孫にせがまれて猫マップを作ることにした

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※本作品に登場する地名、人物は全てフィクションです。


第1話

猫は可愛い。

私に子供や孫が居なければ世界で一番可愛い存在だと声を大にして言っていただろう。

異論は認める。

母と3年前に先立った妻が猫アレルギーだったせいで独身時代にしか飼えなかったが

 

そんな猫は近所でも当然見かける。

この世に生を受けて72年と数ヶ月。

それだけの時間を過ごしてきたこの街にいつ、どこで猫に出会えるかはある程度はわかる。

とは言え、その情報を言葉や地図に書き込んで他人に伝わるような形に落とし込むことはしなかった。

 

 

だが今年の4月に小学校に通う事になる孫にせがまれたのだ。やらない選択肢はない。

この町の地図を広げて猫が出るおおよその場所に鉛筆で印をつける。

 

そしてそのあたりで撮影した猫の写真を印のそばに置く。

刑事ドラマで似たシーンを見たことがある気がする。やはりやる事はみんな一緒か。

 

そんなどうでもいい思想を打ち消しながら写真の猫と出くわした時間を書き込む。

こうなるとわかっていたらカメラに時間表記させて置けばよかった。機械に詳しい息子に聞いておくべきだった。

 

×番地のこの家の塀の上を昼頃にタマがよく歩いていく。孫のいる家からも遠くない。(名前は便宜上、私が勝手につけた)

 

この川沿いにはむぎが2時頃に見える。昼食を摂ったあとならここから孫がこの地図を頼りに猫を見つけるのかもしれない。

 

〇番地のここは5時45分にミケがでる。だがそんな時間に孫は行けないだろうし万一これのせいでそこに向かわれても困る。

この情報は伏せておこう。

 

△公園の切り株にきなこがよく座り込む。眉毛みたいな頭の模様が可愛らしい。孫もきっと気にいるだろう。

 

この神社の階段にいたマロンは・・・駄目だ。9年前に死んでしまったから孫には見せれない。

そうか、もう9年も経つのか。時間が流れるのは本当に早い。

何度も考えが関係ないところにそれて時間を無駄にしてしまう。こういうのも悪くはないが、やりすぎて孫を待たせてはいけない。

 

思考を猫に戻す。

 

それからも私は地図に猫を見つけた場所と時間を書き込んだ。

後からマロンのように既に死んでしまった事を思い出して修正することも何度かあったためか思ったよりも時間がかかってしまった。

 

せっかくだからどのルートで行けばいいかも考えてみるか。

 

そう思って小一時間かけて経路も考えて書いてみたが、幼い孫がその通りに動けるとは思えないし、仮にその通りになったとしてあの子が楽しめるとは思えないので結局やめた。

 

無駄なことばかり考える自分が嫌になる。

 

そんな事ばかりしてるから気づいたらもうこの歳になっているのだ。

 

溜息を付きながら私は完成した地図をファイルに入れてから鞄にしまう。

明日これを孫に見せよう。

喜んでくれたらいいのだが。

 

 


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