【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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一つの思い出、色んな体験

「箱根か……」

 

 モーティスに呼び出されてやって来たのは箱根だった。

 それ自体は特に意外でもなかった。何故なら、箱根自体は観光地であるし、見どころも色々とある。悪くはない場所だろうと俺は思いつつも、電車の中で腰を痛めたモーティスが下りて来るのを待っていた。

 

「おい、大丈夫か?モーティス……」

 

「う、うん……」

 

 長い間、電車に乗っていたせいもあるだろう。

 早々に腰を痛めるとは思っていなかったが、まあ旅にはこういうことはつきものだろう。それに今日はそれを癒せる場所に来てる訳だしな。

 

「そんで、今日は何処へ行くのか決めてんのか?」

 

「うん!最初は本当は群馬に行こうと思ってたんだ!」

 

「じゃあ何で群馬にしなかったんだ?」

 

「いや、えっとね。どうせ行くなら一泊二日とか取れるときの方がいいかなって……。それで箱根にしたの!!それでね、えっとね、まず温泉に入るでしょ!それでね神社に行くでしょ!それと遊覧船に乗るでしょ!それでね、大涌谷って奴に行くでしょ!!後、ワンちゃんと触れ合える場所があるって聞くか「待て、多くねえか」」

 

「え?全部回りたいんだけどダメ?」

 

 何も計算していなかったのか、行きたい場所全部言っただけのようだった……。

 マジか、こいつ……。

 

「あっ、関所とかあるみたいだけど、私そういうの興味ないから」

 

「いや、割とあそこいい場所だぞ……。とはいえ、それ全部1日で回るのは無理だぞ。しかも、俺達はバスなんだし。後、大涌谷ってロープウェイ乗るからあそこだけで時間掛かるぞ」

 

「結人君がバイクで来ないから悪いんじゃん」

 

 まるで期待していたんだけどなぁみたいな目を向けて来るモーティス。

 

「来れる訳ねえだろ、つーか仮に持っていたとしても16歳は二人乗りできねえんだよ。原付はそもそも二人乗り禁止だし」

 

「え?そうなの……?」

 

 どうやら本当何も知らないらしい。

 とはいえ、二人乗りが何歳からというのは俺も最近知ったからこの辺はモーティスのことを悪いく言えないが……。危ない、そよより先に刑務所に行くところだった。

 

「と、とにかくとりあえず温泉行こう!!ねっ!!」

 

「……分かったよ」

 

 この旅、本当に大丈夫なのか?

 不安になりつつも俺はモーティスの後をついて行くことになった。どうやら、向かっているのはバス停のようらしい。

 

 

 

 

 

「ところでミモちゃん元気?」

 

 バスの中でモーティスはミモザのことを聞いて来る。

 

「ミモザか?ああ、元気にしてるよ。お前のことが気に行ったのか、あの河川敷によく行くようになってたな」

 

「ふふっ、流石ミモちゃん。私に懐いただけのことはあるね」

 

「何が流石かは知らねえが、モーティスのことを気に入ってるのは間違いねえと思うぞ」

 

 口元を緩ませるモーティス。

 見れば分かる、嬉しかったんだろう。

 

「そういえば、お前寸劇の方やってんだな」

 

「あっ、ムジ「あんま名前出すなよ」」

 

 ムジカの名前をこの場で出したりしたら、どうなるのか知っている俺は敢えて話を遮らせた。 

 誰も気づいていないようでホッとしながらも話を続けるモーティス。とはいえ、モーティスの方は俺が渡した帽子を被っているからあんまり気づかれないかもしれねえが、そういえば睦の方はあんまりあの帽子を被ってないな、最近……。

 

「あっ、ごめん。うん、そうだよ。私が睦ちゃんの負担を少しでも減らしてあげる為にやってあげてるの」

 

「そうか、ありがとうなモーティス。あいつのこと考えてくれて」

 

「うん、当たり前じゃん。私と睦ちゃんは一心同体だもん」

 

 そうだな、モーティスと睦は一心同体……。

 この二人がこれからも一緒に進んでいくと言う覚悟と決意があればどんなことも乗り越えられるはずだ。

 

「そういや、今日のことは睦はなんか言ってたか?」

 

「あーえっとね、私の方から話したんだ睦ちゃんに……。今日は私が結人君と過ごす日にしてって……」

 

「そんで?」

 

「納得はしてくれたよ?ただ、自分も結人と居れる日を作ってって言われたけど」

 

「そうか、じゃあちゃんと叶えてやらないとな」

 

 俺は「任せろ」と言いつつも、目的地の場所へとついた。

 バスを降りて、中へ入り説明やら色々を聞いて中へ入るとモーティスが色々と周りを見ていたが男女別の湯の前でとんでもないことを言い出した。

 

 

 

 

 

 

 

「……え?混浴じゃないの?」

 

「いきなり何を言い出すんだお前は」

 

 暖簾が見えてくるとモーティスがとんでもないことを言ってくる。

 まあ実際、混浴ができる温泉とかもあるのは事実だがそういうのって数は少ない……。つーか、この辺にあったか……?

