【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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今回の話はともりんの誕生日記念話にもなりますが、二人の中学時代の前日談にもなります。


誕生の星、キミと交わした約束。それでも僕は忘れない。(高松燈生誕祭記念) ※前日談

 これは……私がまだ中学生のとき、CRYCHICとして活動していた頃の話。

 中学生の頃の私は結人君と会う機会も減っていた。結人君は自分のことなんかよりバンドのことを優先していいと優しく言ってくれたからバンドに集中出来ていた。最近は一週間以上、結人君と会っておらず彼に会いたくなっていた私は今日という日だけでも一番大切な友人である結人君と一緒に過ごしたいと願って、連絡をすることにした。

 

『結人君今日空いてる?』

 

 簡潔な内容で連絡をすると、すぐに返事が返って来ていた。

 

『大丈夫だぞ、父さん今日休みみたいだから車で何処かに連れて行ってもらうか?』

 

 すぐに来た返事を見ていると、携帯が真っ暗になり私の顔が反射されているのを見て慌ててスマホの画面を付け直した。一瞬だけ見えた自分の表情がかなり緩んでいたからこそ恥ずかしくなってすぐに『いいの?』と返す。

 

『父さん暇してるだろうし、大丈夫だと思う』

 

 結人君からの連絡を見て『キャンプ行きたい……』と返すと、『おう、伝えておく』と返事が返って来ていた。前に一度結人君行った、キャンプ楽しかったから行きたかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結人、ほらテントと一式持ってけ!!」

 

 キャンプ場……。

 結人君のお父さんが車で連れて来てくれていた。

 

「お、おもっ……!!」

 

 結人君がお父さんからテントの道具を受け取っていて「私も手伝う」と言うと、結人君が「大丈夫だよ燈」と言っていると結人君のお父さんが私に話しかけていた。

 

「燈ちゃん、こいつと一緒の寝床になっちまうけど大丈夫か?」

 

「え?は、はい、大丈夫です……」

 

「そうか、悪いな燈ちゃん!!結人も夜中に変な気起こすなよ」

 

「燈、いる前でそういうこと言うの普通に最低だからな父さん……つーか俺達中学生だし……」

 

 へ、変なことってなんだろう……。

 結人君のお父さん凄いニヤニヤしてた……。結人君のお父さんはいつもこうやって結人君や私のことを揶揄ってくることが多い。家にはあんまり帰っていないようで今日は偶々家にいたみたい。

 

 結人君は「本当最低だな、あの人」と言いながらもテントを組み立てていた。手伝わなくていいと言われていたけど、何もしないのは申し訳ないから手伝っていた……。ペグ?というものが地面に上手く入らなくて困っていると彼が上手く地面に入れるコツを優しく教えてくれて助けてくれていた。

 

 

 

 

 

 

 テントも設営出来て一段落した頃、夕方の景色を私達はこの目に焼き付けていると、結人君も「疲れたー」と言いながらも草むらの中で大の字になっていた。

 

「結人君、誕生日ごめん……。最近遊べなくて……ごめん」

 

「昨日も言ったけど、別に気にすんなって……。燈はCRYCHICにいるの楽しいんだろ?俺がよく知っているのは立希ぐらいだけど、あいつみたいな強烈なボディーガードがいれば燈も大丈夫だろ」

 

 立希ちゃんのことを「ボディーガード……」と言われて小さく笑うと、結人君も小さく笑っていた。

 

「そういえば燈の誕生日……。立希の奴、大丈夫だったか?あいつ暴走してたりしてなかったか?」

 

「凄い張り切ってた……私が星好きだから望遠鏡を送ってくれたんだけどね。これで燈と一緒に星を眺めたいって……。後ね、今日用事があるって言ったら結人君と何処かに出かけるのすぐに気づいたらしくて、私のことを追いかけようとしてたからそよちゃんに止められてた」

 

「あー重症だな、そりゃ……」

 

