嵐と共に過ごす徒然とは程遠い日々   作:ムラムリ

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性癖に刺さっているモンスターは色々他に沢山居るんだけど、ただ隣に居て安心する、みたいなモンスターになるとクシャルダオラがピカイチなんですよねっていう再認識で、やっぱりこれ夢小説だなっていう。
何を今更……。


嵐と長旅に出まして 3

 翌日。無理矢理降らせた雨だったからか、浮かび上がった水はほぼほぼ乾いた空気に吸収されてしまっていた。

 もそもそと保存食を食べていると。

『さて……帰るか』

 クシャルダオラが伝えてきた。

「もう帰るのか?」

 他にも色々巡ってみて、時に竜やらにちょっかいを掛けたりとかもするんじゃねえか、と思っていたが、よくよくクシャルダオラを見てみれば、昨日とは比較にならない程の赤茶色の錆がクシャルダオラの全身を覆いつつあった。

『この塩気の近くに居るだけで、やはり錆はより一層進んだようでな。もう帰らねば、この地で脱皮をする事になりそうだ。それにこの程度の距離ならばいつでも来れるしな』

 この程度の距離……。人が往復に半年は掛かるであろう距離なんだけどな……。

「了解。それじゃ、帰りますか。

 距離の割には短い旅になるけれど、この光景を見ただけで十二分に満足ですよ、俺は。

 ……あ、後、土産に塩の塊を持っていくつもりだけれど、良いか?」

 俺からしても分かる、凄く嫌そうな顔をしながらも。

『…………厳重に包んでくれ』

「りょーかい」

 

*

 

 ガムートの元にまで歩いていくと、何故か入念に俺の事を確認された後、勝手に落胆されたかのように帰っていった。

 別に森を食い荒らしたりだとかもなければ、誰かに喧嘩を売られる事もなく。何かの目的があって来たが、確実にそれは満たされなかった。

「……あいつじゃないとまずかったのか?」

「いや、この前の会合では何も無かったはずだ。少なくとも、私達が見ていた限りでは」

「それだと……もしかして、クシャルダオラを探しにか?」

 有り得そうではあるが、竜が古龍を呼ぶなんてそもそも有り得るのだろうか。

 それが当たっていたとして、その目的は? とまで考えて。

「何にせよ、余り良い想像は思い浮かばないな……」

「……ですね」

「そういや、一応ガムート達? とは取引をしている関係だって聞くが、万一を考えての避難場所とかはあったりするのか?」

「…………」

 余所者に教えて良いのかって迷った時点で、あるって言ってるようなもんなんだよな。

「ある前提で聞くが、それはガムートが襲ってきたとして、避難しきれる事を考えてあるのか?」

 観念したかのように答えた。

「……一応は、井戸から地下水脈に沿って遠くへと穴を掘ってある。

 ただ、説明したあの銀嶺すら超えるガムートが来ても、その穴が無事で済むかは……判断つかない」

「まだ、農耕もする時期じゃないだろ? 補強を出来るだけしておいた方が良いだろうな」

 補強をどれだけしたところで、その規格外の存在に耐えられるかって言われたら無理な気もするが、気休めでもやっておいた方が吉だろう。

 はぁ……何で臨時で専属狩人をしているようなタイミングでこんな事が来るんだ?

 暇だって嘆いていたからか? それにしてもこれはないだろ。

 

 そういう訳で、翌日からは万が一に備えて避難経路の補強に努める事となった。

 村に何箇所かある井戸にはどれも横穴が隠されていて、そこから遠く、数か所に繋がっている。

 かなり昔に掘られたようだったが、崩れ落ちるような心配はまず無さそうな位には安定していた。

 整備もある程度マメにされている……というか直近にもされた痕跡があり、支えにされている木材も腐っていたりだという事は全くない。

 きっと……あいつと共にクシャルダオラが来て、特に最近はそれ以上にヤバいというティガレックスが来て、秘密裏にでも修繕していたのだろう。

「……これで駄目なら、もうどうしようもないんじゃ」

 一緒に追加の補強の為の木材を担いできた新人が、そんな事を呟く。

 正直同じ事は思う。深く、崩れない地層を選んで掘り進められた穴。これが崩れるとしたら、最早人では到底抗えないような天災に見舞われた時だろう。

「でも、何とかなるかもしれない。そういう心構えも必要だぞ」

 そもそも、リオレウスに牙を剥くなんていう馬鹿げた事をする奴が居なかったならば、俺達はここまで広くに繁殖していないだろうし。

 

*

 

 だから、何でこんな錆びる場所にクシャルダオラが来るんだよ!?

