【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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じゃあね結人君

「睦じゃない方……」

 

「やっぱり分かるんだ……」

 

 楽奈ちゃん私が睦ちゃんじゃないというのを知っていたんだ。

 最初から私のことに関しては怪しんでいるようではあったけど……。

 

「いつから知ってたの?睦ちゃんの中に私が居ること……最初から?」

 

「初めて会ったとき、何か居るって感覚にはなった。それが本当かは分からないから、最初は疑った。でも、結人が燈達の前のバンドの練習の奴みたとき今と違うってなった」

 

「そうだった……んだ」

 

 本当に楽奈ちゃんは不思議な子……。

 多分、私と同じぐらいの子で私の中で私という人格に気づいたのはこの子ぐらい……だから。

 

「楽奈ちゃんは……どうして此処に?」

 

「猫と遊んでた」

 

「それは見たら分かるけど……」

 

 楽奈ちゃんってそういえばこういうところあるんだって思い出しながらも、私はとりあえずその場から離れようとする。今此処で楽奈ちゃんと話をしていてもしょうがない……。

 

「何処行くの?」

 

「何処行くって……家に帰るだけだよ?変なこと聞くなぁ……楽奈ちゃんは」

 

 愛想笑いをしながらも私はそう返事をすると、風と共に木々が揺れ動く……。

 

「追いかけて来るよ」

 

「……誰が?」

 

 

 

 

「ゆいとなら」

 

「…………そうだね」

 

 まるで私が逃げるのを勘付いているような台詞に私は暫く返すものがなかった。

 簡素に返すと、楽奈ちゃんは野良猫を抱き抱えながらも頭を撫でていた。

 

「楽奈ちゃんは……追いかけて来ないの?」

 

「追いかけて欲しいの?」

 

「……いい、追いかけて来ないで。それと……結人君と会っても……」

 

 

 

 

 

「追いかけて来ないでって伝えて」

 

 これ以上、私は結人君に迷惑を掛けたくない。

 苦しめたくない。私が出来ることはもう……。

 

 

 

 

 結人君の目の前から消えること……。

 そうすればもう睦ちゃんも結人君も苦しまなくて済む。あまりにも短絡的な発想なのは自分でもそうだと頷いている。それでも、本当にこれしか選択肢がなかった。二人が苦しむなら、二人を引き離すしかないって……。

 

「それじゃあ……」

 

 結人君の傍から離れるということは本当は辛かった。

 胸が張り裂けそうだった。

 

「楽奈ちゃん……」

 

 それでも、私は自分が今からすることを間違えてない。

 間違ってないなんかないと信じ続けることでしか私はこの痛みを忘れることが出来なかった……。刹那のように忘れる為にも……。私はただ楽奈ちゃんの下をそれ以上何も言わずに去って行った……。

 

 

 

 

 

 

「ただいま……」

 

 家に帰って来ていた……。

 誰も居ない、そんなのは当たり前だった。みなみちゃんもたあくんも仕事で忙しいから家に返って来ることは滅多にない。ほぼ私しか住んでいない家の中で私は大きめなバッグの中に荷物を詰め込んでいた。家出をする為の……荷物を……。

 

「これで全部だよね……」

 

 必要な荷物、着替えやらなにやら全部を詰め込んだ私は前に結人君の話から聞いていたことを思い出す。それは立ち食い蕎麦屋でのこと……。睦ちゃんと話をすると決めた後に語っていたことが頭に過っていた。

 

 新幹線……。

 私はあんまりそういうのに乗ったことないから凄く不安でしょうがないけど、多分この時間でもまだあるはず。それに乗って私は何処か北の方へと向かう。

 

「北……?」

 

 偶々、頭の中で思考していたものだったけどそれは私を立ち止まらせる。

 それは前から決まっていたあるドラマの撮影が北海道のえっと……何処だったっけとなりながらも私は早速調べることにする。

 

「あった、これだ……」

 

