【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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今回の話ですが話の方は二話に分けてになります。
後、地味にこの小説における初のムジカ全体の日常回?


家庭菜園という囲みの中で見たい景色があった

 あれから、二日が経った……。

 私の体は病室に居たときよりも優れていた。たった一日だけの病院だけど、長く感じたし絶対にお祓いしに行ってやるという決意を固めていた。

 

「意外と飽きられてないもんなんだ……」

 

 一安心しそうになっている自分が居る。

 SNSを開いて確認していたのは『にゃむち」のSNS……。久々のにゃむちとしての投稿にはいいねが1万ぐらい付いていた。勿論、これが継続的に続くなんてこれっぽちも思っていない。寧ろ、これからどんどん減って行くことになる。そうなる覚悟なんてあの病室で投稿した頃からとっくの前に出来ていた。

 

 実際、昨日のうちに編集して投稿した動画……。

 要は活動についての内容だった。自分がアモーリスだということを改めて匂わせながらも今後は「にゃむち」としての活動も再開していくことを公表した。

 

 動画の反応はボチボチと言ったところだけど、此処で投稿の流れを遅れさせていたら飽きられる可能性は充分にある。それでも、私は「にゃむち」を演じ続けることを選んだ。

 

『今の私が違うと言われようとも……!』

 

 貧乏お嬢様を自分のライバルと認めた以上、私は立ち上がるしかない。

 誰かに助けて貰うなんてまっぴらごめんだ。自分は自分でしか救えない、飽きられる世界がそこには広がることになるかもしれない。それでも私は自分の道を「背水の陣」にした。もう一度言うが、覚悟なら決めた。

 

「逃げるつもりなんてない……」

 

 暗がりなスマホの画面にもう一度目を向けると、ムーコから連絡が来る。

 

 

 

『家庭菜園したいから家に来て』

 

 自分の部屋の中で無言が広がる……。

 間みたいなものが出来上がったのと同時にこう言いたくなっていた……。

 

 

 

 

 

 

「マジで言ってんのこいつ……?というか……あの」

 

 

 

 

 

 

「オクラジュースってそういうこと……?」

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 青臭い匂いがする、下を見下ろせば真新しい土が広がっている。

 生命の予感を感じさせるこの光景が自分には好奇心を高めてくれていた。初めての試みだった、こういうことをするのは……。

 

「土の状態はよろしいんですの初音?」

 

「うん、ある程度は大丈夫そうかな?」

 

 祥はちょっと農作業とは思えない恰好、初音は帽子を被りつつも……。

 ラフな格好で此処に来たということは、家庭菜園が土仕事だということを知っているのかもしれない。

 

「帽子……」

 

 今は7月末だから、結人から貰った帽子を被ることも悪くない。

 寧ろ、最適まであるのに……。部屋に行けば、帽子がある。結人から貰ったあの帽子が……。

 

『あれ?睦ちゃん、帽子被らないの?』

 

『……いい』

 

 短めな拒否を示していた私。

 これは此処最近だけじゃない、私が愛音と楽奈たちと一緒に買い物をしたときだってそうだ。あれは自分が「若葉睦」であるということになれるために必要なことだった……から。そして、帽子を被らないのは私が私であるということを象徴したいからなのかもしれない。

 

「睦ちゃん、とりあえず土の状態は良さそうだよ!」

 

 初音の声が聞こえる。

 

『睦ちゃん、今は結人君に貰った帽子のことよりも……!!』

 

『分かってる……」

 

 頭の中でモーティスの声がする。確かに今は結人から貰った帽子のことはいい……。

 私が思うにただ帽子を被らないで倒れるようなことがあれば、みんなにも心配をかけるしモーティスに怒られるのもそうだったけど。私がやっぱりあの帽子をしたくないのは自分を隠している、それを彷彿とさせてしまう……から。

 

「ありがとう、モーティス」

 

『うん!!睦ちゃんが体力無くなったら私が変わるね』

 

「お願い……」

 

 モーティスとの会話を一旦遮断して、私は初音達の方へと向かう……。

 

 

