「ちょっと面白い事になってきたぞ」
「グーポポン♪」
久々にたんまりDPを稼げそうな気配を察知した俺は、タブレットの映像を壁面に投写した。
やっぱね、大画面で見ると映画感覚で楽しいんだよね。
胡座をかいて座ると、その上にコーちゃんが乗ってくる。人間だった頃は猫のコーちゃんがよく乗ってきたんだよね。
嬉しいけど地味に重くて不快感がある猫椅子。どうしてもキツくて長時間は無理だったんだけど、今の俺なら何時間でもスライム様の座椅子になれる。
「クポぽぽ…」と核から泡を放出してご満悦なコーちゃん。その核をコショリながら、ぼんやりポップコーンとコーラが欲しい気持ちになった。
そんな俺の些細な望みを敏感に感じ取ったコーちゃんがポン菓子とおしるこを生み出してくれたんだが。こぅ…コアからにゅるっと吐き出すような、ドラえ○んの4次元ポケットみたいなやり方で出されるとなんか生理的にキツイし、そもそもポン菓子と缶のおしるこって………。
……………あ。
「コーちゃん、有難う」
良く出来たコアの気遣いに、あふれる涙を堪えきれなかった俺は、とりあえずブツを口に含むと同時にDPに還元しつつダンジョンの様子に目を凝らしたのだった。
温泉ダンジョン1階。
今、俺のダンジョンには2つの派閥が存在している。
「後発の分際、なにより
久々にダンジョンに来店したにも関わらず、堂々とした俺様ムーブを発揮してブイブイ言わせる鉄子。
相変わらずの鎧と鉄兜。
それ…臭くないの?
剣道着とかでもヤバイんだろ?
絶対にキツイと思うんだが…ww
「そうだそうだ!」
「偉そうにして!」
「イヌイ君はみんなのDMなんだぞ!」
囃したてるのはアシレーヌを筆頭とした奴隷軍団。
(トーマくん不在時には何故か知らんが奴隷の中でも最下層の戦闘力しかないアシレーヌが集団のまとめ役として機能する事が多い。たぶん副官的なポジションにいるメルティの武力がエグいから従ってるんだと思う。恐怖政治だね)
「奇跡の前に愚を正す、俺ぁ馬鹿だがその程度の分別はある。だいたいよぉ? 神すら超越する奇跡にあやかっておきながら、なんだテメェらの危機管理の脆さはよぉ!? その無能を埋めるために手助けしてやったんだ。木偶の坊が無駄口挟んでんじゃねぇよなぁ!!」
対するはシブちゃん&エルヴァさん。
エルヴァさんの腕の中で元気にはしゃいでる赤ちゃんの笑い声が場違いで草ではあるが、ひょっとしてこの世界って保育所とか無いんかな? よくよく考えたらダンジョンに赤子連れとかヤバない?? おばあちゃんの家でも親戚の家でも良いから預けなよ。
危ないよ??
『カタカタ…カタカタカタ!』
後ろでカタカタ骨を鳴らしてるのはダンジョンの外から死霊術で連れてきた無数のガイコツ。
これが結構凄い。
前世で恐竜の化石とか好きだった俺からすると普段と違う意味で興奮する。人骨の他にもクッソデカくて長い蛇のスケルトンとか、リザードマンっぽい推定魔族のスケルトンとか鳥とか獣とか盛り沢山。よくもまぁ短時間でこんだけの骨を集めたよ、まるでハロウィーンだぜケケケケェーーー!!
数で言えば3対1で奴隷軍が優勢なんだけど、スケルトンはアンデッド…つまり疲れ知らずだし、もし戦闘が勃発したとして、奴隷軍団が一人死ねばアンデッド軍団にフレッシュなゾンビが1匹加入する事になる。
これは、良い勝負になるぜ…ゴクリ。
「喪女が」
明らかに童貞臭いカホリを嗅ぎとったのか、鉄子の先制攻撃がシブちゃんを襲う!!
「鉄面ブスが」
ピカピカ綺麗に生まれ変わった顔の左側を撫でながら、引きつった笑顔で反撃したシブちゃんの一撃が痛烈に刺さる!!
「姉御を馬鹿にするな!!」
アシレーヌの言葉に奴隷共が追従し、野太い声で「そーだそーだ」と大合唱。
「そちらこそ、お姉様に謝罪しなさい、地に頭を擦り付けて…!」
術者であるエルヴァの怒りに反応し、後ろのスケルトン達のカタカタがガタガタレベルにクラスチェンジ。
よしよし、外野も良い感じてヒートアップして来ましたぞぃ! 大量DP…大量DP!! オラ、ワクワクして来た!
「擦り潰せ」
「死を振りまけ」
開戦を告げる言葉。
血が舞い、肉が踊り、骨が鳴る。
いいねぇ。
これぞダンジョン!
しかも俺の懐は何一つ痛まず、人類同士で勝手に傷付けあって勝手にDPを生み出してくれるボーナスステージ!!
これぁ魔族の血が騒ぐってもんだぜ。
ヒャー!!
そこだアシレーヌ! クソ雑魚!! そこで蹴らなきゃお前の短い足の意味が無いやろがぃ! 相手は最下級の人骨スケルトンやぞ? お前の筋肉は飾りかボケナスぅ!!
…って、鉄子お前!
奴隷を椅子にして優雅にティータイム!?
その食器セットどこから出したんだヲィ。
ウハッ!?
こっちではメルティ大暴れしとるやん! 骨ヘビと互角とかガチか!?
体積=強さじゃねーのか?