 

「だって温泉って混浴って聞いたよ?」

 

「何処でそんな知識を覚えたんだよ……」

 

 というかマジでこの辺で混浴できる場所なんてねえだろ。

 俺が知らないだけかもしれねえが……。

 

「え?結人君は私と一緒に温泉入りたくないの?」

 

「此処では答え辛い質問やめろ」

 

「なんで答え辛いの?入りたくないのか入れるか聞いてるんだけど?」

 

「いや、だから前提がおかしいだろ……」

 

 と返すと、明らかに不機嫌な顔をするモーティス……。

 あっ、これ絶対発言間違えたなと俺は一回訂正しようとしたが時は既に遅かった。

 

「ふん!!どうせ、立希ちゃんやそよちゃんだったら即返事してたんでしょ?やっぱ、大き「それ以上、余計なことを喋ったら昼飯代出さねえぞ」」

 

「そうやってご飯を人質に取るの!?これだから男の人って嫌なんだよね!!」

 

「おい待て、というかなんでその二人の名前を出すんだ」

 

「結人君も男の子でしょ?違うって言ったって信じてあげないもん!」

 

 心の中で思っていたことがある……。

 俺はモーティスのことを本当に子供みたいな奴だなとなっていた。そして、こいつが何故あの二人の名前を出したのかはまあ理解はできるんだが……。

 

「変態」

「おい待て、何も想像してねえぞ」

「絶対してた!!どうせあの二人のどっちかと入るの想像してたでしょ!!」

「ふざけんなって!想像してねえっつってんだろ!!つーか、立希もそよもそういうの嫌がるか面倒だと思うタイプだろ!?」

「えー?立希ちゃんは結人君の頼みだったら断れそうなさそうだけどなぁ!!良かったね、ラブラブで!!それとも燈ちゃんの方が良かった!?」

「は!!?燈!!!?お前マジでいい加「すみません」」

 

 

 

 

「すみません、他のお客様のご迷惑になりますのであまり大きな声は……」

 

 俺達が言い争っていると温泉施設の店員さんがこの中に勇気ある行動をしてくれていた。

 そして、俺達はすぐさま……。

 

 

 

 

「「すみませんでした……」」

 

 案の定、こうなる……。

 なっても、俺はモーティスだけだと思っていたから俺は自分まで巻き込まれることは全くもって想定していなかった……。情けねえと感じながらも、俺は男湯の中をくぐっていく……。

 

 

 変な気分になりながらも……。

 

 

 

「ぜってぇ想像してると思われてたな、アレ……」

 

 なんとか後でモーティスの誤解を……いや、あいつの誤解を解くのはちょっと難しいな。完全に俺のことを変態だと思い込んでるし、いやまあその想像したかしてないかで言われたらって……。

 

「いや、そうじゃねえって……」

 

 体を洗い終わった後、俺はゆっくりと温泉に浸かりながらも一人で声を出していた。

 俺の声は何処にも響くことはなく空虚に消えて行った。一人で良かったな、となりつつも俺は煩悩を掻き消そうとしている。

 

「とは言えなぁ……」

 

 あいつの誤解を取り除くなんてほぼ無理だろうし、こういうときはあいつの機嫌を取るというのが確実性は高いな……。その後で、ちゃんと謝るか……。にしても……。

 

 

 

 

 

 

「燈と温泉か……」

 

 まあ、燈なら来てくれそうではある……よな。

 キャンプとか一緒に行ったこともあるし、そんで同じテントで寝たこともあるからな。多分、そういうの嫌いじゃなさそうだし……あーでもいっしょに……。

 

 

 

 

 

 

「一緒にはヤバいだろ!?流石に……!!?」

 

 思わず温泉から立ち上がると、俺は自制心を効かせようとする。

 危ない、色んな意味で此処にいるのが俺だけで良かった。マジで変な奴って見られるところだった……。

 