 

 

 

「若葉さん、材料・道具の方はこんな感じでいいですか?」

 

 ジャージ姿の海鈴が一輪車を動かしながらも、庭の片隅板で囲った土の箱の前に置いていた。

 

「ん、ありがとう……」

 

 海鈴が持って来てくれた材料を確認する。

 一輪車の上に置かれていて、その中にはジョウロやシャベルなどが入っている……。これから自分のすることへの期待感が高まっている。材料や目の前に撒かれている土をもう一度確かめながらも、私は確信していた。

 

「にゃむちゃん、来ないね……」

 

「祐天寺さんが倒れてまだ二日しか経っていませんから、彼女も本調子ではないのでしょう」

 

 海鈴と初音の会話が聞こえる。

 

「睦、今日はどうして家庭菜園を手伝って欲しいとお願いしたんですの?」

 

 にゃむに関する話がしていると、祥が私に気を遣って声を掛けてくれていた。

 

「ムジカのみんなと繋がりを作りたかった……から」

 

「繋がり、なるほどそれは信頼に繋がりそうですね。ならば、私が現場監督になりましょう」

 

 やる気になってくれた海鈴が種の袋を裏返しにしてやり方を確認しているけど、無言になっている。

 

「海鈴ちゃん家庭菜園やったことあるの?」

 

「ないですね、そもそも都内で家庭菜園なんてプランターでもない限り無理だと思います。なので、調べてみますね」

 

 もう一度スマホを取り出して、家庭菜園のことについて調べているようだった。

 ただ、調べてもよく分からなかったのか海鈴の顔には「疑問」という二文字が口元が歪めそうになっている。

 

「海鈴ちゃん、何か分かった?」

 

「ええ、家庭菜園は奥深いということが……」

 

「それは多分何も分かってないですわね……」

 

 海鈴がザっと手でスマホをスクロールしながらも家庭菜園について調べた後に、その感想が出ていたから。祥が率直な反応をすると、海鈴が「なっ!?」と言いながらも、軍手に手を入れてやる気を出そうとしている。 

 

「私が教えるから、海鈴ちゃんもやってみよ?」

 

「三角さんはやったことがあるんですか?」

 

「島に居た頃、お母さんの畑仕事を手伝っていたこともあるから私はある程度なら分かるかな」

 

 やる気になってくれている海鈴に声を掛けている。

 初音が住んでいた島がどういう場所なのかはあまり知らないけど、祥から聞いたことがあるオリーブや醤油が有名な島だって……。それと、星空も綺麗だって……。祥がよく話してくれていた。島でのことを……。

 

「お願い」

 

「任せて」

 

「よろしくお願いします、三角さん」

 

「今日は先生としてよろしくお願いしますわ初音」

 

「先生……!」

 

 私が買って来ていた種の袋を初音が開け始めている、三者三様の答えが出てていた。そして、祥の「先生」呼びに初音は嬉しそうにしている。和やかな雰囲気が続いているなか、私はある言葉を思い出す。

 

『そういうのって自分の体験とか経験値とかそれにも繋がるかもしれない、だから好きなんだ』

 

 私がまだ結人に依存していた頃、映画館のシアターの中で語っていた『経験値』という単語。私はそれを覚えていたし、なによりもモーティスとして私が函館に行って学んだこと……。

 

『小さな体験がやがて大きな体験に繋がる。いつも大きな体験ばかりしていたらそれはいいことかもしれないけど、私はあまりオススメしないね』

 

 教えられたのはモーティス……。

 それでも私にとって大事な話だった。それを覚えていたからこそ、私はこうやって誰かと繋がりたいという欲がある。それは依存じゃなくて、自分の道を生きるということに繋がるから。それを教えてくれたのが……。

 

 

『えっと、あっちの星がね……アルタイル。えっと、わし座なんだ』

 

『彦星?』

 

『うん、アルタイル・デネブ・ベガで夏の大三角形って呼ばれているんだ』

 

