モンハン獣人世界時代劇。

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ここ辺りにインスパイアされて書き上げたもの。
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pixivにも投稿済み。


大鬼火怨み返し

「出会え出会えぇ!!」

 ここらで幅を利かせている鎌鼬族の屋敷の片隅。

 叫んだ鎌鼬族の子分は次の瞬間、その首を刎ねられ、体と共に頭をぼとりと落とす。

 首を刎ねた張本人。怨虎族の剣客は血を拭いながら、俄かに喧騒が立ち上がり始めた屋敷を睨む。

 鬼の如き形相を生まれながらにして持ち併せる顔。口からは鋭い牙を覗かせており、また額からは一対の梔子色の角が荒々しく聳え立つ。着物越しに見える表皮は深い紺藍色であり、その姿形だけで他者を威圧するには十分過ぎるような迫力を持ち合わせている。

 砂利から廊下へと躍り上がったその怨虎族。飛び出して来た鎌鼬族をばっさばっさと切り飛ばし、屋敷の奥へと駆けていく。

「……」

 一言も発さないままに突き進み、刀の一振り一振りで足し算の如くに死体を増やしていくその顔からは未だ何も読み取れない。

「……ふむ」

 そんな様子を、遠くから誰かが見定めていた。

 

 怨虎という種族には不吉な、蛮勇な噂ばかりが纏わりつく。

 とある怨虎族の屋敷では、数多に居た世話人がある日を境にして一人ずつ消えていき、その度に屋敷からは血の匂いが濃くなっていっただとか。

 過去の戦にて猛威を振るった怨虎は敵陣に単独突入すると、そのまま古龍族の敵将を打ち倒し、軍勢が追いつけばその肉体を貪り食っていただとか。

 とある村にて虐げられた怨虎が去った後、その元凶となった意地汚い一家が血痕ばかりを残して姿形の一切を掻き消しただとか。

 復讐劇を遂げた後も全身から尋常ではない鬼火を滾らせ続けた末に、その身諸共焼き尽くしただとか。

 そのような噂が巷には当然の如くに流布しており、また噂の中には事実に限りなく近いようなものも存在しているこの昨今、怨虎族という者は個がどのようであれ、災いを招く存在と騒がれ肩身を狭くして生きている。

 なまじ種族としての素質が優秀であるが故に、それは更に拍車を掛けていた。その偏見の為に真面目に生きようがそれが報われる事は他の種族と比較しても明確に多くなく、怨虎族の中には裏社会に身を染める者も増えて来ている。

 その災いを招く存在というのは噂から事実へと変容しつつもあったのである。

 

 この怨虎ーー名を紫檀というーーもまた、そのように肩身を狭くして生きて来た個であった。親もまたそうであれば、この逆風の世間でもせめて食い逸れないようにと厳しく育てられた。兄弟姉妹達は、その途中で命を落とす事すらも見計らわれていたように数多く、そうでなくとも怨虎族にとって命の次に大切である、怨虎族の矜持そのものを示す一対の梔子色の角が折れずに成人を迎えたのは半分にも満たなかった。

 その中で、紫檀はその角も未だ傷一つないままこうして地に足をつけている。長兄でも末弟でもない真中程に生まれた紫檀は特別何かが優れていた訳でもない。しかし、全てを並以上にこなして見せる紫檀は、親からは一つでもどれかが強く優れていたならば傑物になれただろうにと、逆に溜め息を吐かれながら鍛え上げられていったのだった。

 

 鎌鼬族の、時に成人にも満たない子も容赦無く切り捨てながら紫檀は屋敷の奥へと駆けていく。

 鎌鼬族の属する鳥竜種は基本数が多く、五十、多ければ百といった数の大所帯で暮らす。そしてそれら全てを家長が育て養う形で暮らす。故に、家長となれなかった兄弟やその子供達全ては家長を支えるように生きる。その生き方は本能に属するようなもので、成人に至っておらずともまだ紫檀の腰程の背丈しかなかろうとも、覚悟の決まった目で刃を向けてきていた。

 しかし。流石に太平となったこの世において、子であろうとも家の為に死すら辞さない生き方は、極めて異常であった。

 加えて所々から感じる、自らが切り捨てた者以外の、別種族の血の匂い。

 ーー実際にこの目で見ても悍ましいな。

 紫檀は心の中で呟いた。

 

*

 

 文も武も一通りこなせた紫檀は、幸いにも表の世界で穏やかに暮らせる道を選べていた。

 怨虎族であるというだけで陰口を叩かれる時もあれど、親から表の世界で生きる事を切に望まれ、心身共に厳しく鍛えられた紫檀にとっては気にする事でもなく。時に筆学所のような真似事をしたり、時に剣術指南もこなしたりと、半ば便利屋のような形で日々の食い扶持を稼いでいた。言ってしまえば、物事の肝要な部分には関わる事が出来ていない、稼げる銭もそう多くない立ち位置でもあったが、教えるという事は意外にも性に合っていた事もあり、日を重ねるに連れて信頼を積み重ねていけている実感もあり、紫檀自身も今の立ち位置を悪くないと感じていた。

