【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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手を闇に染め、地底に落ちる

『逃げてんじゃねえぞ初音……!』

 

 違う、私は逃げてない。

 これら仕方のないこと。そうしなければ、私は自分を保つことができなかった。自分に正しいと言わせることができなかった。今まで無理矢理咀嚼していたものを放棄するという行為をすれば、私は私で居られなくなってしまう。

 

 それが嫌だから。

 私は何も知らないふりをしていた。そうすることで自分の中の世界を取り繕うことができるから。例え、それがどんなに小さな針だとしても私の鳥籠には受け入れられなかった。

 

 自分で自分を誤魔化そうとしているのに、それが出来なかった。

 だって、結人の存在はあまりにも強烈で魂という器に響く……。だからこうして、私は今を生きて呼吸することが辛くてしょうがない。

 

『初音いい?あの場所へ遊びに行ってはダメよ?』

 

 ああ、呼び起こされてしまった……。

 私の過去という閉ざされた書物。その書物は決してもう開けるつもりはなかったのに、私は開けてしまった。それほどまでに彼のは強く残ってしまったのだ。

 

『初華!?今日も楽しいお話を聞かせてくださるのですのね』

 

 あの日、祥ちゃんに話しかけられたとき……。

 私の景色が完全に色彩があった。それまで灰色だった世界が綺麗な虹が掛かったように私の世界を彩ってくれていた。それだけが本当に救いだった。

 

 だから、あのとき私は祥ちゃんに反応してしまった。

 反応しなければ、きっとあの頃に戻ってしまう……から。思い出さないまま、生きていたい。そう思っていたのに結人のガラスを継ぎ破るような行動に私は揺さぶりを掛けられていた。

 

 島での生活のことを……。

 

 

 

 

 私はとても複雑な家庭に生まれた……。

 母はある別荘の管理人だった。そして、父は……その別荘の主。歪な関係はそれだけで終わらず、父には妻がいたが、その妻を死んだことを悲しんでいた……。

 

 

 父は暫くの間、その心を晴らす為に別荘に来ていた。母は、そんな父のことをよく慰めていた。こういうのはドラマでよくある話。そして、偶然にも引き合わされた二人は子供を産んでしまった。

 

 母は勿論、焦っていた。本来であれば、その家……豊川家では分家の子供などあってはならないことだったからだ。しかし、父はその子供を島で生かしてくれた……。

 

 そう、その子供こそが私だった……。

 そこに情があったのか、ないのかは私には知る由がない。そもそも、私にはそんなことまで気にする余裕なんてなかった……。

 

『私は一人だった、から……』

 

 私自身のような声がする。その声はまるで自分の影かのように……。

 そう……。私は孤独だった。母が島に来て暫く経った後、島の漁師をしている養父と結婚した。二度目の結婚、母は私にこれからはきっと……もっと幸せな家庭になれると信じさせようとしてくれていた。

 

『初音、今日は大漁だぞ』

『うん、そうだね……』

 

『お前の好きなマグロがたくさん獲れたからな』

『ありがとう……』

 

 養父は確かに私に優しくしてくれていた。

 口数は少なかったけど、私に気を遣って私が好きな魚や貝をよく見つけて持って来てくれていた。父が釣り上げた魚は本当に美味しくてそここそ何か仕込みでもしているかのような感覚があった。

 

 時には近場で漁をするところを見せてくれた。

 潮干狩りも一緒にしてくれた。愛されている、そういうのがあったのは知っていた。そして、満たされてはいたけけどその満たされる為の器が私は全く機能していなかった。底を見れば、その容器には穴が開いており、どれだけ満たしても満たしても埋まることはなかった……。

 

 奇妙で複雑な器を抱えつつも、私は幸せという二文字を噛み締めようとしていたけど、それは出来なかった。何故なら、私には妹が居たから……。

 

 

 三角初華……。

 私が月ならあの子は太陽そのものだった……。あの子には誰も彼もを照らし出すお日様のような光があった。生まれながらにして、大人達を笑わせて見せて緊迫した状況の中で生まれた私に比べれば、それはもう太陽でしかなかった。

 

 それを最も、有無を言わさずに理解させられたのは勿論……あの出来事だった。

 

