【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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復讐心は上書きされるのか?

 こいつ……今なんて言った……?

 偽りの三角初華だって言ったのか……?もし、それが本当だとすれば俺が今まで話していた三角初華は偽物だということになる。そして、この口ぶりからして……。

 

「まさか自分が三角初華だなんて言うつもりじゃねえだろな?」

 

 確認のつもりだが、もう確信は出来ていたが……。

 目の前にいる少女が誰でどういう存在なのか……それを悟っていたのか彼女もこう告げる。

 

「そう……」

 

 

 

 

 

「私が本物の三角初華……」

 

 眩暈がする、吐き気まではしないが眩暈がする。

 本来であれば、目の前にいる初華と名乗る少女の話など信じることなんで出来るわけがないが、そう信じるしかないと……。

 

「やっぱ、こうなるってことだったのか……」

 

 覚悟……。

 彼女が言っていたようにこの先は明らかに覚悟を持って、踏み込むしか出来ない内容でしかねえのはもう明白だった。目の前の初華にこれ以上喋らせてでもして見せたら俺は踏み入れてはいけない領域に入ることになる。

 

 それはまるで人々に禁足地と呼ばれている場所に自らの足で踏み入れるのと一緒でしかねえ。

 悩んでいる時間がないのは分かっている。目の前にいる初華もいつこの場に居なくなるのかも分からねえ……。

 

 

 

 

「いつまで話をしている、その子に一体何の用が「!!?」」

 

 悩んでいる暇なんて最初からなかった……。

 初華が名前が消失したあいつに復讐をしようとしているなら、俺にはそれを止める義務がある。例え、そこに踏み入れれ場死ぬと知っていても俺は此処で悩んでいる暇がなかった。あいつのこともそうだが、目の前の復讐に囚われている初華を放っておくことなんて俺には出来なかった……。

 

 

 

 

 

 どれだけ走っただろうか……。

 それほどまでにずっと走り続けた。何度も何度も走り続けて、初華の監視をしていた奴らから逃げ続けた。何処へ行っても同じなのかもしれない。それでも俺達は逃げ続けてようやく……。

 

 

 

 

「なに……してんの……」

 

 膝に手をつきながらも初華は息を切らしている……。

 俺達がやって来ていたのは……駅前近くの路地だった。走って居て気づかなかったがどうやら俺達は途中で監視の目を振り切れていたようだった。

 

「色々と考えた……」

 

「色々って……」

 

 初華の方を見ると、彼女はまだ息を切らしていた。

 

「お前を……」

 

 

 

 

 

「東京に連れて行くことに決めた」

 

「……は?」

 

 何を言っているのか分からない。

 唖然とする表情……そういう表情になるのも無理はない。俺が逆の立場だったら、似たような反応だっただろうからな……。

 

「待て、理由ならちゃんとある……」

 

「早く言って」

 

 せっかちなのか、せかして来る初華……。

 俺は自分の頭を整理する暇もなく彼女に語り始める。

 

「まず、第一に俺はお前の復讐を見過ごすわけにはいか「あの人を殺して欲しくないから?」」

 

「違う……」

 

 

 

 

 

「お前に人殺しになって欲しくないから」

 

 答えは単純でしかないものだった……。

 に俺は初華に人殺しにしてなんかなって欲しくなかった。

 

「ふっ……」

 

 初華は鼻で笑う。

 まるで、俺の言っていることがおかしいかのように……。

 

「私がいつあの人を殺すって言ったつもりはないけど、ちょっと意外……そこは……あの初華を守りたいからとか言うのかと思った。しかも、さっきと言っていることとと全く矛盾しているし」

 

「そう……だったな」

 

 鼻で笑ってしまう。

 そういえば、俺は初華に対してあいつに復讐を誓うなら俺は全力であいつの味方をすると似たようなことを言ったことばっかりだったし、誰かに復讐しても止める気はねえと言っていたのにその言葉を捻じ曲げたのは間違いなく、あれが理由だろうな。

 

「捨てきれなかったんだよ」

「なにを?」

 

