地下2階、ここからは本格的なダンジョンだ。
1階で稼ぎに稼いだDPのお陰で懐には余裕があるからね、ちょっと
(俺の現住所は相変わらず1階の犬小屋の下)
環境・地形は洞窟を続投…と言うか、制約の関係上でメイン階層になる予定の地下4階までは洞窟で統一してDPのコストダウンを図る事が決定してるからイジりようがない。
それでもここは1階の広間構造とは違い、平面的な迷路にしてある。立体迷路にすると途端に要求DPが跳ね上がるから妥協した感じ。
相変わらず罠は無いけど、ここからはガチモンのモンスター部隊がスタンバイ。
生意気な人間どもをわからせてやるんだぜ…!
そして肝心の【髪艶の湯】だが、コレは迷路内の1ヶ所にだけ凹みを作り、そこではゆったりと入浴出来るんだけど、ゆったりしなくても良いならどこででも入浴出来る仕組みにしてみた。
ーーーわけわかめ! てなるよな?
まぁ説明するからワカメ食べて待てよw
では。
それがどう言う事かっていうと、この2階層。迷路全体に温泉を溢れさせてるんだわ。
上の【肌艶の湯】で理解したんだけど、温泉の量や範囲ってコスト的には常識的な範囲内で増減可能でさ、それならメッチャ増量したら面白いんじゃね!? とか思い付きで2階層を創った結果、迷路全体が膝下くらいまで温泉水で水没した魔族の不思議なダンジョンが完成したのであるっ!!
自画自賛するんたが、本当にこの2階は素晴らしい。
ただでさえ足場が悪い洞窟ダンジョンでありながら、視界を不安定にさせ、動きを妨げる温泉水。
これ、温泉水だから当然熱いじゃん?
例え足湯だとしてもけっこうな温度のお湯に15分も浸かれば汗は出る。
それでいて長時間動き回りながら、周囲のモンスターに気を配りながら迷路を探索しなきゃならんのだけど、光源は洞窟の至る所に配置した光ゴケだけだからいつもぼんやりと薄暗い。
熱い、不快、見えない!
この一連のスープァーコンボが
お得なセットプランをご提供!!
今回、ここに配置するモンスター軍団と迷路のシナジーが期待大なんでゴザルっ!!
「出番だっ! 我が前に現れいでよ!!」
第二階層の愉快なメンバーがコチラ!
「ガノノッ!」
お魚タイプの魔獣(魔魚)ガノくんと、
「トストトトトストト」
奇形魔人族のトトスくん!
サイズも色合いも出店の金魚にソックリな赤い魚のガノ、その腹を噛み付くような専用のハサミで咥え込むのは小人の下半身だけを切り取ったような形状のトトスくん!
2体合体して足の生えたお魚さんに 変☆身!!
二人合わせて『ガノとトトス!!』
ーーーいや待って!
待ってくれ友よッ!!
いろいろギリギリなのはわかってるっ! わかってるんだ、だけどまだ待って欲しい! まずは俺の話を聞いてくれ。
まずこの2種類の魔族はセット販売で大変お安かったんだよ! もともと住んでた地域が海底火山とかの近くでかなり独特な環境だったんだけど、最近そこに海洋汚染の波が押し寄せてきたらしくてな? 移住先を探すにも汚染の少ない深い海はもっとデカくて強力な魔族が縄張りバリバリしてるし、浅い場所はどこも汚染難民でいっぱい・オッパイ・カーニバル♡
普通の海で生きられる生態でも無くて本当に困ってたらしくてね? 一応DMへの召喚参加登録もして住処を探してたんだけど、お互いの条件に一致する事がなくてどんどん仲間が減ってたらしいんだよ。
まぁ…俺はそんなん知らんかったし、正直に言うと知った今でも興味は無いんだけどさ、たまたま本当に彼らの生態は俺の2階層創造に都合が良かったんだ。
「温泉水だと思ってたら成分がほぼ海水だった件」
気合入れて創ったダンジョンの温泉が海水っぽくてさ、そんな環境だとお魚さんくらいしか召喚に応じてくれる魔族が居なくて、けど弱いお魚さんはクソ弱いし強いお魚さんはDPがクソアホですし? それだけならまだしも温泉の高温に適応出来るお魚となるとまた数が少ない少ない。
海水と温水、どっちかならまだ楽だったんだけど。
「なんで【髪艶の湯】なのに海水チックなんだよ…塩分とか普通髪ギッシギシになるやろ、ふざけんなよチクセウが…」
とまぁ、嘆きながらタブレットで検索してて見つけた彼ら。海水適応○と温水適応○に加え、何よりその名前と姿にビビッとした電流を感じまして。
わかる?
