そうだ、温泉ダンジョンをパクろう!!   作:マキシマムとと

11 / 15
11.溺死の湯

 

 プヨルちゃん生誕からしばらく。

 

 エルヴァさんの子供(ミロクちゃん♀)の首がすわって、身体を支えて貰えればお座りも出来るようになった。

 あと少しでハイハイしそうな気配もしてるから、たぶん最低でも3ヶ月は経ったのかな?

 

 その間にも色々な事がありました。

 

 神殿が完成したり、そこに住もうとしたエルヴァさんをシブちゃんやアシレーヌが協力して止めたり。

 3階のお湯が布の汚れ落としにも効果バツグン(と言うか染料も何もかも完全に漂白して無彩色の状態に戻す)と見抜いたアシレーヌが奴隷連中のパンツを掻き集めて『お洗濯大作戦!』を実行しようとしてシブちゃんと大喧嘩して、みかねたメルティ&エルヴァさんが仲裁に入ったり。

 (なんかアシレーヌは妙にエルヴァさんと仲良しなんだよな、歳が近いからってのもあるんだろうけど、リアル美女と野獣を見せつけられる俺の気持ちにもなれよ、カスが…ッ)

 

 あとアレだ。

 実はかなり前からダンジョンの外に町が出来てたんだけど、なんか最近はやたらと人の出入りが激しくなっててさ。

 いつものようにアシレーヌに話を聞いたら移民が大量で大騒ぎになってるんだとか。

 へー。

 けど、相変わらず女の子の来訪はシブちゃんの知り合い以外ゼロ人なんですね。

 死ね!!

 

 他にもエルヴァさんが「身の程をわきまえない阿呆の侵入を阻むためです」とか言って神殿の中に超高レベルなスケルトンドラゴン(密輸品らしい………密輸?)を配置して、

 

 (あれ? このダンジョンのDMはエルヴァさんだったの…?)

 

 てな状態になりながら、そこそこの頻度で発生する奴隷 vs 宗教のいつもの戦争ごっこを眺めて楽しむ日々を送ってたんだけどね。

 

 

 〜姉さん、事件です(死語)〜

 

 

 事件が起きてしまいました。

 

 安全安心健康第一を貫いていた当温泉ダンジョンなのですが…なんと、本日! 俺のタブレットには初の人類死亡によるDPが舞い込みました!!

 死亡者名はぁ〜〜〜〜!?

 

 

 

 アシレ〜〜〜ヌくん!!

 死因・溺死…www

 

 

 

 溺死て…!

 水ポケ○ンの癖に死因が溺死て(クサササササw)

 記念すべき初めてのダンジョン内死亡者、その死亡原因が溺死、しかも顔なじみのアシレーヌ。

 

 「ボス、水死体の発見現場は第1階層の水風呂」

 

 「プパポン?」

 

 「…えぇ、間違いないかと。俺にオスの水浴びを眺める趣味は無いのですが、ダンジョンの監視データを回収、解析した結果97.5%の確率でアシレーヌの太ももの内側には鼻くそサイズのホクロが存在します」

 

 「プパボ! ぽぼぼぼんぬ!!」

 

 「な! 本気ですかボス!」

 

 「ぷんポポ」

 

 「了解です、プランC、発動します…!!」

 

 ーーーと、まぁアレよ。

 そんなお遊びを挟みながらww

 

 そりゃね? 毎日毎日アホみたいな数の肉ダルマがギュウギュウ詰めになりながらあの狭い水風呂を奪い合ってたんだもん、今までだって何回も危うい事故はあったし、いつか誰かが下手コクんじゃね〜の? くらいには思ってた(たぶん奴隷の奴らも全員思ってた)んだよね。

 

 けどまぁ、まさかアシレーヌが一番乗りで死に腐るとは思わなんだのですが…クサ。

 

 アッシーもね、一応はこの道のプロだから。

 水風呂に入る時には十分気を付けてたんだよ。

 それは同期の奴隷連中も同じで、あの狭い水風呂を謳歌するためにお互いへの気配りはある種の常識になってたんだわな。

 けど、最近出来たら町からの新参者は奴隷根性がなってないじゃん? 遊び感覚で無茶して死にかけたのをアシレーヌが助けに行って二次被害にあってしまうのは、まぁ…運が悪かったんだろうね。

 

 けどまぁアレだよ。

 ダンジョンで人死なんて珍しくも無いんだし、さっさと外に連れ帰って復活の呪文唱えてもろてーーー

 

 「アシレーヌ…アシレーヌぅぅぅぅぅ!!」

 

 ボスゴリラことトーマくんの慟哭。

 吠えるゴリラ。

 渡る世間はゴリゴリマッチョ。

 

 ………うにゅ?