 

 

 

 

「お前の助けて欲しいって目を」

 

 どれだけ凍えて切っていても、冷え切っていてもその目だけが確かなことがあった。

 彼女の瞳の奥底にある、自分のことを誰かに助けて欲しいという意志までは、隠し通す事なんて出来ていなかった。

 

「私があの人……初音に復讐をしたらどうするの?」

「そんときは止める。それと、言ってなかったが……」

 

 

 

 

 

「初華が復讐をしないって言う選択以外を見つけたいって言うなら俺も協力する。それなら、文句ないだろ」

 

 初華は「見つけたときに」という言葉を付け足していなかったが、俺はそれに気づいて返すと初華は……。

 

「はぁ……」

 

 初めてただ単に冷たい溜め息以外をついていた。まるで、それは諦めたかのような溜め息だった。自分の見えている景色が憎しみだけじゃない世界、そういうものだと知れてたような気がしていた。

 

「本当に凄く優しいね、名前……聞いてもいい?」

 

「ああ、俺は星乃結人」

 

「私は……」

 

 

 

 

 

「三角初華」

 

 彼女の瞳には俺の瞳が映し出されていた……。

 初めて彼女の口からちゃんと自分の名前を教えてくれた。彼女が本当の三角初華だということは俺には未だに処理できないものがあったが、それでもあの三角初華が何故自分の妹の名前を偽名として使っていたのかという悩みや何故、初華が大阪に居てアイドルをやっているのかとか不明なところが多いが、それは追々聞いて行こうとしていた。

 

 此処に居ても、監視の目に遭うだけだしな……。

 

 

 

 

 

 

「それで東京に行ってどうするの?」

 

 窓際の方に座った初華が頬杖をしながらも、質問をしてくる。

 

「さっきも言ってたけど……あの人への復讐を手伝ってくれる訳じゃないんでしょ?」

 

 先ほど口にしていた初音という名前を呼んでいなかった……。

 多分、あれがあいつの本当の名前だったと思うが……。

 

「それは当たり前だろ」

 

「じゃあ、どうするの?」

 

「そうだな……」

 

 俺は通路側の方を意識を向ける。

 ただ単に考え事をしながらも、そう意識を向けていただった……。

 

「まずは東京に行って、東京ならではのことをする」

「……ふざけてるの?」

 

「いや、全く大真面目だ。東京ではならではのこと、そうだな。やっぱ、浅草とかそういう場所がいいだろうな。初華は他に行きたいとこ「ふざけてるよね?」」

 

 頬杖をしながらも俺に強い視線で睨みながらも、初華は本当に嫌そうにしていた。

 

「待て、ちゃんと話を聞けよ。言っただろ、お前が復讐の道以外を選ぶなら協力してやるって」

 

「選ぶって言ってない」

 

「あーまあそうなんだが……そうやって普通の日常を過ごす。それも悪くないだろ」

 

「そんなのない」

 

 きっぱりと言い切っていた……。

 そこに疑問などなかった。事実だけを告げたと言わんばかりに彼女はペットボトルに手を付けていた。

 

「監視されてたよな……あれ毎日されてんのか?」

 

「毎日……こっち来てからずっと」

 

 黙り込んでしまう……。

 あんな異様な視線をずっと浴びさせられているとしたら、それは地獄でしかない。寝るときも誰かと遊ぶときもずっとあんなものを味わっているなら……。

 

「ずっとそうだった……それが代償だから仕方ない。そう思って割り切ることにもしたし、もう当然のものだと錯覚させて考えないようにしてた」

 

 当たり前のことを当たり前だと思う……。

 初華の場合は監視の目というものが当たり前のことでしかなかったんだろうな……。

 

「アイドルは自分でやってるのか?」

 

「半分はそう、後は……知らない方がいい」

 

「知らない方がいい?」

 

「此処まで話したことは貴方が知ったら個人的に後悔することだけど、これ以上のことは貴方自身に関わることになるから教えられない。命知らずの馬鹿じゃない限りには」

 