 とは言えど、流石に住む家ばかりは街の外れである。信頼を積み重ねようとも、それは未だ流布する噂を打ち消す程ではない。日々の仕事が終われば、飯を適当に買って一人静かな家に戻り、適当に時を過ごして寝るばかり……だった。ある日、自宅のすぐ近くで行き倒れている飛雷族の子供を見つけるまでは。

 何かに酷く怯えているその子供は、強面である怨虎族である紫檀を見ても怖けず、しかし街に連れて行こうとすれば酷く嫌がった。まるでこの世の終わりかのような顔をするものだから、結局家に連れ込むしか出来なかった。取り敢えず飯を食わせれば何をする間もなく眠ってしまった。

 そして翌朝。相当な目に遭ったのだろう、起きる気配もなく、昨日の事から街に連れていくのも憚られて、文字も読めるか怪しかったが仕事も休めない為、一応書き置きと保存食を置いて出る。だがそんな状態で仕事に集中出来る訳もなく、珍しく風邪でも引いたか? と言われ、言葉に甘える事にして昼過ぎには帰る。珍しく甘味でも買って帰ると、中には誰も居ない……と思えば、押し入れの中に隠れているのが臭いで分かった。

 ……本当に怖い目に遭ったようだが。

 押し入れの前まで歩いて、問答無用で開けた。

「ひっ、いやっ」

 子供というのは、必ずしも己のように幼少の頃から厳しく鍛え上げられるものではない、と知ったのは成人してからだった。

 だが、どのような目に遭ったにせよこのように怯えてばかりなのを見ると腹が立つ。

 子供の顔をこちらに無理矢理向ける。

「おいガキ。良く聞け。何があったが知らんが、俺にはお前を助ける義理も何も無えんだ。

 せめて匿って欲しいなら、お前がどうしてこんな場所で行き倒れていたのかお前の口で説明しろ」

「ひっ、あっ、うっ、ううっ、あうっ……こっ、こっ……こ、ころしたり、しない?」

「……説明したらな」

 そうして説明された内容は、俄かには信じられない話だった。

 

 この鎌鼬族は豪商としてこの街で最も幅を利かせている存在であった。

 呉服から始まり雑貨や刃物も扱えば、最近は質屋や金貸しまで始めている。

 多数が一丸となって一つの事柄に取り組めるその姿勢は、太平の世においては一人一人の武の強さなどとは比較にならない程に有用だ。

 種族としては強くない存在であるその鎌鼬族の興隆は、紫檀のような強いだけの種族にとっては生き辛さを感じさせるのと同時に、それを受け入れなければいけないという時代の象徴でもあるようであった。

 ただ、もしかしたら弱い種族も、未だに強い種族に対して憧れのようなものを抱いているのかもしれない。

 飛雷族のその子供から聞いた内容を聞いて、紫檀はまずそう思った。

 鎌鼬族に質として、奉公人として渡された子供が、実際に奉公する為に扱われるのではなく、鎌鼬族が成人に至る時の殺人を行う為に扱われるとの話。

 事実かどうかは置いておいて。翌朝から成人間近の鎌鼬族の一人が忽然と姿を見せなくなった事を知った。飛雷族の子供がどうやって逃げられたかを聞くと、殺したくないというその鎌鼬族が逃してくれたのだと答えた。

 街にはどこにでも鎌鼬族が歩いている。紫檀はその飛雷族の子供、五郎をひとまず家で匿う事にした。

 

*

 

 人を殺した事はある。一度だけ、同じように成人の時に。

 ただ、食い扶持を減らす為に奉公に出された子供などではなく、裏の経路から手に入れた死刑囚や、裏社会での粛清対象となったような人ばかりだった。また、その経験は未だ役に立ったと思えた時はない。この時までは。

 幾ら覚悟を決めようとも、人を殺した経験がなければ今頃この身は傷で塗れていただろう。特にこの覚悟が決まっている鎌鼬族達が襲いかかってくる中では、幾ら実際の武術が素人だろうとも死んでいても全くおかしくない。

 奥へと歩みを進めようとすると、僅かながら火薬の臭いを感じた。銃でも構えているのだろうか。

 だが、そのまま襖を切り飛ばした。同時に銃声がそこに集中するが、そこには紫色の鬼火が一つあるばかり。

「は?」

 確かに襖に切り飛ばした刀が見えたのに。

 梵!

