どっちも好きな作品なので興味をそそられますね。
中華連邦艦隊前衛部隊の艦橋には緊張が走っていた。
「海面に異常発生!濃霧が急速に接近しています!」
「馬鹿な、これほどの速度で発生する霧があるものか!」
白い壁は瞬く間に前衛艦隊を飲み込み、視界を奪っていく。
「レーダーにノイズ発生!索敵ができません!」
「旗艦との通信途絶!」
「旗艦との通信は!?」
「応答ありません!」
艦長は舌打ちする。
前衛部隊は完全に孤立した。
後続艦の姿は見えない。通信も繋がらない。自分たちが今、どこにいるのかすら正確に把握できなくなっていた。
「機関室より通信!」
「なんだ?繋げろ」
「直結回線を開きます!」
中継艦の艦橋スクリーンに、歪んだ映像とノイズ混じりの音声が流れ込む。
『こちら機関室……冷却系に異常発生。現在機関部は不安定な状態にあります』
「なんだと?どういうことだ」
艦長の表情がわずかに動く。
『確認したところフィルター………塩らしきものが付着………それが詰まって換気系統の効率低下……内部温度上昇中………おそらく、蒸気と化した海水が換気口を通った影響かと』
通信は途切れ途切れだった。
艦内に充満する蒸気と熱が回線そのものを乱していた。
「主機は?」
『出力をなんとか維持していますが……冷却に余裕が…長時間運転は望めません』
「なっ」
艦橋が一瞬静まる。
それはつまり、“この艦はやがて動かなくなる可能性がある”という意味だった。
「復旧は可能か?」
『可能ではありますが……蒸気の範囲から離脱しないことには………』
「………わかった」
通信を終えた艦長は指示を出す。
「回頭してこの霧から離脱せよ!」
霧から抜け出すことを選択したはいいものの、レーダーが使えず、周囲の白い壁によって視界が数百メートルから数十メートルまで落ちていた状況下では、見張り員を配置するという一昔前の方法で索敵を行うことを余儀なくされた。
その時、見張り員の叫びが艦橋に届いた。
「左舷上空に動く影あり!」
全員が窓の外を見る。
蒸気の壁の向こう側を、一瞬だけ赤い影が横切った。
人型だった。
翼を広げるように空を滑空する、赤きナイトメア。
「馬鹿な、ナイトメアが飛んでいるのか!?」
「対空砲火!」
砲術長が命じる。
しかし敵は既に蒸気の中へ姿を消していた。
次の瞬間、轟音が艦橋を揺らす。
一発の砲弾が炸裂音と共に蒸気の壁から飛び出して来て、通信マストを正確に撃ち抜き、巨大なアンテナが火花を散らしながら海へと落下した。
♢
制限時間はざっと二十分か。
蒸気の壁の形成は、あくまで始まりに過ぎない。
本命はここからだ。
敵の視界を奪っただけでは意味がない。人は見えない敵を前にすれば、まず情報を求める。
通信によって味方の状況を確認し、レーダーによって敵の位置を探り、そこから次の行動を決定する。
ならその全てを奪えばいい。
フロートシステムの推力を微調整しながら、蒸気の壁の中を滑空する。
白く染まった視界の中で、電子戦システムだけが敵艦の位置を正確に捉えていた。熱源反応と各種センサーによって描き出された戦場は、敵のものではなく、既にこちらのものだ。
敵はこちらを探しているが、こちらは既に敵の居場所を知っている。
最初から対等な戦場じゃない。
敵艦の上空を通過しながら、モニターへと視線を向ける。
通信設備とレーダー設備を確認。
迎撃能力は限定的。問題はない。
大型キャノンを構える。
引き金を引いた次の瞬間に砲弾が発射される。
―――ドゴオオオン!