 それ以上触れない方がいいと言わんばかりに、俺の立ち入りを禁止してくる。

 禁足地の中にまだ禁足地……禁忌のその先があるって言うのか……。

 

「まあ監視の目を振り切って此処に連れ出してきた時点でもう貴方も私も後戻りできないだろうけど」

 

「だろうな……。念のため、聞くが初音にはどうして復讐がしたいんだ?」

 

「逆に質問を返していい?なんであの人のこと初音呼びになってるの?あの人の友人なんでしょ?無理して初音呼びしないで、あの人に肩入れしてあげればいい」

 

 捻くれた発言をしてくる初華……。

 言いたいことも分からんでもない、彼女的にはさっきまで自分の味方じゃなくて初音の味方だったのになんで急に自分の味方になっているの?という意味もあったんだろう。これに関しては、自分でも分からないことがあったが……。

 

「似てるからだろうな、本気で……」

 

 かつての自分に似ていてしょうがないから、俺は初華のことを放っておけない……。

 

 

 

『俺にとっては……大切な友人でした』

 

 どれだけ燈を傷つけても、立希を傷つけても……。

 過去は変わらない、燈が大事だったことも何かも一人になろうとしても仮面を外してもそれは変わらなかった。他者を拒絶しても、本当は助けて欲しいという心の声があったあの頃の自分に似てしょうがないから俺は彼女を助けたいという気持ちがあった……。

 

 

 

 

 

「本当優しいだね……結人って」

 

「……どうも」

 

 初めて初華から名前を呼ばれつつも、ムズ痒くなりながらも優しいというものを受け入れていた。相変わらず、この手のものは本当に素直に受け取るのが出来ねえな俺は……。

 

「悲しいぐらい善人な結人に質問の答え、教えてあげる。私があの人に復讐したいのは……」

 

 

 

 

 

 

 

「私を箱庭に閉じ込めたから」

 

 彼女の瞳は強く燃え上がっていた……。

 復讐というものに……。それだけで彼女はどれほどまでに初音のことを恨んでいるのかもう伝わっていた。

 

「後はあの人から聞いて」

 

 と言った後に、初華はシンカンセンアイスを食べてていたが……。

 あまりの硬さに舌打ちをしていた。

 

「おい、行儀悪いぞ」

「うるさい、黙ってて。硬いのが悪い」

 

 試行錯誤しながらも、ようやくスプーンがアイスに掬い上げると、口の中にアイスを入れて堪能している。表情こそ変わっていないが、美味しそうに食べている姿を見るにそういうところは中学生なんだなと実感していた。

 

「それで観光して終わり?」

 

「いや、勿論他の解決策も考えるつもりだ。お前がどうやって復讐の道を選べるのか、をな」

 

「私は付き合うって言ってない、それと助けて欲しいとも言ってない」

 

「じゃあ、一生箱庭の中のままでいいのか?アイドルはお前がやりたいって言い出したことなのかもしれないが、あの大阪という牢獄の中でお前はずっと一生監視された生活を送る。それでいいだな?はっきり言うが、俺にはお前がずっとあのままで居たいなんて思えなかった。助けて欲しい、誰かにどうにかして欲しい。そう思いがあるから、俺と一緒に東京に行くって決めたんだろ?」

 

 外の景色を見ながらも初華は何も言わない。

 

「俺はアイドルとしてのお前は才能があると思う。俺には刺激が強すぎたけど、あそこまで自分の感情を怒りに変えて、歌に出せるならそれは才能があるってことだろ……。お前のアイドルとしての姿は物語を作れる。なら、その才能を棒に振るような真似すんなよ、自分の生きたいように生きて見せろよ……。例え、お前の人生が……」

 

 

 

 

 

()()()されたものだとしても」

 

 初華の才能は間違いなかった。

 五感を感じられる俺であそこまで感情豊かに掴み取ることが出来たのなら、それはもう才能と言っても過言じゃない。姉の初音もそうだが、この妹も相当なものだった。説教臭くなっちまったがそれでも俺は初華に自分の道を選んで欲しかった。それだけだった……。