 上から爆発音が聞こえ、顔を持ち上げればそこにはやはり鬼火が一つあるだけ。

 それは怨虎族唯一の能力。日々この身に取り込んだ糧を鬼火として放出、爆発させる事が出来る力。

 知られていない訳ではないだろう。だが、戦乱の世以外では曲芸程度にしか役に立たないこの力は、まずこの日々の中で見る事はない。

 紫檀は一度目の爆発でその身を宙へと飛ばして銃弾を躱し、二度目の爆発で銃を構えていた鎌鼬族達の背後へと着地。

 鎌鼬族が背後に回り込まれた事を理解した頃には、紫檀は待ち構えていた鎌鼬族の大半の命を切り捨てていた。

 

 血を拭いながら、作った死体を冷たく眺める。遠くから新手が駆けて来る音が聞こえてくる。

 派手に響いた銃声。それはこの屋敷の外にも強く響いた事だろう。

 既に最低限の目的は果たせている。己の能力を活かせば逃げる事も容易い、が、それでも奥へと進む事を選ぶ。

 この身に滾る昏く淀んだ熱は未だ収まりそうにはない。新たにやってきた鎌鼬族の中には常日頃から鍛えているような者も居るが、それも鬼火を刀を握る腕に纏わせ爆発させる事で、相手の受け止めた刀ごと問答無用に切り飛ばす。

「ひ、ひぃっ!?」

 その余りにも暴力的な一閃に後続の鎌鼬族達の中には流石に怖気付き、得物も落として尻餅を付く者も居たが。

 紫檀はそれにも慈悲なく刀を胸へ深々と突き立てる。

 残る鎌鼬族達を睨みつける紫檀の顔は、入った時と比べて段々と表情が露わになっていた。

 雪鬼族とも比較にならない、正に地獄で仕える鬼そのものとなりつつあるその貌。

 血を払い、とうとう全身から鬼火を湧き上がらせ始めるその怨虎。地獄そのものを体現するような個に対して、人を殺した経験がある程度では最早誰も立ち向かう事は出来ない。

 ……この胸中にこれ程までに強い感情が宿る事があるとは思いもしなかった。

 鎌鼬族の命を刈り取りながら、どこか他人事のように紫檀は振り返っていた。

 

*

 

 この街で幅を利かせている鎌鼬族はどこにでも居る。そんな中、逃げてきたという飛雷族の子供、五郎をを外に出す事すらも憚られる。

 仕事を休む訳にもいかず、日々の日中は五郎を家に置いていく事になるのに対して、退屈だろうと帰路に玩具を買う事にした……が、何を買えば良いのかさっぱり分からず、適当に見繕ってもらう。

 その子供の為の玩具などを扱っている店の主人である雪鬼族が話しかけてくる。

「珍しいですね。親戚の子供でも預かっていたり?」

「……んまあ、そんなところだ」

 金を払ってそくささと店を出る己の後姿を、あの雪鬼族は笑ってるに違いないだろう。

 ついでに飯も二人分買えば、春が来たのかと噂されたり。

 この街に怨虎族は一人しか居ないのもあって、今更ながら己は想像しているより目立つ存在なのかと自覚する。

 それだけでいつもより疲労が溜まっている感覚を覚えながら帰れば、暗い家の中でその五郎が心底安堵したような顔で出迎える。

「すまんな、せめて退屈を凌げるもの買ってきたからよ」

「あ、ありがとうございます……」

 おずおずと答える五郎は買ってきた玩具を見ると、それでも目を輝かせた。今でこそ子供達に物事を教える立場になる事もあり、怖がられないような立ち振る舞いこそ覚えてきたものだが、こうして素で居ても、先日脅すような事をしたとしても、怖がられないのはそれだけでも嬉しい事だった。

「お前、俺が怖くねえのか?」

「……酒ばっかり飲んでたおっ父より、優しい顔をして僕を殺そうとしてきた鎌鼬族達より、紫檀殿はとても優しいです」

「そ、そうか」

 その言葉だけで顔が真っ赤になりそうで。

「ほら、飯も買ってきたから、冷める前に食うぞ」

「はい!」

 

 それからの生活は、今までの日々が全て色褪せていたかのように彩り溢れるものであった。

 どこかに連れる事も出来ず、平日は朝晩に会話を交わす程度のやりとりではあるが、それでも帰ってきたら誰かが待っているというだけの事が、己が養わなければいけない存在が居るという事が、ここまで日常に減り張りを与えてくれるものだとは想像すらしなかった。

 起きたら隣で安らかな寝顔が待っている。帰って来たら笑顔で出迎えてくれる。共に飯を食べる。日々の出来事を話す相手が居る。

 五郎もまた紫檀を求めていた。外に出れない日中はとても寂しいが、それでも自分にここまで優しくしてくれる怨虎族の臭いが染み付くこの家の中はとても安心出来た。文字も読めない自分に対して文字を教えてくれたり、時に高価な本までを買って来てくれる事さえもあった。何か返さなければいけないと言う思いはすぐに募って来たが「そんなものをガキが考える必要は無えんだ」と返してくれる。

「親ってのはな、子供を育てる存在なんだよ。……俺の親も、色々と間違っているところは多分にあったと思うが、その芯ばかりは一貫していた。そうでなきゃ、俺はこうして堂々とお天道様に顔向け出来る生き方まで出来ていねえ。