 それも気性が荒くなっているはずの錆びた状態で、嵐も引き連れずに。

 人を乗せていたように見えたとか、訳分からん事を言う奴が居ると思ったら、夜になれば、明らかにそのクシャルダオラの近くで火を起こしている誰かが居る事を複数人が報告して来るし、俺自身もこの目で見てしまうし。

「どうします……?」

「ひとまず……報告だけ、な」

 そう思っていたら、翌日にはさっさとまたどっかに行っちまった。結局あった事といえば季節外れの雨を降らせた事程度で。

 恐る恐るクシャルダオラが着地した場所に後から行ってみれば、付いてきた学者が。

「万一これが儂等を襲っていたら……一溜りもなかったじゃろう」

「え……?」

 一応、こちらには古龍と対峙出来るだけの総力はあるはずだが、という目線に対し。

「こんな乾季にさえ容易く雨を降らせる時点で、並のクシャルダオラに出来る事じゃないのもあれば……こんなにも大きく、整った風の痕跡を、儂は今まで見た事がない」

 塩の地面の上に描かれた、クシャルダオラが纏う風の痕跡。クシャルダオラが座っていた場所の、その体躯の何倍もの大きさの円。

 確かに、整ってはいるな、と思って触れようとすると。

「ああ! きちんと転写するまでは触らんでくれ!」

 恭しいまで行くような挙動。

「そうさな、あのクシャルダオラは……風を操る力の強さも、その精緻さも、ただのクシャルダオラとは比較にならん。しかも錆びて思うように体が動かなくなりつつあるだろうに。

 ただの人が、時に古龍を倒せるまで成長出来るように、あのクシャルダオラは成長し続けておる」

 そんな恐ろしいにも程がある事を言いながらも、目を輝かせて塩の上に出来ている痕跡を写し取ろうとするその姿は単なる恐ろしさというより、やはり畏敬と言った方が正しい。

「…………」

「それで、そんなクシャルダオラと一緒に居る人は何だったんです? 巷に聞く乗り人とやらですか?」

「そこまでは分からんが。錆びてても、強く苛ついた様子を見せないクシャルダオラ。それと接する事の出来る人間か竜人か、何にせようらや……恐ろしい事には変わりはないにせよ。ま、悪戯に人を襲う事も無かろう」

「……だと良いですが。それともう一つ、何故こんな場所に?」

 学者はウンウン唸った後に。

 塩を掘って持ち帰った跡と、ただ静かに雨を降らせた理由を考えて。

「観光?」

「…………」

 

*

 

「もう数日経ったら、キリン亜種のところと、アホなクシャルダオラのところにお前の子供を一匹ずつ押し付けに行くが。

 まだ結論は出ないのか?」

「こればっかりはなあ……」

 青白い光を放ち続けている繭。ガイアデルムにエネルギーを吸収されていた時よりは元気に輝いている。

 ネルギガンテは一向に飽きずにそれを見続けている。

「俺さあ、こいつの成体には会った事だけはあるんだよな。

 俺が生まれ育った場所は、例えるなら枯れる事のない花みたいなもんでさ、根っこのようにどっかからかエネルギーを供給され続けている事は薄々勘付いていてな、ある時探りに行ってみれば、あの羽虫の王くらいにでっかい、赤い奴が居たんだわ。

 まあ、そん時の俺じゃ戦いにすらならねえって事をすぐに察したのと、別にあの、何だっけな? アン……アン……」

「アン・イシュワルダ?」

「ああ、それ。そのアン・イシュワルダみたいに、大陸も龍脈も地中からぐっちゃぐっちゃにしちまうような奴でもねえからか、食欲も覚えなかったのもあったし。

 でも、やってきた人間達は俺の前足の指以上の数の腕利きを集めてきてあいつを殺しちまった。

 で、俺を何度もボコった、実質アン……イシュウェルダン?」

「アン・イシュワルダ」

「ああ、うん、アン・イシュワルダもぶっ殺したあいつは、何でこいつの成体を殺したのかっていうの喋ってきてさ。

 言ってしまえば、もし先手を取られたら、人間の力ではもう止めようがないからっていう事だったんだよな。

 生まれたばっかりのその幼体も同じ理由で殺してた。

 分かるんだけどさ、モヤモヤすんだよな。分かるから、モヤモヤし続けてるんだよな」

「お前なら、人間が非力なのが悪いって吐き捨てそうだと思っていたが……」

「昔だったら言ってただろうけどさあ、流石に今は言わねえよ。この世界は俺達みたいな奴等だけで出来てる訳じゃねえんだから。

 ただ、人間ってのは基本弱いからこそ過激にならざるを得ない部分があるんだなっていうのは分かるが、何だかな、俺達すらボコボコにする人間も居るところからすると、本当にモヤモヤする。