 

「公共の場で熱いことをべらべらと喋るね……」

 

「え?ああ、悪い……」

 

 俺はハッとさせられる。今自分達が乗っているのは新幹線。つまり、他の人もいるということだ。他のお客さんは俺達が喧嘩している声を聴いて「どうしたんだろう?」となっていた。俺は色んな方面に頭を下げた後に座り直すと、初華が語り出す。

 

「少しだけなら……」

 

 

 

 

 

 

「付き合う。貴方に……」

 

「お前……」

 

 やっと口にしてくれたのはそれだった……。

 本音を出してくれたというよりは俺の寄り道に付き合ってくれる。

 

「分かったなら、俺もとことん付き合う」

 

 そんな感じだろうが、それでも俺は一歩進んだと思えていた……。

 

 

 

 

 

 

 上野駅に……やって来ていたのはいいんだが……。

 初華は周りに目線をやっている。

 

「何か食べるか?」

 

「……え?」

 

「いや、そういえば此処まで来るのに駅弁とか食べた訳じゃ無くてアイス食べただけだろ?だから、何か食べたいなら付き合うぞ?」

 

「別にいい……」

 

 嫌というよりは遠慮だろうな……。

 初華は首を振りながらも、横に見えているつけ麺の匂いに釣られそうになっている。まあ、何か食べさせてやりたいからわざと外に出て寄り道したところだしこうなることも予想していた。初華は何処に行くの?と顔をさっきまでしていたが……。

 

「いや、遠慮しなくていいぞ」

 

 彼女は顔を下に向ける。

 俺に直球で言われるとは想定していなかったようで、悩んでいるようだった。

 

「ほら、行くぞ」

「え?行くとは言ってないんだけど」

「飯食べたいんだろ?遠慮するなよ、連れて行ってやるから」

 

 つけ麺を食べたそうにしていた初華に俺はオススメのつけ麺屋へと歩き出す。

 

 

 

 

「……それでいいのか?」

「……ダメなの?」

「いや、ダメじゃねえんだが……」

「じゃあ、いいでしょ」

 

 思いっきり外れる。

 何故なら、彼女が食券で頼んだのは脂っこいものだったから。敢えて、違うのも選べる店に入ったんだが、そういうものを頼むとは全く考えてもいなかったから俺は唖然としていると彼女はせっせとカウンター席へと座っていた。俺とは何も喋らず、群れる気はないと言いたそうにしていたが俺はそんな彼女に話しかける。

 

「お前って学校は行ってるのか?」

 

「行ってない、最近はアイドルが忙しいから」

 

「最近ってことはああ、そういうことか」

 

「何に納得してるの?」

 

 睨みを効かせた後に、水を飲んでいる。

 東京の水が美味しいことに驚いているのか、勢いよく飲んでいるようだった。

 

「いや、わざとかって思ったことが一つあってな。お前の芸名……あれはドイツ語だろう?それに対してムジカはラテン語……。それを意味するのがお前も知っての通りだろ?」

 

「そう……私があの名前を付けたのは意図的なもの。古代ローマはゲルマン人からの攻撃で滅亡した。彼らだけじゃないけど、由緒正しく倒したのは彼らそのもの。だから、私にそれを見習ってドイツ語で名前を付けた。悪くないでしょ?」

 

「……悪くはねえな。歴史観点からそういうものを名付けるってのは、お前の最終的な思想はともかく」

 

 一応補足しておくが、古代ローマは何もゲルマン人によって滅ぼされたわけじゃない。既に内因的な問題でボロボロであり、ローマの一部がゲルマン人によって侵攻・攻撃を受けてローマは崩壊を迎えた。

 

 ゲルマン人はその後神聖ローマを築き上げたがこれも崩壊を迎えた。

 その後、ゲルマン民族はドイツやオーストリアなどを筆頭に子孫が生き残ったと言われる。正直、復讐のために名付けたとはいえ因果関係を考えるなら悪くはないものではある確かだ。

 

「お前がゲルマンを名乗るなら、その国は滅亡するんじゃねえのか?神聖ローマ帝国がそうだったように」

 

