大学受験舐めてんのか   作:オカルトって面白いよね・蠱毒とか

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第25話 不自然にならないように意識する その時点で不自然である

 Aクラスでクラス間競争が行われ、結果最下位であるはずのDクラスから思わぬ逆襲を受けることになった中間テストから1月ほど。

 特に大きなことが起こることもなく、司は以前とあまり変わらぬ日々を過ごしていた。

 

 強いてあげるとするならば、クラスメイトのことを知るために多少はクラスメイトとの交流を増やしたというぐらいか。

 とはいえそれも大した量ではなく、席が近い相手に時折雑談や勉強関連で声をかける程度で、神室や松下相手にしているような関わり方は出来ていない。

 

 そもそも2人への司の現状での関わり方が特例のようなものなのだ。

 同じく交流を深めている椎名相手でも、司は神室と松下にしているような教え導く接し方はしていない。

 2人にそうした接し方をしているのは、2人が司と高円寺の再会に居合わせ、その結果として司の思考をある程度まで知ることになったからだ。

 

 それ以外にしていることと言えば、相変わらず学校内の情報収集を傍らに好きな情報を収集したり本を読んだりトレーニングをしたりしている程度だ。

 学校に対する情報収集も、6月に入ってからは特殊なことが起こっていないために4月5月で収集した情報以上には集まっていない。

 

 むしろ外部に関する情報収集、前世で発生し司自身も経験した大規模な疫病の初期段階らしきものの情報だとか、あるいは前世とは違って延期されずに開催される予定五輪だとか、その辺りについての方が捗ったぐらいだ。

 疫病に関しては、司自身何度も身内には警告を出しているので前世ほど後手後手に回ることは無いだろう。

 

 そして日曜日に初日を迎えた7月。

 新しい騒動の幕が開けた。

 

「はい、こちら土門」

 

 部屋にいた司は、端末にかかってきた電話に出る

 ちょうど部屋に設置した器具に片手でぶら下がりながらスマホでニュースを見ていたため、すぐに電話に出ることが出来た。

 なお奇行ではなく、普通にトレーニングをしていただけである。

 

『あんた7月分のポイント振り込まれた?』

「ん? まだ見てないけど。

 ちょっと待ってな。あ、それとおはよう」

『おはよう。あんたも確認してほしいんだけど』

「神室さんがそう言うってことは何か起きてるってことなんだよなあ、っと」

 

 何やら要件がありそうだったので、トレーニングは一旦中断して地面に立つ。

 神室に言われた通りに司がプライベートポイントを確認すると、先月からの増減はなし。

 ポイントの履歴にも7月分のポイントが振り込まれたという記録はなかった。

 

「振り込まれてないね。神室さんの方も?」

『あんたもそうなのね。私も振り込まれてなかった。

 何かの手違いだと思う?

 それかシステムが故障してうまく振り込めなかったって可能性もあるけど』

「システムを組んでるだろうし、送金側の手違いっていうよりはシステムのエラーじゃないかな。

 流石にこんなシステムを管理してるんだからクラスポイントの増減もプライベートポイントを支給するのも人力じゃなくてシステムでやってるだろうし」

『ならそれが故障した、とか?』

「その可能性はある、けど」

 

 神室の意見も一理ある、というか可能性としてはそれが1番高いだろうが、どうもしっくりこない。

 

『何? 思いついたなら言って』

「学校側からアナウンスが無いのが不思議だなと思って。

 システムがエラーを起こしてるとしたら、俺と神室さん以外にも被害者がいる可能性が高いでしょ?