 俺もそれを十全に出来るかは、正直断言しかねるがな。こうして命からがら逃げ出して来たガキが転がり込んでくるなんて予想もしなかったしな」

 そう言いながらも笑顔を向けてくる紫檀には、実の父親にも預けられなかった心の底からの信頼を預けられるようで、それだけで泣いてしまいそうであった。

 

*

 

 向かってくる連中を一人残らず物言わぬ骸にしつつ、紫檀はとうとう最奥へと辿り着いた。

 逃げたような痕跡は感じられない。嗅覚が特別鋭い訳でもないが、その位は分かる。そして火薬の臭いも感じられず、そのままに襖を開いた。

 中には、その鎌鼬族の長と思われる一人の男と、隣には黒狼族の男。

 黒狼族。鳥竜種の中では珍しく集団で暮らすような性質を持たず、そして鳥竜種の中で群を抜いた戦闘能力を持つ種族。

 歪に大きい嘴は岩をも砕くような迫力を備えている。全ての音を拾わんとするような巨大な耳は、戦闘を何よりも好む種族を体現するように所々が引き千切れている。怨虎族と似て異なる竜胆のような色を基調としたその全身は頑強な鱗で覆われている。そして手足の爪先からは猛毒が滲む。

 紫檀と同じく簡素な着物に身を包み、脇に刀を複数差すその姿は、用心棒なのだろう。

 そして鎌鼬族の長は、子分を大量に殺戮されたというのに、その殺戮した当人が目の前までやって来たと言うのに、座ったまま落ち着いた雰囲気を保ちながら、じっとこちらを見て聞いて来た。

「何故、こんな事をする?」

「その言葉、そのまま返そうか」

「ははあ……。薄々そうではないかと思っていたが、やはりそうか。貴様、あの飛雷族のガキを匿っていたな?

 ……何故、こんな事をする、ねぇ。貴様には分かっているだろう?」

 薄々理解していたが、その答えを言う気にはならない。

「……何にせよ、この俺一人に瓦解されるなら意味など無かっただろう」

「結局、覚悟ばかりを身に付けさせようとも、本物には敵わないという事はよーく分かりました。良い経験になりましたっ、とな」

「お前みたいのが居なければ、そもそもこの世に本物なんて要らねえんだよ!」

 滾った感情が鬼火になって体から噴き出してくる。

 が、その怒声にも鎌鼬族の長は怖けず、また隣の黒狼族はそんな紫檀を下卑た顔で見て口を開いた。

「そう言いながら、あんたもこっち側だろ? その鬼火、普通に飯を食っているだけじゃそこまで溜められねえよな?」

 鎌鼬族の長が付け加える。

「今日、二人の子分が帰って来なかったな。集金を任せていた奴等で、愚直な性格で持ち逃げなどするはずもないと思っていたが。

 成程成程。その二人が、貴様が匿っていた飛雷族の子供を見つけ、連れ帰ろうとした。

 貴様はそれを殺して喰らったんだろう? ここに攻め入るのに必要な鬼火を十分溜める為に」

「…………」

「羨ましいねえ。この時勢、どう在ろうと人を喰える奴など早々居ねえ。ガキ共に物を教えていようが、人格者のように振る舞いながらも、貴様の本質はそれだって事だ」

「……うるせえ」

「図星か! 耳障りか! ははは!」

「……俺の本質がそれだとしてもな。俺はそれを微塵たりとも出したくねえ。それを出させたのは貴様だ。

 後悔させてやる。一足先に地獄へ送ってやるよ」

 刀を向けると、黒狼族もまた刀……小太刀を二本抜き出し、鎌鼬族の長の前へと立ちはだかる。

 どのような繋がりがあるのか知らないが、少なくとも今、真っ正面から打ち倒す以外の選択肢は無さそうだった。

 黒狼族もまた怨虎族と同様、この時勢で生き辛さを抱えている種族であった。

 その生まれつき抱えている類稀な戦闘能力、戦闘意欲が必要になる場面など、太平の世には早々存在しない。

「楽しもうぜぇ?」

 その言葉を無視して、鬼火を爆ぜさせた。

 

 梵梵!

 背後に強めに一つ。刀を持つ腕に一つ。一瞬にして黒狼族の懐に潜り込み爆発の勢いと共に下から切り上げるが、黒狼族は高く跳躍して躱すと同時に口を開く。直後、雨霰のように火炎弾がその口から飛び出してくるのに、再び鬼火を爆ぜさせ退避。

 先に鎌鼬族の長を斬ってしまうのも考えたが、その隙も見せられない相手であるのはこの一合ですぐに分かる。

 そもそもこの鬼火を使った加速に付いて来れる人など早々居ない。だが、この黒狼族は鬼火で加速させた一閃を受けられないとまで見極めた上で反撃までしっかりとこなして見せた。

 着地した黒狼族。広く開いた距離を強靭な足腰で瞬く間に詰めてくる。

 黒狼族の毒は強烈だ。少量では死ぬ事こそないが、それでも身体に入ればたちまち全身を激痛が襲う。

 そしてその二本の小太刀にもしっかり毒は染み込んでいるだろう。一撃とも喰らえはしない。そして、僅かでも好機があれば、多少の傷など厭わずにこの身を一気に切り刻んでくる。