「私はあの人や……あの体制に復讐できればいい」

 

「体制……?」

 

「気にしないで、こっちの話。貴方が知る必要はない」

 

 明らかに彼女は触れさせない一線を作り上げている。

 俺がそれに興味を持ったとしても、全くそこだけは答えようとしない。それだけで彼女がどういうことを知っているのか、それが重たいものなのか納得できるような気がしているとつけ麺屋の大将からつけ麺を俺達は受け取って食べ始めるのだが、初華は……。

 

 

 

 

 

「脂っこい」

「いや、お前それ分かって頼んだんだろ。というか、大将さん睨んでるからやめろ」

「脂っこいだからしょうがないでしょ」

「いや、だからやめろって……。つーか、意外と文句言いながらも箸進んでるじゃねえか」

「進んでない」

 

 どう見ても、箸が進んでいる。

 美味しそうに食べているのに全くそれを認めようとして来ない。本当こういうところは中学生っぽいよな……。大将さんもちゃんと初華が食べているのを満足してくれたのか、奥に引っ込んでくれた。あぶねえ、マジで怒られるところだった。

 

「一応……ありがとう」

 

「飯奢ってくれたことか?」

 

 彼女は小さく首を頷かせると、俺はこう返す。

 

「お前は気を悪くするだろうけど、初音が言っていた通りだな、そういうところは昔から変わってねえ。あいつはお前のことを天真爛漫と言っていたけど、それは今も己の心の中にその頃の自分がいる。そうなんじゃねえのか?」

 

「知った風なこと喋る……」

 

「お前はそう思うかもしれねえけど、俺はちゃんと自分の中に自分だった頃の自分がいる。それって俺は大事なことだと思う。お前は自分が今したいのは言っていた通りのことだとしても、それを絶対忘れんなよ」

 

 

 

 

 

 

「己だった頃の想いって言うのはすげえ重要だからな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 己だった頃の想い……。

 果たして、私にそういうものがあるんだろうか……。

 

 

 

『どうしてお前は会いに行ったんだ!!』

 

 かつての私なんてものはあの日、死んだはずだったのに……。

 

『あれほどあの子(本家の娘)に遭いに行くなとは釘を刺したのに!!』

 

 祥子ちゃんに会いたい、それだけの一心だった……。

 その夢はたった一度だけの繋がりによって打ち砕かれた。あの人がたった一日だけ祥子ちゃんに会ったことで私の日常は崩壊した。初音に罪を被せられたあの日から……。

 

『幸せになりたかっ『ふざけないで!!』

 

 あの日、お母さんたちから祥子ちゃんに会いに行った事を厳しく叱責された後、私は初めてあの人と口論をした。自分が幸せになりたかっただけ、そんな単純な欲望に私は巻き込まれただけで私は怒り狂った。

 

『幸せになりたかったのなら、何をしてもいいの!?そんな訳がない。私の名前を勝手に使って、勝手に祥子ちゃんと一緒に遊んで、罪をなすり付けて!!それが許されると本気で思っ『初華だって駄目だって言ったのに行ってた!!会いに行ってた!!私は何度も止めた!!』

 

 

 

 

『私は悪くない!!!』

 

『じゃあもういい……』

 

 

 

 

 

 

『貴方なんかお姉ちゃんじゃない……!!』

 

 私の世界は赤く染まり、あの人への怒りへと変わり果てていた。

 頭の中にはもうあるのはあの人への怒りそのものでしかなかった。優しかったお母さんはあの日以来、私に対して厳しい目をしていた。不器用だけどいつも優しかったお父さんもそうだった。私に対して「話しかけるな」の一点張りだった。

 

 その頃からもうそうだった……。

 純粋無垢、天真爛漫というものではなく、あの人に対して、そして……豊川家というものに対して誓うのは、復讐心そのものだった。勿論、物理的には不可能だと思う。だから、私が利用しようとしていたのは、社会的という意味で。それにあの人とは会えないし、祥子ちゃんとの接触も禁じられている。どうせそうなるとは思っていた……。