 夜空に輝く星々を一個一個小さな手で燈が、私に星のことを教えてくれていた。

 二人だけのなか、燈は教えるのが慣れない様子で私に説明してくれていた。私はそれに疑問を投げながらも、二人で会話を続けていた。

 

『燈は結人のことを彦星だと思ってる?』

 

『……え?え、え!?』

 

 途端に挙動不審になる燈。

 周りを確認しながらも、どう返答していいのか分からないという様子だったけど燈は「彦星」ということを否定していた。それを「どうして?」と聞いてみると……。

 

『一年に一回、それも晴れている日にしか会えないのは……嫌だから』

 

 私はそれに返答することはなかったけど、確かにそうだねとなっていた。

 一年に一回しか会えなくて、しかも晴れている日にしか会えないそんな関係。燈としても嫌だろうし、私としても嫌だった。だから私は返事をすることはなかったけど、それに無言で頷いていた。

 

 

 

 

「初音、こんな感じでいいんですの?」

 

「うん、それで大丈夫だよ」

 

 景色が今の場所に戻る。

 こうして、誰かと一緒に家庭菜園をするということは本当に自分の心が温かくなっていた。それを教えてくれたのは紛れもなく燈だった。CRYCHICの頃にはもう戻れないかも知れない。それでも、また別の道で会うことは信じている。それが私にとって「繋がり」でもあり、「道」でもあるから。私はそれを信じてみたかった。

 

 そういう初めての試みに自分の心というワクワク感を覚えながらも、家の方を見る。

 自分の家でこうやって祥以外の人を呼ぶ。立希達だって中に入れたことは流石になかった。中に入ったことがあるのは祥とそよぐらいだった。

 

「許可の方、貰えて良よかったですわね」

 

 無言で庭をじっくりと見つめていると私の気持ちを読んだ祥が話しかけてくる。それに無言のまま、小さく頷いた。許可をくれたのはお母さんの方だった。お父さんに相談するのは自分で逃げている感があって、嫌だったから。

 

 

 

 

 

 

『あのお母さん……』

 

『……なに?睦ちゃん?』

 

『家庭菜園をやりたい』

 

『あー庭の奴?使ってないから、睦ちゃんの好きにしていいわよ』

 

 話すことは全然できた。

 あれ以来、お母さんのことを話すのは久々だったけど怖くなかった。私が「お母さん」と呼んだときに、一瞬手がピクリと動いていたけどそれすらも……。やっぱり私は慣れて来てるのかもしれない。

 

『凄い睦ちゃん!!家庭菜園……だっけ?楽しみだね!』

 

『ん……』

 

 隣でお母さんに話しかけたことを褒めてくれて、支えてくれるモーティス……。モーティスがいるから、私はどんなことにだって挑戦できる。その意志は途絶えることはなかった。自分の意志を改めて確認してから初音と祥の方を確認すると、初音が祥に教えながらも手伝っている光景が目に入る……。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「それにしても、若葉さんが家庭菜園を手伝って欲しいと頼まれたときは流石に驚きましたね」

 

「確かに睦ちゃんからそうやって何かを誘ってくれるのって珍しいかも……」

 

 考えてみれば、睦ちゃんが何かをお願いしてきたことなんてほとんどなかった。

 いつも祥ちゃんが睦ちゃんの言葉を汲み取って彼女の感情を表現すること多かった。それが今では、睦ちゃん自身が自分のままに行動をしている。

 

『どうして初華はあの日、私に手を差し伸べてくれたの?』

 

 祥ちゃんの家の前で睦ちゃんが言っていたことは、私にとってあれは大事なものだったのは確かだった。そしてその手は、私自身にすら広げられていた。

 

『神様でもなんでもない人だって言ってた、なのに今どうしてそんなに悲しそうな顔をしているの?』

 

 初華に会うのが嫌で、自分の鳥籠から出るのが嫌で必死に逃げようとしていた私に睦ちゃんは結人と同様に手を差し伸べてくれた。睦ちゃんにとって、私という存在は祥ちゃんの友達という立場だけだろうに……。

 

『背中を押してくれた()()が居てくれたから……!!』

 

