【完結】迷子の友人は羨望する 作:シキヨ
「来ましたか……」
若葉さんにモルフォニカのライブに行ったと思われる次の日、私は彼女に呼ばれていました……。昨日時点で連絡が来ていて、Ave Mujicaの件について話がしたということでした。彼女の声色を聞く限りでは恐らく再びムジカをやってくれるかもしれないと期待していましたが……。
待ち合わせとなっていた喫茶店で彼女が来ると本当に少しばかりですが、動揺してしまいました……。それも当然です、隣に立っているのは豊川さんでしたから……。
「もしや……若葉さんが?」
小声で私は言ってしまう……。
自分が見えている光景を疑っていました……。再結成させる上での一番の懸念点として豊川さんをどう説得するか悩んでいましたから……。まさか、こうして連れて来てくれるとは予想もしていませんでした……。
「お手柄でした、若葉さん」
察しつつも、私がそう答えると彼女は小さく頷いていました。
それからして、私と反対側のソファーに二人が座っていました。
「ん……ありがとう」
「それにしても……」
正直、若葉さんは此処までになるとは驚きました……。
彼女のことをみくびっていた訳ではありませんが、それでも彼女がこうして豊川さんを連れ出して来るとは本当に想定外でしかありませんでした……。これも成長したということ……なんでしょうか。
「いえ、今はそれどころではありませんね」
勿論、若葉さんがこうしてムジカに協力的になってくれたことはこちらとしても有難いですが、それよりも今は大事なのは……。
「こうして来てくれたということはお二人共、ムジカを活動再開させたいという意欲があるということでよろしいですか?」
一番大事な重要な部分です。
期待はしていますが、あまり期待をし過ぎてていても仕方ないでしょう。そう認識し直しながらも、改めて確認を送ると彼女達はお互いに見合った後に頷いていました。
「ん……私はムジカをまたやりたい……。私は一歩を踏み出して……みたい……。ギターを弾かせて……あげたい」
どうやら、若葉さんにとってモルフォニカのライブはいい意味で刺激になってくれたようですね。そのために彼女をモルフォニカのライブへと連れ出したのですから、当然ではありますが……。こうも前向きになってくれたのは本当に意外です。
「豊川さんは?」
「私もムジカをやりますわ……睦が光に向かった今私もその道を歩けるような気がしたんですわ」
「なるほど、分かりました……。ということですよ」
「三角さん」
合図を送るようにして、私が三角さんを呼ぶと違う席に座っていた三角さんが私達の席の前に立っていました……。
「えっと、祥ちゃん……その……本当にムジカをやってくれるの?」
「ええ、そうですわ初華」
「本当に本当に?」
それに豊川さんは小さく了承の意図を示していました……。
「良かった……本当に良かった……!!」
テーブルの前で膝を崩してそのまま倒れ込んでしまう三角さん……。
手だけはテーブルの上に置いてありましたが、それでも豊川さんがこうしてムジカに戻って来てくれることでいっぱいだったようですね。
「三角さん、そこで騒がれては他の方々に迷惑になります。どうしても気持ちを叫びたいならボウリングにお付き合いしますよ」
「あっ、えっと……ごめん海鈴ちゃん……!本当に嬉しくて……」
「構いません」
自分の様子に気づいたのか、彼女は立ち上がり周りの様子を見ていたお客さん達に軽く頭を下げているようでした……。それからして、三角さんは私の隣に座っているようでした。
「睦ちゃんも良かったよ……!こうしてまたムジカに戻って来てくれて……。そういえば、もう一人の子は大丈夫なの?」
「あーそういえばですが、若葉さんには別の人格のようなものがいるんでしたっけ?彼女の方はムジカについてはなんと?」
「賛成してくれてる……。それと、劇の方は自分がやる……って」
「なるほど、そうでしたか」
一口ジンジャーエールを飲みながらも、思考をしていました……。
若葉さんの別人格というものがどういったものなのかは少々未だに分からないところがありますが、こちらに協力的と言うのでしたら何も言うことはないですね。
「海鈴は……怖くないの?」
「貴方のことですか?それとも貴方の中のもう一人のことですか?」
「どっちも……」
「そうですね……」
もう一度ジンジャーエールを口にする。
頭を冷やすために……。
「気を悪くしてほしくはないのですが、傍から見ればそういうものであるの変わった人なのかもしれません」