 此処ならきっと結人君も探すことなんて出来ない……。

 決心しながらも荷物を抱えて、私は家を出たのと同時にお財布の中に入れていたある一枚の写真を手に取る。

 

「じゃあね」

 

 どうしてその写真を手に取ったかなんてのは本能がそうしろって言ってくれていた。

 これで最後になるかもしれない結人君の顔をこの目でちゃんと焼き付けたかったから……。

 

「結人君……」

 

 最後の一時を堪能した後に、私はそれを財布にしまいながらも歩き出しながらもその足音は寂しく冷たく音を立てているようにも聞こえていた──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ……?これ、誰か落としたのかな……」

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 まだ遠くには行ってねえ……。

 信じたい、そう信じたい気持ちでいっぱいだった。祈ることしか出来ないのが現状だったが、それでも俺は必死に睦のことを探していた。今まで睦と行った場所……。その前、何度も行ったり来たりしていたがあいつは何処にも居なかった……。スマホを確認すっると、立希と愛音からの連絡が来ていた。俺はあの二人に睦のことを探して貰っていた。

 

『探してるけど居ない……。結人、他に睦と行った場所は?』

 

『こっちも居ない!!』

 

「他は……」

 

 俺がまだ寄っていないとすれば、それは睦と二回目に会ったあの公園……。

 モール前にあるあの公園しかないとなって俺は近くまで来ていたこともあって、すぐにその公園に入るとそこには楽奈の姿があった……。

 

「楽奈……?」

 

 この時間まで此処に楽奈が居るということに一瞬「なんでいるんだ?」となりながらも、俺は今聞くべきことをそれじゃないと即座に取捨選択をする。

 

「楽奈、睦の奴は見たか?」

 

「睦は見てない」

 

「……そうか、悪い。ありがと……ん?」

 

 すぐに他の場所を探しに行こうとしていたが、どうにも俺には楽奈の言い方に引っ掛かっていた。いつも直接的に「いない」とかそういうもので簡潔で済ませそうな楽奈がこんな含みを混ぜた言い方をするのか?という疑問が生じていた。

 

「楽奈、もしかして別の睦を見たのか?」

 

 疑問が生じていた俺はすぐさま質問を投げかけると、楽奈は「気づいてくれた」と言わんばかりに表情を緩めながらも頷く……。俺が睦のことを拒否したから睦からまた別の人格が生えてしまったのかもしれないと後悔しながらも、下を向いていると楽奈は朗報を持って来てくれていた。

 

「前に言ってた奴、居た」

 

「……!!?モーティスのことか!!?」

 

 楽奈の方を揺らすと、軽く頷いてくれる。

 痛そうに目を細めていた為、俺が「悪い」と言うと「気にしてない」と返される。俺はそれほどまでにモーティスがこうして生きてくれていたことが今この絶望的な状況を引っ繰り返せるかもしれないとなって希望を持てていた。

 

「何処へ行ったのか分かるか楽奈?」

 

「追うのゆいと?」

 

「当たり前だろ、俺はあいつを追わなくちゃいけない……!!」

 

 楽奈はまるでその言葉を待っていたと言わんばかりに俺に笑顔を向けてくる。

 銀色の髪を照明に照らしながらも……。

 

「何処へ行ったのかは知らない……。でも、結人が探すなら……」

 

「野良探し手伝う」

 

「悪い、ありがとう楽奈……!!」

 

 俺と楽奈はモーティスのことを探すことになった。

 しかし、モーティスは何処に行っても見つからなかった。

 

「ゆいと、あっちがいそうな場所は?」

 

 あっちというのは多分、モーティスのことを指しているんだろうと認識しながらも俺は一先ず考えることにする。此処まで、俺が探していたのは俺とモーティス、もしくは睦と共に行ったことがある場所だった。

 

 俺の中で、もう一つ考えられるものがあるとすればそれは睦の家……。

 あいつの家の住所は前に一度だけ教えて貰ったことがあって、そこに向かおうとしているときだった。誰かが俺に話しかけたような気がして、俺はそこを振り返ると……。

 