『ねぇお姉ちゃん!!昨日ね、祥ちゃんに会いに行ったの!!』

『え?会いに……行ったの?』

 

 それは思いがけないものだった……。

 あれほど駄目だと忠告されていたはずなのに、初華は私が惹かれていたあの子に会いに行っていた……。その事実は私には耐えられなかった。人知れず、自分だけが幸せになろうとしていた。その事実が本当に許せなかった……。

 

 

 

『……』

 

 この痛みを忘れることが出来る唯一の手段……。

 自分の現実を星空を見上げることで……私は忘却しようとしていた。夏の星空はとても美しくて、煌びやかというものだった。そこには濁ったまがいものなどなく、満天の星空が広がっている……。夏の大三角形を筆頭に……星々は輝いていたけどそんなとき草むらが揺れていた……。

 

 動物だろうか……?と疑問になっていた……。

 蛇なら一旦退避、ウサギならそのままこの場に居ようと思っていたときだった……。

 

『鳥……?』

 

 私の前に現れたのは一匹の鳥だった……。

 その鳥は……漆黒の翼をもつ鳥……。

 

 

 

 

 

 

『カラス……?』

 

 疑問に思っていた、どうしてこんなところにいるんだろ?

 そもそも、私のことを認識しているのに全く逃げようとしない。人に慣れているのだろうか?悩みの種はつきないでいたが、次第にそのカラスの行動を惹かれている自分がいた。彼は何処か後ろ足を引き摺っているそんな気がしてならなかった。でも、辺りは暗いし懐中電灯も持っていなかった私にはそれを確かめる術がなかったけど、彼にこう言った。

 

『明日の朝、この山にまた来るから待っててね』

 

 もう夜は遅い。

 この山を下りて、また登って来るとなるとかなり危険が伴うから明日の朝早く此処に来ようと決意した。その頃にはもう彼は居ないかもしれないけど、それでもいいと思って私は彼に「じゃあね」と言い残した。

 

 

 

 

 次の日……。

 

 

 

 

『ねぇ、居るの!!?』

 

 朝……。

 再び山に登って来ていた、昨日カラスに居た場所に戻って来ていた。流石に居ないかも知れないと思って肩を落としていると昨日の夜同様に草むらの方から音がしてくる。もしかして、と思って待っていると……。

 

『あのときのカラス……』

 

 昨日のカラスと同じ場所を怪我している。

 間違いない、あのときの子だと思って私は急いで手当てをしようとする。鳥の手当ての仕方なんて分からなかったけど、分からないなりにやってみようとした。

 

『これで……いいのかな?』

 

 悪戦苦闘しながらも私はようやく手当てを終えた。

 カラスの足には包帯を巻き終えると、彼は鳴き始める。

 

『もしかして……ありがとうって言ってくれてるの?』

 

 そんなわけがないと分かっていても、そんな気がしてならなかった……。

 気性が荒いと言われているカラスが人に感謝なんてしてくれるのだろうか?と疑問になっていたけど、彼らは頭がいいと聞いたことがある。もしかしたら、私が手当てしてくれたというのに気づいていたのかもしれない。

 

 思えば、手当てしているときも全く抵抗することがなかったから。

 本当に不思議なカラスとなりながらも、私は彼の隣に座った。

 

『ねぇ、貴方も一人なの?私も一人なんだ』

 

 カラスが一人で行動をしているなんて見たことがなかった……。

 彼らはいつも集団で行動しているから……。

 

『私ね……この島に住んでいるんだ。それで母や養父……。そして妹と暮らしているんだ。今は夏休みで学校が休みなんだけどね、一人ぼっちなんだ……』

 

『学校には行ってるよ?でも、妹の初華みたいに明るくないから友達とか全然作れないんだ。それでね、よく学校では班とかはあまりもの扱いなんだ』

 

 カラスにこんなことを話しても意味がないことぐらい自分でも空しくなる。

 それを知っているはずなのに、私はやめられなかった。こういう話をしていても、自分が辛くなるはずなのに……。自傷行為をやめることができなかったけど、それは辛さから解放されるためじゃない彼という仲間なら頷いてくれるかもしれないと思ってしまっていたんだ。

 