 全身に鬼火を滾らせて紫檀は待ち構え、黒狼族は唐突に小太刀を一本投げた。軽く鬼火を爆ぜさせ大きく避けるのに黒狼族は投げたその腕を変に引き戻すような所作をした。

 悪寒がし、宙へと跳ねる。直後、糸で結ばれていた小太刀が紫檀の居た場所を横薙ぎに通り過ぎていった。そして黒狼族はもう一本の小太刀も躊躇いなく投げつけてくる。今度こそ刀でそれで弾き飛ばす、が空手になった黒狼族に追撃はせずに着地。

 全身から鬼火を出す為に身軽で居る紫檀とは違い、その着物の中には小太刀の他に毒に塗れた武器が幾らでもあるように思えていた。迎え打てるからこそ、敢えて空手にして見せたのだと。

 ……だが、迂闊に近付けないのはこの黒狼族にとっても同じだ。己の一撃を受け止める術をこの黒狼族は持ち合わせていない。避けられると言えど、きっと待ち構えてこそ。

 再び距離を取る。黒狼族が落ちた小太刀を振るう事なく手に戻す。

 ざり……ざりり……。

 睨み合い、間合いを保ったまま円を描く。鎌鼬族の長はそんな様子を相変わらず座ったまま、まるで劇でも見るかのように目を爛々と輝かせている。黒狼族もまた、殺し合い自体を心の底から楽しむ顔をしている。

 それぞれが酷く腹が立ち、紫檀はぐ、と牙を噛み締め。

『約束ですからね!!!!』

 ……あの時僅かに聞こえていたその言葉を切り捨て、再び仕掛けた。

 

*

 

 五郎との日々は楽しかったが、しかしいつまでも家の中に閉じ込めておく訳にもいかず、そして鎌鼬族が幅を効かせているこの街では根本から解決する事も難しいと言わざるを得ない。

 またこの街で軽く付き合う程度の間柄は居れど、己が種族故に全幅の信頼を預けられる程の存在は居なかった。

 一度、避難させるしかない、か。

 無難な選択肢を取る事にした紫檀は散らばった、今もどうにか明るい道を選べている親族達に文を認める事にした。五郎にもそう告げる。

 寂しい顔をしていたが、物覚えの良い五郎はそれを受け入れた。

「離れたとしても、また、いつか来てくれるよね?」

「勿論だ」

 すぐに返したが、少しばかり恥ずかしくなった。

 今まで得られなかった家族の温もりを求めるように。明るい道を選べていようとも、どこか空虚だった日々の穴を埋めるように、その日も共に夜を過ごす。

 それぞれが今までの生の中で最も充実した時間を過ごしていたが、五郎は段々と眠気を抑えられなくなっていき、段々と船を漕ぎ始める。

 明日が来てしまう事が嫌だった。日中を一人で寂しく過ごす事も、紫檀との日々が刻一刻と終わりに近付いていくのが嫌だった。

 けれど、そんな五郎を紫檀は優しく寝かせる。

「すぐって訳じゃあ無えんだ。それに、ずっと閉じ篭ってる訳にもいかねえだろ? しっかりお前自身の足で立って生きられるようにならねえと、示しがつかねえだろ。男だろう?」

「……うん」

 そうして共に床に就く、狭い布団の中。ごつごつとした、太く、熱い程に温かい腕に抱かれて、それまた分厚い胸板に身を寄せられれば力強い鼓動がこの身を揺らしてくる。

 種族として僕はこのようにはなれないだろうけれど、でも僕もこんな、誰かを守れる、何の憂慮もなく心の底から落ち着けられる人になりたい。

 そうしてすぐに寝てしまう五郎の、月明かりに照らされる柔らかな寝顔と穏やかな寝息を感じながら、紫檀もまたこうした日々を幾久しく続けたい思いを頭を振って追い出す。そんな時間を暫く続けてから、紫檀も目を閉じてその日を終える。

 ……その翌日の事だった。

 

 五郎を匿ってからというものの、鎌鼬族を注意深く見るようにしてみると、一つの事に気付いた。

 己が師として筆学所の真似事のように物を教えている幼い鎌鼬族こそ何の変哲もないが、成人して日々街を練り歩いている鎌鼬族達とは、何故か目が合う事が一気に増えた。

 それは五郎を匿っているのがばれている……という事では無さそうだった。鎌鼬族は己を羨望の目で見ていたからだ。

 剣術の指南をする事もあった己を、そしてその中でも怨虎族としての強みは一切出さずとも常に相手を叩き伏せて立ち続ける己を、羨望の目で見ていた。

 この街での地位は己などより余程上だと言うのに、だ。

 形だけでも殺人を等しく犯しているからだろうか。己が殺人者としてのオーラまで出してしまっているかは、出していないと信じたいが、しかし少なくとも鎌鼬族達は強者への羨望が等しく強かった。

