 

 雷光を身に纏い、自身へのダメージを厭わずに駆け抜けるその男は、全身を蝕む痛みに耐え、それでも気丈に笑って見せた。

 

 何度打ち払っても立ち上がり、何度吹き飛ばしても向かってくる。最終的には愛する女と手を取り合い、見事に己を打ち取って見せた。

 

『今回は叶わなかったが……もし、“次”があるのなら、その時こそ一対一で決着を付けよう。我が好敵手よ』

 

 そう笑って見送る白髪の英雄に、─────だった己も笑って死を受け入れた。

 

 次こそは対等な決着を。

 

 そして二回目。白い炎を身に纏い、モンスターを圧倒する冒険者を見て“気”というモノを学んだ己は、モンスターとしての本能に従うまま彼と出会い、戦った。

 

 見間違いかと思った。他人の空似でもしかしたら別人かもしれない、そう思っていた白髪の少年は、紅い炎を身に纏い、白い炎を纏う己を正面から打ち倒した。

 

 確信した。あぁ、彼こそが“彼”なのだと。

 

 そして現在()、“彼”は多くの声援を受けて自分と切り結んでいる。

 

 あの時とは立場も、目的も、何もかもが違うのに、今この瞬間は………まるで、あの時の続きをしている様だった。

 

 雷光を纏う“彼”とは異なり、今の“彼”は紅い炎を身に纏い、己に勝とうと抗っている。

 

 嘗ての“彼”は真っ向から切り結んで来たが、今の“彼”は二振りの短剣で此方の剣激を捌き、受け流している。

 

 戦い方も動きもまるで違う。けれど、根底にある想いだけは何一つ変わらなかった。

 

 目の前にいるのは敵だ。己の全てを賭して、全霊を以て打ち倒したいと願う相手。

 

 互いにあるのは目の前の敵に勝ちたいと願う欲求のみ。そこに怒りや憎しみはなく、悪意も敵意すらない。

 

 超えたい。互いの心の奥底で願うのは純真たる勝利のみ。

 

 何故なら、目の前にいるのは好敵手。互いが己の全てを賭けてぶつかり、超えたいと願う想い人。

 

 あぁそうだ。お前こそが我が好敵手!!

 

 己の一撃を乗り越える度に強くなり、今この瞬間にも飛躍していく。己を乗り越えんと、己に勝利したいが為に、無我夢中で挑んでくる白髪の少年にアステリオスは笑みを深めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 振り抜かれる戦斧、迫り来る具現化した死を前に、ベル・クラネルは一切臆すこと無く、紙一重で首もと目掛けて飛んできた刃を掻い潜る。

 

 一瞬でも反応と判断が遅れば死は免れない緊張の中、ベル・クラネルは自分でも不思議な位に集中出来ている自分に気付く。

 

 どうして、自分は彼と戦えているのだろうか。本来であれば相手にもされない、マトモに戦えば負けることは確定しているのに、どうして自分は目の前の猛牛(ミノタウロス)と戦っているのだろうか?

 

 理由は───きっと単純。自分が異端児との関係を誤魔化す為とか、客観的に見て色々と理屈や建前を言うだろうが、心の内にあるのは一つだけだった。

 

 “勝ちたい”

 

 目の前のこの人に、自分と戦う為に前世からの縁を通じて自分の前に現れた彼に勝ちたいが為。

 

 嬉しかった。本来であれば歯牙にも掛けない力の差があるにも関わらず、自分の為に目の前まで来てくれた彼───アステリオス。

 

 そんな彼と全力で戦う内に、ベル・クラネルの裡にある欲求が芽生えた。

 

 目の前のモンスター(この人)に勝ちたい。この時、ベル・クラネルの願う想いはただそれだけ。

 

 勝ちたい。勝ちたい。勝ちたい。勝ちたい!