「ましろさん……?」

 

「結人君……?もしかしてこのプリクラに映っているのって……」

 

 その女性から一枚のプリクラを見せられる。

 そこに映っているのはぐちゃぐちゃの線で囲まれているモーティスと俺の姿……。

 

「ゆいと、落としたの?」

 

「いや、俺は手元に入れてある……。となると、これはモーティスのだ」

 

 自分の財布の中にあいつとのプリクラを入れてあるのを確認した後にこれが誰が落としたものなのかをすぐに気づいた……。世界にたった二枚だけが存在している記憶の二枚。その一枚の内を何故、ましろさんが持っている……んだ。

 

「あの……ましろさんはどうしてこれを持ってたんですか?」

 

「えっと……誰かが落としたみたいでそれを拾ったんだ。警察にでも届けておこうかなって思ったんだけど……今こうして結人君を見つけたんだ」

 

「そう……だったんですね」

 

 ましろさんが何故これを持っていたのかという情報を得た。

 この一枚をじっくりと眺めていた。風で靡く髪と共に……。

 

「ましろさん、見つけてくれてありがとうございました……。俺はまだ、自分を信じることができることが大切って言うの……見つけられたか分からないんですけど、それでもましろさんや八潮さんに言われたものは大切に抱えて行こうと思っています。それじゃあ、またいつか会えたら」

 

「うん、見つかるといいね……」

 

 この写真が落ちていたということが何を意味するのか、二重の意味合いで気づいていたのかは知らないがましろさんは含みを混ぜながらも俺の背中をそっと押してくれていた。俺は押された背中と共に、楽奈と共にモーティスのことを探すのを再開する。

 

「ゆいと、さっきの誰?」

 

「ん?ああ、さっきの人は俺に……」

 

 

 

 

「抱え切れないものを軽くしてくれた人だよ」

 

 自分を曲げずに自分を変える、それを肯定してくれたし難しいことだとも言ってくれていた。

 決して軽いものではなく、重たいものだと教えてくれた。ちゃんとそこに至るまでの背景を俺は感じ取ることが出来たからこそ俺も邁進して行こうとなれた。たった、それだけのこととはいえ俺はあの人に出会えて本当に良かったとなれた。勿論、八潮さんにも……。

 

 

 

「ゆいと」

 

 楽奈が俺を呼ぶ声がしている。

 俺は一旦立ち止まって、俺は「どうした?」と言うと……。

 

「さっきの奴、裏に何か書いてあった」

 

「本当か?」

 

 頷く楽奈に俺は再度モーティスが落としたプリクラの裏には……。

 

「北……?」

 

 一文字で書き記しされているものがあった。

 これだけじゃ何も判断できないとなっていると、楽奈は……。

 

「東京より上?」

 

「東京より上って……それって北海道とか東北のことか?」

 

「そうかも……」

 

 楽奈の答えを更に拡大解釈すると、答えに近づいたような感覚になる。

 何故なら、北と書かれている文字の上に矢印で斜め上が示されていたるからだ。

 

「何か覚えある?」

 

「俺の方は特に……いや……そういえば」

 

 一つだけ覚えがあるものがあった。

 それはモーティスと立ち食い蕎麦を食べに行ったときのことだった。あいつは近々、北海道でロケがあるという話をしていた。

 

「そういえば、なんだが北海道でロケがあるという話をしていたな……お前なら知ってるんじゃないのか?にゃむ……」

 

「にゃむ……?」

 

 俺が睦の告白を拒否した後も、今もずっとあいつが俺のことを追い掛け続けているのは把握していた。だから、あいつの名前を呼ぶと息を吐きながらもにゃむは俺の後ろから出て来て、観念したかのような顔になる。

 

「それ……ムーコが北海道の方でドラマのロケがあった奴……。何処なのかまでは把握していないけど」

 

 にゃむは面倒くさそうにしながらも俺と楽奈の話に付け足してくれている。

 にゃむがやってきたことに楽奈は「誰?」という顔をしている為、俺はそれに睦と同じバンドの奴と答えると納得しながらも寄って来ていた首輪を付けた飼い猫が夜の街を徘徊していて、そっちに意識を取られているようだった。

