【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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共に歩くことは贖罪だった

 嘘、嘘……。

 違う、私はこんなことを望んでいない。違う、私がしたかったのはこうじゃない。ただ、結人を突き飛ばせればそれでよかった。それでよかったはずなのに……私が突き飛ばしていたのは……。

 

 

 

 

「まな……ちゃん……?」

 

 どうして私がまなちゃんを突き飛ばしているのか、今の自分では脳が理解を拒んでいる。仕方なかった、だってそうしなければ自分が自分でいることが出来なかったら……。そして、まなちゃんの体が反れていく度に私は記憶が蘇っていた。

 

『貴方が初華ちゃん……?今日からよろしくね!』

『じゃあ、ういちゃんだね!』

『sumimiはういちゃんと私で半分こ!』

 

 やめて、やめて……。

 そんな記憶を流さないで、違う。私はただ本当に結人から逃れるために彼を突き飛ばそうとした。まさか……。

 

 

 

 

 

 

 まなちゃんが割って入って来るなんて思っても……いなかったから……。

 自分の手が闇に染まる、地底に落ちる。それが分かっていても、止めることが出来なかった。もうやってしまったから、残るのは後悔と言う名の……。

 

 

 

 

 

 

 残影であり、再び記憶の糸が絡まりそうになる……。

 

 

 

 

『お父さん……』

 

 本土へ来て、私はすぐ豊川の人間に拾われた……。

 彼らは私が本土に来るのをまるで見越しているようだった。東京の家に連れて来られた私の目の前には豊川定治がいた……。

 

『血縁上はお前の父になる……それでお前は何故本土に来た?』

 

『……祥ちゃんに会いたかったから』

 

『お前の母、初菜を通じて会うべきではないと伝えたはずだ。何故、此処まで来た』

 

 此処まで来た……。

 それはまるで私と祥ちゃんが会っているのを知っているようだった。全てを見通しているかのようなその言葉の数々に私はこの人に隠しごとは出来ないとなって全てを話した。

 

『幸せになりたかったから』

 

 それは子が父に自分のことを話すようなことではなかった。

 ただ自分の独白をぶつけるような感覚でしかなかった。

 

『……お前はこの先どうするつもりだ?』

 

『アイドルになりたい……。それが私の今の夢、祥ちゃんが認めてくれた。私ならアイドルになれるって……。だから、お願いします』

 

 

 

 

 

『力を貸してください』

 

 そこにあるのは純粋なものじゃない。

 ただ認めて貰いたい、自分を見て欲しい。そういう思いしかそこにはなかった。自分勝手で狂気じみている。それに気づいていても、その真実に到達することを私自身が許さなかった……。

 

 

 

 

 

『sumimi……』

 

 アイドルになるということが決まって数ヶ月が経った頃、私はsumimiというアイドルの相方になる子とその日は初対面することになっていた。どういう子なんだろうか?という気持ちを覚えながらも、待っていると扉をノックする音が聞こえて返事をすると、中へと入ってくる。

 

『初めまして、純田まなです!えっと、貴方が初華ちゃん?』

 

『えっと、はいそうです……』

 

『あー敬語とか全然気にしないでくれていいよいいよ。同い年だよね?』

 

 返事代わりに軽く頷くと、彼女はテーブルの上で白い箱を広げ始めた。

 そこにはドーナツが入っていた。

 

『はいっ!これ!!』

 

『……いいの?』

 

『うん!これからは私と初華ちゃん……いやういちゃんとで二人で一人。だから、このドーナツも半分ずつつ!!このドーナツのように私達も頑張って行こうね!』

 

『うん……』

 

 まなちゃんの話していることはよく分からなかったけど、それでも陰を陽だまりに照らし出されそうなぐらいには勢いがあって明るい子だった。スタッフさんや共演者さんには気を遣えるし、『お疲れ様です!』や『今日はよろしくお願いします!』なんて当たり前のことも笑顔でちゃんと言える子だった。

 

 なによりも私が一番彼女が凄いとなっていたのは……。

 

 

 

 

『まなちゃんは凄いね……』

 

『え?私が……?』

 