 というか俺達2人だけが被害を受けてるとかむしろ考えづらいし。

 一応お金の代わりなんだし、学校から告知があってしかるべきなんじゃないかな」

『それもそうね……なら、それ以外の理由?』

「どうだろ。色々想像は出来るけどどれも根拠が無いからなんとも。

 まあ明日学校に行って真嶋先生に確認すればわかると思うし」

 

 電話の向こうからはしばしの沈黙。

 その間に司も色々と確認してみるが、クラスポイントの表示が0になっているようなこともなく、何故振り込まれていないかは謎だ。

 クラス用のメッセージグループもあるのだが、全員で仲良しとはいかずむしろ派閥に別れて対立しているためかほとんど活動していないので、そこに他のクラスメイトから情報が送られてきている様子もなかった。。

 

「神室さんが何か買いたくてポイントがなくて困ってるとかじゃないなら、明日学校で確認しても良いと思うよ。

 いつもは朝に振り込まれてはいるけど、別に時間が指定されてるわけじゃないから今日の夜までに振り込まれる可能性もあるし」

『確かにそうね、わかった。

 わざわざ手間かけてごめん』

「こちらこそ、教えてくれてありがとう。じゃあね」

『うん、ばいばい』

 

 神室が電話を切り、それを聞いてから司も電話を切る。

 そしてそのままパソコンを設置している机につくと、キーボードを引っ張り出してメールの文面を考える。

 

 神室には明日まで待つようにと言ったが、それは彼女の場合は明日にならなければ教師と連絡を取ることが難しいからだ。

 だが司の場合は、個人的に手に入れた真嶋のアドレスがある。

 すぐに返事が返ってくるわけではないが、どちらにしろ確認しておきたいことなのでメールを送っておくことにしたのだ。

 

「……そもそも、これ学校側からの告知の連絡とか受け取ったことあったか?」

 

 と、そこでメールの文面を入力していた司は、ふと思いついて手を止める。

 

 例えば企業の提供しているアプリであったり、企業が情報を一方的に公開するものではなく、利用者が情報やアカウントを登録して使用するタイプのサイトなどは、何かしらがあればメッセージやお知らせという形でそれを通知してくれる。

 それが登録したメールアドレスにメールとして届くか、あるいはサイト内のお知らせに届くかはそれぞれだが、何かしらの形で周知がされる。

 

 だが一方で、この学校の場合、端末自体は学校から提供されているし初期登録としてアドレスも提供されるものの、そこに学校側からの連絡を受け取ったところは今のところ無い。

 企業用や大学用のアドレスに近いものだと司は考えているが、それをあくまで生徒がそれぞれに利用しているだけで、学校側から試験の通知やクラスポイントの変動通知、プライベートポイントの振込に関する通知があったことはない。

 

「そのあたりも確認しておくか」

 

 そもそも全てがオンライン上で完結するサイトやアプリと違って、この学校は学校での対面が基本であり、むしろメールアドレスなどはネット利用などを制限するための一環でしかないのかもしれない。

 制限があるという情報自体は入手していたが、それを学校側がどう活用するかなどは、まだ司は真嶋に確認をとったことがなかった。

 

 そのことについても文面に含めて、メールを送信する。

 

「これで取りあえずオーケー、と。よし、トレーニングに戻るか」

 

 送信が完了したところで、中断したトレーニングの続きに戻る。

 プライベートポイントが振り込まれていない現状は、学校側のシステムの状況について確認するのにちょうど良いタイミングだが、それについて司が考察を重ねるよりは、聞けるだけ真嶋に確認してからの方がはるかに早い。

 そのため今は日課をこなしておくべきだと判断したのである。

 

 そうして真嶋からの返信を気長に待った司だが、その日のうちに真嶋からの返信はなく、またプライベートポイントが振り込まれることもなく。

 ことは明けて月曜日の学校へと持ち越されることになった。

 

 

 

******

 

 

 

 結論から言うと、プライベートポイントの振込が行われていない件については、7月2日月曜日の朝のホームルームにおいて真嶋から説明があった。

 

 まず説明が行われたのが、6月分の変動を反映した現在の各クラスのクラスポイント。

 今のところクラスポイントの変動は授業態度及び生活態度による減点と、中間テストによる加点のみが行われているが、それらは全て月始めにまとめて処理されるようになっている。

 つまり月の半ばでクラスポイントが変動することはなく、全てこのタイミングで発表される仕組みになっていた。

 

 そのため司が想像しているようなメールによる詳細な通知などは必要ない、と考えているのが学校側の姿勢だと、後に帰ってきた真嶋からのメールで判明する。

 システム自体はあるが、学校がありクラスがありホームルームという学校側と確実に連絡事項の伝達が出来る場がある以上、端末の学校用のアプリケーションやメールアドレスを利用した通知は必要ない、という姿勢のようだ。

