【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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永遠に続く友情なんてなかった。

「結人君、大丈夫……?」

 

 結人君の様子は明らかにいつもと違った。

 声を掛ければきっといつもみたいに笑顔になってくれて「どうした?」と言ってくれる結人君の姿はなかった。一瞬だけ目が合っていたけど、目には言葉にできない感情が揺れていてすぐに彼は目を逸らした。

 

「結人君……!!」

 

 歩き出そうとし始めている彼を呼び止めようとするが、彼は小さく溜め息をつきながらも歩き出そうとしていた。まるで此処から逃げ出したようにも見えていたけど私はその背中を見逃そうとしなかった。

 

「待って……!」

 

 私の声ははっきりとしたものだった。

 次の瞬間、手を伸ばして結人君の手をしっかりと握り締めると、結人君が震えているのが手から伝わって来ているのと同時に結人君の手を力いっぱい握ったからか結人君は驚いたように振り返っていた。

 

「愛音ちゃん…‥先に帰ってて……」

 

「結人君と二人っきりで話がしたい……から」

 

 少し話をしている間にも逃げられないように私が最大限の力で彼の手を握っていた。愛音ちゃんは私に言われて迷っている様子だったが、私の意見を尊重してくれたのかこう言ってくれていた。

 

「燈ちゃん……分かった……!」

 

 愛音ちゃんは悩んで悩んだ末に私達の場から離れて行った。

 ありがとう、気を遣ってくれて……。

 

 

 

 

 

 

「……燈」

 

 小さく名前を呼んでいる。

 結人君の目の奥には戸惑いが浮かんでいる。

 

「どうして逃げようとするの……?」

 

 結人君が逃げられないように目を見ながらも聞いていた。

 

「……逃げてなんかいない。ただ、今は燈と話をしたい気分じゃなかっただけだ」

 

 何処か嘘くささがあった。

 今さっき逃げようとしていた姿を見ていたから言っていることが嘘だったのは分かりきっていたから彼の手を握る力を更に強める。

 

「いい加減に手を放してくれ……」

 

「……嫌だよ」

 

「なんでだよ……」

 

「友達だから……!だから悩んでる結人君を無視して帰るなんて出来ないよ……!!」

 

 その言葉に一瞬反応を見せる。

 けれども、苦笑しながらも呟く……。

 

 

 

 

「友達、か……そうだな、そうだよな……」

 

 

 

 

 

 

「燈から見ればそう見えるよな」

 

 

 

 

 

 

「え……?」

 

 言っていることが分からなかった。

 私から見たら友達……?じゃあ結人君は私のことを友達だと見てくれていなかった……?……いや、そんなことはないよね。だって、結人君は今まで何度だって私のことを助けてくれた、私に自分のままでいていいと言ってくれた。そんな彼が友達じゃない訳がない。なにか、何か訳があって自暴自棄になっているだけだよ……。

 

「立希やそよが言ってたよ。俺は燈を傷つけたって……。燈はもう過去のことだと言うかもしれないけど、過去は絶対に消えない。だから俺はもうこれ以上燈を傷つけたくない……。それで友達じゃないっていう理由には十分だろ」

 

「嘘だよ、結人君……!結人君が今でも私のことを傷つけたと思っているのはそうかもしれない。でもそれだけじゃないよ……!!結人君に何か悩みがあるなら、私力になるから言ってよ!!結人君がいつも私の悩みを聞いてくれたように今度は私が助けるから!!」

 

「やめろよ……そういうのやめろよ……!!俺は……お前が……!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「羨ましかっただけだ……!!」

 

 結人君の声が耳に残る。

 初めて聞いた彼の本音と言う名の叫びはあまりにも鋭くて、心に刺さり胸が痛んでいた。胸が締め付けられるような感覚があった。

 

「俺を見て前を進んで行くお前を見てずっとそうだった……!!いつも俺の背中を歩いているだけだったのに、いつからかお前は俺の隣を歩くようになっていて……!!自分の世界を持っていて、自分の意志を持つようになっていて……俺はそんなお前が眩し過ぎて、悔しくて、羨ましくて、でも……俺は前に進むことなんて出来なかったんだ!!この前のライブだってそうだよ!お前のライブは最高だった!!でも俺は自分が惨めになるばかりだった!燈は強くなれているのに俺はどうして臆病なまんまなんだって!!どうだ!?幻滅したか!?これが俺なんだよ!?醜くて藻掻いてるしか出来ない俺なんだ!!だからもう俺には近寄ら「それでもいいよ!!」」

 

「それでもいいよ……!!」

 

 続けようとしていた怒号に近いような叫びを私は遮った。

 遮られた結人君は一瞬怯んだようにも見えていた。

 