 初めてのライブを終えた日……。

 私は戸惑うことばかりだったけど、まなちゃんは全然違った。彼女は本当に明るく元気にファンのみんなに元気を届けることが出来ていた。それに比べて、私はどうだろうか。クールなイメージがある初華としてどれだけ頑張れただろうか。初めてのライブで観客の前でちゃんとした初華が出来ていた自信がなかった。

 

 答えは明白だ。

 ただ、私はまなちゃんの足を引っ張っているだけに過ぎなかった。初めてだからなんて言い訳は聞かないほど酷すぎて自分が滑稽になってしまうほどだった。

 

『はい、いつもの……!』

 

『ありがとう……』

 

 半分になったドーナツを受け取った後に、まなちゃんは一足先に一口食べていた。

 

『前に話したよね、ういちゃん……。私達もこのドーナツみたいにがんばっていこうって』

 

『そうだったね……』

 

『ドーナツってね、面白いんだ。丸い形をしているのに中は空洞。美味しくて、誰かとシェアすることもできる……。これってね、私達でもそうだと思うんだよね』

 

『私達でも……?』

 

『うん、だってドーナツみたいに半分に割るなんてことは出来ないけど誰かと話すことで痛みだとか苦しみだとかそういうものを和らげることが出来るんじゃないのかなって思うの……!私がアイドルになりたかったのは……』

 

 

 

 

『歌を通して届けられるものを誰かに届けたい。そういう思いもあったから……!!』

 

 まなちゃんは本当にしっかりとしている子だった……。

 自立していて、私よりもちゃんと目標があってただ祥ちゃんに褒められたい認めて貰いたい。それだけの私に比べば、まなちゃんははっきりとした意思表示を握り締めていた。

 

『凄いね、まなちゃんは……』

 

 息が詰まりそうだった……。

 自分にはなにもない。あるのは誰かが持っているのに対しての羨ましさだとか、出して欲しいという欲望ばかり……。隣に居てくれるまなちゃんは本当に人の心を照らし出す存在で、言うならばどんな薬よりも効く、そういうものだったかもしれない。

 

 私は片手でドーナツを持ち続けながらも、ただ床を眺めていた……。

 

 

 

 

『初華、どうしたんですの?』

 

『ううん、なんでもないよ……』

 

 仕事帰り、私は……祥ちゃんと話をしていた。

 祥ちゃんはこの頃、CRYCHICというバンドをやっていて……それを楽しく話してくれていたのを覚えている。自分以外にもそうやって咲き誇るような笑顔を見せることが出来るんだと羨ましくなってしまう自分が居てしまった。そういうのはよくないと知りつつも、私は心に抱えているシミをスポンジで拭き取っていた……。

 

 

 

 

『祥ちゃん……どうしたんだろ……』

 

 私はその日、CRYCHICのライブを見に行っていた……。

 その感想を祥ちゃんに返したけど返って来ることはなかった。祥ちゃんは基本的に早い頻度で返信を返してくれるのに今日は全くなかった。もしかしたら、CRYCHICの人達と打ち上げでもしているのかな?と思っていたが不安は大きくばかりになっていた……。

 

 

 

 数日後……。

 

『申し訳ありません、初華……暫く会えませんわ』

 

 数日前、つまりCRYCHICのライブの日の夜に来ていたのはその連絡……だった。

 何かあったのかなと思って、一日だけ極力祥ちゃんに連絡をしないようにしていた。明日また改めて『大丈夫?』と返信しようとしていたけど、それには返信が返って来なかった。

 

 この頃の私は睦ちゃんと知り合いじゃなかった。

 燈ちゃんとも知り合ってもいなかった。だから、二人から『祥ちゃんどうしてる?』なんて聞き出すこともできなかった。不安ばかりに募っている内に数日が経っていた。私の心に闇が大きく広がりつつあった。何かとんでもないことに巻き込まれてしまったのかもしれない。それを予感した私はコンビニの休憩スペースで調べものをしてた。

 

 

 

 

 その内容は……。

 

 

 

 豊川グループについてだった。

 もし、祥ちゃんの身になにかあったとすればそれはグループ全体の問題の可能性が高い。例えば、内部で争いが起きて崩壊とかそんな大ごとのことを考えながらも、『まさかね』とちょっと苦笑いしながらも私は調べると……。