 

 本土から来て、私が義父……定治に頼んだのは私をアイドルにして欲しいということだった。あの人は私や初音には後ろめたさがあるから、要求を呑むしかなかったけど私の腹の中にあるものを知っていたのか、監視を付けていた。それは私が本土に来た頃そうだったけど、私は本当に次第にそれに慣れてしまった。そういうものだと……。

 

 

 

 

『アイフラメ様!かっこいい!!』

 

 そして、なによりも私はアイドルとして大成をなしつつあった。

 あの人に比べたら全くかもしれないが、徐々に成長を遂げていき、本物の幻想的なアイドルとして成り上がりつつあった。私が作り出すのは本物の物語。本物のアイドル。それを提供することによって、ファンを喜ばせる。そして私は計画が実現すること……。

 

 アイフラメは……。

 明るく元気な曲から暗く負の感情が入り混じった歌まで、様々な楽曲を歌い続けられる。声質は力強く、感情のままに何でも歌いこなす。それだけじゃない、ステージ衣装は基本的に白と黒を基調したものや、純白のドレスが赤い照明で血のように染まる演出。そういうものまで綿密に描いたのが私のアイドルとしての姿……。この子は何かを抱えている、それが観客を惹きつける動力源となっていた。

 

 クラシックもギターも歌声も全てが狂気であり、凶器だった。

 

 

 

 自分を有名にさせて、彼女の過去……。

 そして豊川定治の愚行を……。

 

 

 

 

 それを週刊誌でもなんでも売るつもりだった。自分が有名になればそれが実現できるって……。

 そうすれば、私は本当の復讐を成し遂げられるって……。そう思っていたはずなのに……。

 

 

 

 

 

「別の道が出来始めた……」

 

 信じ切っているわけじゃない。

 どうせ、同情心から私を救い出そうとしてくれている。そう知っているはずなのに、彼に期待してしまう。希望に満ち溢れていて善人な彼ならば、私のことを助けてくれるじゃないのか?って信じてしまいそうになる。

 

 復讐しか考えていなかったはずなのに、私の中で一つの道が見えたことで悩んでいる。

 

「どうせ、いい……」

 

 彼もこれから不幸になる。

 私達に関わり過ぎたことによって、彼もどん底に落ちることになる、それを知っているはずなのに……こう思ってしまう。

 

 

 

 

 

 彼には地獄を知って欲しくない、と……。

 なんでこんな強く思えているのか分からない……。

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 今日何度目なのか溜め息をついたと同時に店を出ると、結人が「ん?」という声を上げた後に、紫髪の人が目の前を通る。

 

 

 

 

 

 

「げっ!!!?結人!!?」

 

 彼女はそう言いながらも、逃げ出そうとするが……結人が彼女の腕を掴む。

 

「離してくんない?自分が嫌われているの知ってるでしょ?」

「知ってる、悪いがちょっと話がある」

「私、用事あるから無理」

「じゃあ、今言うからな」

 

 

 

 

 

 

 

「匿ってくれ」

 

「…………は!!!?」

 

 紫髪の彼女は暫く黙り込んでいたというよりは、本気で言ってんの?という顔をしていた。そして、反応がかなり遅れてようやく言い出す。

 

「あのさぁ、意味わかんないんだけど?というか、私がアンタと……なにその子?中学生?アンタ、身代金目当ての誘拐でもしたの?110番していい?」

「あー色々とこいつに関しては説明が面倒くさいんだ。とりあえず、にゃむの家で一旦匿ってくれ」

「だから、嫌だってば!なんでアンタなんかを匿わなくちゃいけないわけ?」

「俺の家は色々と今無理なんだよ、頼む……!!」

 

 

 

「はぁ……!!!」

 

 結人が粘り続けると、にゃむと呼ばれた女性は本当にめんどくさそうな顔になる。

 そうなるのも無理はない……。

 

「結人って嫌われてるんだね」

 

「そこはまあ色々あるんだ、俺にも」

 