 

 「なんで、こんな…ッ! 俺のせいで! 俺が、俺がこんな所に連れてきたから………!!」

 

 ーーーえ?

 迫真ですやん?

 ど…え?

 アレ?

 

 「………トルマリオン」

 

 シブちゃん?

 なんか、表情が真面目過ぎん?

 いや俺は騙されんぞ。

 DMの知識にあるもん。

 ダンジョンで死んでも人間の造った神殿でお祈りすればレンジでチンするレベルで簡単に復活可能だって…だって、そういう知識がある…から。

 

 「俺も、手伝うから…な?」

 

 あのシブちゃんの涙が、俺の混乱を一層高める。

 嫌だ嫌だと、子供のように首を振るトーマくんの背を抱いて、シブちゃんが続けた。

 

 「この地での死は絶対です。封ぜられてなお死と暴虐の神の手は、死者を手放す事はない」

 

 エルヴァさん、腕の中のミロクちゃんまで。

 なんで、そんな。

 

 「埋めてやろう…せめて死人(しびと)として起き上がる事が無いように、俺が祈るから…」

 

 え…………え?

 死んだ?

 二度と、生き返らない………?

 ーーーは?

 知ってたのか?

 

 知ってて、あんな、最低限のルールすら無視した馬鹿の命を救うために、死んだ………?

 

 「は…?」

 

 バカじゃん。

 え…アシレーヌお前、本当に死んだの?

 

 『イヌイ君!』

 

 ご飯を作ったから食べて欲しい。

 前に言ってたおにぎりを再現してみたから。

 そう言ってオス臭い握り飯風の穀物を渡された事があった。

 

 『イヌイ君!』

 

 3階のお湯で汚いパンツを洗った後、新しく出来た黄ばみを見つけて指を差して笑ってやった事もある。

 怒る表情が楽しくて、何度もからかって。

 最後には泣かしてやった。

 

 『イヌイ君!』

 

 戦い方を教えて欲しい、そう頼まれて俺の前世の知識を取り入れたバキバキ式の格闘術をレクチャーした事もあった。

 明らかに人外育成プロジェクトなのに、泣き言…は言ってたけど歯を食いしばって頑張って。

 

 

 

 『………イヌイ君には、本当に感謝してる』

 

 

 

 くそデカい身体を丸めて、俺の犬小屋に寄り添う。

 

 『イヌイ君が創ってくれたこのダンジョンでたくさんの人が救われてる。本当にイヌイくんは凄いDMだよ、世界一の、最高のDM』

 

 『苦しかった僕を助けてくれた、神様みたいな…』

 

 ーーーばっかだなぁ…俺は魔族だぜ?

 お前ら人間の領域を侵略するために造られた生体兵器なの! わかるぅ?? ホントお前そんなゴミみたいな奴に感謝するなんてーーー

 

 「馬鹿が…」

 

 バカ野郎が…!!

 

 「イヌイ!?」

 

 神殿から抜け出した俺は、気付けばアシレーヌの死体を囲んで出来上がった群衆の輪を飛び越していた。

 

 「【正八(セイバー)ストレングス】」

 

 身体強化の魔法、その膂力に任せてトーマを押しのける。

 

 「ゴハッ!?」

 「イヌイ!」

 「イヌイ様ッ!」

 

 トーマの巨体が手毬のように吹き飛んで、取り巻きの十数人を薙ぎ倒しながら止まるけど、

 

 「き、貴様…!」

 

 構ってられない。

 敵意も、驚愕も、困惑も。

 生も死も。

 

 お前は俺の物だろ?

 ただ毎日DPを生み出す、俺の家畜なんだぞ?

 

 「俺がルールだ…」

 

 「なに…を?」

 

 神が決めた不可逆の死?

 巫山戯やがって。

 

 「この………馬鹿が」

 

 太い胴体。

 太い腕。

 臭くてむさ苦しくて、俺の理想と真逆の生命。

 

 もう二度と、DPを生み出すことの無い、終わった命。その頭を抱き締めて。

 

 「【正十(セイテン)フォーチュン】」

 

 人間1匹のために消費するには、あまりにもリスクが大きい転送魔法。そんな冷静な思考はある。

 けれど、そんな物よりも遥かに太くて揺るぎない気持ちが俺の中心に座っていた。

 

 「イヌイッ!!」

 

 現場から消え去る瞬間トーマと目が合う。

 

 「俺に任せろ」

 

 何故か、そう言ってしまった。

 

 

 

 ◆敗神アグナ・グナル◆

 

 

 

 ソレに意思など無かった。

 

 今有る人の世では【死】と【暴虐】の化身とされている、古い時代の神の欠片。

 ペリアの牙、その封から抜け出した『力』の塊。

 

 成すべき事は既に刻まれている。

 機械のように正確に、機会を伺い淡々と。

 