 

 その日も同じく帰宅すると、自宅ーー街の外れに鎌鼬族が二人、己を待っているかのように立っていた。

 自ずと体に緊張が走るが、表には出さずに近寄って来るその二人にこちらから声を掛けた。

「こんな遅くに、何か用です?」

「飛雷族の子供があなたの家に住んでいますよね。ここらに用があって歩いていたら、飛雷族の抜け毛がふよふよと飛び散って来ましてね、場所を探したら貴方の家だと分かったんですよ。

 あの子はどこから?」

「遠方で親しくしている一族の子でして。そちらで辛い出来事でもあったようで、俺の家が静養場所として選ばれたんですわ。

 何故そんな事を?」

 嘘をでっち上げたが、それに意味がない事を、顔色からすぐに察した。

「いえ……申し訳ありません。窓越しにその子供を見たのですがね、ウチに奉公に来てそして逃げ出した飛雷族の子供とそっくりなんですわ。……さっき言った事、本当です?」

 紫檀はこれ見よがしに溜息を吐いた。

「そのアンタ等から殺されそうになったって聞いてるんだがな」

「関係ありませんね。私達は然るべき額を彼の父親に払い、あの子供を買った。その後私達がどうこうしようとも自由でしょう。それとも貴方が買い直すのですか? 貴方では中々手の届かない額だと思いますがね」

 紫檀は夕飯を持っていた手を離した。

 ぐちゃ。

 そう音を立てて握り飯から汁物までが無い混ぜになって地面の染みになった頃には、ベラベラと喋っていた鎌鼬族の喉元に刀が突きつけられている。

 鎌鼬族の二人は刀を抜く事すら出来ていなかった。

「……そうして、あんた等は成人する為だけに何人殺して来たんだろうな? 十か? 百か? それ以上か? ガキなんざ金を積めばどこでも手に入るんだろうしな?」

 手を離した、というよりは、離していたと言った方が正しかった。

 紫檀は、己の箍が外れる音を確かに聞いていた。その瞬間、刀に手を掛けていた。

 もう一人が叫ぼうとする、が、紫檀はそれも見逃さない。片手で首を掴めば直後、首の骨が呆気なく折れる音がした。

「……え、は? あ? き、貴様、こんな事をして」

 刀の切先を喉元にぷつりと当てて、冷たく遮った。

「黙れ。俺の質問に答えろ。あんた等、これまで何人殺してきた? 端的に答えろ」

 かくんと首が歪に曲がった鎌鼬族は、紫檀が手を離すと力なく崩れ落ちて、そのままもう動かなかった。

「し、知らない」

「質問を変える。あんた等、成人する時に必ず人を殺すように命じられるのか?」

「……そうだ」

「それが始まったのはいつだ?」

「わ、私が生まれた時には、もう」

「……あんた等、今、成人はどれだけ居る?」

「…………」

 無言のまま目を逸らされた。

「……良く分かった」

「や、やめ」

 紫檀の手が首を掴んだ。

 

 重い物を引き摺るような音と共に、何かが近付いて来る。

「……五郎、俺だ。鍵、開けてくれ」

 紫檀の声が聞こえてきて、押し入れの中で縮こまっていた五郎は飛び出して鍵を開けた。

「紫檀殿! 僕…………そ、それは?」

「……すまん」

 それだけ言って、首が歪に曲がった、ぴくりとも動かない鎌鼬族二人を紫檀は家の中へと押し込む。

「何て言ったら良いんだろうな……。俺もあいつ等と同類だったんだろうな」

「……紫檀殿?」

「いや、もっと酷いか。あいつ等は形だけの殺人者だったが、俺は根っこからの殺人者だものな。

 すまん、五郎。一緒に居られるのは今日が最後だ。俺はこれから、あいつ等を潰しに行く」

「あ、あいつ等とは」

 五郎が聞く前に、紫檀は鎌鼬族の二人の身包みを乱雑に引き剥がし始めた。そして裸にすると、躊躇なくその首に噛みつき、骨ごと食い千切る。

 肉と骨を容易く咀嚼していく音と共に、家の中が濃い血の匂いで占められていく。

 それは、五郎が今まで見てきた何よりも惨憺たる光景であった。なのに尻餅をつきながらも、全ての言葉が吹き飛んでも、五郎はそれから目を離せなかった。

 吹き出す血が余す事なく飲み干されていく。その後は胸に頭を埋めて、肋骨を噛み砕き、臓腑から心の臓を穿ち引っ張り上げて食らう。その心の臓を食らい終えた頃、紫檀の全身が薄らと紫に光り始めた。