 結人君は渇いた笑みを浮かべながら「ははっ」と笑っていた。

 そよちゃんが足止めしてくれなかったからきっと今頃こうしてキャンプなんて出来なかったかもしれない。

 

「でもね、立希ちゃんも最初からあんな感じじゃなかったんだ。出会った頃は私も本当にバンドなんて始めていいのかなってなってて……おどおどしてたから立希ちゃんに臆病な奴って結構思われてた。きっと結人君は私のことを臆病なんかじゃないって言ってくれるだろうけど……」

 

 初対面の頃の立希ちゃんの目つきを見たとき、鋭い眼光を見て私はいつもあたふたしていた。

 怖い人っていう印象も抱いていたから尚更……。

 

「そうだな、燈は成長したよ。昔は自分でメニューを選ぶとかじゃなくて周りに合わせていたのに、今じゃちゃんと自分の意志で選べてるんだから」

 

「成長出来てるのかな……」

 

「出来てる、自分の意志で何かを決めるって意外と難しいことだったりするんだ。例えばだけどさ、俺が何処に行きたい?って聞いたときもちゃんと燈は此処行きたいって自分の意志を言ってくれてるだろ?そういう積み重ねって俺は大事だと思うんだよ」

 

「それは……結人君のおかげ」

 

 今もこうして自分の意志を貫き通せているのは彼のおかげでしかない。

 私を導いてくれたから私は自分の世界を大切にして歩み出してもいいことを教えてくれたような気がした。

 

「だとしても、ちゃんとそうやって自分の意志で選ぼうとして出来ている燈を見て凄いと思ってる。さっきだってテント作っているときに俺が手伝おうか?と言ったけど燈が俺に助言を求めながらもやってくれただろ?それって自分の意志だろ?」

 

「自分の意志……」

 

 考えたこともなかった。

 いつも結人君が私に直感で選んだみたらいいとか、こっちの方がいいんじゃないのか?と言ってくれるからそれを言われて「じゃあ、これがいいかな」と言ったりしていただけだった。それが自分の意志だということには全く気付かなかったけど、思えば結人君に誘導されながらもいつしか私は自分の意志というものを持てるようになっていたのかもしれない。そのいい例として私はCRYCHICとして活動しているときに自分の意見を言うことが出来ていたから……。

 

『今のところ駄目だったと思うからもう一度練習したい……』

 

 彼の背中をただ追いかけている頃の私だったら、言うことなんて出来なかった。祥ちゃんは特に驚く様子もなく、私に付き合ってくれた。まだ私は弱いままだけどそれでもCRYCHICや結人君がいてくれたらもっともっと強くなれる気がする……。

 

 そしていつかは本当に……人間になれるのかもしれない……。

 そんな日々が待っているのかもしれない……。

 

 

 

 

 

 

 

「燈、ちょっといいか?」

 

「え?う、うん……」

 

「父さん、ちょっと行ってくる」

 

「おう、あんまり遠くに行くなよ」

 

 結人君は「分かってる!」と返しながらも、バッグを持って私を連れて少し茂みの中へと歩き出していた。何処を目指しているのかよく分からなかったけど、ただひたすら追いかけていた。

 

 

 

 

 結人君を追いかけていると、追いついたその場所は……。

 先ほどの場所より少し高台だった。草原に座り込み、周辺の音を確かめる。辺りはすっかり静寂に包まれていた。キャンプ地から少し離れただけなのに、まるで世界そのものから切り離されたような感覚があった。風が草を揺らし、その微かな音が聞こえる。

 

「燈、目瞑りながら上を向けるか?」

 

「う、うん……」

 

 言われた通り、私は目を瞑りながらも頭を動かして上に向ける。

 

「開けていいぞ」

 

 結人君から言われた通りに目を開けると、空には無数の星が輝いてていた。

 

「綺麗だろ?」

 

「綺麗だね……」

 