 

 

 

「後で覚えてろよ、あの馬鹿(モーティス)が……」

 

 温泉の中に戻ると、何度も波が立っていた……。

 そして、人が来たことによって俺は落ち着きを取り戻そうとしていた……。深呼吸をしつつも……。

 

 

 

 

 

 温泉をたっぷりと味わった後、俺はサウナもしっかりと浴びて来ていた。

 ああいうのは毒という意見もあるらしいが、適度に浴びるのは問題はねえだろとは思っている。まあ、サウナという熱に信仰心を感じてそれを信仰しているのもまた事実だから何とも言えないが、これに関してはノーコメントでということのが俺の了見でしかねえ。

 

「モーティスの奴は何処だ……」

 

 暖簾をくぐってそう小声で言うと、立ち止まっているモーティスの姿があった。

 

「なにしてんだお前……」

 

 さっきのこともあって、地味に警戒しながらも俺はモーティスに話しかける。

 

「ねぇねぇ、結人君これなに?」

 

「あーそれ牛乳だろ?」

 

 モーティスが立っていたのは牛乳の自販機だった。

 興味津々で見ているがよく考えてみりゃ、モーティスというか睦って女優の娘だしこういう施設にはあんまり来たことが無いのかもしれないな……。来ても、こういうのはあんまり買った事はないだろう。

 

「紙パック式じゃねえんだな……」

 

「え?紙パック?」

 

「いや、こっちの話だから気にすんな」

 

 ちょい前ぐらいからだろうか、牛乳瓶はあんまり見かけることが無くなった。

 こうして自販機に牛乳瓶があるということにちょっぴり感動を覚えつつも、俺は折角だからモーティスにこう言う。

 

「牛乳飲むか?」

 

「え?いいの!?」

 

 俺が了承しつつも、「どれを飲むんだ」と聞く……。

 すると、モーティスが悩み始める。

 

「このコーヒーの奴!!」

 

「分かったよ……」

 

 頼まれた奴を選択しつつも、俺はそれを渡す。

 それから、自分の分の普通の牛乳を選んでそれも取った後に、俺は牛乳を飲んでいるとモーティスの視線が気になる。

 

「どうした?」

 

「なんで手を脇腹に置いてるの?」

 

 なんて返せばいいのか困っていた。

 確かに言われてみりゃ、こういう動作って全く知らないと不思議に思うのかもしれない。頭を一気に傾けて、一気に飲むこの動作が……。

 

「まあそれが自然だからじゃねえのか?」

 

「一気飲みするのも?」

 

 俺が頷くと、彼女は真似して飲み始める……。

 俺のように一気飲みをやって見せようとするが、無理だったようで……。

 

「ぷっはぁ!!」

 

 と、盛大にむせてしまっていた。

 まあ、これが普通だと思うなとなっていると……。

 

「もう一本!」

「待て、なんでだよ」

 

 いきなり突拍子もないことを言い出したもんで俺は困惑する。

 

「一気飲み出来なかったんだもん!結人君だってコーラは一気飲みするでしょ!?」

「いや、体に悪いからやめとけ」

「悪くない、あれはロマンだもん!!」

「ロマンだけどやめとけって……」

 

 そして、またこういう流れになる……。

 果たしてこういう流れがあと何度続くことになるだろうか、俺はそんな思いをしながらもモーティスの話に付き合っていた……。

 

「ねっ、次はあそこ!あそこ行こうよ!!」

 

「あそこ……?」

 

 首を傾げながらも、モーティスと俺は次の目的地へと向かうことにした……。

 俺はそのモーティスの背中は輝いてるように見えていた。今を生きている、そんな風に。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 温泉凄く楽しかった……!

 本当だったらこういうのって日帰りじゃなくて一日泊まってのんびりとしたかったけど、睦ちゃんってば遊んでばっかりはいられないって言ってお仕事ばっかり入れちゃうんだもん。覚えてるだけで雑誌の取材だとかテレビの取材だとかそういうの……。まあ、睦ちゃんも今となっては強くなったからみなみちゃんの娘だとか言われても……反応は薄くなった気がする。

 

「そういうところは強くなったよね結人君!」

 

 バスの中で結人君にそう声を掛ける。

 

「ん?なにが?」

 

「睦ちゃんの話!」

 

「あーそれはそうだろ。あいつ自身がそれを選んだのだから」

 