ガノとトトスだよ?
普通に考えたらカプ○ンに喧嘩売ってるんだけど、そのシルエットは南国少年パプ○くんに出てくる鯛の魚人に似てるんだ。
つまり、網タイツを装備した美脚のお魚。
(ミニサイズだけど)
必殺技はガノくんが吐き出す水圧ブレス。
(ミニサイズ以下略)
…わかるかね、諸君。
もしカプ○ンに訴えられた場合には「違うんだ! これはスク○ニの南国少年パプ○くんに出てくるメデ鯛バケモノをパクっただけなんだ!」と叫べるし、スク○ニに訴えられた場合には「違うんだ! これはカプ○ンのモンスターハン○ーに出てくるガノガノした魚竜種をパクっただけなんだ!」と叫べる。
実に合理的な完全犯罪!!
もうこの時点で楽しかったし、お試しで呼んで試してみたところ、この子達の生態と2階層の環境がビチィっと(魚だけにバチぃではなくビチィにしてみた)噛み合ってさ、もーその時点で脳内麻薬がドパドパでしたもの。
加えて水圧ブレスが良いよね!
彼らの伝承によると、その昔ガノとトトスくんは海底の苔を食べて生活してたらしい。
けど、ある時を境に海底火山周辺に貝類が爆発的に増えて食料の藻が枯渇したんだと。
◆
太古の昔、偉大なる二種族は窮地にあった。
『ーーーこりゃあきまへんデ!』
『せやかてトトスはん、どないしましょ?』
『せやな、ガノはん。アンさんの口から水をピュッて吐くヤツで貝をやっつけれまへんか?』
『あきまへんあきまへん、アレは緊急回避スキルでっせ? 放った瞬間にクルンと身体が1回転ですがな』
『う〜ん、さようですかいな』
『ほなトトスはん、アンタのその力強い脚とご自慢のハサミで貝の野郎の口をこじ開けてしもたらどないです?』
『あかんよ、そら〜無理が過ぎる言うもんですわ。ワテのハサミは咥え込む力はありますけどな、開くのは苦手ですねん、ワニみたいなもんでしてな、それに脚も岩肌を掴むのは大得意やけんど、攻撃とかには使えんし…』
『う〜む…あ、それならこんなんどないです?』
『………は? ワテが? アンさんを挟む? そんで水圧ブレスで貝を斬る…がははっ!! ソレぁ面白そうや、よしよし、どうせこのままやったらワシらみんな仲良く餓死や、いっちょ遊んでみましょか!』
そのような過程を経て貝がニ種族の主食となった。
緊急回避スキルとしてガノが覚えた『水の高圧噴射』をトトスの強靭な足腰によってウォーターカッターに転用したのが『ガノとトトス』の始まり、二種族の友情は永遠に不滅なのだ…!
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これ、このクソワロタ系テキストにハートをズキュンと撃ち抜かれたんだ。
それにさ、ただの水を高圧で噴射する事によってどんなに硬い金属でも切り裂く事を可能とする中二病の塊みたいな攻撃方法、これがもう唸るほどスコ。
現実はつまらないじゃん?