 星空に目を奪われていて反応するまでに時間が掛かっていた。

 ようやく漏れた声は自分でも耳を澄まさなければ聞き取れないほどの小さな声だった……。東京でもこんなにも綺麗に見える星空があったのはきっと結人君と出会わなければ知ることもなかった。キャンプに行きたいって言わなかったらこの景色を見ることも出来なかったのかもしれないと考えると、自分の意志で此処を選んで良かった……。

 

「燈、一日遅れだけどこれ誕生日プレゼント……」

 

 結人君がバッグから取り出してきたのは白い小さな箱。

 結人君が差し出してくれた小さな箱を受け取ると、「開けてみてくれ」と言われる。不意を突かれて一瞬戸惑いながらも、その箱の蓋を開けて行くとそこには細やかな星を散りばめたようなアクセサリーがへび座のように見えていた。

 

「作ったんだ……父さんの知り合いにそういうの作ってる人がいて教えてもらったんだ。あんまり綺麗じゃないかもしれないけど……」

 

「綺麗だよ、結人君の手作り……」

 

 頬を掻きながらも結人君が自信なさげにしている。

 

「ありがとうな、そう言ってくれて……。星言葉まではあんまり詳しくはないんだけど、燈の誕生日11月22日だよな?それで調べて見たんだ。へび座ρ(ロー)星……星言葉は果敢にチャレンジする意欲。今の燈にピッタリだと思ってさ」

 

「私に……?」

 

「ああ、前を向いて今バンドをやっている燈に……!!」

 

 果敢にチャレンジする意欲……。

 そんなものがあるかどうかと言われたら私にはきっとない。一生懸命に前を向いて歩くことしか出来ないけど、結人君はそれでも凄いと言ってくれるんだろう。前を向くことが出来るなんてすごいって……。

 

 

 きっと言ってくれるんだろうな……。

 

 

「それで……来年の春か夏に、へび座をこの場所でまた観に行かないか?」

 

 今年でも見れない訳じゃない。

 でも11月にへび座を見るのはかなり難しい。4月から7月にかけて観測できるから結人君は来年見に行こうと言ってくれたんだ。

 

「行こう、二人で」

 

 何の躊躇いもなく結人君の言葉に対して私は反応をしながらも貰った星座のアクセサリーを手に握り締めながらも結人君と静かな場所で一緒に星空を眺めていた。来年一緒に見に行こうと誓った約束を忘れずに……。

 

「ああ、忘れてた……」

 

 

 

 

 

 

「燈、誕生日おめでとう……」

 

 私はこの日を永遠に忘れない。

 そんな日があるとはとても思えないけど、もし大人になって結人君のことを忘れるようなことがあっても私は今日という日にこの誕生日プレゼントを貰ったことを絶対に忘れることが出来ない。

 

「うん、ありがとう結人君……」

 

 受け取ったこの大切な贈り物をしっかりと握り締めながらも結人君と一緒に星空を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あった……」

 

 時は流れて……今は高校生。

 学校は羽丘に入って周りからは不思議ちゃんと言われることが多かった……。

 今は転んだ千早さんのことを手当てしようとするために天文部の部室に置いてある箱から絆創膏を取り出そうとしていた。

 

「あっ……」

 

 偶々箱に肘をぶつけてしまってその箱の中身を散乱させてしまう。慌てるようにして拾おうとしたとき一緒に箱の中に入れてあった、へび座のアクセサリーが目に入る。

 

『来年の春か夏に、へび座をこの場所でまた観に行かないか?』

 

 永遠なんてなかった。

 一生続くと思っていた関係は突如崩れ落ちて行った。結人君と連絡を取らなくなったというものの、CRYCHICを解散してからというものの私の中で徐々に雪が降り積もってその雪は未だ溶けることがなく、積雪となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……もう結人君とは会うことが出来ないのかな。

 結人君の誕生日祝いたかったな……。

 

 

 

 

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