『あっ、妹?妹はね、凄い子なんだ。大きくなったらアイドルになりたいって言っててね。初華はきっとアイドルになれると思うんだ。あの子は人に笑顔を振りまける子だから。……え?私?私は無理かな。そういうのと無縁の子だから』

 

 こうやって羅列する度に不思議なことに自分が楽になっていた。

 変なことをしているはずなのに、救われているなんてなっている自分がいる。それは紛れもなく、彼を心の底から仲間だと自分の中で思い込んでしまっていたから……。

 

 

 

 

 その後も私はカラスにたくさんのことを話していた……。

 

 

 

 

『また明日来るね、それまで元気でね!』

 

 久しぶりだった、こうやって元気に挨拶をするというのは……。

 彼と言うカラスに私は手を振りながらも、その場を去って行った。また、明日此処に来よう。そうだ、今度は何かもっと面白い話ができるといいなとなりつつも、私は……。

 

 

 

 

 

 

 次の日……遅れながらも山にまた来ていたけど、そのカラスは居なかった……。

 

『あれ?居ない、何処に行ったんだろ?』

 

 何処を探しても、彼は居なかった。

 この山のことは正直初華よりは知らないけど、それでも何処か居そうな場所を隈なく探していたけど彼は何処にも居なかった。諦めようとしていたとき、一つの木の枝に黒い鳥が止まっているのが見えた。その鳥の足には包帯が撒かれていた……。

 

『あっ!なんだ、こんなところにい……』

 

 私はそこで止めてしまう。

 それには理由があった。

 

『そっか、そうだったんだね』

 

 それは落胆に近い声だった。

 裏切られた、そういう声を明らかに出していた。

 

 

 

 

『仲間……居たんだね』

 

 彼が足を乗せていた枝の近くを見ると、そこには何羽のカラスが足を乗せていた。そして、鳴き声を上げながらも彼らは枝から立ち上がり、空を飛び始める。その光景を見て、私は改めて気づかされていたことがあった。

 

 

 

 

 私は彼らのようにはなれない……。

 鳥籠から飛び立って、鳥籠の外の世界に出ることはできない。あのカラスは、怪我をしても空を飛んでいる。それがとても凄いこと、それが素晴らしいことだとしても私は何処か……。

 

 

 

 

 私も連れ出して欲しかったというのが抑えられなかった。

 結局、私はあのカラスのことを忘れる努力をすることにした。もう会うことはないと思い、私は自分の記憶に封を閉じ込めていたけど幸せになりたいという欲望を抑えることが全く出来なかった……。

 

 

 

 

 それは初華から祥ちゃんの話を聞いていたときもそうだった。

 日に日に妹から初華の話を聞く度に、私だって会いたい。私だって話したい。そういう気持ちが強くなっていった。

 

 そして、ある日行動を起こした……。

 それは初華が熱を出していた日のことだった。

 

 

 

 

『此処が……』

 

 此処に来たのは割と突発的だった。

 鳥籠から出ることは出来ないけど、それでも一度だけなら許されるはず。彼女に一目会いたい、それだけが私を動かしていた。

 

『初華ですの……?』

 

『初華、今日はなにをして遊ぶんですの?』

 

 初華という名前を呼ばれたとき、私は無視して逃げようとも考えていたけどそれがあったのはほんの僅かだけだった。彼女の綺麗な顔を見たとき、私はこの子と遊びたいという気持ちが抑えられなかった。だから、私は……。

 

『虫を取りに行こうよ!大きな蝶々が居る場所を知っているんだ!』

 

 それからはもう大きな声で笑いたくなるほど楽しくてしょうがなかった。

 念願のあの銀髪の少女、祥ちゃんとの楽しい一時。今まで両親からは会ってはならないと禁じられていたはずなのに、そんなことはどうでもよくなっていた。

 

『初華、そういえばこの山の中には毒を持つ蜘蛛が出ると言っていましたわね!』

 

『うん、そうだよ!!夏だから蜘蛛も蜘蛛の巣を張って自分達の縄張りを強化してるの。でも、安心して危ない蜘蛛だったら私がすぐに言うから!!』

 

『頼もしいですわね、初華!』

 