 『死者の肉体へ融合し、本体の意思を中継させる』

 

 ダンジョンであるならば、必ずそれは訪れる。

 その瞬間を逃さず、復活への礎として己を形作る【死】の権能を発動させる。そのために設定された『力』の塊こそが、プヨルと名付けられた核の正体。

 

 肉体を得て本体との接続が成された暁には異国からの侵略者を下僕として調伏し、ダンジョン構成機構へと介入。

 しかる後この空間の所有権を簒奪し、ヒトどもが願う通り【死】と【暴虐】によりこの世へあらゆる怨嗟を振り撒く………それこそが封じられし神『地なる焔龍神(えんりゅうじん)アグナ・グナル』の描いていたシナリオーーーだった。

 

 

 

 

 【若返りの湯(3歳)】

 

 この温泉の効能は若返り!

 なんと!

 なんと!!

 なんですとぉ〜!?

 今・ダンジョンは新たなる美容に迫る!

 

 

 

 たかが3歳、されど3歳!!

 3年昔はこうだった。

 貴方の嘆きを救います!

 時よ戻れ、あの頃へ。

 

 

 

 この温泉の効能は1度きりです。

 過去に入った温泉(肌艶の湯等)の

 効果は3年前の肉体にも引き継がれますので、

 安心してご入浴ください。

 (`・ω・´)ゞ

 

 

 

 【求人看板】

 

 最近女性の入浴者が少ない気がします。

 ダンジョンマスターはご立腹です。

 良いですか?

 温泉は皆の温泉なのです。

 女性差別は許しません。

 もっと女の子をダンジョンに招きなさい。

 幸せは、歩いてこない。

 だから裸をおがむのよ?

 1日一人か二人とか、耐えられんのですよ。

 

 わかる?

 わかるよね?

 わかったらもっと女子を寄越しなさい!

 男の温泉とか誰一人得しないから

 だから読者が増えないんですよ。

 わかります?

 俺はイマイチわかってません!!

 以上・解散!!

 

 

 

 

 出来る、出来ない。

 そのような躊躇いは欠片も見当たらなかった。

 仮にも神の律を破る。

 その覚悟も憎しみも無い。

 

 「クソがぁぁぁぁぁぁぁ…なんで、なんで最重要温泉の第一入浴者がオス(アシレーヌ)なんだよ。このボケッ! 勝手に死にやがって、いや違う! 死ぬだけじゃなくてこの俺にまで迷惑をかけたんだ! まったくこの馬鹿はもはやバカの2文字ではおさまらんぞ…! くそ…ばか…アホ…まぬけ………とんま、、、た、たんそく? う〜ん………あ! 大バカの…おおばかタレーヌ!! いいなコレ! バカタレーヌ! 君に決めた! 今日から君はバカタレーヌだッ!!」

 

 その言葉に神は存在しない。

 神意に逆らう、神律に背く。

 そのような考えは毛頭ーーー無い。

 このアホは。

 真実、何も考えていなかった。

 

 「と言うわけで、ハイどーん!!」

 

 ぞんざいに投げられた死体が温かな湯に溶ける。

 水龍神からかすめた力に、溶ける。

 

 捕えた人の魂も。

 混ぜた己の塊も。

 現龍神の神律も。

 

 何もかもが溶けて、混ざり。

 ーーーそして全てが、巻き戻された。

 

 

 

 【・信者の獲得】

 【・信者への奇跡貸与】

 【・FP(信仰ポイント)の累積】

 【・死者蘇生】

 【・神律破壊】

 

 【ーーー至神(ししん)条件達成ーーー】

 

 【対象魔族 イヌイ を 亞神 へ 認定】

 【ダンジョン構成機構への干渉・改竄完了】

 

 【眷属アシレーヌから焔龍神の片魂(へんこん)を確認】

 【神律条約1582jdatに該当】

 【焔龍神アグナ・グナルを亞神イヌイの眷属へ制定】

 【これに伴い亞神イヌイの階位が変動します】

 

 

 

Evolution !!(存在昇華)

 

 

 

 おそらく、奴はこの変化にすら気付かないだろう。

 気が狂うほどの憤りがある。

 だが、それよりも揺るぎない狂信がある。

 

 (イヌイ君はやっぱり凄い)

 

 そう思ってしまう。

 

 (イヌイ君に触れられたい)

 

 そう願ってしまう。

 それは黄泉がえり、かつ現龍により歪められた(カラ)から開放された少女(・・)の秘めたる恋心なのか。

 それともプヨルと名付けられた己の塊に芽生えた快楽なのか。なんにせよイヌイは神となり。

 己は混ざり、そして新しき神の眷族となった。

 

 あの腐った楽園から抜け出す代償としては。

 ………まぁ、悪くは無い。

 そう、思う事にした。

 

 

To Be Continued !!⇨

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。