 だからと言って、人間全体があいつ等みたいに強くなったりしたら恐ろし過ぎて嫌だが」

「……要するにお前は、このゼノ・ジーヴァが生まれても殺したくないんだな」

「すっごいエネルギーを秘めてても、何でか食う気がしないからな。

 ただ殺さなかったら、それは結局人間全体を敵に回す事になる」

「それなら、放置すればいいだろう。もうここに来なければ良い。

 この場所を知っているのは結局あの人間だけで、クシャルダオラの連れもこの場所で起きた事を積極的に話すつもりも無いようだしな。

 それとも、親代わりにでもなりたいとか思っているのか? 俺が殺した同族みたいに」

「……かもしれねえな。

 …………いや、親になりたいとまでは思ってねえけど、そうだな、俺がお前に世界を広げて貰ったみたいに、こいつの世界も広げてやりてえんだ。

 その上でそいつが何をやらかしたとしても、それは全部無知とかじゃなくて、そいつ自身の選択だからって納得出来るからな」

「それはどうだか」

「……何でだ?」

「俺やお前は、別に生きているだけでは害を及ぼさないが、このゼノ・ジーヴァ、ムフェト・ジーヴァはどうなのかって事だ。

 お前が生まれ育った場所も、元々からどれだけ作り変えられたのか分からないだろうし、作り変えられる時にどれだけの生命が犠牲になったのかも分からないだろう? そして、こいつはそうする事が当然なのかもしれない。

 どれだけの生命を犠牲にしようとも、自分を根とした花を咲かせる事が本能に刻まれた当然である。

 調和とは無縁な種族。お前の本能から真っ向から相反する種族。作り変えた後だからこそ、お前は食欲を覚えなかっただけだった。

 そうだったとしても、お前は納得出来るのか?」

「…………分かんね。

 でもそれを決めるのは、やっぱりこいつが生まれてからにしてえな」

「俺もそこまで否定する気はない。

 ただ、きちんと覚悟は決めておけよ? お前が食欲を覚えるって事は、そういう事だという、な」

「その覚悟がなきゃ、さっさとここから去っておけって事か」

「そういう事だ」

 ネルギガンテは、とても分かりやすく溜息を吐いた。

 

*

 

 海岸で休憩と腹ごなしをする事もなく、明らかに急ぐようにしてクシャルダオラは帰路に着く。

 そんな中、目に見えて錆びているクシャルダオラはひたすらに無言だ。

 その赤茶色になっている鋼の鱗を指でなぞってみれば、ざらりとした感触が。

 肉体と一体化しているというその鋼の鱗が近い内に役目を終えるというのは、それだけで分かった。

 そして背中に乗っていれば、クシャルダオラの感情も少なからず伝わってくる。

 苛立ちも強いが、それ以上に脱皮をする事への期待感が伺えた。人間に例えるならば……ウンコを我慢しているような感覚?

『……変な事でも考えてないか?』

「どちらかと言えば下らない事だな」

『そうか』

 余り会話する気もないようで。

 それならとこの雲の上、霊峰の山頂よりも高い場所で、無意識に空気をかき集めていたのを意識的にしてみる事にした。

 結局この力は俺に根付いて、俺の一部となってしまったのだから活用するしかないのだ、と漸く踏ん切りが付いたと言うべきか。

 そして意識してしまえば。

 クシャルダオラの意識している、意識出来る範囲の広大さを理解する。

 例えば……タマミツネは、周りに泡を飛ばして奇襲を防ぐ。ゴア・マガラは鱗粉を飛ばして周囲を広く把握する。

 ただ、そんな物理的なものでは到底届き得ないような範囲にまでクシャルダオラは龍の力を張り巡らせている。

 大木を引き抜く事から、気圧すら操作出来る程の強さ。それでいて、肺から空気を奪う事から始まる、精緻さも兼ね備えているそれが、今現在、自身が早く帰る為だけに生かされていた(やっぱり人がウンコを我慢しながら必死に歩いているのと似ている)。

 自らの呼吸を確保しつつ、空気の抵抗を極限まで排除し。翼を羽ばたかせる以上に、己の肉体がただただ前へと進めるように風を操る。

 行きにクシャルダオラが修行だ、と言っていたのを思い出す。実際に、背中に乗っている俺に対して何もしていない訳ではなく、俺に与えられている龍の力を使えば凌げる程度に空気を集めている。

 そうでなければ、こんな高高度で、こんな速度で飛んで、俺は意識すら保てていないという事に気付いた。

 ……この龍の力を使い続けたら、鍛え続けたら、俺はどうなるのだろう?