 

 そこについては、司は大学をイメージしていたのでメールやアプリ内のお知らせが欲しいような気もしたが、そもそもこの学校はかなり生徒に対して情報を隠している。

 むしろ必要な情報を収集することこそ必要な能力と考えている節があるため、それを体感させ育むための環境を作っているのだと司は考察する。

 

 今回のプライベートポイントにおいて発生している異常事態も、教師からの説明はホームルームという機会を待ったが、質問に来れば答えるつもりではあったようだ。

 現に一部の生徒は朝の段階で職員室を訪れている、というのが真嶋のメールから確認できた。

 

 そしてその異常事態の内容だが、その場では詳細には語られることはなかった。

 何やらクラス間での揉め事が発生しているため一時的に振込を停止し、情報を収集しているとのことだった。

 そして翌日になってから更に詳細に説明されたところによると、CクラスとDクラスの間で生徒同士の喧嘩が発生し、その処理が終わっていないことが今回の異常事態の原因のようであった。

 

「CクラスとDクラス……。

 こんな学校に来てまで暴力沙汰なんて、まるで不良ね」

「神室ちゃんきびしいねぇ。までも、わかるように暴力を振るうなんて考えづらいよな。

 それとも下のクラスの連中はそのレベルってことか?」

「……さっきも言ったけど、なんであんたがいるわけ?」

 

 昼休み。

 学校内での喧嘩、暴力沙汰という出来事もあって、司と話そうと昼食をともにとることにした神室だったが、その2人の姿を見つけた橋本が自然と相席し、3人で食事をする形になっていた。

 

「偶然よ偶然。神室ちゃんと土門が飯食ってるの見つけたから、俺もご一緒しようと思ってね。

 今日は姫さんにも呼ばれてないし。

 まあでも放課後からは情報収集させられんだろうなあ」

 

 橋本がいるため司はいつもの様子を垣間見せることはなく、神室はそのことを不満に感じている。

 その文句をこうして橋本に向けてはいるものの、神室が直接『消えろ』とは言わないため、橋本はサラリと流して居座ってしまっていた。

 

「偶然って……。普段は絡んでこないでしょ、あんた」

「毎日1人で飯食うのも寂しいからね。

 たまにはって思うわけ」

「はぁ……」

 

 神室がため息をつくが、橋本はしれっとした表情で食事を続ける。

 そもそも橋本がこうやって2人に相席しているのは、当然ながら偶然ではない。

 以前から司への探りを入れるようになった橋本は、司と神室が2人きりになる機会を待っていたのだ。

 

 橋本が司の能力の高さの片鱗に気づいた頃にはテスト期間は終わっており、橋本が探りを入れようとしても司と神室は一緒に勉強するのをやめており、なかなかその機会を掴めなかった。

 

 2人の個々に対する探りは当然いれてあるし、2人だけの場に橋本が割り込めば2人が普段の様子を見せるわけがないということは橋本とて気付いている。

 というかすでに幾度か似たようなことをした結果知っている。

 ただ個々に入れた探りがほとんど何もなく躱されている以上、例え隠されるとしても2人の間にある空気感などから手がかりを得たい、というのが橋本の意図であった。

 

 橋本がそんな無茶な状況に追い込まれているのは、司が神室と松下に独立した勉強を教えた後は、土日を除いて放課後や昼休みに時間をともに過ごす機会を大きく減らしたからだ。

 たまに図書室や空いている教室で勉強や読書を共にしていることはあるものの、橋本とて暇ではなく常に監視できるわけではないためしっかり観察出来るわけもなく、普段と雰囲気が違う程度に認識することしか出来ていない。

 

 そうした行動の変化の結果として、普段事情を知る面々で会う機会を減らした分何かしらあればすぐに電話やメッセージで連絡するという方向に2人、否、松下も含めた3人の関係性は変化しているが、それは橋本が気づきようがないことである。

 

「ちょっと」

 

 『あんた、どうにかしなさいよ』。

 言葉とともに神室が司に向けた視線はそう訴えているが、残念ながら司でも神室の要望は叶えられない。

 