砲弾が命中し、敵艦の上部に林立していた通信設備が爆散した。
アンテナの量からして艦隊情報網の要である中継艦だろう。
アンテナを破壊したことで他の艦と通信不能になる。たったそれだけのことだが、その意味は決して小さくない。
これは持論だが、孤立とは単に一人になることを意味しない。状況を把握できず、自らの判断だけで行動を強いられることだ。
通信能力を失った艦隊はもはや艦隊ではない。連携が取れない以上、ただ同じ海域に存在しているだけの艦艇の集まりに過ぎない。
ただ、それはこの霧がある時だけの話だ。
計算ではあと二十分でこの霧が晴れる。それでは何の意味もない。
戦力が残っている以上、時間をかければ艦隊は立て直されるだろう。
海水の蒸気が艦内に侵入して機関部に影響を与えるだろうが、止めるには確実ではない。
だからこそ、次に奪うべきものは艦隊として戦うための機能そのものだ。
続けざまに大型キャノンの照準を推進器がある船底部へと合わせる。
引き金を引いた次の瞬間、敵艦の後部で爆発が起こり、その場に停止した。
撃沈する程の規模ではないが、止まれば十分だ。
二射目で穴が空いた艦艇は浸水が始まっているだろう
甲板の上で乗組員が慌ただしく消火作業を行っている。
使い物にならないのならまだしも、動かせる可能性があるのなら消火作業と復旧に回るしかない。
通信に指揮、戦闘継続が不能となれば、止めを刺すほどでもない。
「次だ」
次の目標へと向け、すぐさまマリスカスタムを移動させる。
今度は敵の火力を奪い、反撃の手段を減らしていく。
ミサイルコンテナを破壊すると、轟音と共にコンテナが吹き飛び、誘爆した炎が蒸気の壁を赤く染め上げた。
砲弾を撃ち尽くせば大型キャノンをその場で投棄。新型アサルトライフルに持ち変えて狙撃で対応する。
『敵機発見できません!』
『弾幕を張れ!』
ようやく攻撃を受けていることに気付いた艦隊が反撃を始めた。
だが碌に連携が取れていない。艦隊の目が潰されながらも、艦砲が火を噴く。
無数の砲弾が蒸気の海へ吸い込まれる。弾の無駄遣いだな。
敵にとって、この状況は異常そのものだ。
向こうからはこっちは見えない。
レーダーが機能しない。目視も不可能。
何機いるのかも分からない。どこから攻撃されるのかも分からない。そして、味方が今どのような状況に置かれているのかすら分からない。
分かるのは、蒸気の中から攻撃が飛んでくることだけだ。
情報を失った敵は、自ら情報を補おうとする。
だが、その焦りが判断を鈍らせる。
戦場において最も恐ろしいのは、敵の攻撃ではない。何も分からないという状況だ。
敵はこちらを探し続けるだろう。
だがその答えを与える必要はない。
敵が理解するべきことは一つだけだ。
まだ二十分も経っていないが、この数分だけで敵は戦場を把握するという最も基本的な能力を失っている。
次に奪うべきは、艦隊として行動するための力そのものだ。
♢
艦隊に新たな混乱が広がっていた。
「通信設備損傷!」
「敵機を捕捉できません!」
「機関部に衝撃!出力低下!」
「艦橋被弾!」
「レーダー基部破壊!」
「通信中継不能!」
「ミサイルコンテナで火災発生!」
「負傷者が出た!医療班急いでくれ!」
「どこだ。敵はどこにいる……?」
「左舷に動きが!」
「ただちに捕捉しろ!」
「駄目です。ロストしました!」
敵は同じ場所に留まらず、蒸気を利用して位置を変える。
反撃するときにはもうそこにはおらず、別方向から現れて別の艦に攻撃している。
深追いせずの
旗艦とも、後続艦とも通信できないまま、前衛部隊は十分以上もの間、完全に孤立したまま戦うことを強いられ、蒸気の中から神出鬼没に現れる敵に徐々に削られていく。
数が不明の相手に、前衛艦隊は翻弄されていた。
低空へ降下した紅い機体が海面すれすれからライフルを構えて現れた。
「衝撃に備えよ!」
放たれた一発の徹甲弾。
激しい衝撃と共に艦体が傾く。
警報が鳴り響き、艦内照明が赤へ変わった。