 私はそれに「ん?」となる。

 別に突き放した言い方をしていたとかそうじゃなくて、結人君の言い方はまるで睦ちゃん自身が選んだものだと言いたそうにしていた。確かに睦ちゃん自身が選んだことだけど、その道筋を作ったのって……。

 

「ねぇねぇ、結人君……。なんか自分は何もしてませんって言い方してるけどさ、睦ちゃんが変われたのって結人君のおかげだよ。考えてみてよ、睦ちゃんが結人君に出会えてなかったら今頃、睦ちゃんはどうなっていたかも分からないんだよ?例えば、睦ちゃんが睦ちゃんじゃなくなってるとか」

 

 笑い事のようにそんな話をしていたけど、実際結人君が居なかったら睦ちゃんも私もどうなっていたのかな……。考えられるのはきっと私達になれなかったあの子達が睦ちゃんになっていた可能性は大いにあり得るよね……。

 

「そういうのを想像しただけで、私も絶対に嫌!睦ちゃんも私もハッピーな終わりを迎えられた!その助けをしてくれた結人君には凄く感謝してるから、結人君が俺は何もしてないって言っても結人君が私達を助けてくれた。それは絶対に変えないからね!!」

 

 

 

 

「……分かったよ」

 

 表情を見せないようにしていたけど、ガラスの向こう側の結人君は微笑んでいるように見えていた。分かってくれた、それだけで嬉しくなってしまっていた。ムッツリスケベな彼だけど、そういうところも含めて私は本当に好き。

 

 

 

 

 

 

「凄い人の数だね……」

 

「まあ最近は結構人が来てるみたいだからな」

 

 バスが辿り着いてちょっと歩いた先にあったのは……箱根神社って呼ばれている場所だった。

 確かに私も調べたときは結構観光客が来てるって話を聞いたけど、聞いていた以上の人の数だった。何処を見ても人、人の山ばかり。人の数に押しつぶされそうとなりつつも、私は結人君とはぐれないようにしていると、鳥居の前で結人君がお辞儀をしていた。

 

 不思議に思いながらも、それに続くようにしてお辞儀をしていた。

 

「結人君、今のなに?」

 

 常識なのか知らないけど、私はよく知らないから聞いてみることにした。

 

「あーまあ……敬意つーか挨拶みたいなもんだ」

 

「神様に?」

 

「まあ、そんなとこだな。俺らが勝手に入って来てるんだしな」

 

 そう言われると納得したような気がした。

 確かにこういう場所には神様が祀られているという話があるからそういう場所に侵入するなら挨拶は大事なのかもしれない。

 

「まなちゃんと出会ってなかったらきっとこういうのもやってなかったかも……」

 

 後は言いたくないけど、おばあちゃんが小さなありがたみのようなものを教えてくれなかったらきっと絶対にやっていないに決まっていた。寧ろ、神様なんて知らないみたいな失礼な気持ちに此処に来ていたかも……。

 

「そう言えば、此処って箱根神社以外にも神社があるんだよね?」

 

九頭竜(くずりゅう)神社だな、スピリチュアル系とかではよく話題になるな」

 

「へぇ、そうなんだ……。あっ、えっと此処まで来てこれ聞くのもアレなんだけどさ結人君ってそういうの信じてないんだよね?」

 

「まあ、根拠がないのはな」

 

 階段に登りながらも私達は話をしていた……。

 今日の話を思い出して、私は聞いてみたかったことがあった。

 

「神社もそのスピリチュアル系統だよね?結人君よく神社巡りしてるって行ってたけど、結人君的にはどうなの?」

 

「それを此処で聞くか普通?」 

 

「だって気になるじゃん?」

 

「まあ……そうだな」

 

 足を上げながらも、彼を考えているようだった。

 どんな屁理屈を繰り出して来るのか私は楽しみにしていると、彼はこう返して来る。

 

「別に神様だのなんだのが居ねえとは言うつもりはねえよ。信じていた方が都合あるってだけじゃねえのか?信仰とかそういうものをしておいた方が色々叶えてもらうときにお願いしますだとか、叶った後にありがとうございましたとか言えるしな」

 

「ふーん?つまり、結人君にとって色々と()()がいいこともあるんだ?」

 

「階段から突き落とすぞ、お前」

 

「えぇ?別に何も私は言ってないのになぁ……」

 

「言わなくても顔に書いてあるんだよ」

 

 ちぇっ……バレてた。

 結人君にとって都合がいい女の子が多い方が色々といいんだろうなと言おうとしていたら、完全に読まれていたみたいで残念。とりあえず、この階段を全部登りきっちゃおうとなりつつも私は結人君よりも先に登り切った。そして、その後に結人君が登り切ってこういうことを言い出す。

 

「ああ、そうそう。この神社はな……」

 

 

 

 

 

「呼ばれる人が来るって話もあるんだよ」

 

 

 

 

「……え?」

 

 呼ばれる人が来るってどういうこと……?