 

「北海道……。それって他の共演者は?」

 

「……誰とかまでは流石に覚えてないんだけど確か、Sumimiのまなとかも出演予定だったと思うけど」

 

 にゃむの話を聞いてから俺はスマホから初華の連絡先に電話をする。

 あいつならもしかしたらまなの連絡先を把握しているかもしれないとなっていたからだ。暫く待っていると、初華に電話が繋がる。

 

「初華、話があるんだがまなさんの電話番号って知ってるか?」

 

『え?あーえっと持ってるけど、どうしたの結人?』

 

 いきなりまなさんの連絡を知りたいという電話をしたのもあってか、初華は戸惑っているようだったが、俺は事情を説明する。

 

「睦が失踪したんだ……。そんで写真を見つけたんだが、裏には北って書かれていたんだ。そんで、にゃむからは北海道でロケがあったはずだから北へ向かっているんじゃねえかって今推測しているんだ」

 

『え?あっ、睦ちゃんが失踪……?だ、大丈夫なの結人?』

 

「俺の方は大丈夫だ。それより、今はまなさんの連絡先が知りたい。もしかしたら、あいつのことを追跡できるかもしれないからな」

 

『ちょっと待って、結人……今送るから』

 

 初華は連絡しながらも俺にまなさんの連絡先を送ってくれていた。

 それにお礼を述べた後に、俺はこう託す。

 

「睦のことはこっちに任せてくれ……。初華の方は豊川と今日は会えたのか?」

 

『え?う、うん……。行ったんだけど会えなかったんだ』

 

「会えてなかったって……?どういう意味なんだ?」

 

『今祥ちゃんがいるのはお家なの。そこは豊川家の家でもあるから、不用意に入ることは許されてないんだ』

 

「そういうこと、か……」

 

 思ったよりも今の豊川に会うということへの難しさに俺は眉を細めそうになる。

 確かにあいつは元はと言えば、豊川家という大きなものに生まれた立派な令嬢。本人も面会は拒否しているだろうし、バンド仲間とはいえそう簡単に会わせてくれる可能性もあり得ないというのが実際のところだろうな。

 

「……分かった、じゃあ豊川のことはそっちに任せる。睦のことは任せてくれ」

 

『うん……お願い』

 

 俺はそれに「ああ」という返事をして早速まなさんに電話することにする。

 豊川に睦の件……。問題となるものは山積みという状況。此処から一つずつ解決していくよりも分散して解決した方が圧倒的にいいとなりながらも、俺はまなさんが電話に出るのを待っているとまなさんから連絡が来る。

 

「あの……まなさんの携帯で合っていますか?」

 

『え?そうだけど……ってもしかしてその声は結人君?ビックリしたぁ……』

 

 電話に出てくれたことに肩を下ろす。

 もしかしたら、電話に出てくれない可能性もあったからだ……。

 

「な、なんか驚かせてしまってすみません、俺です……。まなさんに一つ尋ねたい事がありまして……北海道で最近ドラマのロケを撮ったという話はありますか?」

 

『ーん?あんまりそういうのって喋れないんだよね、どうしたの?』

 

 確かに考えてみれば、こうも簡単に今ドラマの撮影をしているという話を部外者にする訳がないと俺は納得していた。それがまだ上映前のものなら尚更だ……。

 

「あーまあそうですよね……。その大切な奴……若葉睦が実は今失踪してしまいまして」

 

『え?睦ちゃんが!?』

 

 失踪したという話を聞いて、まなさんは声を大きくしながらも驚いている。

 どうやら、睦とは面識があるようだ……。

 

『そ、そういうことだったんだね……!あーえっとね、確か……北海道の函館でロケをしたよ?そそのときに睦ちゃんも一緒だったかな?』

 

「函館……ありがとうございます!!まなさん!!」

 