「私はきっと結人君のことを知っているようで、何も知らなかったんだと思う。私が結人君に勇気を貰っている間に結人君も色々と苦悩していたのはよく分かったよ。結人君がそれをみっともないと思ったとしても私はそれを否定しないよ……!!だって、それが……」

 

 

 

 

 

 

「本当の結人君なんでしょ!?」

 

 結人君の顔がぐちゃぐちゃになっているようにきっと私の顔もぐちゃぐちゃになっていることは間違いなかった。一滴の涙が流れていっているのを私は自分で気づいていたから。手の甲で拭っても、拭っても涙は止まることはなかった。

 

 私が辛かったように結人君もずっと辛かったんだ。自分を誤魔化して生き続けてそれが正しいと思い込むことで自分を正当化させてきた。きっとそれは果てしなく辛いものだったんだろう。結人君の痛みは私にとって私の痛みも同然だったから……。一番大切な人だからこそそんなに自分を責めないで欲しいという思ってしまっていたのだ。

 

「ああ、そうだ!これが俺の本性だよ!?だから俺はお前とは友達じゃないんだよ!!」

 

「ならどうして……私がバンドを始めるかもしれないって言ったとき応援するって言ってくれたの!?どうしてライブに来てくれたの……!?」

 

「ッ……!!」

 

 黙り込んでしまう。

 結人君がこれまで私のことをどんなふうに思っていたとしても私は結人君との関係を繋ぎ止めたい。結人君がずっと私のことを羨んでいたと言うならその痛みを分かち合いたい。

 

 

 

 

「俺は……俺は……!!」

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 学校の帰り道……。

 昨日のライブでそよは春日影を私達がやってたことを勝手に怒っていた。あいつが勝手に怒ってキレていただけだし特にどうでもいいけどベース……。もしかしたら探さなくちゃいけないことになるかもしれない……。とりあえず今日はRINGでのバイトもないし、そのまま帰っていたときだった。

 

「愛音……?」

 

 前を通ろうとしていた愛音を見つけて私は声をかけた。

 

「お前、燈とは一緒じゃないの?」

 

「あーえっと、燈ちゃんは……」

 

「勿体ぶらないで早く教えて欲しいんだけど?」

 

 愛音は言おうか言わないか迷っている。

 燈の身に何かあったのは間違いなかった。それも悪い方向に……。

 

「もういい、自力で探すから」

 

 愛音は暫く「えーっと」と言うのを繰り返していていてこれじゃあ聞いていても意味がないと判断して自分の足で探すことにしていた。愛音は「待って!」と言っているのが聞こえていたが、無視して歩き出していた。

 

 

 

 

「何か凄く胸騒ぎがする……」

 

 歩いていると段々嫌な予感がしていた。

 それはまるで何かを見つけ出して欲しそうにも騒いでいるようにも聞こえていたが、ある路地の前でその胸騒ぎが止まる。その路地には誰にも人がおらず、暗闇でただ店の看板が置かれていたり灯りがついているだけのところが多く存在した。

 

 変わらずに嫌な感じが残っていた私はその路地には入って行った。いつもならこんなことは無視して真っ直ぐ家に帰るかRINGに向かって行ったはずなのに今日という日は気になって仕方なく、中へと入っていくと誰かが言い争っている声が聞こえている。私はその方向へと向かうと……。

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 現実を受け入れるのに時間が掛かっていた。

 目の前で結人と思われる奴が燈のことを突き飛ばしていたのだ。突き飛ばされた燈は背中が地面へと突き飛ばされていて痛みが伴っているのを見て私はすぐに結人に近づいていた。

 

 

「燈になにした……?」

 

 結人のワイシャツを思いっきり掴むと、しわくちゃになっていた。

 

「……突き飛ばした」

 

 言い訳もせずにはっきりと答えていた。

 私が胸倉を掴んでから気づいたことがあったが結人の表情は酷く歪んでいた。顔には涙の痕があり、辛いのは燈の方だろうと言いたくなっていた。

 

「お前、燈のことをもう二度と傷つけないって」

 

「そんな約束してないだろ」

 

「……は?」

 

 本気で言ってる目をしていた。

 確かに言われてみれば私が約束を守らせようとしたのは燈のライブを観に来いという内容だけど、その内容の中に燈をもう二度と傷つけるなというものは含まれていない。それは事実だけど、私は許せなかった。一度ならず二度までも燈のことを傷つけたこいつを……!だからもうこれ以上燈を苦しめたくない……!!

 

「結人、お前は燈のことを二度も傷つけた……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「二度と燈に関わるな……!!」

 

 

 

 

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