 

 

 

 

『豊川グループ傘下の豊川地所株式会社の社長、詐欺被害。被害総額は168億円』

 

 体中に鳥肌がしていた……。

 見てはいけない、これは開けてはいけない玉手箱だと自分で気づいていながらも、私はその箱を開けてしまった。

 

 

 

 

 

『これって……』

 

 その内容にはこう書かれていた……。

 豊川グループ傘下の豊川地所株式会社の社長、豊川清告が168億円の被害に遭ったと……。更には社長職を解任されたともそこには書かれていた……。

 

『ああ……』

 

 スマホをテーブルの上に置いた瞬間、私の視界は朦朧と……していた。

 ああ、これはそうだ。きっとそうだ……。清告さんは……。

 

 

 

 

 

 

 

 嵌められたんだ……。

 

 

 

 

『私のせいだ……』

 

 清告さんは誠実な人だ……。

 それこそ、あの豊川家には嫁いじゃ駄目だったほど彼は優しい人だった。そんな人がこうして詐欺に何故遭ったのかなんて優しさと考えれば、単純なものかもしれないけど、私はこう考えていた。彼がこうなったのはきっと自分のせいだと……。

 

 

 

 

 私は特に父から祥ちゃんの父達への接触は禁止されていなかった。

 だから、お話をすることはあった。清告さんはさっきも言った通り、本当に真面目な人でその言葉の節々からは努力している人だと思わされた。瑞穂さんは本当に祥ちゃんのように品のある女性で、話しているだけでもほんわかした気分になる。そして、もう瑞穂さんはこの世にはいない。

 

 清告さんは私のことを知っていた。

 なら、私が誰の娘かも把握していたはずだ……。

 

 

 

 

『ごめんなさい……ごめんなさい……』

 

 涙が止まらなかった……。

 あの人はきっと……父に提言したんだ。私のことを……。いや、私達のことを……。だから、あの人はきっとこうなってしまったんだ……。

 

 

 

『本当にごめんなさい……』

 

 鳥籠から解放されようとしていたときには……もう新しい暗がりがそこには出来上がってしまっていた。私が癒してくれるのはただ一つ、今この場所にいる公園の夜景一つのみだった。此処は祥ちゃんとも一緒に来たことが……あったから。

 

 私はこの場所で物思いにふけていた。

 祥ちゃんの思い出の全てを……。そして、その思い出の地を私は今……。

 

 

 

 

 罪人の地に変えてしまった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「違う、違う……」

 

 言い聞かせる、必死になる。

 本当は泳げるくせに、私は溺れているフリをする。仕方なかった、本当は結人を突き飛ばそうとした。それなのにまなちゃんが割り込んでしまった。元はと言えば、私のことを挑発しきていた結人が悪い。そうだ、私は悪くない……。

 

 

 

「ご、ごめん……まなちゃん」

 

 鳥籠にヒビが入る。

 自分に都合のいい正当化をしようとも、私は自分を取り繕うのも限界になってきていた。私が直前で力を弱めることができたのもあってか、力強く倒れることはなかった。まなちゃんは背中を押さえながらも、笑い声を上げながらも立ち上がる。

 

 その笑い声は怒っていないのが分かるはずなのに、私は怯えてしまいそうになる。

 なんとか自分の呼吸を整えようとしても、私の呼吸は全く整わない。その鳥籠に入ったヒビが割れていた。破損品となったそこにはもう修復が不可能となってしまっていた。

 

「だ、大丈夫……」

 

 その声はとっくの前にしていたはずなのに、今となって耳に入っていた。

 まるでやまびこのように放った言葉が返って来たかのように……。

 

「ういちゃん……前に話したこと覚えてる?私とういちゃんで辛いことや悲しいことを半分ずつって話。あれはね、本当に思っていたんだ……。ういちゃんが何かをずっと隠していたのは知っていた、それに触れないようにしないでういちゃんのことを笑顔にしてあげようと頑張ってたこともあった。でも、それだけじゃ満たされてなかっ「やめて……」