 確かな有力な情報を得ることに成功した。

 俺は電話越しに頭を下げながらも、まなさんに感謝を伝えていると……。

 

『睦ちゃん、絶対に見つけてね?あんなにお芝居上手い子中々居なかったし、二人で楽しく海鮮を食べたりしたの。それでね、また一緒に何処か二人でお出かけしたいねっていう話もしたぐらいなんだから』

 

「……ありがとうございます、まなさん」

 

 ただ俺は感謝の言葉でしかなかった。

 睦かモーティスがそのときどっちの人格だったのかは知らない。それでも、あの二人が本当に一人じゃなかったという話を聞けて俺の心は穏やかなものになりながらも、電話を切ることにしていた。

 

「で、行くわけ?函館」

 

「ああ、俺はそのつもりだ」

 

 電話を終えた後、にゃむが俺に声を掛けて来る。

 睦が今何処にいるのかを喜んでいるというよりはただあいつは情に流されることなく、冷静だった。俺はその間にも新幹線や飛行機を調べると、飛行機の方はまだありそうだということを知る。

 

「はぁ……まあ結人はどうせ止めても行くだろうから一つだけ助言してあげる」

 

「助言……?」

 

「っそ、此処は一旦冷静になって明日の朝すぐ出発するとかそっちの方がいいってこと」

 

「どういう意味だ、そりゃあ」

 

 今にも食って掛かりそうな言葉の糸を引っ張り上げると、にゃむは溜め息をついている。

 

「あんま怒らないで欲しいんだけどさぁ、結人って今ムーコのことをなんとかしなくちゃなんとかしなくちゃって感情ばっかでしょ?それじゃあ、多分ムーコに会っても何も解決しないで帰って来る。つまりは一度頭を冷やした方がいいってこと、ムーコをどう説得するのかちゃんと考えてってこと」

 

「ちゃんと考える……」

 

 確かに今俺が直接モーティスに会いに行っても……説得できる可能性は低いかもしれない。

 俺は冷静なつもりでいるが、それでも心の何処かでは焦っている部分もあるからにゃむの話は全く否定できないものでもなかったが俺はどうしてもモーティスを追い掛けたいという気持ちの方がやや勝っていたが……。

 

 

 

 

「楽奈はどう思う?」

 

 先ほどまで遊んでいた飼い猫が何処かへと消えてしまったのか、退屈そうにしていた楽奈に俺を声を掛ける。

 

「ゆいとは?」

 

「俺は正直……今すぐにでも会いに行きたいあいつに……。でも、今あいつに会いに行っても説得できるかなんてのは分からねえ。多分、無理だと思う。だからこの一夜のうちに考えを纏めて、明日また出直したい。それじゃあダメだと思うか?」

 

「ゆいとがそうしたいなら」

 

 そうだな、お前は睦と愛音と一緒にギターを弾きたいって前に言っていたもんな。

 だったら、俺はその約束を果たす義務がある。それに聴いてみたいからなトリプルギターが奏でるものってのが……。

 

「楽奈は来るか?北海道?」

 

「行く」

 

「……分かった。にゃむの言う通りだ、気持ちだけであいつのところに行っても打ち勝てないかもしれない。だから、明日までに頭を冷やして考えをまとめる。それでいいか?」

 

 此処で楽奈も行くという言い出すのはちょっとだけ驚いていたが、考えてみればこいつにとっても楽奈は割と大事な人間ではあるんだよな……。気には掛けてくれていたみたいだしな……。

 

「……意外だな」

 

「意外、なにが?」

 

「いや、睦に怯えていたにゃむがこうして俺に助言をしてくれるんだなって思っただけだ」

 

「別に結人に助言をしたかったとか、ムーコを助けたかったとかそういう訳じゃない。ただ、どっかの誰かが寄り添えることは出来るとかほざいてたからさぁ……」

 

 にゃむは終始笑顔であのときの話をしている。

 

「何処までやれるのか見せて貰おうかなって思っただけ」

 

「だから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も行く、函館」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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