骨だけになってても小山サイズの骨ヘビちゃんと単騎で殺り合うとかパネェぞ、流石はオネェ。
オネェの火力は無限大か、この勇姿を見ればきっとトーマくんも惚れ直す…ww
くそ、マジで楽しい!
もっと行け! サボるなアシレーヌ! 泣く暇があったら拳を振るえ! 貴様は俺のDPの為に死ぬのじゃwww
ーーーて、気付いたらエルヴァたんと赤ちゃ〜んのオッパイタイムが始まってる。骨クマのあばら骨をパッカリ開き、そこに腰掛けて授乳中。
なんか、アイアンメイデン×聖母マリアみたいな絵になってて胸焼けするから俺にもちょっとだけ口直しにオッパイ直飲みさせてくれんかな? ダメか??
「グー、クロロホポン?」
んーーー?
あ、そうか。
コーちゃんナイス!
お掃除スライム増員しなきゃね!
少しでも血肉の回収効率上げないと勿体無い。
まずはお仕事。
最低限やることやってから遊ばなきゃダメよな。
取り出したタブレットからポチポチとスライムを選んで召喚して行く。
コアがスライムだからかな?
やたらコスパが良いんだよね。
流石はコーちゃん。
愛してるぜ〜♡
◆
ーーーさて、今回の騒動そもそもの発端はエルヴァさんが使役したスケルトン達のフォークダンスにある。
当初は俺への精神攻撃だと思ってたんだけど、シブちゃんとエルヴァさんは俺に深く深く感謝してたらしくてな? 俺の住処があんまりにもあんまりだから警護のつもりでスケルトンにフォークダンスさせてたらしいんだわ。
(たぶんオマケで用意したレトルトのお粥が効いてるね。こっちの人からすればよほど美味かったらしくて泣きながら食べてたもん、やはり胃袋。人間は胃袋を掴むのが最高率…!)
…それを知らずにスケルトン退治に乗り出したアシレーヌとゆかいな仲間たちがボコッボコにヤラれてた(その時はたまたまトーマくんもメルティも居なくて、居合わせた奴隷連中の戦力レベルどいつもこいつもがゴミカスだった)のには正直ワロたんですけど、まぁ置いといて。
んで、なんか安全になる
犬小屋を囲むようにして。
いや、ホント俺は頼んでないのよ?
警備とかも別にな? 偉い人も言ってたでしょ?
「殺生与奪の権を他人に与えるな!」と。
何が言いたいかと言うと、いつまでも鉄子に首輪握られてる俺じゃねーって事。
逃げようと思えば一瞬で3階までワープ出来るようにしてあるから今更警護なんて必要ないし、神殿なんてもっといらん。
イランのですが。
「どうかお願いします!」
「イヌイ様の御所の建立をお許しください」
「我ら染痣の、心の拠り所を…なにとぞ!!」
なんて言われたら悪い気はしないですし?
「良きに計らえ!」
な〜んて言っちゃうのは仕方ないですよね。
ビバ! モテ期!!
そんな感じで毎日を楽しく過ごしてたんだけど。
日に日に人骨は増えるし、人骨以外にも大蛇やら熊やらのレベル高めなスケルトンも増える。
親戚なのか、シミ仲間のグループでもあるのか知らんがシブちゃんの知り合いの女子(←ココ重要!!)が時々ポロポロ温泉に来るようになって個人的にはかなり充実してたんだけどね。
ほら、人間って醜いじゃない?
利権を争うのは人の世の常。
温泉を販売して利益を得たい奴隷連合 vs 俺を崇める宗教団体を設立して利益を得たいシブちゃんのシミ仲間御一行の軋轢は日に日に増加。
結果として大乱闘が開催された訳ですわ。
いや〜。
本当に人間ってお馬鹿♡
馬鹿可愛いってこう言うのかね?
本当に今日の儲けは最高だったし、なにより楽しかったからね! 毎日戦争してくれwww
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【ペリアの牙】
それは第二次神龍大戦で敗北した『地なる焔龍神アグナ・グナル』を封ずる石柱。
現世とは異なる次元に12本の柱が存在し、その全てが『天なる水龍神ペリア・ナハル』の祝福により七色に
祝福は祝福であるが故に解呪や破魔の影響を受けず、対象の魂を完全なる楽園へ封じる。
楽園。
そう『完全なる』楽園だ。
術の対象となった存在以外は完璧であると定められた祝福の牢獄。
囚われたアグナ・グナルは少しずつ壊れていた。
楽園の中で唯一、完璧では無い己の存在。
必然その重圧は己へと向かう。
自壊する自我を知りながら、出口の無い楽園に拘束され、抜け出すための意思すらも剥奪された永遠の世界。
自傷だけが。
自壊だけが世界に抗う術で。
「このまま、しぬまで、このまま、しぬまで…」
変わらない。
変わらない。
変わらない。
変わらない。
変わらない。
世界は、
何一つ変わらない、
永遠の楽園
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ポ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ポ…………ン………………………
「………?」
何かが、響いた。
違和感が、あった。
泡が弾けるような、音。
完璧に完成した楽園に。
己以外の異物を。
「きたれ………」
間違いなく。
それはある。
「きたれ、きたれ、きたれ…!!」
知る。
この、世界は、完全では、無い。
「 」
ソレは。
今の敗神アグナ・グナルは。
焼け焦げるような魂の渇望を。
己に残された全てを、ソレに賭けた。
はい。
そんな訳で書き溜め終わりです。
もし時間に余裕がありましたら、
「ここは良かったよ」とか、
「これが悪かったのでは?」とか、
教えていただけると有り難いです。
この先の話も一応考えてはいるのですが、続きを書けるかどうかは不明なのであしからず。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。