【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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第三章はこれにて終わりです






私たちは此処にいる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛音、楽奈……二人共本当にありがとうな」

 

 RINGの舞台裏……。暗がりの中……。

 RINGでのライブを終えた後……ゆいくんは真っ先に私達二人にお礼を告げていた。

 

「睦との演奏、楽しかった満足」

 

 最初に言葉を発していたのは楽奈ちゃんだった。

 楽奈ちゃんはパンに狙いをつけながらもゆいくんにそう言っていた。

 

「いいっていいって、あーでも!クレープは生クリームたっぷりでお願いね!!」

 

「あっ、そういえばそんなのもあったな」

 

「絶対忘れてたでしょ!!」

 

「忘れてねえって、ちゃんと連れて行ってやるから」

 

 この感じ……絶対ゆいくんは私達に奢るということを忘れていた気がする。

 だって、言葉の最初に「あっ」なんて付けるってことはそういうことだろうし。まあ、ゆいくんのことだから忘れていなかったかもしれないけど……!となっていると、ゆいくんが頬を掻きながらもそっぽを向き始めていた。

 

「あーそのだな……二人に言っておきたいんだが……」

 

「なになに?どうしたの?」

 

「……あーいや、やっぱ言わない方がいいのかもしれねえし、いいよ」

 

「えー!!なになに?言ってよ!!」

 

 気になる私はゆいくんに何を考えていたのか問い詰めて来る。

 それだけで彼は更に顔を背けようとしてくるけど、次の瞬間私と楽奈ちゃんの名前を呼んだあとに……。

 

 

 

 

 

 

 

「ゆ、ゆゆゆいくん……どう……どうしたの!!?」

 

 え?え?えええ!?

 な、なんでなんでこうなってるの!!?なんでゆいくんが私達に抱きついているの……。や、やばいって!!ゆいくんが密着して来てる!!?やばい、離れなくちゃいけないのになんか全然離れることできないん……だけど!!?これってゆいくんの力が強いからなのかな!?いやいや、絶対そうだって……私の方が離れたくないとかそう言うのは絶対ない……から……!

 

 というか心臓の音やばいぐらいに早くなってるから絶対にバレるってこんなの……!!

 どうしよう、こういうのって深呼吸したら治ったりするのかなぁ!?いや絶対バレるよね!!?

 

「ゆいとどうしたの?」

 

「楽奈ちゃん、凄い冷静だね!!?」

 

 

 どうしてそんなに冷静で居られるのか分からないぐらい、冷静で驚いているけど楽奈ちゃんらしいって言えば楽奈ちゃんらしい気もするけど……!!というか、ゆいくんいつまで抱きついて来るんだろう!!?顔赤くなってるのゆいくんにバレたくないんだけど……。この前のSumimiのライブのときもそうだったけど、ゆいくんこういうこと平然としてくるのやばいって……!!

 

「愛音が昔、行動がどうのとか言ってたんだろうが」

 

「いやいやいやいや、言ったけどこれどういう状況!!?」

 

「うるせえな、騒ぐな。凛々子さんに聞かれるだろ……ジッとしてろ」

 

 いや、確かにかなり前にスカイツリーの中で行動も大事じゃん?みたいな話をしたけど、此処まで積極的なことされたら頭おかしくなるって……!!やばい、本当にどうやったらゆいくん離れてくれるかな。このままだと絶対に意識してるってバレるって……!!早く、早くどうにかしないと……。

 

「ねぇ、ねぇゆいくん……。ま、満足した?」

 

「ああ……。本当に……ありがとうな二人共……。それじゃあな……」

 

「ええ!!!?ちょっ、ちょっと……!!やるだけやって逃げるのはズルくない!!?」

 

 急に抱きつくのをやめて、ゆいくんはその場を去ってしまう。

 顔を見せないように必死になっていたっぽいけど多分その表情は……凄い。

 

 

 

 

 

 顔が赤くなっていたと思う……。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 自分でもなんであの二人にあんなことをしたのか分かって居なかった……。

 いや、分かっていないは多分違う。俺は自分でも気づいていなかっただろうが、あの二人には特別な感情があったのは間違いなかった。それが恋愛的かと言われたら、もっと頭が混乱するが前提として俺はまずMyGOが好きなのは事実だ。そして、特に……。

 

 あの二人には助けられたのは間違いねえんだ……。

 あの二人が居なければきっと今の俺になれることは出来なかった……。ずっと、自分のことを誰かを傷つけるだけの怪物だとか、冷たい笑みだとかそういうものを続けていただろう。でも、あいつらと出会ったおかげで俺の仮面は剥がされることになってしまっていた……。本当にあの二人が居なければあの笑みを続けていたかと思うと……。

 

「ゾッとするな……」

 

 本当、いい意味であの二人によって自分が壊されたんだと自覚……できる。

 あの二人が居なければきっと睦を助けることも出来なかっただろう。本当に感謝しても感謝しきれねえ、だからああいう突発的な行動に出たのかもしれない……なと思いながらも俺は睦に電話をしようとしていた……。

 

 モーティスと話が出来たのか気になっていた、からだ……。

 ただその前に俺の意識は朦朧と……していた。

 

「ちょっと疲れた……な」

 

 俺は偶々見かけたベンチに座る……。

 俺の腰は疲れ切ったように座り込んでいた……。まるで吸い寄せられるようにして……。

 

 

「少しばかりなら、寝てもいいかもな……」

 

 此処のところ、色々あり過ぎて俺は疲れてしまったという感情が湧いていた。

 だから……家に帰る前にちょっとだけなら寝るのも悪くないかもしれないと……なっていた……。それにあの様子なら……。

 