 頼られている、ぞわぞわとしたものが込み上げて来る。

 それは心臓を強く突き動かすような感覚。こんな感覚は初めてだった。私はようやく鳥籠から出れる、もうあんな場所で呼吸をする必要はないのかもしれないとなっていて「生きている」という実感が抑えられなかった。

 

 今までは違った。

 豊川家の闇そのものとしか扱われず、知らぬふりされ島に放置され心が空洞になっていたけど今は本当に違う。楽しくて溜まらなかった、こんなにも心が踊る日は本当になかった。

 

 

 

 

 

 

『初華、あの星はなんて星なんですの!?』

 

『えっと、あれは……こと座で……はくちょう座で……あっちが……』

 

 夢なんかじゃなかった。

 これは現実、心が湧き上がるほどの実感が込み上げ来ていた。満ち溢れている星空はこの日、最も綺麗な夜空だった。もしかしたら、オーロラや流れ星まで見えるかもなんてロマンチックなことを考えるほどに……。

 

『初華は本当に星に詳しいんですわね!』

 

『うん、私は星が見ることが好きなんだ……』

 

 星が見ることが好き。

 それはこのときはもう完全に違っていた。今までは自分の器を誤魔化す為にしていたことだけど、あのときは全然違った。さっきも言ったけど、祥ちゃんと見る星空はもう格別だった。だから、本土に行ったときも私は祥ちゃんと時間があれば、一緒に見ていた……。

 

『そういえば、初華はアイドルになりたいと言っていましたわね』

 

『え?う、うん……』

 

 反応が遅れる……。

 それは初華の夢、私の夢ではなかった。

 

『今日の貴方はまるで月夜を輝かす存在、そんな貴方ならばきっと……』

 

 

 

 

 

 

 

『アイドルになれますわ!』

 

 ああ、私は……私はこんなにも満たされている……。

 頭の中では初華の夢だ。それは自分の夢じゃない。これは自分には言われていないとなっていても、私には無理だった。

 

 背中を押されていた……。

 祥ちゃんに期待された。それだけで私はもう満たされていてしょうがなかった……。どれだけ業を深くしようとも、器が闇に染まろうとも彼女が認めてくれた。それだけで私は……。

 

 

 

 

 

 

 

 幸せだった……。

 

 

 

 

 

 

『貴方なんかお姉ちゃんじゃない……!!』

 

 背中に激痛が走る、壁にぶつけられていた。

 目の前の初華は顔を歪ませていた。それは当然だ、私はこの子に罪を擦りつけた。祥ちゃんと別れた後、私は自分の家族に祥ちゃんと会っていたことがバレそうになってしまっていたけど、その罪を擦り付けることにした。

 

『絶交ってことでいいの?』

 

『いい、それで……!!アンタなんかお姉ちゃんじゃない!!』

 

 幸せを得るためならば、どれだけ自分の首を締めようがどうでもよかった。

 この空虚が満たされるならばなんでもよかった。私はこのときのためにあることを先に手を打っておいた。それは初華が高熱を出したその日に彼女に嘘をついたのだ。

 

『明日の朝、一緒に祥ちゃんのお見送りしない?』

 

 と……

 初華は勿論、喜んで了承してくれていた。無邪気な初華は利用することなんて簡単なことだった。そして、簡単にそれは成功した。何故ならば、わざと初華の名前を出して彼女を止めに行ったのに言うことを聞かないから無理矢理連れて帰ろうとしたという設定で……。

 

 これはあくまで初華が部屋の外から出て居なければ、意味はないが恐らくそんなことがなくても家族は私のことを信用してくれると信じていた。愛で満たされていた訳じゃない。それは初華は分かりやすいからだ。一度、祥ちゃんの名前を出せば必ず動揺してそこから綻びが生まれることになると確信していた。

 

 

 

 

 そして、それは成功した……。

 初華、ごめんね。実の妹を蹴落とすことになって……。心にもないことを心で唱えながらも、こうも思っていた。

 

 初華が悪いんだよ?