「機関部より報告!右舷推進器損傷!浸水を確認!」
「応急修理班を急行させろ!」
指示を飛ばしていた艦長はこの時違和感を覚えた。
窓の外を見やると、滑空しながら大型艦をする狙撃する紅い機体が見えた。
爆炎が上がり、大型艦が鈍く傾く。
だが紅い機体はそれ以上追撃していない。
なにかおかしい。
だがその疑問に答えられる相手はいない。
答えに行きついたのは霧の発生から二十分が経過した後だった。
白き蒸気の壁がゆっくりと薄れていく。
視界が戻ると同時に、途絶えていた通信機から次々と声が飛び込んできた。
『こちら第五艦!火災発生!消火活動中!』
『第七艦、航行不能!曳航を要請する!』
『第三艦、負傷者多数!医療班の支援を求む!』
『前衛部隊、陣形維持不能!』
そして最後に、旗艦からの通信が届く。
『前衛部隊の状況を報告せよ!』
艦長は双眼鏡を手に周囲を見渡した。
そこにあったのは、黒煙を上げる僚艦、停止した艦艇、救助活動を続ける味方の姿だった。
各艦では戦闘よりも別の任務が優先されている。
消火に負傷者の救助。浸水箇所の応急修理。
もはや誰も敵を追う余裕などなかった。
だが沈没している艦が殆どない。
艦長はようやく敵の意図を悟る。
「まさか……」
敵は艦を沈めるつもりではない。殲滅戦でもない。
通信を奪い、索敵能力を奪い、機動力を奪う。
戦闘継続能力の破壊。そして――艦隊の分解。
「艦隊という機能そのものを奪ったとでもいうのか?」
そして遥か彼方に、関門海峡へ向けて進軍するブリタニア艦隊が見えた。
場所は変わってブリタニア軍旗艦の艦橋。
「前方の視界が回復!」
「中華連邦艦隊を確認しました!」
オペレーターの報告に、艦橋の視線が一斉にモニターへと向けられる。
「被害状況は?」
「確認中です!」
完全に霧が晴れた時、そこに映し出された光景に誰もが息を呑んだ。
黒煙を上げる軍艦。火災の消火に追われる乗組員たち。停止したまま漂流する艦艇。浸水箇所の応急修理を行う兵士たち。
更に戦況図には赤いマーカーが並んでいた。
沈没艦ではない。損傷艦。通信喪失艦。機関停止艦。復旧作業中の艦。戦闘継続不能艦などだ。
動ける艦は前進、動けない艦は復旧、救助艦は後退に回っているようで、隊形は乱れ始めていた。
「中華連邦艦隊前衛部隊は陣形を喪失。一部の艦艇は航行不能、残存艦艇は救助及び復旧活動を優先している模様です」
「迎撃の兆候は?」
「ありません。前衛部隊は壊滅状態です!」
「撃沈数は?」
「確認できる限りでは、一隻です!」
「何?」
艦橋にざわめきが広がる。
「たった一隻だと?」
「はっ!その他は推進器や通信設備への攻撃によって、戦闘能力を喪失しています!」
「馬鹿な!」
幕僚の一人が思わず声を荒げる。
「敵は二十分もの間、孤立していたのだぞ!」
「この好機に一隻しか沈めていないとは!」
「やはりイレヴンに任せるべきではなかった」
「敵は混乱している!今なら一網打尽にできます!」
「敵艦隊を壊滅させるべきです!」
次々と上がる声に、コーネリアは静かにモニターを見つめていた。
その隣に立つギルフォードもまた、敵艦隊の様子を見つめている。
「ギルフォード、お前はどう見る?」
「正直に申し上げれば、私も敵の主力を叩く好機だったと思います」
「ほう」
「ですが、敵艦隊の状況を見る限り、これは単なる奇襲ではありません」
「続けろ」
「敵は既に戦うことをやめています」
ギルフォードがモニタの映像をズームさせる。
「ご覧ください。消火活動に追われる艦、航行不能となった味方を護衛する艦、負傷者を搬送する兵士たち。彼らは今、中華連邦艦隊として戦っているのではありません。味方を守るために動いています」
「つまり?」
「仮に今、敵艦隊を総攻撃したとしても、敵は九州防衛を諦めて我々を迎撃するでしょう」
その言葉に幕僚たちは口を閉ざした。
「しかし、現状では違います。彼らが優先しているのは味方の救助と艦隊の再編です。それを捨ててまで関門海峡を追撃することは困難でしょう」