 クシャルダオラは、あのガムートのような行き止まりに到達する事はないようにすると言っていたが、際限なく鍛えられるものなのだろうか? 許容量というものがあるのではないのだろうか? それを超えた時俺は……多分、死ぬというより、人ではなくなる。

 より長く、永く、クシャルダオラといつまでも生きられるような、そんな存在になる。そしてそれは、竜人とも異なる。

 そう思える。

 それに根本的に抗う術は、あるとしてもやりたくない。だから俺が出来るのは、そうなる時を遅らせるばかり。

 ……正直、別に人間じゃなくなっても良いか、と思っている自分が顔を出し始めている。

 この龍の力が体を巡り始めて思考まで塗り替えられ始めたか? と思う部分も無くはないのだが、それ以上に、街という人の積み上げてきた文化的営みの中で暮らすのではなく、こんな辺鄙な場所で一年以上も過ごした事も一つの要因なのではないかと思っている。

 今までは闘技場や各所に行く事で非日常的に会うものであった竜が、日常的なものになった。生活と直結するようになった。

 たった一年でそこまで変わるものかと言われたら微妙な部分もあるが、それに加えてもう一つ、要因として挙げられるものがある。

 クシャルダオラや、あの荒鉤爪ティガレックスとも異なる、ひたすらに生きた歳月を積み重ねただけであそこまで成ったであろうガムート。

 あれに会った事も俺の中の何か……言葉で形容し難いどこかを決定的に変えたような気がしていた。

 

 唐突に、クシャルダオラが身動ぎをした。

 そして同時に、鋼の鱗に罅が入るような音。

 それは、例えるなら……。

「…………」

『…………急ぐぞ』

「はい」

 バカな事を考える余裕も無くなった。

 

*

 

*

 

『……ただの竜でも、誰の助けも必要とせずにここまで到達出来るのか』

「…………ん? え、もう着いたのか!?」

 夕方。

 目に見える光景には、霊峰の頂上。そこにベリオロスが居た。

 ベリオロスが登頂した事にも驚くが、いや、まさか一日足らずで帰ってきたのか?

 それに対し、クシャルダオラは呆れたように言った。

『……あのな。言っておくが、貴様は丸一日以上寝ていた。覚えてすらいないのか? きちんと己で力を使い始めて、そう時間も経たない内に意識すら失っていたぞ。

 全く……日頃から私の力を使わないからだ』

「え、あ、はい。すみません」

 その割には腹が減ってないが……多分、クシャルダオラが龍の力を俺に与え続けていたのだろう。

『そして、すぐにも脱皮したいのは山々だが、一つだけな』

 そう言って、クシャルダオラはベリオロスの目の前に降り立つ。

 ベリオロスが驚くも、クシャルダオラは尻尾の先を俺が過去に突き立てた片手剣に触れさせて。

『ここまで登ってきた事は称賛に値するが……この剣と盾には触れない事だな。したらば、殺す』

 ……あの時の思い出は、クシャルダオラにとっても特別なんだな。




モンハンで新しいの何か書くとしたら、ワイルズで何か書くより、マガイマガドでまた何か書きたいなーって気持ちの方が強いんだけれど、まあマガイマガドで書きたいものはもう既に大体書ききってしまっているのもあって、あんまり構想が出てこない。
悩んだ末に竜人化したら良いんじゃないかという発想に至ったけれど、結局それも既に1回書いて失敗してるんだよな、っていう。
モンハン竜人はイラストとかで良いの流れて来てたり、modで色々やってる人とかも居るしでポテンシャルはあるんじゃねえかって思うけれど、擬人化とも違って二次創作における前提としたイメージ、世界観の共有を基本かなぐり捨てる事になり、そのデメリットを上回る事が難しい、という結論。
まあ、そんな感じでモンハン二次で新作を投げる可能性は低いです。

一応失敗したやつはこれ。
https://syosetu.org/novel/323810/
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