 私はあれほど会いに行っちゃダメだったと言ったのに、初華が会いに行くから私も抑えられなくなった。私も鳥籠から出たい、幸せになりたいという欲望が抑えられなくなった。だから、私は悪くない。悪いのは……。

 

 

 

 

 

 

 初華……。

 

 

 

 

 

 

 そう、私は間違ってない。

 ただ、幸せになりたかった。あの日、祥ちゃんを追い掛けるためになけなしのお小遣いで本土の船に乗ったこともそう。私はあの島という鳥籠から出たかった。例え、自分勝手だと言われようとも祥ちゃんの居ない世界なんて息が詰まりそうだった。

 

 初めてだった、あんなにも私が楽しめたのは……。

 今までは星やカラスに慰めてもらうぐらいしか出来なかった自分が初めて人に慰めて貰うことが出来た。それが本当に心から嬉しかった。

 

 

 だから、私は何も間違ってない。

 私は正しい……。

 

 

 

 

 

「お前は間違ってる、初音」

 

 どうしても現実を突き付けて来る結人……。

 彼は私の神様なんかじゃなかった。ただ、私に現実を突きつけて来るだけの私のドッペルゲンガー……。そう思えば、凄く楽になれる。彼の話に耳を傾けてはいけない。

 

「間違ってない、これが最善だった」

 

「最善?初華を傷つけたことがか?」

 

 彼はあっさりとその防波堤を崩す。

 

「そうしなくちゃ、私は幸せになれなかった。ねぇ、結人随分とあの子の肩を持つけど、そもそもあの子が祥ちゃんに会わなければこんなことにはならなかった」

 

「先に何もかもを壊したのはあの子だよ。どうして私ばか「教えて欲しい、初華……」」

 

 

 

 

 

「どうして悲しい顔をしているの」

 

 睦ちゃんの話を聞いてはいけない。

 遮断するべきだと判断していたのに、私はそれを遮ることが出来なく私の中に入り込んでいた。まるで、それは布に針を通すように……。

 

「神様でもなんでもない人だって言ってた、なのに今どうしてそんなに悲しそうな顔をしているの?」

 

 落雷が降り注ぐ……。

 睦ちゃんのそれは的確そのもので心というものを貫こうともしていた。意識が朦朧としそうにもなっていたけど、なんとか立ち上がることを維持し続けようとしていたけど、それだけの力がもう残っていなかったが……。

 

「違うよ、睦ちゃん……!!私は彼のことを今でも神様なんて思ってなんかないよ。彼はただの人間で……!そう、だって結人だって今こうして私に怒ってる。ほら、人間っぽいでしょ?」

 

 はぁ……はぁ……どうにか取り繕うことができた。

 これが正しいかなんてどうでもいい。私は自分を正当化しなくちゃいけなかった、そうじゃないと私は私でいることなんて出来ないから

 

 そうだ、此処はゆっくりと深呼吸をしよう。

 一旦目を瞑って息を整えために口から呼吸をしようとしたときに、完全無防備だった状態の私に燦燦と光り続ける太陽が降り注いでいた。その鳥籠は完全に……。

 

 

 

 

 

 

「人間らしいのはお前だろ」

 

 

 

 

 

 壊されそうになっていた……。

 

 

 

「そうやって、自分を取り繕って誤魔化そうとしたって……。偽り続けようとしたって、何も変わらない。そうしていたって……」

 

 やめてやめて、それ以上喋らないで……。

 どうして結人はそうなの?どうして結人はそうなの?なんで……なんで私のことを……。

 

 

 

 

 

 

「何処へも行けないぞ。だから、もうそれ以上はやめろ」

 

 一人にしてくれようとしないの……。

 あーもう嫌だ、全部を見透かされたような目で私のことを見つめてくる彼の瞳が気になってしょうがない。このままだと私は一人になれない。もう何もかも壊れてもいい、此処で結人を排除すれば私は一人になれる。

 

 鳥籠なんてもうどうでもいい。

 彼の話を聞いていると、彼なら本当に自分を助けてくれるんじゃないかっていう矛盾を抱えてしまう。だから、私は……。

 

 

 

 

 

 

「うるさい!!!」

 

 彼のことを突き飛ばせば、全てが終わる。

 これで私は何もかも一人になれる。距離はあるけど、睦ちゃんじゃ絶対に間に合わない。やれば、全部終わる。やらなきゃ、彼を神様だと思ってしまう。此処で何もかも終わらせ……!!!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まな……ちゃん……?」

 

 

 

 

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