 

 戦斧が振り抜かれる度に寿命が減る。ギリギリの中の更に極限、全神経を集中させる中、ベルは笑った。

 

 決着は、近い。

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 耐えきれなかったのは、武器の方だった。幾重も切り結び、ギリギリの瀬戸際でアステリオスの猛攻を凌いでいたベルのもう一つの短刀である【牛若丸】は、己の無力さを嘆く余地無く、呆気なく砕け散った。

 

 それはヴェルフが自分に打ってくれた短刀で、材料となったのはベルの最初の試練として立ち塞がった強化種のミノタウロス。

 

 そのドロップアイテムであるミノタウロスの角で作られた短刀が、意趣返しのように本人に砕かれてしまう。

 

 自分の為に造ってくれた短刀(ナイフ)を壊してしまった事に一瞬だけ申し訳なく思うベルだが、実質これで手数は減らされた。

 

 様々な要因で成り立っていた筈の均衡が崩れた。砕けた短刀代わりに魔法で凌ぐも、アステリオスという強大な怪物相手には牽制にもならない。

 

 どうする? 刹那にも満たない時間の中でベルが思案していると……突如、ベルとアステリオスの間に大剣が投げ込まれる。

 

「使いこなして見せろ」

 

 誰が? そう不思議に思うのも束の間、アステリオスが動き出す前に身体を前へと動かしたベルは、アステリオスが手に取るよりも早く、大剣の柄へと手を伸ばす。

 

 一瞬の交差、その間に大剣をつかみ取ったベルはすれ違いざまにアステリオスへ一閃。次の瞬間、アステリオスの胸元から僅かだが鮮血が舞った。

 

 どよめく民衆、息を呑む冒険者達。アステリオスという遥か格上の怪物相手に初めて一太刀浴びせたベルに、誰もが驚き目を見開いた。

 

 単なる武器の性能だけじゃない。振り抜かれたその一閃は、幼い頃より最強の叔父の手によって受け継がれた───【暴食】の勲等の証だった。

 

 大剣を投げ渡しておきながら、【猛者(おうじゃ)】は笑う。

 

「それでこそだ」

 

 しかし、猛牛は止まらない。傷を刻まれてなお歓喜に打ち震え、オッタル同様にそれでこそだと息を巻く。

 

(そうだ。これだ、こんな戦いをしたかった!!)

 

 繰り出される己の一撃を乗り越え、次の瞬間には飛躍する好敵手(ベル)。であれば、己もまた飛躍するべきだと、アステリオスは駆け抜ける。

 

 その膂力を活かし、Lv.8相当の身体能力を惜しみ無く見せつけてベルを翻弄する。山勘で六連射のファイア・ボルトを放つが、当然のごとく当たらない。

 

 そこにあるのは穴だらけとなった壁があるだけ。見失った事に焦るベルだが、研ぎ澄まされた五感と気による探知が、アステリオスが自分の背後にいることを教えてくれる。

 

 振り向き、大剣を盾代わりにするベルだが、振り抜かれるアステリオスの振るう戦斧に抗える筈もなく、ベルは壁へと叩き付けられる。

 

「が、は……!」

 

 勝てない。このままでは、自分は負ける。

 

 痛みと衝撃で混濁する意識を何とか繋ぎ止めたベルは、迫り来るアステリオスを前にして自分の勝てる可能性をかき集める。

 

 今の自分では、どうあってもアステリオスには勝てない。界王拳の限界も差し迫り、魔法を打つ精神力もいつ尽きるか分からない。

 

 アステリオスという強大な壁を前に、ベルの手にしている武器はどれも小さくて頼りない。

 

 なら、全てをかき集めるまで。

 

「グォォォォッ!!」

 

 雄叫びを上げて振り抜くアステリオスの戦斧を、ベルは敢えて受け止める。

 

 瞬間、ベルは自身が背凭れにしていた時計塔ごと吹き飛び、宙を舞った。

 

 誰もが、ベルの敗北を予見した。

 

 誰もが、ベルの終わりを確信した。

 

 あのアステリオス(怪物)を相手に良く戦ったと冒険者の誰もが称賛の激励を送る中。

 

「バァカ、ウチのベルがこの程度で終わるわけ無いだろうが」

 