 そんなことはないよね……。

 睦ちゃんのことの背中を押してあげたくて、背中を二度ほど押した。自分でもあれに関してはよく分からないとかそういう感情を持っていたからじゃない。結人が教えてくれた感情があるからこそ私は今睦ちゃんが私達のことを考えてくれたことが嬉しくて仕方なかった。

 

「睦ちゃん、今日植えるのはニンジン・キャベツだよね?」

 

「ん、本当はもっと植えたかったけどあんまり色んなものを同じ場所で育てるのはよくないらしいから」

 

「連作障害って奴だよね?」

 

「それはなんですの?」

 

 睦ちゃんは軽く頷いてくれている。

 祥ちゃんが疑問を覚えているなか、海鈴ちゃんが手袋を一旦取ってスマホを取り出して調べているようだった。

 

「なるほど、同じ場所で同じ科、つまり人参の場合はセリ科と呼ばれているものを植えるのがダメなようですね。例えば、ニンジンとセロリを一緒に植えると状況になってしまって植物が元気に育たなくなる現象のようですね」

 

「そうなったら、どうなるんですの?」

 

「どうやら、養分の偏りや病害虫の発生、土壌バランスの乱れになるそうですね。流石に知りませんでした」

 

「そういうのがあるんですのね……?確か、キャベツはアブラナ科でしたわよね?なら、大丈夫ですわね」

 

 家庭菜園に関する知識が二人で増えている間に私と初音はシャベルで土の中を掘り出していた。

 

「土の匂いがしますわね」

 

「それは……当たり前じゃないですかね?」

 

 海鈴と祥ちゃんもシャベルを持って軽く土を掘り起こし始めている。

 

「しかし、軍手をしているとはいえ手に土が掛かるのはあまり良い気分じゃないですね」

 

「豪快にやるのではなく、慎重にやることが大事だと思いますわ」

 

「祥、豪快でもいい。力いっぱいでも全然」

 

「まあ、そうなんですの?こ、こんな感じでいいんで……!!?」

 

 祥ちゃんの言葉がそこで途切れる……。

 自分の体には強烈な匂いが炸裂して何が起きたのか分かり、一旦菜園枠から退避しそうになる。

 

「ご、ごめんなさいですわ初音……!!」

 

「だ、大丈夫だよ!?祥ちゃん」

 

 一瞬にして、自分の体にばーっと感じで土が掛けられていた……。

 いきなりの出来事のあまり、私も流石に「え?」となってしまっていたけど、祥ちゃんも悪気があってやったわけじゃないということを分かっているつもりだけど、証拠として服が汚れてしまっていた。

 

「初音、洗濯機使っていい」

 

「え?あーいや全然大丈夫だよ、島に居た頃もこうやって汚れながらも畑仕事手伝ってたから」

 

「……いいの?」

 

 睦ちゃんが明らかに心配してくれている。

 拭いても取れそうにないから、睦ちゃんは洗濯機を貸してくれると言ってくれたんだと思う。動きやすい恰好で来たから、特にお気に入りの服がどうのとかじゃなかったのは一安心だった。

 

「ほら、畑仕事とかこういう家庭菜園とかって汚れてこそみたいなところがあるから!初華と……一緒に手伝ってた頃もこうやってお互いに汚れながらも手伝ってたんだよ?」

 

「初華と?」

 

「うん、初華は凄いはしゃぎながらも土を掘り返していたからよくそれが私に掛かることがあったんだ」

 

「今の彼女からでは考えられませんが、それが当時の彼女というわけですか」

 

 私はそれに軽く頷きながらも、自分がまさか島に居た頃の話を誰かにこうやってすることになるなんて想像もしていなかった。語ったことがあるのは祥ちゃんや結人、それに取材で答えたことがあるぐらいだった。

 

 本当に世の中よく分からないものだね、初華……。

 

「初華……」

 

 自分の妹の名前を口にする。

 最後に会ったのはまなちゃんとの取材のお仕事以来、結局あの記者さんは私のことを記事には書かなかったみたい。自分の出鼻がくじかれたから書けなかった、そういうことなのかもしれない。結果的にあの取材があって、私と初華の溝は縮まった気がした。それはまなちゃんを通じてだけど……。