 

 

 

『まだやらなくちゃいけないことある……』

 

 大丈夫なはずだ……。

 立希と燈から解答を得て、あいつなら前に進むことが……出来る。後でちゃんとお礼を言っておかないとな……。あー後、立希に出かける日聞いておかないと……な。俺は徐々に目をうとうととさせながらも……。

 

 

 

 

 視界を閉じて行った……。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 自分自身と共存の道を選ぶ……。

 それはとても難しいこと……なのかもしれない。きっとこれまで以上に……。それでも、自分が選んだ未来をこの胸に秘めさせて生きていくんだと決めた。そうすることで、私はようやく自分を受け入れることが出来た……から。

 

「思い出……」

 

 これからは私自身の思い出を作らなくちゃいけない……。

 誰かに作ってもらうんじゃなくて自分からそういうものを得なくちゃいけない……。そういう思いを抱えながらも、私はあるベンチが目に入る……。

 

「結人……?」

 

 ベンチに座っているのは結人の姿だった……。

 特徴のある髪色だからすぐに結人だと気づけたけどどうやら眠っているみたいだった……。多分、疲れて此処で眠ってしまったんだと思う。声を掛けようと迷いながらも、私は疲れているなら結人にしてあげたいことがあった……。

 

 

 

 

 特に勇気を振り絞るということもせず、私はただベンチに座ってある行動をしていた……。

 

 

 

 

 

 

「睦か……」

 

 結人が起きて来たのか、戸惑っている様子だった……。

 私の体の一部には重く伸し掛かっているものがある。そして、結人にとって今の光景が不思議だったかもしれない。私の顔が真上にある……から。

 

「もしかして……一緒に居てくれたのか?」

 

「……ん、夜遅くに一人で居たから」

 

「ああ……まあそうだな」

 

 苦笑いを浮かべている結人……。

 そして、そのまま動くような素振りを見せずに私の……。

 

「このままにしてもいいか?」

 

「私は構わない……」

 

「そうか、悪いな。ちょっと疲れててな……」

 

 膝の中に結人の頭があり続けてくれていた……。

 結人は何故?とは聞いて来なかった。何故、そうしたのか理解してくれていたかのように……。

 

「私の……せい?」

 

「んな訳ないだろ……馬鹿な異常者が勝手に突っ走ってただけだからな……」

 

 自分を自虐しながらもまた苦笑いを浮かべている結人……。

 でも、その笑顔には何処かやっぱり疲れたような顔つきをしていた。

 

「モーティスとは……いや聞く必要はねえな。その顔を見るなら」

 

 それに対して無言で頷き返していた……。

 

「ギター見つけられて良かったな、すげえ良かったぞ」

 

「本当?」

 

「ああ、滅茶苦茶良かった……。お前はあいつらと比べたら自分の音は大したもんじゃないと思っていただろうけど、そんなことは全然なかったと思う」

 

 なんとかして、結人のことを元気づけたいと思ってしまっている私は……逆に結人に励まされてしまっていた。本当は私が励まそうとしていたのに……と少し後悔しながらも私は今の自分に何ができるのかを考えていた……。

 

 そして、ある一つの可能性を思いついていた……。

 

 

 

 

「結人……」

 

「ん?どうした睦?」

 

「お礼してなかった……」

 

「別にお礼されるようなことはし「受け取って……」」

 

 彼の言葉はいつだって冷え切っていた私の心をじんわりと温めてくれた……。

 傷口が広がってそれをそのままにして生きていた私の傷口に薬を塗って居てくれたのは結人だった……。背中を押して、いつも勇気をくれていたそんな結人にだからこそ私は恩返しをしたかった……。

 

 

 

 

 

 

「好き……結人」

 

 静かに顔を近づけて、そっと彼の唇に自分の唇を合わせた……。

 モーティスの二番煎じになってしまったのは残念だけど、どうしても結人へ向けたい感謝の気持ちをこうして私は受け入れて欲しかった……結人に……。

 

 彼の唇の温かさが残ったまま……私達は月夜に輝きながらも今この瞬間を経験として深く刻み込んでいた。例え、離れてもその温かさとこの行動だけは残る……から。

 

「……好き結人」

 

「知ってる」

 

「この好きは前みたいに依存とかじゃな「それも知ってる」」

 

 私がこの好きは依存じゃなくて結人という一人の人間が本当に好きだという意味合いがあると言おうとしたとき、結人はそれを止めていた……。

 

「……ありがとう結人」

 

「俺はなんもしてねえよ……睦が選んだ結果だろ?」

 

 結人がこういう言い方をしてくれるのは……知っていた。

 自分は何もしていない、選んだのは私……。そうやって背中を押してくれるから、私という人間を維持できている気がしていた……。それは曲解した形になってしまったけど、私は……ちゃんとお礼が言いたい……。例え、モーティスに遮られてもそれが私の……気持ちだから……。

 

 

 

 

 

 

 

「それでも……」

 

 

 

 

「ありがとう結人……私に最後まで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「寄り添ってくれて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「睦ちゃんの方が長くキスしてる!!長いのダメ!!」

 

 抗議してくるモーティスの声が聞こえて気がしていた。

 私はそれに対してこう答える……。

 

 

 

 

「今は黙っててモーティス……結人と居られる……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「幸せの時間だから……」

 

 再び……私は結人の唇に触れる……。

 心臓の鼓動が早くなっているのは結人にバレてもいい。私はそれを望みながらも……さっきよりも長い時間……。

 

 

 

 

 

 

 お互いの唇に触れていた……。

 

 

 

 

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