 そもそもこの場面において、橋本を排除する強制力は2人にはない。

 外の社会で恋愛関係にある2人が甘い時を過ごしていたとしても、無粋者が割り込むことは簡単に出来てしまうし、それを排除するのは困難だ。

 当然2人きりで秘密の話がしたいから消えろ、と告げたところで橋本が無視すればそれまでであり、かつ司も神室もそんなことを橋本に言うほどに彼に対する敵対心を見せることは出来ない。

 

 こういう他者との関係では、無闇に関係を悪化させたくないだとか、表面上はそれなりな関係を取り繕いたい日本人の性質も相まって、図々しくやりたいようにやったほうが得するものなのである。

 それを避けたければ2人が解散して別の機会を設けるしかなく、そして橋本が追ってしまえばそれも難しい。

 

「しかし、暴力沙汰ねえ。

 この学校だとどういう扱いになるんだろうな?

 土門はどう思う?」

 

 神室の視線を流して、橋本は司に話を振る。

 神室がわざわざ司と時間を共にしているならば、今の司は何かしら神室が求めるものを持っている。

 それが今回の件に対する情報なのか、あるいはそれ以外の何かなのは橋本では想像もつかないが、しかしそれは今司が確実に持っているものなのだ。

 

「俺? 俺はあんまりそういう暴力沙汰とは遠い学校だったからなあ。

 この時代にもなって普通に高校生が喧嘩で殴り合いしてるってことに驚いたな。

 2人の中学校とか、そういうの普通にあったの?」

 

 橋本の疑問を反らし、そもそも状況についていけてません、と振る舞う司に、神室は彼の考えを聞く機会が潰えたと知って深い溜め息をつく。

 しかしながらそれを態度に出してしまえば橋本に違和感を抱かれる、と考える程度には神室は聡い。

 結果、若干不機嫌にしながらも司の話に付き合うように問いに答える。

 

「うちの学校はほとんど聞かなかった。

 けど近所のそういう生徒が多い学校は普通にあるって話は聞いたことがある。

 学校によるんじゃない?」

「俺のところは割とあったぜ?

 普通に部活やってるやつでも平気で手が出るやつもいたしな。

 普段から遊んでる奴らなら有り得ない話じゃないと思うけどな」

 

 司とは違って都会の学校に通っていた2人は、学校自体がそれなりの規模なのでいろいろなタイプの子供を知っているし、場合によっては近隣の校区の生徒の話も聞いている。

 一方で司は前世も今生も僻地の学校に行っており、隣の校区は車で数十分というレベルの場所だったのでそもそも今生の時代の一般的な子供について、体験としては詳しくないのだ。

 

「そんなもんなのか。

 遅れてんなあ」

「何が?」

「いや、何もないよ」

 

 前世と比べると暴対法の設立が遅れてることもあって、まだ社会に暴力が幅を利かせている時代が続いている日本。

 暴対法が施行されれば子供がそういう暴力側の人間と接する機会も減り、ある程度は抑制されていくのだろうが、それには最低でも後数年は待たなければならない。

 司がそのことを家族に漏らしたところ、今そちら方面で色々と進めている最中ではあるらしいが、まだ公に議論される段階にものぼってはないようだ。

 

 その後も会話の中で橋本はさり気なく探りを入れるが、司はのらりくらりとそれを躱す。

 『話すつもりがない』以上の情報を引き出せないからこそ黙秘権なんてものが強烈に機能しているわけで。

 

 そこを司から引き出す能力は、今の橋本にはなかった。

他のキャラクター視点(一人称の地の文という意味ではなく、司がいない場面で、ということ)での描写を読みたいですか? 例えば松下が中間試験への対策に奔走する姿を松下視点で書くのか、あるいはいつも通り司が後から聞いたという形で書くのか。司という異物への、司が居ない場面での反応(例えば神室と松下が2人で話してる場面等)も含めて、視点を統一するべきか色んなキャラの目線を書くべきか悩んでいます。

  • 司中心で、司が見聞きした情報で良い
  • 他のキャラクター視点の情報もみたい。
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