コーネリアは小さく口元を緩める。
「なるほど。お前も気付いたか」
「はい総督」
そこへオーベルシュタインが口を開く。
「彼が攻撃したのは敵艦隊ではありません。敵の意思決定です」
「意思決定?」
「もし敵を百人殺せば、敵は百人を殺し返そうとするでしょう。しかし、敵に百人を救わせれば、その百人は戦場に立つことはありません」
艦橋に静寂が訪れる。
「おそらく、今回の作戦は最初から敵艦隊の殲滅を目的としていません。敵に自ら九州防衛を選ばせることが目的だったということでしょう」
幕僚の一人が何を馬鹿な、と言いかけたその時だった。
「報告!中華連邦艦隊の旗艦および後続艦、進路変更!九州ブロック方面への後退を開始しました!」
「何だと!?」
「関門海峡が開きます!」
艦橋で幕僚達がざわめく中、コーネリアは静かに九州の海を見つめたまま動かない。
これで確信した。
あの少年は敵艦隊と戦っていたのではない。
敵の判断そのものを相手にしていたのだ。
「中華連邦艦隊は自ら九州防衛という答えを選んだようです」
「見事、としか言いようがないな」
「総督?」
「たった一隻しか沈めていない。だが、敵艦隊の戦略を変え、九州防衛へと追いやった。敵艦十隻を沈めるよりも大きな戦果だ」
ギルフォードもまた、小さく頷く。
「戦場で最も恐ろしい敵とは剣の達人でも、名将でもありません。敵が自ら敗北への道を選ぶよう仕向ける者です。彼は、その類の人間なのでしょう」
オーベルシュタインは静かに呟く。
「もし敵艦隊の司令官が優秀であればあるほど、彼の掌の上で踊らされることになる。敵にとって、これほど厄介な相手もいないでしょう」
「………敵だけでなく味方にとっても、恐ろしい男だ」
紅きナイトメアが姿を消した海を見つめ、小さく呟いた。
彼女は基本的に正面突破を好む。力で敵を叩き潰す戦い方だ。
だが今、目の前で起きていたのはそれとは違う。
本来であれば、中華連邦艦隊の砲火を掻い潜り、甚大な損害を覚悟して海峡を突破するはずだった。
しかし兄のシュナイゼルが推した一人のイレヴンは敵を殲滅せず、敵艦隊を壊していた。もっと正確に言えば、敵艦隊という組織を解体していた。
この状況に、コーネリアは即座に判断した。
「全軍、前身を開始。直ちに九州への上陸の準備をせよ」
艦橋の空気が変わる。
「よろしいのですか?敵艦隊は未だ健在ですが」
「健在?」
参謀の一人からの問いに、コーネリアは小さく首を横に振る。
「敵は今も海の上にいる。しかし、もはや艦隊として機能してはいない」
通信を失い、索敵能力を失い、陣形を失った艦隊は、もはや戦うことができない。
「敵が混乱している今が最大の好機だ」
その言葉には迷いがない。
彼女は優れた戦術家だが、最終的には攻勢を好む軍人でもある。
「突破するぞ!」
「「「い、イエス・ユア・ハイネス!」」」
参謀たちが慌ただしく動き出す。
やがて、ブリタニア艦隊が静かに関門海峡へと進入を始める。
砲撃も迎撃もない。
ただ、波の音だけが海峡に響いている。
わずか二十分の奇襲作戦によって切り開かれた道を、ブリタニア軍はほぼ無傷のまま進軍した。
♢
関門海峡は開かれた。
動ける中華連邦艦隊は九州防衛へと後退し、コーネリア軍はほぼ無傷のまま前進した。
これでいい。
それこそが、この作戦が最初から用意していた答えだ。
モニターには前衛部隊の状況が映し出されている。既に艦隊としての機能は失われていた。
火災への対応、浸水箇所の応急修理、停止した艦を護衛するために戦力を割く艦艇。
そして、負傷者を搬送する乗組員たち。
気が付けば、彼らは敵と戦うことをやめていた。
いや、最初から戦っていなかったのかもしれない。
彼らが戦っていたのは、火災であり、浸水であり、自らの焦燥だ。
その状況を作り出すことこそが、この作戦の本質だった。
戦場において敵を倒すことは難しくない。圧倒的な火力を用意し、力でねじ伏せればいい。
だが、それでは敵の抵抗を招く。
敵は怒り、敵は反撃し、最後までこちらの障害となる。それは好ましくない。