 ベジットだけは、不敵な笑みを浮かべてヘスティア・ファミリアの眷族に激を飛ばす。

 

「ベルゥッ!! 此処が正念場だぞォォッ!!」

 

 立ち上がり、声を張り上げる。そんなベジットに誰もが視線を向ける中………それは鳴った。

 

“……ォォオオオンッ”

 

「っ! これは……」

 

“ゴォォォ……ンッ”

 

「大鐘楼の……おと?」

 

 オラリオの空に鳴り響く大鐘楼(グランドベル)の音。新たな時代の到来を予見させるその音は、奇しくも義母()であるアルフィアの鐘の音と酷似していた。

 

「やれやれ、騒々しい音色だ」

 

 呆れたように呟く【静寂】だが、その顔には薄く笑みが浮かんでいて、どこか誇らしげだった。

 

「ありったけをぶつけてやる。これ迄の僕の全てをつぎ込んで……!」

 

 【英雄願望(アルゴノゥト)】。

 

 アステリオスという超えたい相手を前にして限界解除(リミットオフ)へ至った想いが、ベルを更なる領域へと底上げさせる。

 

 だが、足りない。目の前の好敵手に……アステリオスを超えるにはこれだけでは足りない。

 

「界王拳……10倍だ

 

 それは、限界を超えた限界。今のベルには扱えきれない力の奔流。

 

 内側から噴き出してくる力の激流は、ベルの肉体を内側から破壊する濁流となって押し寄せる。この状態を維持すれば、間違いなく自分は再起不能になるだろう。

 

 抑える必要はない。ただこの一瞬、アステリオスにぶつけるこの刹那だけ持たせればそれで良い。

 

 【英雄願望】で光輝く刀身を更に紅い気の炎で纏わせる。オラリオに来てこれ迄培ってきた己の全てを出し尽くす勢いで構えるベルに、アステリオスは嘗ての好敵手(アルゴノゥト)を幻視した。

 

(嗚呼、それでこそ、それでこそだ我が好敵手!!)

 

 自分と最後の打ち合い。己の全てを出すつもりで迎え撃とうとするベルに、アステリオスは歓喜の雄叫びを上げる。

 

「グオオオオオオォォォォォォッ!!!!」

 

 それはまるで、噴火した火山のような気の放出だった。オラリオ全体を震撼させる力の奔流は民衆だけでなくアイズやフィン、オッタル達でさえも驚愕に目を見開く程だった。

 

 まるで嘗ての三大クエストの一角(ベヒーモス)。いや、或いはそれ以上……??? 見物している神々さえも仰天しているなか。

 

「あっ、やっべ……」

 

 とある一人の大馬鹿野郎は、やっちまったと顔を青くさせていた。

 

 そんな誰しもが青ざめるなか、アステリオスは身構える。

 

 突撃体勢。それは、ベジットが自分かその例の宿敵以外に使うなと珍しく厳命してきたアステリオスの最終攻撃体勢。

 

 相撲形式のぶつかり稽古で培われ、磨き上げてきたアステリオスの究極の一撃。

 

 一瞬の静寂。アステリオスが、ベルが、臨界点にまで高めた一撃をそれぞれ一点に収束させた………瞬間。

 

 ベルが駆け抜けて剣を振り抜くのと、アステリオスが大地を踏み抜くのは同時だった。

 

 百M(メドル)はあった距離を互いの力で一瞬でゼロにし、迫り来る雷光(アステリオス)突撃(チャージ)を迎え撃つ。

 

 衝撃がオラリオを震わせ、大気すら震撼させていく。

 

 音も光も消えていく中、二人が見据えるのはお互いの好敵手のみ。

 

(僕が勝つッ!!)

 

(勝つのは俺だッ!!)