 

 

 

 

「やめて……」

 

 脳が拒む……。

 言葉の魔法が私に突き刺さりそうになって私は急いでそれに割って入る。それ以上、そこに干渉されたら私は私でいることが出来なくなる。まなちゃんという満天の星空の中でまるで太陽が照らしているような矛盾が起きたら、私にはもうどうすればいいのか分からなくなる。

 

 怖くてしょうがない、誰かに鳥籠から出して欲しいのに……。

 私が出るのは怖い、そんな矛盾を抑え込むことが出来ない。吐き出すことしかできない……。

 

「初華ちゃんは私のことを認めてくれたよね?」

 

 知らない声がしていた……。

 いや、この声には覚えがあった……。

 

「モーティス……ちゃん?」

 

 そう、その声は睦ちゃんの別人格のモーティスちゃんだった……。

 睦ちゃんから人格を変えて彼女に変わっていた。

 

「過去は変わらない、そうやって言われたことがあるの」

 

 懐かしむような言い方をしていたけど、彼女には辛いものだというのはすぐに気づけた。

 彼女の表情は何処か複雑そうな顔をしていたから……。

 

「あの頃の私は自分がようやく自我を得ることが出来て嬉しくてしょうがなかった。まるで、赤ちゃんがよちよち歩きから立ち上がるようになったみたいに……。でも、実際はもっと酷かった」

 

「よちよち歩きから完全に歩けない状態になって、睦ちゃんのことを搔き乱して余計なことをいっぱいした。きっとそうなんだよね、初華ちゃんも」

 

「なに……を?」

 

「本当は……辛いんだよね」

 

 

 

 

 

 

 

「みんなを裏切ったこと、傷つけたこと」

 

 鳥籠に更にヒビが入る……。

 今にも真っ二つになりそうなほどのヒビが入って、私はもう誤魔化すことなんてできなかった。勿論、取り繕うことも……。

 

 そうだ、そう……。

 私は本当は辛かった、苦しかった。誰かに誤魔化しては自分を偽る。気持ちを誤魔化しては自分を偽る。それが正しい選択肢として信じて掴み取っていたけど、それは所詮そう思い込ませているだけに過ぎなかった。

 

 鳥籠の中に居続けたくなくて、私は幸せになりたくて……。

 熱を帯びた存在になりたかった。誰かに生きていい、貴方と居るのが楽しいと言われる存在になりたかった。それこそが私の存在証明でしかなかった。

 

 豊川家の呪われた血筋。

 抹消された血筋として私は息を潜めて生きていくことを許されなかった。そこに村があったはずなのに、ダムをつくるために埋め立てられたように……。私は自分の感情に蓋をしていたんだ……。

 

「初音……今なら戻れる」

 

「戻れる……?もう……戻れないよ……。だって、私は……」

 

 

 

 

 

 

「正当化させてきたんだよ……」

 

 解き放たれることが可能であっても、私はその手を取ることが出来なかった。

 モーティスちゃんが言っていた内容を借りるなら、過去は変わらない。私が初華にしてきたことも、祥ちゃんに嘘をついて来たことも何も変わらない。全部が全部自分が幸せになるためのものだった。

 

「戻れる、お前なら戻れる」

 

「やめて、これ以上私に構わないで結人……。私は何も変わらない、ただ鳥籠に居たいの。私はこのまま朽ち果ててるのがお似合いなの。だからもう放っておいてよ結人。私はこのまま鳥籠の中で飛び立てない」

 

 

 

 

「鳥でいたいの……」

 

 悲痛なる想いでしかなかった。

 結局私は……飛び立ちたくなんてなかった。此処までの醜態を晒した上で得た答えがこれなんてのは凄く皮肉だけど、私には相応しい末路だった。幸せは確かにあったはずなのに、それじゃ足りないって初華や祥ちゃんを騙し続けた、更にはその祥ちゃんを傷つけたこともあった。

 

『私が知ってる祥ちゃんじゃない……!!」

 

 ムジカが解散危機に瀕したとき、私は盲目になっていた。

 私達の下から離れようとしている祥ちゃんが現実の祥ちゃんと決めつけて、そこから逃げようとしていた。結果的に私は一度は失ったけど、睦ちゃんのおかげで取り戻すことが出来たけど私は何もできなかった。