「海鈴ちゃん……!」
三角さんが発言を訂正して欲しいのか、止めようとしてきました。
「気を悪くしないでくださいと最初に言ったはずです……。それにこれは世間一般的に見ればという話です。ただ、個人としては……こう思いますね」
「別に気にしませんよ」
「そういう人もいるんですね、としか思わない。そんなところです」
実際のところ、若葉さんがそういうものを持っているからと言って態度を変えるつもりはありません。急に優しくしてあげたり、急に見る目を変えるとかそういうこともするつもりもありません。
「八幡さん……」
「なんですか?駄目でし「ありがとう、海鈴」」
豊川さんに咎められたような気がしていた気がした私はそこから更に補足しようとしたときだった……。言われたのは若葉さんからの感謝でした。
「私のことを受け入れてくれて……」
表情をほころばせながらも、彼女は答えていた……。
「受け入れたとかそういう訳ではないですよ。ただ……」
「そう思ったからそう答えただけです」
あのお熱い二人のように熱いものは私のようにはありませんが……。
それでも、信頼というものが大事なことはあの二人から学ばせていただきました。若葉さんのあの感謝が信頼に繋がれば、なによりですがそう簡単なものではないでしょう。
「信頼ですか……」
こうして役者は揃いつつありますが、もう一つの懸念点もあります……。
それは……祐天寺さんのことです……。
あの日のことは嫌でも思い出す……。
ライブハウスでのこと……。私は正直アレを取り戻すなんて無理に決まっていると断言していた。それは確か……私の隣でアレのことを感情深く見つめていた奴もそうだった。長い髪のあいつに……。
『ねぇ、本当にアレが戻って来るとアンタは思う訳?』
『睦のこと信じてる、少なくとも私は」
『信じるねぇ……』
あのとき、信じるなんて脆いものでしかない……。
どうせ戻って来るわけがない、無理に決まっていると思っていたけど……結果は取り戻すことに成功した。ありえない、そんな訳がないの連続だったけど戻って来ていた……。
「はぁ……うっさいなぁ……」
スマホからはメンヘラみたいな連続通知が鳴り響いている。
相手は勿論、海鈴……。此処のところ、ほぼ毎日来ているからそろそろブロックでもしてやろうかと考えていた。そうすれば、あいつからの連絡は何も来なくなるから……。
『家に行きます』
「家……?まさか、というかあいつ知らないでしょ」
一番最後に来ていた連絡は家に来ると言う連絡だった……。
あいつに家を教えた覚えはない。どうせこれもハッタリに決まっているとなりながらも、家の天井の模様でも数えながらベッドの上で寝ようとしたときだった……。家のインターホンが鳴っていた。
「まさか……ね」
そんな訳がない、あいつに家は教えていないのだから。
どうせ宅配か何かだろうと自分を納得させながらも、私は起き上がり家の扉を開けた瞬間、そのまま家の扉を思いっきり開けられる……。
「げっ!?なんで家まで来てんの!?」
本当にマジでありえない。
なんでウミコが此処に居んの……。私、本当に家教えた覚えないからドン引きしてるんだけど……。
「おや、来てはいけませんか?」
「誰にも家を教えた覚えないんだけど……」
辺りを見渡すと、どうや私以外のムジカメンバーは全員揃っているようだった……。
サキコは病んでるって聞いてたけど、顔色見る限りは立ち直ったってこと……か。どうやって立ち直ったのか気になるけど、それよりはアレも来てるのはちょっと面倒……かも。
「今日来たのは他でもありません」
「その前になんで家知ってるのか教えて欲しいんだけど」
「それでしたら、前に祐天寺さんが家はこっちの方だとか言っていたのでそこから予測したんです」
「キモっ、ストーカーじゃん。警察電話していい?」
わざとスマホを手に取って、電話したフリをするとウミコがこう言ってくる……。
「心外ですね、同じバンドメンバーにそんなことするんですか」
「今は違うでしょ……はぁ、面倒だから要件だけ言ってくれない?」
「分かりました……では言いますね」
「Ave Mujicaを再結成します」
堂々と発言をするウミコ……。
周りの奴らの様子を見ることなく、ウミコの瞳を見ると本気で言っているようだったのが分かって私は溜め息をする。その溜め息は本気で「バッカじゃないの」と言いたい、そんな溜め息でしかなかった。
「あのさぁ……この際だからはっきりと言わせてもらうけど……」
「その
「そんなの無理に決まってんじゃん?」