 え?なんか結人君凄い不穏なこと言っていたような気がするけど、本当にどういうことなの?

 

「ゆ、結人君……それってどういうこと!!?」

 

「後で分かるんじゃねえのか?」

 

「今答えてよ!!」

 

 答えをハグらかされながらも私達は参拝待ちする。

 自分達の順番になった後に私達は賽銭箱にお金を入れると、自分の体に変化が訪れたような気がした……。この感覚、間違いない……。

 

 

 

 

 

「結人と祥達と一緒に居られますように……」

 

 感覚があったのは睦ちゃんに変わっていたからだった。

 睦ちゃんの願いはまあ私もほぼ一緒だった。祥子ちゃんはまあそのえーっといい人かもしれないし、まあいいかなとなりつつも話を聞いていた。そして、結人君が言っていた『呼ばれる人が来る』というのはある意味こういうことだったのかもしれないとなっていた。

 

 何故なら、隣にいる結人君が目を瞑りながらも笑っていたから……。

 そういう二人の光景が見られながらも私はこう思っていた。

 

 

 

 

 

「私がお願いしようと思っていたのに!!?」

 

 と抗議の声を睦ちゃんの世界の中で抗議をするが、そんな声は空振りした後に体を返却される。

 

「睦ちゃん、酷くない!!?今日は私と結人君の日だよと伝えていたのに勝手にいいところ持って行ったんだよ!?」

 

「まあ、あいつだってお参りしたかったんだろ。もう一つあるんだから、許してやれよ」

 

「まあ、もう一つあるしいいけど……」

 

 本当は私が叶えたかったけど仕方ない、次……!

 次に行こう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 九頭竜神社の方で私は手を合わせながらもこうお経のように言う。

 

 

 

 

「結人君とこれからも一緒に過ごせますように……。愛音ちゃんと楽奈ちゃん、まなちゃんとこれからも仲良くなれますように……。初華ちゃんとはこれからも仲良くしたいです。海鈴ちゃんはちょっぴり怖いです。祥子ちゃんはまあ割といい人なので仲良くしたいと思っています。後、にゃむちゃんは胸糞悪いので悪霊に憑りつかれますように……。それとそれと、結人君といっぱい旅が「お前、煩悩が酷すぎるだろ。後、にゃむの扱いどうなってなんだ」」

 

「いいじゃん!!」

 

「やるにしても声に出すな。後、此処は呪う場所じゃねえんだよ」

 

「じゃあ、藁人形作ればいい?それとも、特級呪霊がつきますようにってお願いをすれば「お前、絶対漫画読んだだろ」」

 

 色々と神様にお願いをしていると、結人君が呆れたような顔をしつつも私のことを引き留めて来ていた……。うーん、やっぱり声に出すのがまずかったのかもとなりつつも私達は次の場所に向かうことにした。

 

 

 

 

「ねぇねぇ、結人君!そういえば、此処の自慢話とかないの?」

 

「自慢話?自慢話つーか、歴史話ならまあるぞ」

 

 待ち時間の間、退屈になるのを予感した私は結人君からそういう話を聞き出そうとしていた。

 結人君のこういう話を聞けるのは凄く好きだから。

 

「箱根神社というか箱根の地名自体は結構昔からあるんだよ、そしてその語源には諸説あるが、一説には「はこ(箱)」=神が宿る容れ物、「ね」=山を意味するという説もあるらしいんだ。要は、神の宿る山ってことだな」

 

「ん?じゃあ、やっぱりさっきの場所ってそういう領域なの?」

 

「まあ神社って場所はそういう場所が多いけど、此処はそういうものを強く惹きつけるあるらしいな。実際、不思議な体験をしたとかそういう人は多いらしいからな。因果関係はともかく」

 

「へぇ、じゃあさっき睦ちゃんが出てきたのもそうなのかな?」

 

 どうして勝手に睦ちゃんが出て来たのか分からないけど、そういう神域みたいなのがあるならあながち頷けるのかも……。

 

「まあ、そうかもな……。それに此処は山・水・旅などを守護する存在も居ると言われているからな」

 