必要なのは敵を倒すことではなく、敵に別の目的を与えることだ。
九州を守る。
味方を救助する。
艦隊を再編する。
彼らがそれらを優先した時点で、関門海峡という選択肢は消える。
そして、それは敵自身が選んだ答えになる。
もし彼らが追撃を選べば、こちらは再び奇襲を仕掛けるだけだ。だが、その可能性は低いだろう。
人は未知を恐れる。
敵は最後までこちらの数を知らない。こちらの目的も知らない。そして、再び同じ奇襲を受ける可能性を否定することもできない。
ならば、最も合理的な選択は一つしかない。自分たちが選ばざるを得なくなった、たった一つの選択肢だ。
――九州防衛。
その答えを、彼ら自身の意思で選ばせる。
それが、この二十分の奇襲作戦の最後の仕上げだった。
時計の針が二十分に近づいていく。
蒸気の壁は永遠には続かない。
だからこそ、この作戦に与えられた時間は最初から二十分だった。
短すぎることはない。長すぎることもない。
敵の選択肢を奪うには十分な時間だった。
ここでの役目は終わった。
必要な駒は、既に全て動き終えている。
ライフルを収納し、フロートシステムの推力を上げる。
後は、この戦場から姿を消すだけだ。
指定のポイントにいたアヴァロンへと帰還する。
着艦の衝撃が消えるのを待ち、コックピットを開く。
「機体損傷軽微!」
「フロートシステム正常!」
「エナジー残量三十五パーセント!」
「弾の補充を忘れるなよ!」
格納庫では整備兵たちが慌ただしく動き始める中、ロイドがいつもの調子で声を掛けてくる。
「お疲れさま~いやぁ、予想以上の戦果だったよ」
「こんなの予定の範囲内だ」
敵艦隊を相手にした以上、多少の誤差は想定していた。想定外だったのは、敵艦を一隻沈めてしまったことくらいだろう。
「何隻沈めたの?」
「一隻」
「あれ?もっと多いと思ってた」
「ミサイルコンテナの誘爆によるものだ。本来は不要な損害だった」
敵を何隻沈めたかに意味はない。
必要だったのは、敵に戦わせないことだ。
敵艦隊を殲滅する必要はなかった。敵を海の上に釘付けにし、戦闘よりも復旧と救助を優先させる。それだけで目的は達成できる。
戦争は、敵を多く殺した側が勝つわけじゃない。目的を達成した側が勝者になる。
ならば、必要以上の犠牲は不要だ。
「君って、本当に十五歳?」
年齢に興味はない。十五歳だからできることと、できないことがあるわけじゃない。必要ならやるし、必要がなければやらない。ただそれだけだ。
「今回の作戦は百点かな?」
「いや、八十点だ」
「即答だねぇ」
蒸気の壁は気象条件に左右される。電子戦能力もまだ不十分だ。何より、敵はこちらの存在を認識している。
改善点はいくらでもある。
「じゃあ、百点は?」
「敵が最後まで何が起こったのか理解できず、味方の損害ゼロで目的を達成した場合だ」
敵はオレたちの存在を認識し、迎撃を試みた。
つまり、まだ戦う余地を残していたということだ。
理想を言えば、敵は最後まで何が起こったのか理解できないまま、気が付けば関門海峡を突破されていたという状況になる。
それが最も合理的だ。
「普通はどうやって敵を倒すか考えるんだけどねぇ」
「敵を倒す必要はない。敵に戦わせなければいいだけの話だ」
勝つことは重要だ。
だが、勝利のために必要以上のものを求める必要はない。敵を倒すことが目的なら敵を倒す。敵を止めることが目的なら敵を止める。それだけの話だ。
戦場は力だけで決まるものじゃない。
どちらが有利な盤面を作り出すか。それが全てだ。
今回はこちらが盤面を支配した。ただ、それだけのこと。
まだ改善の余地はある。
次に同じ状況になれば、もっと無駄を削れるだろう。敵に何もさせず、味方に何も失わせない。それが理想だ。
――負けなければいい。
そして、勝つべき時には確実に勝つ。
オレが考えていることは、最初からそれだけだ。
戦場で勝つのではなく戦場そのものを壊すスタイル
キヨポンっぽくしてみたらこうなりました。