そうだ、温泉ダンジョンをパクろう!!   作:マキシマムとと

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 やっとTSタグを追加出来た。
 次の新タグ追加はいつになるやら。



12.若返りの湯(3歳)

 

 体内のマナを消費し、体外のマナに干渉する。

 それが魔法の基本的なルールなんだけど、今回の場合はどう言う判定になっているのか。

 明らかにパワーに満ちる身体と、この世界の不思議に思いを巡らせる。

 

 「【正八(セイバー)ストレングス】」

 

 この魔法。

 わかる人にはわかると思うんだけど、俺って前世でタロットに興味があったのさ。

 伝説のオーガバト○から始まり、ジョジ○の第三部に魅せられ、天○のエスカフローネに染められて。

 終いにはオジサンの癖にタロットカードを購入しちゃう位には好きでさ。

 しかも案外占いの才能があったらしくて、身内の間ではそれなりに当たることもあって。

 

 それでまぁ、その過去の栄光にすがる訳じゃないんだけどさ、どーせ固有魔法開発するならタロットを意識した魔法にしたいなー、なんて思って作った魔法なんですけど。

 

 「これ、強えぇんだが…!」

 

 地面に転がってた石ころを投げる。

 ドビュン!!

 前世を含めて過去に体験した事の無い風切音を放って石がダンジョンの壁面にブチ当たる。

 その速度・威力。

 無意識に口角が上がってしまうぅ…!!

 

 これはもしや、転生チート的な?

 さっきだってそうじゃん? 冷静に思考してみ? 明らかに巨体のトーマくんを押し退けたわけですよ? このホビットボディーのイヌイ君が…!

 魔法の持続時間は少ないしクールタイムまで考えると実戦では厳しい可能性は高いけど、それはソレ。

 俺が強いって事が最優先なんだなぁ!

 

 【正十(セイテン)フォーチュン】の発動も完璧だったし、もしかしたら俺には魔法チートが与えられている説まで浮上しますぞ!!

 

 く…ツライぜ。

 品行方正にして驚天動地なダンジョンマスターでありながら、さらにさらに唯我独尊な魔法スキルまで備え持つだなんて…俺が天才過ぎてツライww

 

 

 

 アシレーヌの死体を新設した第4階層【若返りの湯(3歳)】へ投げ込んだ後。

 

 俺は己のキラメク才能に酔いしれていた。

 それと言うのも、若返りの湯は浸かれば即座に若返るんじゃなくてそれなりに変化に時間が必要らしくてな。正直暇を持て余していたと言う訳でして。

 

 「ーーー待てよ? 今って腕力だけじゃなくて跳躍力も上がってるんだよな? なら…もしかして、子供の頃の夢が叶うのでは」

 

 閃いたのはロックな男。

 夢の三角跳びでダンジョンの壁面を飛び跳ねる、あの頃の野望を今、ついに!

 

 「ちょっと危ないから離れてて! 特にプヨルちゃんはふわふわしてるから………て。あれ? ん? プヨルちゃん??」

 

 ピンクでふわふわのクラゲ風味な僕らのアイドルが見当たらないのですが…!?

 

 「うそ…だろ? プヨル? プヨルちゃん? プヨルちゃんさまぁ〜〜〜〜!?」

 

 「ポリきポン?」

 

 なにを落ち着いてるんだコーちゃん!

 まぁもともと同じコアだったとは思えないほどお互いに無干渉だったから仕方ないのかもだけど。

 

 「やべぇよ。プヨルちゃんはまだ赤ちゃんなのに…! まだなんの力もない、ただ死ぬほど可愛いだけのクラゲ風スライムなのに…!! さ、探さなきゃ誘拐…誘拐されちゃう…!!」

 

 思い出すんだ俺!

 俺はまず、転送魔法を使ってアシレーヌの死体ごと第3階層の隠し部屋に移動した。

 そこはまだ誰にも見つかってない秘密基地的な緊急避難場所で、鉄子のミネウチで殺されそうになった場合を想定して2階にも同じ隠れ家を作ってある。

 (ちなみに部屋の構造は1階の犬小屋下の空間と同じ。コスパ優先ってのもあるけど、なんかこの狭さが落ち着く)

 

 転送魔法【正十フォーチュン】には『俺』『コーちゃん』『プヨルちゃん』『俺の所持品』を同時に空間転移させる効果があるし、目視でも確認したから間違いないんだが、その時点では全員集合してたんだ。

 

 けど、その後が怪しい。

 

 超速で4階層と【若返りの湯】を創造し【正八ストレングス】で身体強化。湯に死体を投げ入れた。

 おそらくはその前後。

 ここでプヨルちゃんが消えたはず…。

 

 タブレットの記録映像で確認しようとした俺の耳が、若返りの湯の揺れる音を捕えた。

 若返り完了か、思ったより早かったな。

 

 「お〜アッシーお帰りー、今ちょっと取り込んでてな?」

 

 「イヌイ君…」

 

 ……………ん?