「じゃあ、私達にもピッタリだね!」

 

「だな……」

 

 彼は湖の方に視線を向けていると、私達の番になっていた。

 此処は凄く写真映えする場所として有名なところ……。確か名前は「平和の鳥居」だっけ?そんな名前だった気がする。

 

「すみません、お願い出来ますか?」

 

 結人君が後ろの人に自分のスマホを渡しつつも、私達は湖に浮かぶ鳥居の前に立つ……。

 

 

 

 

「ねぇ、結人君手繋がない?」

 

「え?ああ、まあいいが……」

 

 と彼は即決即断で私を手繋いできたもので私は顔を赤くさせてしまう。

 

「手震えてんぞ」

 

「え?ふ、震えてないけど……?結人君の勘違いじゃないかな?」

 

「いや、どう考えても手震えて「結人君こそ汗ばんでるけど大丈夫?愛音ちゃんとかとこういうこと平気でしたことあるでしょ?」

 

 わざと愛音ちゃんの名前を出すと彼は思いっきり動揺している。

 

「おい待て、なんでそこであいつの名前が出る」

「え?いや、愛音ちゃんだったら積極的にやりそうだなって思っただけだよ?」

「いや、それはだな……」

「それとも、したことなかった?」

「…………」

 

 何故か無言になってしまう結人君。

 あれ、もしかして結人君手繋ぐ以降のこともした感じ?ブラフで墓穴掘ってあげたのに、まさかのそれ以上してたの……?

 

「ねぇ、結人君答えてよ」

「うるせえ、ちょっと黙ってろ」

「五月蠅いってなに!?一途な女の子にそんなこと言うの!!?いいよね、結人君はドバイの男の人みたいにいっぱい女の子誑かせて!!」

「人多いところで変なこと言い出すんじゃねえお前は!!」

「事実だもん!!みんな聞いて、この星乃結人と言う男の人は詐「お前、ふざけんな!!マジで後で覚えてろ!!!」」

 

 こういう争いをしていたことで後で分かったことがある。

 私達は待っていた人たちからは微笑ましいカップル、またはバカップルだと思われていたって……。前者はまあ嬉しいけど、バカップルってなに!?馬鹿じゃないんだけど!?私、月ノ森の生徒なんだけど!!?

 

 

 

 

「はぁ……もう……ったく」

 

 後ろに並んでいた人からスマホを受け取っていた結人君だったけど、そこに映っていたのは言い争っている結人君と私の姿だった。それを見て結人君は「またこれか」と言いつつも、スマホをしまいながらも、財布を取り出して何かを渡して来る。

 

「ほら、プリクラ返すぞ」

 

「あれ……?結人君が持っていてくれたの?」

 

 先ほどの鳥居の前から離れて、私は結人君からプリクラを渡されていた。

 私が落とした奴、結人君が拾ってくれてたんだ……。

 

「ああ、お前が落としたのはましろさんが拾ってくれたんだよ」

 

「あーましろ先輩が拾ってくれたんだ……」

 

 私、あの先輩苦……。いや、でもあの先輩のおかげで睦ちゃんがまたバンドやりたいってなれたのは間違いないからそのあーえっと……。私は地味に嫌そうな顔をしながらも……受け取るのを一瞬拒みそうになっているのに気づいたのか結人君が、一瞬プリクラを引っ込もうとしてきたから拗ねて顔を膨らませる。その顔を結人君が面白く思いつつも、渡してくると……一応「ありがとう」と言う。

 

「ああ、気にすんな……」

 

 いつものように返してくる結人君、そして、私はその写真をずっと眺めている。

 失くしてしまったものを取り戻した。そして、この手には今新しい写真も手に入れて新しい思い出を得た。お祖母ちゃんが言っていた体験。こういうことで得て行くんだねと私は自分の中でありがたみを覚えつつあったのが嬉しかった。

 

 

 

 

 

「また思い出作りに行こうな」

 

 それに気づいていてくれたのか、結人君が言ってくれる。

 それに私はこう答える。

 

 

 

 

 

「うん!!絶対だよ!!」

 

 

 

 

 

 

 階段を上り切り、私達は湖の方に振り向く……。

 自分達が先ほどまではしゃでいたあの場を思い出しつつも、結人君はこう返していた。

 

 

 

 

 

 

 

「当たり前だろ。それと……今日は」

 

 

 

 

 

 

 

 

「行けるところまで行くか……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、行こ!!」

 

 

 

 

 

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