 

「初音、大丈夫ですの?彼女のことを考えていたんですの?この前、会ったんですわよね?」

 

「仕事で会ったよ、元気そうだったよ」

 

「そうだったんですのね、初華……いえアイフラメ様のライブは自分の世界を大切にされているものだと私も思いましたわ、流石は初音の妹ですわね」

 

「そ、そうかな?私よりあの子の方がしっかりしてるよ」

 

 初華の話をされてまなちゃんと一緒にした取材の仕事を思い出す。

 

『別になにもしてない……私は覚悟を知りたかっただけ。アンタがそうやって生きていくって決めたんだから』

 

 結局あのときも悪徳記者から助けて貰ったのは私のほうだったから……。

 こんなことを言っていたら、きっと初華に「夜道に気をつけてね」なんて言われてしまうかもしれないけど……。

 

『それじゃあ、まなさんも初音……。次の仕事も頑張ってね』

 

『アイちゃんも頑張ってね!』

 

『うん、アイフラメ……初華も頑張ってね』

 

『今はアイフラメだってば……』

 

 現場から離れて次の仕事へと向かおうとしている初華にあの日手を振りながらも、楽屋から見送った。あの子はしっかりしている。自分の道もちゃんと見つけ出そうとしている。それは私も変わらない、今はこうして祥ちゃんたちと一緒に家庭菜園の手伝いをしているのだから。

 

 意気込みを改めて固めつつも、私は作業に戻ろうとしたときだった。

 後ろから足音が聞こえて振り返ると、そこには……。

 

 

 

 

 

「アンタ達見てられないほど不器用じゃん……」

 

 にゃむちゃんが立っていた……。

 私たちの行動に完全に呆れながらも、一輪車の方へと向かっている。

 

「祐天寺さんいらっしゃったんですのね?」

 

「暇つぶしになりそうだから、来ただけ。それで今何処までやってんの?」

 

「種まき……」

 

 臆することもなく睦ちゃんは話しかけている……。

 

「っそ、ちょっと貸して」

 

「祐天寺さんは家庭菜園の方をやったことがあるんですの?」

 

「熊本の実家でやってただけ」

 

 特にそれ以上を言うことはなかったけど、お互いにピリつくこともなく祥ちゃんと会話をしているにゃむちゃん……。

 

「ねぇ、ウミコ。それ雑過ぎ。ちゃんと撒いて欲しいんだけど」

 

「私のやり方ダメなんですか?」

 

 ちょっとばかりショックを受けたような顔をしながらも、スコップを土の中に刺しこむとにゃむちゃんが「めんどくさ……」と小声で言う。

 

「ダメ以前にやり方がなんか色々と不器用過ぎて、ほら貸して。こういうのはちゃんと種撒かないと育つわけないんだから」

 

 砂浜から砂を手のひらに拾い上げて、そのまま砂浜へと放り投げるようにして種を撒いていた海鈴ちゃんに注意をしている。海鈴ちゃんはちょっとムッとしながらも、「私のやり方間違ってます?」と言いたそうにしていた。

 

「やっと五人揃いましたわね、初音……睦」

 

「私が見たかった景色」

 

 自信を持ってそう語る睦ちゃん……。

 胸には手を置いて、時間を掛けてよかったと言いたそうにしていた。私はそれにこう返すことにした。愛音ちゃんが言っていた……。

 

『やっぱり、人と人の繋がりって大事じゃん?だから、私はそういう人と人の結びを大事にしたいんだ』

 

 言葉を思い出しながらも、私はそっと睦ちゃんの背中を押してあげたくなっていたからこそ送りたいものがあった。

 

「良かったね……睦ちゃん」

 

「うん……」

 

 

 

 

 

「良かった……」

 

 睦ちゃんは汗を拭きながらも、枠の方へと戻って行く……。

 表情には出ていた。それは誰かと繋がるという「行動」が彼女自身を強くしていたんだって……。

 

 

 

 

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