 闇夜が訪れようとして来る時に、暗い家の中でのそれは、悍ましい、この世のものとは思えないような光であった。

 他にも臓腑を幾つか食い千切ると、二人目も同じように骨ごと食らっていく。ほんの少しばかり慣れた五郎は、紫檀が言っていた事を思い出す。

『俺達怨虎族はこうして鬼火を体から出す事が出来るんだが、少し出すだけですぐに腹が減っちまう代物でな。

 食い溜めでもしておかねえとまず使えねえ代物だし、そもそもこの時勢で使う必要がある時などそもそも無え。

 それに普通に食い溜めしても、あんまり連発も出来ねえんだよな』

『普通に?』

『……本当に沢山、腹がはち切れる位に食わなきゃいけねえんだ』

 あれ、嘘だったんだ。食べるものを変えなきゃいけなかったんだ。……人に。

二人目も食い終えた紫檀は無言で立ち上がり、体の調子を確かめるかのように鬼火を全身から吹き出させた。着ていた服がほろほろと破れ落ち、全身にこびりついていた血も焦げ落ちた。

「…………」

 問題ない。

 着物を新しく身に纏う。刀を差し直す。

 そして最後に、距離を取って五郎に向き直った。

「……五郎。明日にはお前を狙う奴等は居なくなる。それだけは約束する。

 だから…………五郎。……、…………五郎。達者でな」

 溢れ出そうになる言葉の大半を噤み、紫檀は前へと向き直る。

「え、あ、ああ、あ。ぼ、僕」

 五郎が何か言おうとするのを聞かずに紫檀は外へと出てしまう。

 未だに笑う膝を叩く。這って、乱雑に食い散らかされた鎌鼬族二人の側を通り過ぎ、外に出た頃にはもう、そこには一つの鬼火が掻き消えていくばかり。

「ぼ、僕、待ってます! ずっとずっと、待ってます! 紫檀殿! 僕、いつまでも待ってますから!! だから、だから、生きて帰って来て下さい!! 約束です!! 約束ですからね!!!!」

 

*

 

 梵! 梵梵! 梵梵、梵梵梵梵!!

 ゆらりと近寄って来た鬼火が黒狼族の背中にへばりつき爆発する。鱗が幾つか剥がれ落ち、よろけたところに紫檀が追い討ちを掛ける。辛うじて躱しつつ反撃を入れようとした時にはもうそこにはいない。

 四方八方より鬼火が異なる速さで飛んでくる。身体能力に優れる黒狼族と言えど、鬼火と共に駆ける紫檀を目では追えていない。背後に回られたとて体を捻っている時間に更に背後に回られる。しかしこの黒狼族は笑っていた。鬼火に被弾しようとも、目で追えなくとも、驚異的な五感で紫檀の致命だけは避け続けている。隙あらば反撃を捻じ込もうとしている。

 ぼろぼろと爆ぜた黒狼族の着物から暗器が零れ落ちている。迫り来る鬼火を炎を撒き散らしながら相殺し、同時に紫檀の攻め入る方向を僅かでも限定する。

 防戦一方になっている事に口惜しさを感じてはいたが、これが後先考えぬ猛攻、蛮攻である事は分かり切っていた。長くは続かないはずだ、耐え切ってしまえば如何様にも料理出来る。

 梵!

 背中に回られる。飛び退きながら小太刀を投げつけた。弾かれ、糸を切られた。

「っ」

 梵!

 追撃かと思いきや、投げつけられた鞘が黒狼族の体を激しく打ちつけた。

 梵梵梵!!

 宙で動きを止めた黒狼族に、零れ落ちた、拾い上げられた暗器が全て深々と突き刺さる。鬼火の勢いを足されたそれらはまるで銃弾のように体を貫通していく。

 黒狼族が崩れ落ちた。

 梵!

 紫檀が仕留めに刀を畳に突き立て、そのまま加速してやってくる。せめての一撃と小太刀をそれでも合わせようとしたが。

 梵!!

 直前で宙へと飛び上がった紫檀、空振る小太刀。両手で頭上へと掲げられた刀。

「……チッ」

 梵!!!

 胴と分たれた黒狼族の首は、ごろりと横に転がり、その歪な嘴が紫檀の足に当たって止まった。

 最期まで笑った顔をしているその頭。足を避けて深々と畳に突き刺さった刀を抜いて血を拭い、鞘を拾い上げる。

 未だ同じ場所に座ったままの鎌鼬族の長は、満足したかのような顔をしていた。

「……気に入らねえ」

 己が築き上げて来た家を破壊されようとも、己の命が奪われようとも、この鎌鼬族の長にとってはこの一戦を間近で見れただけで釣りが来るのだろう。

 そういう意味では、元凶に対して最も欲するものをくれてしまった事になる。

 

「そうだな」

 いきなり第三者の声が聞こえてきて、思わず振り向く。

「滅尽族……!?」

 怨虎族などとも比較にならない程に強大な力を振るう古龍種の中でも、一際血と屍と闘争に溢れた逸話ばかりを持つ種族。

 その代わりに数はとても少なく、古龍種という括りでも、紫檀は数度しか見た事がない。それが、何故ここに。

「別に滅尽族っても、俺はただの隠密廻だよ。最近な、俺んとこに成人するかどうかの鎌鼬族が連れて来られてな、すげえ事言うんだよ。それで調べに来たらアンタが大暴れしてんの」

