メタファー:リファンタジオの本編後を妄想して後日譚を書いていきます。
シリアス無しでゆる~くやっていければと。
本編後の話なので、ネタバレ注意です。

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王の成人式.1

【王都グラントラド】

 

――――王城内部にて。

 

 

「ちょっとウィル!また勝手に街に出て、何してたの!?」

 

ガリカは激怒した。

必ずかの品行方正な王を叱咤せねばならぬ。いや、勝手に出歩くなと幾度となく叱咤したものだが、今日もこうして主婦が近くの八百屋に根菜を買いに行くかのような気軽さで城を出歩く我らが王を見るに、叱咤程度では何も響かないのであろう。

 

かの王はというと、

 

「ごめんごめん、ちょっとベルギッタのところに行ってたんだ。マリアと流行りのおもちゃを買う約束をしていてね…」

 

なんて、ガリカの心配をどこ吹く風で片手を上げながら謝ってくるもので、果たして本当に反省しているのか甚だ疑問であった。

いや、どう考えても無断外出の頻度からして反省はしてないのだろうと思ったガリカだが、マリアを出されると弱いのは、かつての旅をともにした仲間全員の共通意識であった。

 

「まったくもう…いい加減私やヒュルケンベルグには一声かけてから行ってよね!」

「あはは…次から気をつけるよ」

 

ガリカは王の右肩付近、いつもの定位置に浮遊し腰を落ち着けようとすると、王が入ってきた扉からさらなる来客が顔を出していることに気づいた。

クリーム色の髪に花飾り、天使のような小さな翼を持った、正に天使のような少女が顔を出す。

 

「えっと…こんにちは、ガリカさん。ごめんなさい、私がワガママを行って王様を連れ出しちゃったから…」

「わ、マリアも来てたのね!全然大丈夫よ、この呑気でお人好しな王様が悪いだけだから!」

「うん、褒められてるか貶されてるかわからないね」

 

王は苦笑しながら、マリアを今宵行われる宴に招待した旨を伝えた。

 

今では王とその六本槍と呼ばれている、ユークロニア連合王国をまとめ上げる要人たちが、ルイ・グイアベルンと王権を求め争いあった日々から暫く経ち、若き王は成年と呼ばれる年を迎えた。

王の成人式は箔をつけなければならぬ、と一念発起した近衛騎士長主催による、グラントラドパレードが行われたが、いまいち乗り気でなかった王は自ら招集をかけ、身内のみで別日に宴をやろうと提案した。

各々忙しない日々を送っていた六本槍や、旅路の王をささえ、未だに友好かつ優秀に王政の各所を支える友人たちを招待した王。

招待された仲間も、王の祝典で、かつ堅苦しいこと抜きの宴と聞いて、怱怱たる日々になんとか風穴を開けて集まることが決まっていた。

 

「ガリカ、みんなはもう到着してるの?」

「ううん、ヒュルケンベルグはあなたが残してった書類仕事を変わりに消化してくれてるところ。ちゃんと後で謝っておきなさいよ!」

「後が怖いな…」

「あはは、王様、私も一緒に謝るよ…」

 

王選の日々では幼女であったマリアも、少女と呼ぶにふさわしく順調に成長し、多々無茶をする王と六本槍の間に入ることが増えていた。

 

「ストロールは、王都近郊に出たニンゲンの対応で、急遽討伐隊を率いて出陣したわ。あまり遠くないみたいだから、夜の宴までには帰ってこれるって」

「そうなんだ…たまには自分も出陣に同行したいな」

「だめに決まってるでしょ!どこの王様が先陣切って戦場に立つのよ!」

「王様、私も危ないのはよくないと思うな」

 

マリアに諭されてはさすがの王も立つ瀬がなかった。六本槍の中では、実はこの国の最高権力者はマリアなのではないかと囁かれてるのは別の話だ。

 

そんな折、新たに戸を叩く音が響く。

入室してきたのは、六本槍が一人、今は最高法官のムツタリ族のユーファであった。

 

「あら、マリアさんも来てたのですね。陛下、ガリカさん、お疲れさまです。本日の法事終わりましたので、少し早いですがお邪魔しますね」

「ユーファ!おつかれさま!」

「おつかれユーファ。今日は早く終えられたんだね」

「はい!本日はご夫婦の浮気裁判だったのですが、色々話し合った結果、またやり直していこうと結論を出してくださいました!」

「相変わらず最高裁で取り扱う内容なのかわからないね…」

「何を言いますか陛下!困っている人がいれば、平等に裁き、平等に許し、助ける。それがワタシの目指す法務です!問題の大小は関係ないんですよ!」

「ユーファさんが過労で倒れちゃわないか心配だね…」

 