 

 なんか声のトーン変じゃね?

 あ、アレか?

 声変わり前の年まで逆上ったとか?

 ………いや。

 

 「イヌイ君…僕を、見て」

 

 明らかに、違う。

 俺の…DMの、いや。

 温泉を未練として転生を果たした温泉ダンジョンマスターとしての魂が、その変化を感じ取っていた。

 

 「アシーーー」

 

 振り向いてすぐ、思考がホワイトアウトした。

 ーーーカトゥーン…。

 手にしていたタブレットが床に落ちる。

 

 「あっ……………」

 

 アゴが濡れてる。

 ん、なんだ? むず痒いぞ?

 そんな感覚があって、気が付いたら手で拭っていた。

 

 「あ…鼻血でてた」

 

 だくだくと開けっ放した蛇口から水が流れるように、オレの鼻から血液がダムの放水みたいな勢いで垂れ流されて。

 

 「イヌイ君ッ!?」

 

 電気を切るように、唐突に意識が落ちる。

 その寸前に見えたのは。

 青い髪の、可愛くて、美しい。

 

 「ロリ巨乳ktkr…!!」

 

 アシレーヌのピンク色だった。

 

 

 

 ◆離国の外の世界◆

 

 

 

 現龍神の奇跡(祝福)が現龍神の奇跡(呪い)に変わってから7年。

 長いようで、振り返ってしまえばあっという間に過ぎ去る期間。その間に多くのヒトは現実に染まって行った。

 

 「ーーー出港する」

 

 とある輸送船の船長もその一人。

 7年前、彼はただの船員に過ぎなかった。

 新米と言うには歳を食い、ベテランと言うには甘すぎる。

 ごく普通の、ただ海が好きな青年でしかなかった。

 

 (…多いな)

 

 ざっと見渡した人混み。

 その中でも現龍神に変えられた人間はすぐわかる。

 視覚的なものでは無い。マナの感覚的に見て、あからさまに存在が歪なのだ。

 特に今この船に詰め込まれた『開拓従事者(反乱分子予備軍)』は奇跡を受けて間もない。

 

 奇跡(呪い)は奇跡であるが故に、その精神にまで影響を与える。

 もとが女であった事実を記憶していながら。

 そして大半は出産を経験し、その子供が成年を迎えようかと言う年頃でありながら、よほどの例外を除き発狂する者が居ない現実がそれを証明している。

 

 大人しく船に乗り。

 騒がずに海を渡り。

 そして人知れず死んで行く者たち。

 三途の川の渡し船。

 この船がそう呼ばれるのも止む無し。

 

 ………しかし、それにしても、酷い。

 

 数カ月前はまだマシだった。

 船に乗せられるのは高齢者が殆ど。

 あるとすれば重罪人か、見せしめとしてその家族を島流しにする程度。

 今回のように反乱の疑い(・・・・・)程度のこじつけで年若く未来のある人を死地へ送ることなどは無く、またその人数もたかが知れていた。

 

 「繁栄…繁栄か…………クソが」

 

 離国で採掘される凝血鉱石。

 その価値を見抜いた現龍神様の勅令が故に許された暴挙ではあるが、見識のある者は国の上役が暴走したが故だと知っている。

 

 知っていて…何も出来はしない事もまた、知っているから。

 

 今でこそ船長と呼ばれる己であるが、己が前任者より優れた点などただの1つしかない。

 ただ、上の言い分に従う事だけ。

 

 『お気になさらないで下さい』

 

 今から2年前だ。

 まだ己の子供と変わらない年頃の少女を死地に追いやったのは。

 

 『貴方は責務を果たされているだけです。僕は少し、この身体とは相性が良くないみたいなのですが、それでも向こうで身体を壊したりはしないと思うのです』

 

 変えられた中でも一等に若く、弱々しいあの子供。

 

 『僕…変わる前はとても病弱で、父親の代わりをしてくださったお兄様にはよくご迷惑をおかけしていました。ですが、これからは元気な身体でお兄様を支えてあげる事が出来ます!』

 

 嬉しそうに。

 心底楽しそうに。

 

 『貴方はその手助けをしてくれただけです』

 

 微笑んでくれたあの子供は。

 

 『それに、誰かが成さねばならない仕事ではないですか。気に病む事はありませんよ』

 

 きっともう、この世には居ないだろう。

 

 「アシレーヌ…」

 

 己はお前の叔父だと、ついぞ名乗ることは無かった。

 罪を背負い。

 ただ死人を墓場に送る。

 この世界に救いなど無い。

 

 

 

 ーーーそう、思っていた。

 

 「……………!!」

 

 対岸に見える青い髪の少女。

 姉と同じ笑顔で、同じ手の振り方をする彼女に出逢う(再開する)までは。

 

 

To Be Continued !!⇨

 

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