 

 私はただ祥ちゃんを否定して終わって……。

 謝ることすらできなかった……。だって、そこには仕方ないと思わせるしかできなかった。自分可愛さに必死になることしか出来なかった。醜い、汚い、見苦しい。そう、そうだ。私はそういう人間。そうじゃないと生きられない。

 

 だから、この先も鳥籠にいる。

 私は此処じゃないと満たされない。例え、亀裂が入っていても私にはこの場所さえあればいい。此処の居場所は居心地がいい。そう思っているはずなのに私のその鳥籠は更にヒビが入っていた……。

 

 

 

 

 

 

「初音、これは昔話なんだがな……。俺は燈や立希を傷つけたことがあった。その当時の俺は目の前のことしか考えていなかった。燈は昔はあまり自分の意志がない奴でな、俺はそんな燈に前へ進めるようにって色々と勇気づけたこともあった。でもな、俺と燈が歳を重ねる度に俺の方が醜く変わってしまったんだ」

 

「それはな、劣等感だったんだ……。湧水がずっと出る燈に対して、俺はほんの僅かしか出ない。そういう成長の差を感じさせられて俺はついにはCRYCHICのライブに行かなかった。あいつに誘われていたのに……」

 

「自業自得の末に、立希には嫌われたよ。その後、燈と再会して立希とも一時的に関係を修復するんだが、結局あいつが眩し過ぎて俺は突き飛ばしたんだ。その結果、俺はまた一人になろうとしたんだが……それは出来なかった」

 

 

 

「出来なかったから、今の俺がいる」

 

 結人が……?となっていた。

 あのちょっと大人びている結人にそんな過去が……?となる。まだ心の何処かに彼のことを神様に視えている自分がいてそれに動揺を完全に覚えていた。彼には影なんてものが見えなかったから……。

 

「初音、お前のしたことは最低だ。正直、そこは断言できる。それでも、俺みたいな奴がこうしてあの二人に許されているんだ。お前にだってその機会はあるだろ?例え、初華が許してくれなくてもあいつと話すという機会を得ることは出来るはずだ。そこでお互いに話をして欲しい。それと……」

 

 

 

 

 

「勝手に初華を連れて来て悪かった……。お前にとってあいつは踏み込んで欲しくない領域だったのはそうだと思う。それでも、俺はあいつを見捨てることなんて出来なかった。助けて欲しいと思う、あいつのことを……」

 

 彼の目は曇りなき眼だった……。

 本当に助けたい、助けた。そういう目をしていた……。覚悟が決まっていたという目もしていた。私はそんな目に賭けてしまいたいと思えていた。彼の真剣そのものな刃が私には何度も突き刺していたからこそ、私はようやく触れ合えることができた。

 

 彼の感情を彼は……今自分だと思って私のことを見ているんだって……。

 だとしたら、私はこう聞くべき……だ。

 

「私は……許されるかな?」

 

「さぁ、それは俺が決めることじゃねえからな。直接、初華や祥子に聞いてくれ。それでも一つだけ言えるのは……」

 

 

 

 

「例え、許されても許されなくても三角初音は……」

 

 

 

 

 

 

「胸を張って生き続けろ。それが逃げずに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「立ち向かうってことだ」

 

 きっと、それは今よりも息苦しさが増す日々になるかもしれない。

 それでも、出てもいいと思えるほどの答えに出会えた。此処にいる三人によって……。苦しいなら、辛いなら誰かと分け合えばいい。本当は辛かった、悲しかった。みんなを騙し続けて来たこと。

 

 

 

 

 

 

 そして、今はもう……。

 

 

 

 

 

「立ち向かう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立ち向かいたい……もう逃げたくないから……」

 

 

 

 

 鳥籠から出ることを私を望んでいた……。

 

 

 

 

 

 

 

『仲間……居たんだね』

 

 

 

 

 

 

 

 あのときのカラスのように……。

 

 

 

 

 

 

 

 私は羽ばたくことが出来た……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようやく……。

 

 

 

 

 

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