ユーファが鼻息を荒くし決意を固めている中、さらなる来客が現れた。上品なノック無しに、ゴンっと一度扉をたたいて、豪快に入室してきたのは六本槍が誇る武闘派の二柱、ハイザメ、バジリオだった。

 

「よーう王サマ、ちっと早いが邪魔するぜ。」

「ユージフの里からとびきりの秘酒を持ってこさせた。王よ、ついにこの日が来たな。共に杯を乾かすこの日を待ち望んでいたぞ」

 

馴染んだ顔ぶれが集まってきて、王は顔をほころばせる。やはり各自位を得ても、王からすれば苦楽を共にした仲間であり、友人という感覚が近しいのだ。

 

「ハイザメ、バジリオ!最近長期練兵続きだったからなんか久しぶりだね」

「そうか?なんか最近忙しすぎて時間の感覚が狂ってるぜ。王選の直後に比べりゃ落ち着いてっけどよ」

「ストロールのヤツも軍同士の合同練兵と張り切っていたが、どうやら今はおらぬようだな?」

「そうなのよ…ちょっとニンゲン討伐にね…」

「まぁ…ニンゲンですか、ストロールさんなら問題はないと思いますが、少し心配ですね…」

 

王城に六本槍が集まり始め、内部の給仕たちも英雄の集合に色めき立ち始めた頃、ドタドタと城内部を早歩きで移動する足音が聞こえてくる。

バンッとドアを開いて現れたのは、ヒュルケンベルグだった。

 

「陛下っ!また勝手に外出をされておりましたね!?まったく貴方という人は、そろそろご自身の立場というものを自覚してですね…」

「まーあまぁ、近衛騎士長サマよ、せっかくの宴の日くらい何時もの小言はナシにしよーぜ。今日は無礼講の日だろ?コイツもマリアを迎えに行ってたみたいだし、大目に見てやろうぜ」

「またお前は陛下をコイツ呼ばわりして…だいたいお前はだな…」

 

いきり立つヒュルケンベルグを、バジリオがなだめるような更に油を注いでるようないなし方をする。バジリオが軍務を実務の面で十全に果たしている一方、書類処理など事務方面では滅法サボり魔であり、秘書官からの苦言相談をヒュルケンベルグがよく聞くことから、この説教構図は多発するものとなった。近頃では王はヒュルケンベルグの小言が煩わしくなった時には、決まってバジリオに矛先転化を試みることが多くなった。

 

すると、外からドシンドシンと地響きが鳴り響き、王城前で止まった。

凱旋車が王城の庭で止まり、中から姿を表したのはニューラス、ジュナ、ストロールであった。

なんだかストロールは青ざめた顔をしている。

 

「よーうお前ら!ジュナ嬢を転移試作機で迎えに行ったついでに、ストロールも乗せて帰ってきたぜー!」

「ウグ…転移時の揺れがどうしても慣れん…ニューラス、製品化する前にはなんとかしてくれ…」

「もう、ストロールったら情けないわね。みんな!久しぶりね!」

「ストロール、ニューラス、それにジュナも!皆集合時間よりだいぶ早いね!」

 

王は慣れ親しんだ顔ぶれの集合に喜色を満面に表した。

 

「それだけ皆さんも楽しみにしてたんですね」

「ユーファ元気だった?そりゃもちろん、陛下の初酔姿を見れるんだもん!居ても立っても居られないわよ」

「うーん、ウィルが酔ったらどうなるんだろう…」

「正直自分も気になるんだよね…ヒュルケンベルグ、もし酔い潰れちゃったら、自室まで運んでくれたら嬉しいな…」

 

王の発言に、数名ピクリと眉が動く。

 

「陛下、その時はワタシが、お部屋までお送りしますよ。運ばれ心地のよい召喚獣も用意します」

「おいユーファ、陛下は私をご指名だ。それに城の中で召喚術など使うな」

「ちょっとちょっと、私も混ぜなさいよ。ていうか別にパトラでいくらでも治せるでしょ」

「その時は私が王様を治すよ!」

 

マリアがふんす!と鼻息を荒げると、一触即発のムードが霧散した。未だにマリアは、このメンバーの空気清浄機なのである。

ストロールが王の耳元で囁く。

 

「お前、そろそろ身の振り方を決めたほうがいいんじゃないか…?」 

「ん?何の話?」

「なぜ人の心には聡いところがあるのに、我らが王はこっちの方面はてんで門外漢なんだろうな…」

「見てるこっちが気まずいからやめてほしいのよね…」

 

人心は掌握できれども、もはや家族のように思っている仲間(女性陣)たちの真心に対しては鈍感な王なのであった。

ハイザメ、ガリカ、ストロールは顔を見合わせ、天を仰いだ。

 

間もなく、成人を迎えた王を祝した宴が始まる。


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