工業用でなら無くはないけどさ、それはただの水じゃなくて噴射する中に砂利みたいなのを混ぜないと研磨力が足らないのと、かなり長時間ゆっくり削らないと切れなくてまるっきし戦闘になんて使える訳がない。
高圧洗浄機使えばわかるけど、あんなのはちょっと距離離したらただの冷たくて気持ち良いミストにしかならんのが現実なんだよ。
モン○ンのガノ○トスの水圧レーザーブレスは100%嘘だし、なんならデカい水の塊を吐き出して攻撃する方がよほど強い。
けど、コイツらはあえてソコに全力投球して進化してきたんだぜ? その姿勢、生き様、種族としてのやっちまった感。
すこぶるつきで大スコだ!
彼らのサイズと攻撃方法からして人間を殺害する可能性はメチャクチャ低い。
そもそもサイズが金魚だから人間にくっつかなけりゃ水圧ブレスは霧散してしまう。
そして体良くくっついた所で人間の皮膚は岩よりも柔らかくて脆いからブレスの反動を制御出来ない。
結果、ガノくんがブレスを吐くとその勢いに任せてトトスくんが人間の皮膚を脚で切り裂きながら移動するようになってしまう。
(ブレス=攻撃ではなく、ブレス=ブースターとして機能する所が最高に頭悪くてスコw)
つまりこの攻撃、痛い…けど、ススキの葉っぱで指を切るくらいの傷にしかならなくて、そんな所も俺からすれば好都合。 なにせ俺は殺生与奪の権を鉄子に握られてるから殺人はNG! その上でここは2階層目だろ? 1階層がパンイチのほぼほぼ全裸の雄奴隷が来るのなら、2階層は『布の服』を装備した女の子が来るのがこの世の道理と言うものでしょうッ!!
そう、つまり!
たまたま、偶然、偶発的に!!
ガノくんのウォーターカッターやトトスくんの切り裂き攻撃が布の服の大事な部分を切り飛ばす可能性はゼロではぬぁい!!
(グフフフグフフ、グフカス○ム…!)
さて、後は獲物がかかるのを待つだけ!
うひぃー!!
やっぱ新階層創造は楽しいゾイ☆
早くおにゃのこのパイパイプリケツがみたいにゃー
♡(ΦωΦ)♡
◆ダンジョンの『外』の世界 ◆
「全て………?」
緊急報告に参じた部下の発言に、私のみならず冷静沈着な私の騎士までもが言葉を無くしました。
「ハッ! 農園指定地域の作物『タカキキビ』『ヤシャヤシ』『サンボンテン』『ジトロム』『ゴムボ』全ての作物が復活いたしましたッ!!」
私のもたらした奇跡だとでも思っているのでしょう、彼の目はかつて見た事のない輝きと畏敬の念を放ち私を真っ直ぐに見つめます。
「そう、ですか………」
ならば、私の役割は一つ。
「サンボンテンには効き目薄かと思っていたのですが、何よりです。後は詰めておきますので、貴方は職務に戻りなさい」
「ハッ!!」
あの【水】による多大なる影響でしょう。
部下の、起立して退室するだけの動作からも迸るような活力の波動を感じます。
「ーーーまさか、ここまでとは…な」
その背を見送り、彼女がこぼしました。
「えぇ、まさかとは思いましたが、あの枯れ果てた農地が一夜もかからずに復活するとは、流石に貴方をしても思い至りませんでしたか」
「流石に…な。アレは我の手にも余るやもしれん」
「それは、恐ろしいですが…」
例えそうだとしても、もう私達は過去には戻れない。
「計画を前倒しするしかあるまい」
「支部長ですか…上手く行きますかしら?」
冒険者ギルド・離国支部を任された女傑。
この終の地に流されて尚、復権と栄転の道を諦めていない字亞羽の番犬。
我々が生き残るための偽装工作*1は今回の植物の細胞までも生き返らせるあの【水】の奇跡により完全に破綻しました。
単なる奇跡では済まされないこの
「幸いにも、一応はアレも
いつに無く歯切れの悪い私の騎士。
その様子に、私はそこはかとない不安を感じるのでした。