 

 互いの全てを乗せた一撃。永遠にも近いその一瞬は、砕けた大剣が宙を舞うことで、勝敗は決した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、どうにか乗り切ったか」

 

 静まり返るオラリオ。一足先にベルの様子を見て、一先ず無事を確認したベジットはバベル前の噴水の縁に腰掛けていた。

 

「ベルも今回の件で殻も破れた様だし、今後は下層に向けて本格的に遠征へのスケジュールを組んでも良さそうだな」

 

 ベルとアステリオスの激突は、アステリオスに軍配が挙がる結果となった。互いに全霊を超えた全霊、文字通り全てを出しきった衝突は、惜しくもベルの敗北でアステリオスの勝利となった。

 

 今回の勝利で1勝1敗となった事で、決着は次の機会に持ち越しとなり、アステリオスはベルを置いてダンジョンへ戻っていった。

 

 ダンジョンへ続く蓋、其処に叩き付けられて暫く身動きが取れなくなったベルは、敗北したことへの悔しさで涙を流していた。

 

 きっとベルはこの悔しさをバネに今後更に強くなっていく事だろう。もしかしたら近い内に、本当にリリルカ辺りには追い付くのでは無いだろうか?

 

 そんな未来にワクワクしていると、近くから慣れ親しんだ声が掛けられる。

 

「やぁベジット君、此処にいたのかい」

 

「よぉヘスティア。ベルなら大丈夫だぜ、ダメージは深刻だが、あの様子なら少ししたら自力で戻って来れるだろ」

 

 本人も“仙豆擬き”を持ってきていたみたいだし、その内戻って来るだろう。

 

「隣、失礼するぜ」

 

 そう言って隣へと座るヘスティア。心なしか、何時もより距離が近いような気がする。

 

「途中からだけど見ていたよ。ベル君、随分と強くなってたね」

 

「まだまだこれからさ。アステリオスっていうライバルは今のベルよりずっと強ェ、アイツに勝つにはもっともっと修行が必要だ」

 

 オラリオでは滅多にお目にかかれない真性の冒険譚、これは暫くオラリオはお祭り騒ぎだろうなと、呆れる半面ベジットは何処か楽しそうに笑う。

 

 そんなベジットをヘスティアは慈しみの笑みを浮かべたまま……。

 

「……ねぇ、ベジットくん。君さ、もしかしてベル君の事を羨んでない?」

 

 ふと、何となくといった様子で、ヘスティアは訊ねた。

 

 微笑みながらもジッと見てくる彼女、そんな主神に嘘が通せる筈のベジットは、素直に自分の心境を吐露する。

 

「………まぁ、俺は天下無敵のベジット様だからな。好敵手なんていねぇし、必要ねぇよ。……ただ」

 

「ただ?」

 

「ライバル関係って、格好いいよな。そう思う自分がいる」

 

 ベジットの言葉にヘスティアはただ「そっか」と言うだけに終わる。

 

「さて、そろそろベルの奴を迎えに行くとするか。まだベソベソ泣いてたら指差して笑ってやるんだ」

 

「もう、そんな事をしちゃダメだよ!」

 

 しんみりしとした空気を変えるためにワザと揶揄するベジットだが……。

 

「安心して下さい。ベル・クラネルは無事、此方で保護いたしました」

 

 その声にビクリと背中を震わせる。

 

 そう言えば、彼の医神にも話は通したんだよな? であれば、その派閥を代表とする眷族にも、当然ながら伝わっている訳で……。

 

 ガタガタと震えながら、ギギギと錆び付いたブリキの人形のように後ろへ振り返ると、そこには。

 

「さぁ、次はあなたの番ですよベジットさん。詳しくお話………聞かせてくれますよね?」

 

「あ、あぁ、あぁぁぁ……!」

 

 薄く細めた瞼から、微かな瞳がベジットを射貫く。

 

 白と黒に反転した眼差し、まるで蛇に睨まれた蛙の如く動けなくなったベジットはこの後、アステリオスに敗北したベルがドン引きする程にベソかくのだが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 





Q.アステリオスの突撃、どれくらい強い?
A.陸の王者とどつきあえる位。

Q.ベル君、残光打てないの?
A.最初は打たせるつもりだったけど、そうなるとつられてアステリオス君が黒閃してくる可能性があったので惜しくも断念。

次こそは!


次回、落とした物、無くした物。

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