 軽い口調で堂々とこの場に入って来るその滅尽族。

 赤と黒を基調とした全身は棘で覆われている。また側頭からはその棘を数多に捻り合わせたような太く巨大な角が一対。

 体格自体は紫檀やや大きい程度でそう変わらないが、その全身から溢れ出る迫力は紫檀とは比べ物にならない。何倍も密な肉がその中に詰まっているような、そんな想像が浮かぶ。

 そしてその棘のせいで着物は殆ど羽織っておらず、股間と足回りと僅かな装飾ばかりで身を包んでいるその全身のどこを見ても得物は持っていなかった。

 紫檀がその滅尽族から目を離せないでいると。

「おっと」

 自刃しようと首に小刀を当てようとした鎌鼬族の長に、その滅尽族は体から棘を一本折って投げ飛ばした。

「がっ……」

 的確に腕に突き刺さり、小刀が手から零れ落ちる。

 そのまま近寄ると、頭を軽く叩いて気絶させてしまった。

「流石にこいつだけは生かして持って帰らねえと俺も大目玉喰らうんでな。良いだろ? それとも殺したいって言うなら止めはしねえが、ま、その後はアンタも一足後に地獄行きだな」

「……お、俺は、この後どうなるんだ?」

「ん? 別にこれ以上何もしねえなら帰って良いよ。あんたが悪じゃねえって事は分かりきってるしな。

 ただ、人を殺せる事と、悪である事は等価じゃねえが、それでもここまで出来る輩は早々居ねえんでな、色々協力して貰う事にはなるかね。

 そうして貰うならお咎めなし。良いだろ?」

「え、あ……それだけで良いのか?」

 滅尽族が奉行所の一員だと示した事よりも、滅尽族が空手だろうとどうしてか勝てる算段も想像も出来なかったのが、紫檀を従順にさせていた。

 

 紅檜皮と名乗った滅尽族と共に外へと出ると、既にそこには数多の人が集まっており、残りの鎌鼬族達も等しく捕縛されていた。

「あ、あの、その怨虎族は?」

 近くの迅族が聞いて来ると、紅檜皮はさも当たり前かのように言う。

「同じ隠密廻の紫檀。暫く前からここが怪しいと睨んで居てな、様子を見張って貰っていたのさ。そうだろ?」

 肩を掴まれる。紅檜皮にとっては軽くなのだろうが、既に肩は悲鳴を上げていた。

「……はい」

「…………貴方がそう言うなら別に良いですけどね。

 紫檀さん? これから大変ですよ。頑張ってくださいね」

「え、あ、はぁ……」

 手を離され、背中を叩かれる。思わず前へとよろける強さ。

「そういう事だ。じゃ、今日はさっさと帰りな。待ってる奴も居るんだろ?」

 朗らかな顔で言うその紅檜皮に対して、もしかしたらずっとこいつの掌の上だったのかもしれないと悪寒が駆け巡る……が、紫檀は素直に言葉に甘える事にした。

 喧騒を通り抜け、静かになっていく道を歩きながら。

 ……帰れるとは思っていなかったんだがな。

 今更ながら、格好つけたように最後の別れを告げた己が恥ずかしくなってくるようであった。

 

*

 

*

 

 鎌鼬族の大事件もほとぼりが冷める程の刻が経ち、夏がやってきていた。

 暑さも落ち着いてきた夕刻に、今日は祭りが開かれている。

 数多の提灯が夕刻らしからぬ明るさを醸し出し、一堂に集まった多様な人達の雑踏と笑い声、それから笛と太鼓との小気味良い音頭がどこかしこから聞こえて来る。

 そんな中、一人の飛雷族の子供が雪鬼族のお面屋の前で余り売れていないであろう、端にあったお面を指差した。

「これで良いのかい?」

「うん。これが良い!」

「はいよ」

 銭を払って飛雷族の子供はそれを受け取り、早速身につけて走っていく。

 その子供は道中、育て親である怨虎族と合流し、その怨虎族は身につけていたそれを見てやや恥ずかしげに顔を逸らす。

 微笑ましい光景だと思っていると、そんな怨虎族に何者かが馴れ馴れしく肩を掛けて来た。

 全身から棘が生える、見るからに堅気でないような、雪鬼族が今まで見た事のない種族。そんな相手にも飛雷族は親しく話しかけ、それとは対照的に怨虎族はげんなりとした顔をする。

「何はともあれ、良くやれているようで?」

「おじさーん。お面ちょーだい!」

「あ、はいはい」

 お面を取って再び顔を戻せば、既に彼等は祭りの雑踏に紛れて見えなくなっていた。




・ネルギガンテとマガイマガドの絡み書きたいなー
・格好良いマガイマガドもっと書きたいなー
・あのモンハン獣人絵良いなー
とか色々悪魔合体して出来た代物。

評判良かったら続けるかどうか……。カロリーめっちゃ高いけど。
キャラ詳細は後日後書きに書き加えるか、別に活動報告に投げるか。

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