 私はそれに「そう」としか答えなかった。

 結人の性格自体は実際、他人の揉め事に関わり過ぎという評価は自分の中ではしていたから。

 

「はぁ……めんどくっさ!!!!」

 

 大きな声でにゃむは言い散らかす……。

 

 

 

 

 

 

「面倒なこと持ち込んでこないでよね」

 

 

 

 

 

「ああ……えっと、それは……分かった」

 

 了承してくれたような返事をしてくれるにゃむと呼ばれていた人……。 それに結人は苦笑いをしか出来ていなかったけど、言える訳がないよね。

 

「面倒事だってさ」

 

「……俺ら二人共面倒事だけどな」

 

「……そうだね」

 

 

 

 

 

 

「マジでどうやって説明すっかな……」

 

 

 

 

 普通に離したら速攻追い出されることになるのは確かだと私は彼に同調しながらも、彼女の後を追い掛けていた。

 

 

 

 

 

 

「頑張ってね」

 

「お前も頑張るんだよ……」

 

 結人は心底どうしようかと顔をしていた。

 私はその状況がちょっとだけ面白くなっていた。こういう感情が湧くのも久々な気がして……。

 

 

 

 

 

 

 ならなかった……。




この後書きにおいては、便宜上本物の三角初華(真初華)と呼ばせていただきます。
また、原作において真初華は名前しかほぼ登場していないのであくまでもこの小説ではこういうキャラだと捉えてください。(これは今後登場する可能性があるかもしれないので。)


長くなりますが、よろしければお読みください。









本物の三角初華(真初華)

年齢:14歳(中学二年生)
容姿は金髪で髪を伸ばしている。初音同様母親に似ている。

 幼少期は無邪気で好奇心旺盛の少女だった。
 現在は、心を閉ざしており冷たい瞳だけが彼女には残されているが年相応の一面はある。初音の裏切り及びある体制に不満を抱えており、それらに対して復讐を誓っており物理的な復讐ではなく社会的や要因で復讐を果たそうとしている。

 復讐を成し遂げた後のことは特に考えておらず、どうせ自分は終わるとしか思っていない。
 真初華は常に365日毎日監視を続けられており、姉である初音への接触及び祥子への接触も許可されていない。(これは彼女が復讐に走る可能性があるからでもある。)

 真初華によって唯一救いになる時間はカラオケによる自己表現とアイドルをやっているときのみ。








Eisflamme(アイフラメ)

 真初華のアイドル名。
 大阪で活動しているソロのアイドル……。その素性はベールに包まれており、誰もが知らないからこそそれゆえに惹かれる人は多い。

 黒と白を基調としたアイドル衣装や純白のアイドル衣装を着用していることが多く、顔は黒いフードで隠れていることが多いが、偶に紫の瞳が見え隠れしている。

 彼女の歌声は力強く、感情のままに歌ったりする。
 明るく元気な曲を歌いこなして見せたり、怒りや苦しみなどの負の感情のままを歌として歌い続けられる。彼女の歌はあまりに複雑かつ繊細的であると言われると同時に刺激が強すぎるという意見がある。

 そういう方向もあってか、彼女は『本当の意味で幻想的なアイドル』として有名になりつつある。但し、外部からの圧力でメディアの取材は極端に控えられている。



 アイドルの名前の由来についてはこの話の通りでAve Mujica=ラテン語に対して、その返しとしてEisflamme=ドイツ語にしている。これはラテン語が公用語だったかつての古代ローマに大打撃だったゲルマン人の子孫が使うドイツ語を使っているという敵対心を見せている。

 真初華自身はこのアイドル活動を悪いものではなく、ファンへの期待も込めてやろうとしているのは事実。








それと、原作では初音の独白部分で初音?初華?に責められている場面がありますが、あくまでもこの小説では初音が家族に責められるのを怖れて初華に責任を擦り付けて、初音が初華に問い詰められているような場面になります。







正直に言うと、このAve Mujicaの章の話を書く上で、物理的に初音を描く上では真初華の存在は必要不可欠だったのでかなり頭を悩ませました。
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